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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-18-
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魔法のコトバ* Season6  気付いた想い-18-

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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-17-
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魔法のコトバ* Season6  気付いた想い-17-

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気がついたら。
誰もいない教室に座ってた。
何をするわけでもなく、ただ1点だけをぼーっと見つめて。
時折、ポケットにしまった携帯が震えてたけれど。
それにかまう余裕なんてなかった。


「園田さん?」
見回りに来た先生が驚いたように声を掛けた。
「どうしたの?電気もつけないで」
気がつけば教室は真っ暗。
「とっくに下校時間、過ぎてるわよ。早く帰りなさい」
うつろな目で黒板の上の時計に目をやった。
どれぐらいこうしていたんだろう…。



とぼとぼと校門までの道を歩く。
ずいぶんと遅くなっていて、校内にはほとんど人影がなかった。
たぶん私が最後。
ずずっと鼻を啜り上げたのと同時に携帯が震えた。
そういえばさっきから何度も震えてる。
ようやくそれに気付いてポケットから取り出してみると、着信はママから。
『もう随分遅いけど大丈夫?』『凪ちゃんと一緒なの?』『車で迎えに行こうか?』
って心配のメール。
相変わらず心配性だなって、小さく笑って。
もうすぐ帰るからってメールを返す。
パチンと携帯を閉じたら、乾いた音が夜空に溶けた。

すぐそばでブレーキ音がした。
ジャっと乾いた地面を踏みしめる音がして。
「よお」
聞き覚えのある声に私は顔を上げた。

「夏木くん…──?」

まだ残ってたの?

「乗れよ」
「え?」
「暗いし、送ってっちゃる」
「いいよ…」
私は首を横に振った。
「いいから。乗れって」
有無を言わさず私の手から鞄を抜き取ると、乱暴に前の籠に突っ込んだ。
こうなったら蒼吾くんは頑としてゆずらない。
「…ありがとう」
諦めて、仕方なく自転車の後ろに乗せてもらう。
それを確認すると。
「ちょっと遠回りすんぞ」
そう言って蒼吾くんはいつもの道を外れた。
駅とは反対方向。
いつもの住宅街から離れて河川敷への道。
「どうしてこっちなの?」
外灯も少ないし寒いくて遠回りなのに。
「意外とこっちの方が早いんだぜ?」
そう言って坂道を駆け上った。
私だったら降りて押しちゃいそうな坂道なのに。
さすが運動部、鍛え方が違うのかな。


「俺、よくここの公園でおやじとキャッボールやってたんだよな」
自転車を漕ぎながら蒼吾くんがポツリと呟いた。
「六年のクラスマッチの練習でさ、グラウンドが使えなかった時も、ここで練習しただろ?覚えてねーの?」
「…うん」
「あ。園田が転校した後か。お前いなかったんだな」
大きな背中が小さく笑った。

今日の蒼吾くん。
いつもよりおしゃべりだ。
気を使ってくれてるのがすごく伝わってくる。


「寒い…ね」


吐く息が白くかすんで夜空に溶けた。
今日、こんなに寒かったっけ。
悴んだ手を擦り合わせる。
あれからずっと、手の震えが止まらない。


キィーーッと。
ブレーキ音がして河川敷ど真ん中で、自転車が止まった。
「…どうしたの?」
立ち止まった背中に声を掛けた。
そしたら蒼吾くんは無言で自転車を降りて、大きなスポーツバッグからゴソゴソと何かを取り出した。

「これ。使えよ」
無愛想に突き出されたのは、大きなスポーツタオル。
「使ってないやつだから汚くねーよ。肩にかけとけば少しは違うだろ」
「いいよ。大丈夫」
ぶんぶんと首を横に振った。
「寒いんだろ?いいから使えって」
「でも」
「いいから!」
強引にタオルを押し付けられた。


「──手、ずっと震えてるじゃねーか」


ぎゅって私の手を握って、その手にタオルを握らせる。
蒼吾くん、気付いてたんだ。
でもこれは寒さの震えじゃないから。
あの絵を拾ってから震えが止まらないの。

「…ありがとう」

笑って見せたつもりなのに、口の端が引きつって口角が思ったように上がらない。
笑ってるんだか、泣いてるのかわかんない。
笑顔が思ったように作れなくなった。



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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-16-
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魔法のコトバ* Season6  気付いた想い-16-

