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魔法のコトバ*  Season5 スキなひと-3-
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魔法のコトバ* Season5  スキなひと-3-

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久しぶりに美術部の扉を開けると、引き戸がカタカタと乾いた音を立てた。
風に乗って漂ってくる絵の具やキャンバスの匂い。
私はそれを大きく吸い込んで、気持ちを落ち着かせる。
独特だけど私はこの匂いが大好き。
ひどく安心する。


美術室は相変わらず人がいなくて、ガランとしてた。
テストから解放されて早々、部活に参加するまじめな部員なんて私と佐倉くんぐらい。
普段でも活動日以外はほとんど貸切状態だもん。
テスト明けなんてなおさら。
私は肩に掛けた荷物を降ろすと、そっと準備室を覗いた。

「佐倉…くん?」

窓際のいつもの指定席。
壁にもたれるようにして絵を描いてるはずの佐倉くんがいない。
ロッカーの上に荷物がポツリ。
「あれ?」
鍵が開いてたから先に来てるはずなんだけど。
先生のところにでも行ったのかな。
私は準備室を見渡し、佐倉くんの姿が見えない事を確認すると。
はぁ…と、大きなため息をついた。


佐倉くんがまだ来てなくてよかった。
今、彼と顔を合わせたら、必要以上に意識しちゃいそう。
みんなが変なこと言うから…。


『園田さんって、Aクラスの佐倉くんと付き合ってるの?』


みんなの目には、そんなふうに映っているのかな。
人の噂が怖いっていうのは知ってる。
小学生の時に嫌というほど経験した。
もう、そういうのに巻き込まれるのは嫌だ。
平常心、平常心。


大きく息を吐いて気持ちを落ち着かせるように部屋を見渡すと、佐倉くんの描きかけのキャンバスが目に入った。
キャンバスいっぱいに描かれた校庭の風景。
これって、ここの窓から見える景色だ。
優しいタッチの水彩画。
淡い暖の色が溢れて、そっと触れたら暖かさが伝わってきそう。
佐倉くん、すごいな…。
窓の外にはキャンパスと同じ風景。
ほのかに色づいてきた校庭横の銀杏並木。
はらりと時折舞い落ちる銀杏の葉がとても幻想的で、一瞬、時が過ぎるのを忘れてしまいそうになる。





「あれ?ましろ…?」

不意に声を掛けられてびっくりして振り向くと、窓の向こうで凪ちゃんが私を見つけて立ち止まったところだった。
「どうしたの、こんなところで?」
部活中に凪ちゃんが声を掛けるのって初めて。
ちょうど美術室はグラウンドのフェンスと大きな銀杏の木が邪魔して、陸上部の使っているトラックは死角。
凪ちゃんの姿を見つけることはなかった。
ここからだと、ちょうど見えるんだ。

「あれ?佐倉は?先に行ってたんじゃなかったっけ?」
「そうなんだけど…」
「荷物はあるみたいだから、トイレにでも行ったんじゃない?」

凪ちゃんは汗ばんで頬に貼りついた髪をそっと払った。
サラサラの黒髪が揺れる。
普段は降ろしてる肩までの黒髪を、後ろにきゅってひとつに結ってる。
凛とした顔立ちがますます強調されて、綺麗。
同じ女の子でも見とれてしまう端正な顔立ち。
スラリとした手足は長くて、ジャージを着ていても様になってるし。
ジャージに着られてるちびな私とは大違い。

「何?」
「え?」
「だってましろ、私の事じっと見てる」
「あ、…ごめん」
「何で謝るの?」

変なましろって、凪ちゃんが笑った。

「ね、凪ちゃん」

「ん?」

「さっきの人に、告られたの?」

私の言葉に、凪ちゃんは黒目がちな大きな目を見開いて。
「何で知ってるの?」
びっくりしたような顔で私に聞いた。

「葉山さんが、そう言ってたから」
「葉山さん?…ああ、彼女そういうの抜かりないからね」

凪ちゃんがため息混じりに笑った。
もう勘弁してよって感じの呆れた笑い。

「でも断ったよ」
「どうして?」
「好きでもない会ったばかりの先輩と付き合えないでしょ。
っていうか、ましろこそ何?」
「え?」
「今までそういう話、興味なかったでしょ?突然どうしたの?」

ほんとだ。
私、何でこんな事聞いてるんだろう。
今までそういうの気にもならなかったのに。
でもそれは、凪ちゃんに好きな人がいるって知らなかったから。
葉山さんが言ってた、凪ちゃんのずっと好きな人っていうのが気になって。



凪ちゃんがずっと好きな人って、…誰…───?



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