http://miimama.jugem.jp/

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

- - -
魔法のコトバ*  Season7 キミに届け-4-
*******************************************

魔法のコトバ* Season7  キミに届け-4-

*******************************************

「ホームセンターでアクリルボードとガムテを買って、手芸店でサテン生地。その後、クラスの人数分のジュースを買って…って。
なんだこりゃ!」
渡されたメモ用紙を手にしながら蒼吾くんが声を荒げた。
自転車を漕ぎながらメモ用紙とにらめっこ。
「あいつら人をこき使いやがって。人数分のジュースをどうやって持って帰れっつーんだよ。ったく…」
呆れたように呟きながら、メモをポケットにしまった。
借り出された私は自転車の後ろ。
サドルに手をやってちょこんと座ってる。
最近、蒼吾くんの自転車に乗せてもらってばかりだな。
そんな事を考えながら大きな背中をぼんやりと見上げた。

「寝てねーの?」
「…え?」
びっくりした。
見上げた背中が急にしゃべったから。
「顔色。あんまりよくねーから」
顔色?
思わず頬に手を当てる。
そういえば最近、肌の調子があまりよくない。
原因はたぶん睡眠不足。
「最近、遅くまで起きてるから…」
「なんで?」
「絵、描いてるの。明後日までに仕上げなきゃいけなくって」

あの日持って帰った真っ白なキャンバスは、パパの書斎に置かれていて。
その部屋は毎晩遅くまで、電気が消える事がない。
やっと見つけた描きたい題材に没頭してしまって、いつも遅くまで描いてる。
こんなふうに何かに打ち込むのは初めて。
何かに没頭してると他の事を考えなくてすむから。
嫌な事も忘れられる。
描きたい想いを全部キャンパスにぶつけるんだ。
今の私にできる事。
絵を描いてる時は、佐倉くんの事も忘れられる。


「間に合いそうか?」
「間に合わせなきゃ」
苦笑する。
「あまり無理すんなよ」
「うん。よかったら学園祭の時に見に来て?」
へたくそだけど。
「あ〜。俺、絵とかあんまりわかんねーけど…見に行くよ」
短くそう言って笑ってくれた。



駅への角を曲がると見慣れた看板が目に入った。
赤と黄色のミスドの看板。
トクンと胸が小さく跳ねた。
よく佐倉くんと寄ったお店。
「そういえばさ。あの時のドーナツ、食った?」
「…あ…」
「食ってないだろ?」
鋭いんだ。
「…ごめん」
申し訳なくて、思わず下を向いた。
蒼吾君が部活の前にわざわざ買ってきてくれたドーナツ。
ダイニングテーブルの上に置いたまま、それっきり。
たぶんママが食べたのかな。
「食って帰る?」
そう言って自転車が止まった。
ゴソゴソとジャージを弄って、ポケットからお財布を取り出した。
真っ赤なふわふわのエルモのお財布。
「それ…」
クラス費でしょ?
買い出し用にって預かったやつ。
「ちょっと拝借するだけ。後で返しとけばいいだろ?
それにドーナツのひとつやふたつ、わかんねーって。買出しのお駄賃。買ってって外で食おうぜ?」
振り返って嬉しそうに笑った。
こういう時の蒼吾くんはすごく楽しそうに笑う。
いたずらっぽい笑顔は、小学生の頃からちっとも変わらないの。
「園田は何がいい?」
返事も聞かずに自転車を止める。
もう買う気満々。
「…じゃあ、ポンデショコラ」
こうなった蒼吾くんは止まらない。
付き合うしかないの。
「ポンデショコラだな。了解。自転車見てて」
そう言って私に自転車を託すとお店の中に消えた。
トレイにいくつかチョイスしながら並ぶ後姿。
蒼吾くん、いくつ食べる気なのかな。
大きな背中を小さく丸めて選んでる真剣な表情が、なんだかおかしくって笑っちゃう。
そういえば凪ちゃんが言ってたっけ。
蒼吾くん、甘いものが好きだって。


「じゃ、行くか」
買ってきたドーナツの袋を籠にほり込んで、軽やかに自転車にまたがった。
「行くって…」
どこに?
「河川敷で食おうぜ」
そう言って、軽やかに自転車をこぎだした。





NEXT→
魔法のコトバ*  Season7 comments(0) -
スポンサーサイト
- - -
Comment








<< NEW | TOP | OLD>>