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その綺麗な横顔の人物画は間違えなく私の親友、凪ちゃんだった。
私は震える手でその絵を取り上げた。

絵の中の凪ちゃんはデッサンのモデルとして描かれた物ではなくて。
何気ない日常の姿をスケッチしたもの。
それは全てどこか遠くを見つめている表情ばかりで、正面を向いている絵は1枚もなかった。
凪ちゃんが想う人は蒼吾くんだから。
彼女の見つめる先はここではないから。
ここから見つめる佐倉くんの視線になんて気付くはずもない。
切なくて。愛おしくて。
溢れる想いが絵から伝わってくる。
恋っていうフィルターがかかったデッサン。




「園田───…」


蒼吾くんの声で現実に引き戻された。
鼓動が激しく波打ったまま治まってくれない。


「それ…」

窓の外から覗き込んだ表情が強張るのが分かった。



「あ…うん…」

呆れるくらいにぼんやりと返事をして、残りの絵を拾い集めた。
「絵、汚れてないかな?」
丁寧に集めてトントンと端をそろえる。
手が震えてる。
しっかりしなきゃ、ましろ。

「ドン臭くてだめだね」

えへへって笑ってみせる。
ちゃんと笑えてるのかな。



「園田───」



何か言いたそうに蒼吾くんが私を見つめる。
ドクリと、胸が突きあげた。
お願いだから、何も言わないで。


「…園田」

蒼吾くんの口が動きかけた時。

「────私…っ。
用事思い出したから、先に帰るねっ!」

自分から言葉を遮った。

「佐倉くんに先に帰ったって、伝えておいてもらえる?」

精一杯笑顔を作りながらスケッチブックをもとあったところに返す。
見なかった事にした方がいいんだ、これ。

「園田!」


「…ごめん、佐倉くんに伝えて」



私は走り出してた。
もう振りかえれない。



もう。
何も見えなくなった───。







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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-15-
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魔法のコトバ* Season6  気付いた想い-15-

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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-14-
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魔法のコトバ* Season6  気付いた想い-14-

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「血、止まった?」
そっと指が触れた。
佐倉くんの細くてちょっぴり冷たい指先。
「これ、とりあえず当ててて。俺、絆創膏もらってくるから」
そう言って私の指をハンカチで包み込んだ。
「いいよ、汚れちゃう」
「いいから座ってて」
そう言って軽く頭に手をやると、佐倉くんは扉の向こうに消えた。



どうしよう。どうしよう。
嬉しい……。

きゅってハンカチを握りしめる。
顔の筋肉がへらへらって緩むのがわかった。
佐倉くんが触れた頭が、手が、指が。
嬉しくて、愛おしくて。
涙が出そうになる。
手からそっとハンカチを離す。
1センチにも満たない小さな切り傷。
もうとっくに血は止まってる。
佐倉くんの唇の感触を思い出したら顔が火照る。
まだ高鳴る胸に手を当てながら、佐倉くんが触れた指にそっと唇を当てた。










「おい」



ビクっって。
体が跳ねた。
本当に跳ねたと思う。
じわりと振りかえると、窓の外に見覚えのある顔。
「…夏木、くん?」
うそ。
いつからそこにいたの?


今の、見てた…?


「何やってるんだよ、お前…」
「なに…って……」
佐倉くんと間接キス…って思う辺り、どうかしてる。
っていうか、かなりイタイ。
みるみるうちに顔が真っ赤になった。
「佐倉は?」
「保健室に行ったよ」
「…ふーん…」
無愛想に窓から覗き込む。
その額には薄っすらと汗。
制服を着てるから部活中じゃないよね?




あれ?



「追試は!?」
一気に顔の熱が冷めた。
ここにいるって事は、追試が終わったんだよね。
「ん」
無愛想に袋が差し出された。
「なに、これ…」
「やるわ、それ。好きだろ、ドーナツ」
ポンデライオンの袋。ミスドだ。
なんで…?


「礼だよ、補習の」

「補習のお礼?」





…え?



