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魔法のコトバ*  Season7 キミに届け-2-
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魔法のコトバ* Season7  キミに届け-2-

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「ましろちゃん?」
横顔が振り返った。
「来てたんだ。どしたの?そんなところで…」
いつもと変わらない優しい笑顔。
ホッとするのに泣きそうになる。
私、ちゃんと笑えてるかな。
「ましろちゃんのキャンバス、こっちにあるよ」
そう言って奥に置かれたキャンパスを指差した。
入り口からなかなか一歩の踏み出せない私をどうしたの?って笑う。
「これ」
そっと差し出す。
あの時貸してくれたハンカチ。
洗ってポケットにしまって返せないままでいた。
「怪我はもう大丈夫?」
「うん」
「あのまま帰っちゃったから気になってたんだ。部活もずっと休んでたし。調子、悪かったの?」
「ううん。大丈夫」
首を振る。
「それならよかった」
佐倉くんが笑って、またキャンバスに向かう。
止まっていた筆が動き出す。
表情が変わる瞬間。
真剣な横顔にコメカミの辺りがきゅうってなる。


『諦め方、わかんないや────』

凪ちゃんのコトバを思い出した。
可能性がなくても蒼吾くんを好きでいる事を選んだ凪ちゃん。
私にはできないよ。
凪ちゃんを想う佐倉くんを見てるのは辛い。
そう思うのに。
私、ずるいんだ。
佐倉くんをなくしたくないって思う。
100が駄目なら0だなんてそんなの嫌だよ。
そこまでまだ、気持ちの整理がつかない。
振り向いてくれなくてもいいから、側にいたいって思うのは私の我が侭なのかな。


「それ、持って帰るつもり?」
佐倉くんがキャンバスから顔を上げた。
「家でやろうと思って。なんか間に合いそうにないから」
まだ真っ白のキャンバス。
絵を描くことよりも、佐倉くんの横顔ばかり見てた。
「手伝おうか?」
佐倉くんの手がキャンパスに触れた。
「ううん、大丈夫。絵、続けて」
耳に掛けた髪が俯いた拍子にふわりと落ちた。
表情を誤魔化してくれる前髪は、やっぱり私には必要なんだ。

「そういえば…。蒼吾、補習受かったんだって?」
「…うん。聞いたんだ?」
「あの日、美術室に来てたから」
「よかったな」
「うん」
私は頷いた。
「じゃ、私行くね」
「絵、頑張って。楽しみにしてるから」
そう言って笑いかけてくれる佐倉くんに精一杯の笑顔を返す。
私、ちゃんと笑えたよね?


カタリ、と。
準備室の扉を閉めた。
生徒達がごった返す美術室は、ざわめきが止まらない。
踏み出したら夢から覚めたような感覚に飲み込まれそうになった。
佐倉くんのいる空間が嘘みたいで、今まで一緒に過ごしてきた時間が夢のような気がする。

佐倉くんの側は、春みたいに温かい陽だまりのようだった。
大好きだった場所。
隣にいるだけで幸せだったあの時間は、もう戻ってこない。
過ぎ行く人の流れをぼんやりと見送った。
窓から見上げた冬の空は眩暈がしそうなくらい青くて。
涙が出た────。




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