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魔法のコトバ*  Season5 スキなひと-4-
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魔法のコトバ* Season5  スキなひと-4-

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「凪ちゃんにはずっと好きな人がいるから、だから誰とも付き合わないんだって、葉山さんから聞いたの」
私の言葉に、凪ちゃんの顔に少し動揺の色が見えた。
でもそれは、ほんの一瞬。
「何?あの子、そんな事言ってたの?」
すぐにいつもの顔に戻った。
「それで?」
「…それでって…」
「ましろはそれを聞いてどう思ったの?」
「どう思ったって…」
「ましろ、変だよ。らしくないっていうか。どうしちゃったの?」
窓越しから心配そうに私を覗き込んだ。
小学生の時から変わらない、優しくてしっかりとした凪ちゃん。
いつも私の心配をしてくれて助けてくれた。
私はずっと頼りにしてて、凪ちゃんに何でも話したり相談してきたりしたつもりだったのに。


『日下部さん、ずっと好きな人がいるみたいよ。』


『園田さん、知らなかったの?』


ただのクラスメイトの葉山さん達が知ってて、一番仲のいいはずの私が知らなかった事。
私、何も知らなかったよ。
どうして話してくれなかったの?
私が頼りないから?
転校してきたばっかりだから、話す必要ないって思った?
たぶん凪ちゃんが誰を好きかって事よりも。
それを知らなかったことの方がショックで。
でもその事を凪ちゃんに何て言って伝えたらいいのか分からなくて。
私は下を向いた。


「好きだった人、いるよ?でもそれは過去の話なの。ふられちゃったから。
ましろが海外にいた頃の中学の話。だからましろには話さなかった。ごめんね?」
顔を覗き込んだ。
私、何も言ってないのに。
聞きたかった事を察してさらりと言った。

…そうだったんだ。
だったらそんな話、したくなかったよね。
なのに私。

「ごめん…」
「何でましろが謝るの?」
いつも謝ってばかりだね、って。
私の頬をつついた。
「ましろの事だからさ、何で私に話してくれなかったの?私って頼りない?とかって、いろいろ想像しちゃったんでしょ?違う?」
凪ちゃんの言葉に私は驚きつつも素直に頷いた。
「いつも言いたい事を抱えてばかりだから、お腹が痛くなるんだよ。言いたいことは言わなきゃ」
「うん、そうだね」
私もつられて笑った。
やっぱり凪ちゃん、すごいな。


「ましろこそどうなの?私に聞いてばかりで。ましろのそういう話って聞いたことがないよ。いないの?好きな人」


小学校の初恋以来、私は臆病になってそういう感情がもてなくなってた。
好きとか、特別とか。
その人の事を考えるだけで胸が苦しくなったり、切なくなったりする気持ち。
そういうの、随分忘れてた気がする。

またいつか。
私にも好きな人ができて、その人の言葉や行動に。
一喜一憂したりする日々が来るのかな。
今はまだ、想像つかないや。



「あ、佐倉」
凪ちゃんが顔を上げた。
振り返ると、小脇にスケッチブックを抱えて缶ジュースを片手にした佐倉くんが突っ立ってた。
「日下部?こんなところで珍しいね。
缶コーヒー、もう1本買ってきた方がよかったかな?」
「いいよ。部活の途中だから。
じゃましろ、話はまた今度。絵、頑張って」
「うん。ありがと」
軽く手を振ってグラウンドに消えていく凪ちゃんを見送る。
「先に来てたんだ」
「うん。佐倉くんは?」
「教室に忘れ物を取りに戻ってた。で、ついでに買ってきた」
そう言って手に持っていた2本のうちの白い缶を私にくれた。
「紅茶でよかった?」
「うん。コーヒーは苦手だから。ありがとう」
「テストの打ち上げって、ことで。缶ジュースじゃしょぼいけど」
笑いながらリングプルを抜くと、カチンと私の缶に合わせた。
「テスト、お疲れ」
「うん、お疲れ様」
私もふたを開けて口に運ぶ。
紅茶の味が口の中いっぱいに広がって、ほのかな甘さがホッとした気分にさせてくれる。


「テスト、できた?」
いつもの指定席に腰かけながら、佐倉くんが聞いた。
「うーん。
補習を受けなくてもいい程度にはできたかな」
あまり自信のない教科もあるけど、一応頑張って勉強したもん。
大丈夫。
私は笑った。
「じゃあ、そろそろましろちゃんも本格的に作品に取り掛からないといけないね。やりたいもの決まった?」
「…まだ…。でも油絵は苦手だから、水彩画一本には絞ろうと思ってるんだけど…。描きたい題材が見つからなくて…」
「気長に探すといいよ…って、あと二ヶ月もないのか」
「やばいよね?」
「俺ら一年だし、そんなに気負わなくてもいいんじゃない?ましろちゃんは入部したばかりだしね」
そう言って笑った。
優しい笑顔。
佐倉くんがこうやって笑ってくれると、いつもホッとする。


「あ、そうだ」
パラパラとスケッチブックをめくっていた佐倉くんが、思い出したように顔を上げた。
「さっき、Cクラスの担任がましろちゃんを探してたけど…」
「私を?」
何で?
身に覚えがなくて、私は首をかしげた。
「補習がどうこうって言ってたけど…」
「ええっ!?」
『補習』って言葉に、持っていた缶を思わず落っことしそうになった。
なにそれ。
補習って…。
血の気が引いていくのが分かった。
「明日の朝、職員室に顔を出してくれって伝言」
大丈夫?って。
最後は心配そうに私を覗き込みながら佐倉くんが笑った。


補習だったら。
ほんとに笑い事じゃないよ、佐倉くん。
私は大きなため息をついた。


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