「受かったの!?」
思わず窓から身を乗り出した。
「だから礼だって」
「よかったぁ〜…」
体中の力が抜けた。
へなへなとその場に座り込んでしまう。
「おい、大丈夫か」
蒼吾くんが窓から身を乗り出して心配そうに覗き込んだ。
「うん」
えへへって嬉し笑い。
合格したんだ。
そっか。
よかったぁ…。
蒼吾くんは私を見ながら照れたように頭を掻いた。


「…悪かったな、この前。ちょっと、言い過ぎた。だから補習の礼と、その詫び」
無愛想にそう言ってそっぽを向く。
「これ、どうしたの?」
ミスドのドーナツ。
「買ってきた」
よくみると窓の向こう、蒼吾くんは自転車にまたがってる。

「買ってきたって…いつ?」
「今」
「テスト終わってから?」
「そ」

私は手にした袋に視線を落とした。
だから額に汗かいてたんだ。
わざわざ部活の前に駅まで行ってくれたんだ。
別にすぐじゃなくてもよかったのに…。
蒼吾くんの優しさが素直に嬉しかった。





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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-13-
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魔法のコトバ* Season6  気付いた想い-13-

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それから。
蒼吾くんと話せないまま時間だけが過ぎて。
とうとう追試を受ける日がやってきた。
私が教えてあげられたのは、テスト範囲の半分にも満たない。
残りの半分は教えられないまま。
蒼吾くん、どうしたんだろう。
部活は普段通り出てた。
休み時間に勉強をしている風でもなかった。
授業中に至っては、半分以上居眠りしてた。
私があんな事を言い出さなければ、蒼吾くんを怒らせることもなく最後まで教えてあげられたのに。
もし今日の結果が駄目だったら、私のせいだ…。



「ましろちゃん。座ったら?」
追試の結果報告を待つ間、落ち着くことが出来ない私を見て、佐倉くんが苦笑交じりに声を掛けた。
「そわそわしても結果は変わんないんだしさ、少し落ち着いたら?」
そうだよね。
私がオロオロしたところで何も変わらない。
今は蒼吾くんを信じて待つしかない。
気持ちを落ち着かせるために、大きく息を吸い込んだ。
溜息と一緒にゆっくり息を吐き出すと、ほんの少し気持ちが落ち着いた。
そんな私を見て佐倉くんが苦笑して。
また、描きかけのキャンバスに向う。
横顔が真面目な顔に変わる。
キャンバスに向かう佐倉くんはまるで別人。
凛とした横顔は、真剣で格好いいんだ。
そんないつもと変わらない佐倉くんの横顔を見たら、気持ちが和らいだ。


「ましろちゃん。デッサン用の鉛筆、取ってくれる?」
「あ、うん…」
画材ケースの中に手を突っ込む。

「…っ痛…」

何か鋭いものが指を掠めた。
刃先が少し出たまましまわれたカッターナイフ。
確認もしないで手を突っ込んだから、右の人差し指が切れてじわりと血が滲んだ。


「大丈夫?」
佐倉くんがキャンバスから顔を上げた。
「うん」
反対の手で制服のポケットを探る。
ハンカチ、鞄の中だ。

「追試のことばっか気にしてるから…。見せて」

佐倉くんが手を引いた。



…え。


う、そ―――。




頭に血が上るのが分かった。
だって、だって、指。
唇触れてる。


母親が小さい子どもにするみたいに、佐倉くんが傷口を唇で覆った。
指から伝わってくる唇の感触がやけに生々しい。



「さ、さ、佐倉…くんっ…!」

「なに?」

「…手…」

きょとんと一瞬、目を丸くして。

「あ、ごめん」

パッと手を離した。
私は思わず手を引いて、下を向く。
どうしよう。
顔が上げられない。

「小さい頃、よく母親がこういうのやってくれなかった?だから、つい。
嫌だったよな?ごめんな」

クシャリ。
頭を撫でた。
私は下を向いたまま首を大きく横に振る。


ううん。
ううん。
いやじゃないよ、嬉しかった。
嬉しくて嬉しくて。
どうしようもない気持ちが溢れてきて、胸の奥がきゅうってなった。
目頭がじんと熱くなる。
佐倉くんに好きって言ったらどんな顔するかな。
そんなの迷惑にきまってる。
この気持ちはまだ、伝えない方がいい。
溢れてしまいそうな好きっていう言葉を私はぐっと飲み込んだ。




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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-12-
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魔法のコトバ* Season6  気付いた想い-12-

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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-11-
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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-10-
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魔法のコトバ* Season6  気付いた想い-10-

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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-9-
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