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魔法のコトバ*  Season6 気付いた想い-3-
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魔法のコトバ* Season6  気付いた想い-3-

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屋上の扉を開けると、秋の終わりの冷たい風が頬を撫でた。
広がる髪を押さえながら扉を閉める。
風が止むと陽が当たる屋上は暖かった。
ふたり分のお弁当をコンクリートの地面に置いて、持ってきていたハンドタオルを広げてそこに腰を降ろした。
ポケットから携帯を取り出してメールが入ってないかを確認をしてから、お弁当箱の横にそっと置いた。
見上げた空が抜けるように青くて気持ちがいい。

ふと。
何気に隣に目をやると知ってる顔と目が合った。
ジャージの上にブレザー。
見覚えのある短髪頭にでっかい体。
あれ…?
「───夏木…くん?」
「…おまえ、何やってんだよ」
「何って…、お天気がいいからここでお弁当食べようと思って」
蒼吾くんこそ。
「何してたの?」
「弁当食べてたんだよ」
「ひとりで?」
「…悪いかよ」
ムッとした顔でこっちを睨んだ。
いつも回りに友達の絶えない蒼吾くんなのに、珍しい。
「そっちこそ、ひとりでどうしたんだよ。日下部は?」
「凪ちゃん、呼び出しされたから」
「相変わらずだな。今度は誰?」
「隣のクラスの守口くんって人」



「…ふ〜ん。そっか…」

あれ?
なに、今の間。
ちょっと違和感を感じた。
「弁当、食わないのか?」
「もう少しで凪ちゃん来ると思うから。待ってる」
「ふーん」
「夏木くんこそ。食べないの?」
「…食うよ?」
ちょっとぶっきら棒に答えながら、背を向けた。
何で?
チラリとお弁当が見えた。

…あれ?

「見んなよ」
「ね、お弁当…」
「見んなって言ってるだろ?」
すっごく不機嫌に私を睨みつける。
「それ、誰が作ったの?」
だって。
鮮やかで可愛いお弁当。
かまぼこや海苔や人参がいろんな形に散りばめられていて、すごく綺麗。
お弁当っていうよりもアートな世界。
「もしかして…彼女?」
「いねーよ」
「夏木くんのお母さん?」
にしては、手が込んでる。
発想が若い感じ。
「姉貴だよ、姉貴」
めんどくさそうに蒼吾くんが言った
「あ〜もう!だからこんな弁当、やめてくれって言ってんだよ」
「おいしそうだよ、これ」
「味とかの問題じゃなくて。こんなの教室で食えるかよ。女みたいな弁当!コンビニ弁当の方がよっぽどマシだっつーの」
拗ねたように唇を尖らせる。

そういえば。
蒼吾くんがお昼休みに教室でお弁当を広げてる姿って、見た事ないかも。
いつも屋上で人に見られないように食べてたんだ。
でも、文句いいながらもちゃんと残さず食べてる。
そのまま持って帰ってお昼は学食、とかできるのに。
そういうところはやっぱり優しい。

「…んだよ?笑ってんなよ」
「え…。だって」
色とりどりの可愛いお弁当は、あまりにも蒼吾くんに不釣合いでおかしくなった。
「誰にも言うなよ?」
「…うん」
「今、『凪ちゃんに話そ〜っと』とか思っただろ?」
嫌そうに眉根に皺を寄せた。
うっ。
鋭いんだ。
「言うなよ?」
念を押すように私を覗き込んだ。
何度も頷く私の顔を見つめて、蒼吾くんがフッと表情を緩めた。
「それ、めずらしいな」
「え?」
「髪型」
「うん。佐倉くんが…」
言いかけてハッと口を噤む。
やば…っ。

「佐倉が、何?」
「えっと……」
佐倉くんの話題は、また何か言われそう。
やめとけって、言われたばかりなのに。
「そっちのがいいって、アイツに褒められた?」
「…うん…」
「…ふ〜ん…。いいんじゃねーの?」
ぶっきら棒にそう呟くと、残りのお弁当を口の中にかけ込んだ。
あれ?それだけ?
もっと何か言われるかと思ったのに。
ちょっと拍子抜け。

「俺、行くわ。日下部、そろそろ来るだろ」
「うん…」
「じゃあな」
素早く片付け終えると、蒼吾くんはジャージのポケットに手を突っ込んだまま背を向けた。
「ちゃんと食えよ」
そういい残して猫背気味の大きな背中が校舎に消えていった。
それを見送ると小さくお腹がなった。
「お腹、減ったな…」
私はそっとおなかをさすりながら空を見上げた。
天気予報は午後から天気が崩れるって言ってたっけ。
そんな気配を見せない秋晴れの青空。


「遅いな、凪ちゃん」


空を見上げながら、私はぼんやりと呟く。



その日の昼休み。
どんなに待っても、凪ちゃんは屋上に現れることはなかった。






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