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魔法のコトバ*  Season5 スキなひと-8-
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魔法のコトバ* Season5  スキなひと-8-

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窓の向こうから部生の掛け声が微かに聞こえる。
私をじっと見据えた蒼吾くんの視線はどこまでも真っ直ぐで。
絡まった視線を放そうとしない。
あまりにも真剣に見つめるから、胸の奥が小さく音を立てて。
鼓動がトクトクと走り出す。
空気が張り詰めているような気がして息が詰まる。


「だって園田ってさ…」
それに耐えかねて、蒼吾くんが口を開いた。
「アメリカ帰りだろう?本場仕込みだし。英語できそうじゃん?」
そう言っていたずらっぽく笑った。



…なんだ。そんなこと?


そういえば先生もそんな事、言ってたっけ?
あれは蒼吾くんの受け売りだったんだ。
すごく真剣な顔で言うから、もっと別に理由があるのかと思っちゃった。
でも。
単純な考えがすごく蒼吾くんらしい。


「ご期待に添えるかどうかはわからないけど…。
じゃあ、もう少し過去問題までさかのぼってやってみようか?どの辺がわからない?」
私は気を取り直して参考書を開いた。
とりあえず引き受けたんだからちゃんとやらなきゃね。
放課後の一時間を無駄になんて出来ない。
私も蒼吾くんも、やりたいことがあるんだもん。

「ここのところ…」

そう言って説明を始めた私の言葉を。

「嘘」

短い言葉で蒼吾くんが遮った。



へ…?


「…嘘?」


私は疑問符をつけて聞き返した。


そうしたら蒼吾くんの真面目な顔と視線がぶつかった。
クラスの男の子達とふざけてる普段の彼からは、想像できないような
真剣さを灯す。


なに…?



「園田に補習を頼んだ理由。全部、嘘だから」

「嘘って…」

「アメリカ帰りだからとか、英語が出来そうとか。そんな事はどーでもいい。担任にはそうやって理由をつけて頼んだけど」

瞳が真剣な色を湛えて私を見つめる。
そのまま、ゆっくりと窓の向こうに視線を泳がせた。
夕暮れ色に染まった秋の鱗雲が、空いっぱいに浮んでた。

「…なんてゆーか、さ…」

歯切れの悪い言葉で頭を掻く。
難しい問題集を解いてるみたいな険しい顔。


言葉を選んで、考えて。
意を決したような真面目な表情を湛えて、彼が振り返った。



「お前と話がしたかったんだ。ちゃんと向き合って」








しばらく間があって。
たぶん数秒くらい。
でも私にはすごく長く感じた。


「騙して悪いと思ったけど、そうでもしないとお前また逃げるだろ?担任の言うことなら断れないと思った。
ちゃんと謝りたいって思ってた。ずっと後悔してたんだ。あの時の事…」


じっと見つめる彼の表情は真剣そのもので。
何も言葉が出なくなる。


あの時の事って。
みんなの前で…キスした事?
それとも私がみんなにからかわれるきっかけを作った事?
でもあの時。
蒼吾くんは「謝らない」って言ったでしょ?
なのになんで今さら───。




「俺、さ。思い出せないんだ、あれからずっと」



「なにが…?」




聞き返す声が情けないくらいに震える。




「園田の笑った顔────」




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