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魔法のコトバ*  Season5 スキなひと-14-
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魔法のコトバ* Season5  スキなひと-14-

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「何が入ってるんだろうね、これ」
ダンボール箱を抱えて少し前を歩く佐倉くんに問いかけた。
補習後、彼と合流して顧問の先生のところへ取りに行った新しい画材。
「重さ的には絵の具かな?」
前を歩く佐倉くんはダンボール箱をふたつ重ねてる。
ひとつでも結構、重いのに。
力あるんだ。


「大丈夫?」
先に箱を下ろしてきた佐倉くんが、私の手からするりと荷物を受け取った。
軽々と持ち上げて机の上に置く。
それ、重かったんだよ?
なのに佐倉くんが持つと、全然重くなさそう。
軽々、ひょいって感じ。
そういうところ、ちょっといいなって思っちゃう。
優しくて、意外に男らしくて。
佐倉くんの何がいけないの?
『おまえが思ってるようなやつじゃねーよ』なんて。
蒼吾くん、ちっともわかんないよ。



「ましろちゃん?」
「え?」
「そこにあるカッター、取ってくれる?」
「あ、うん」
工具セットから取り出していたカッターナイフを佐倉くんに手渡す。
カチカチって刃を出す音が響く。
「考え事?さっきから上の空みたいだけど」
するどいんだ、佐倉くん。
いつも見透かされてるような気がしてドキドキする。
「そんなことないよ」
「そ?おなかすいちゃった〜とか思ってるのかと思った」
「まさか」
あははって笑ってみせる。
「それならよかった」
そう言って笑う佐倉君の横顔。
もしかして、心配…してくれてたの?
トクンって。
胸が小さく音を立てた。


あの日から。
妙に意識してしまって。
変なの、私…。




「開けてみる?」
ガムテープを剥がし終えた箱が、スッと差し出された。
興味津々で覗き込んでたのがばれたかな。
だって新しいものってワクワクするんだもん。
「いいの?」
私が最初に開けちゃっても。
「どうぞ」
苦笑しながら佐倉くんは椅子に座る。
そう?
それならお言葉に甘えて。
そっと箱を開けた。

「わ…っ。すご…い…」
色とりどりのアクリルや水彩絵の具にパステル。
色鮮やかな虹色が、目に飛び込んできた。
綺麗…。

「こっちは新しい三脚と筆が入ってる」
そう言って佐倉くんがもうひとつのダンボールを開けた。
真新しい木の匂いがする。
「もうずいぶん古かったから助かるな、これ」
嬉しそうに三脚を取り出すと、それを手早く組み立てる。
「ましろちゃんのと取り替えてあげるよ」
「え?いいよいいよ。佐倉くん、使って」
「いいから。そっち、ネジ外れそうだし危ないだろ?ほら、キャンバス持ってて」
そう言って私のキャンバスを外すと有無を言わさず手渡した。

まだ真っ白のキャンバス。
描きたい題材が見つからない。
佐倉くんのそれとはスケールが違うのに、そんな私が新しいものを使わせてもらうのは申し訳ないよ。


「よし…っと。いいよ。貸して」
手からキャンバスを受け取る。
「いいんじゃない?しっかりしてる」
セッティングを終えて満足そうに笑った。
「ね、やっぱり佐倉くん使って?」
私じゃもったいないよ。
キャンバスを机に置いても描けそうなレベルだし。
「いいから使いなよ。ましろちゃんの使ってた方が古かったし、ネジ取れそうでやばいだろ?怪我でもしたら大変じゃん」
気にするなって、佐倉くんは笑う。
ほんと優しいんだ。

「それに俺はこっち、使わせてもらうから」
そう言って箱から新しい絵の具を取り出した。
「ちょうど買い足さなきゃいけなかったし、正直こっちの方が助かるよ。これ、リキテックスだろ?発色がいいんだよな」
嬉しそう。
絵、ほんとに好きなんだね。
見てるこっちが嬉しくなっちゃう。
顔がへらって緩むのがわかった。
あ、やば…っ。



「じゃ、私も出すの手伝うね」
もうひとつの箱から筆を取り出す。
「結構あるね。これ、授業でも使ったりするのかな」
「部費で購入したって言ってたから、部の方で保管してたんでいいんじゃない?」
「そっか。授業で使ったら一瞬だもんね」
「リキテックスの絵の具を絵心をわかんないやつらが使うのはもったいないよ」
「あははっ。そうだね」
箱を覗き込むと耳に掛けた髪が流れ落ちた。
ヘアゴム、持ってきてたかな。
私は制服のポケットをゴソゴソと探った。
「髪、随分伸びたね」
「うん。ずっと伸ばしてたから…」
小学生以来ずっと伸ばした髪は背中まである。
屈むと落ちてくる髪を仕方なく耳に掛けた。
邪魔になるけどヘアゴムもピンもないんじゃしょうがないや。
「小学生の頃はもっと短かったよな?」
「んー。肩ぐらいかな」
あの長さ、ちょうど広がるんだよね。
あの当時、凪ちゃんみたいなロングヘアーに憧れて伸ばしてたんだけど、もう随分伸びちゃったな。
切っちゃおうかなって思うけど勇気がなくて、いつも同じ髪型。
顔を出す勇気がない。

伸ばした髪は私の精一杯の抵抗。
うつむくと顔にかかって表情が見えなくなるから。
あの当時、いじめられていた私の自己防衛。
もう必要ないんだけど、ずっとこれだから顔を出す勇気がなくて…。


「邪魔にならない?」
「平気。もう慣れちゃった」
佐倉くんが手を伸ばして髪に触れた。
「こうやって顔を出した方が可愛いのに」
そっと上げられた前髪から視界が広がって、いつもより佐倉くんの顔が間近に見えた。
きれいな顔がすごく…近い。

「ほら、可愛いじゃん」

佐倉くんが笑った。
カーーーって。
みるみるうちに顔に血が上るのが、自分でも分かる。
どうしよう。
私、きっと真っ赤だ。
こんな間近で人の顔を見るのも、男の子にこんなふうに触れられるのも初めてなのに可愛いだなんて。


───好きな人には、いつも笑っててほしいだろ?───


あの言葉の意味を期待してしまう。


佐倉くんのあの日の言葉が頭の中でぐるぐる回って。
私は佐倉くんの顔がまともに見れなくなってしまった。






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