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魔法のコトバ*  Season7 キミに届け-7-
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魔法のコトバ* Season7  キミに届け-7-

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───風が、動いた気がした。


そう感じた瞬間。
「…に、やってんだよ…っ!!」
すぐ後ろにいたはずの蒼吾くんが、教室に飛び込んで。
気がついた時には、佐倉くんの胸ぐらを掴んでた。
足元がぐらりと歪んだ気がして、震える足で2、3歩後ずさったら、冷たい壁が背に触れた。
それに体を預けたら、もう動けなくなってしまった。
呆然とその場に立ち尽くしてしまう。
悲しみなのか、嫉妬なのか、苛立ちなのか。
訳の分からない感情が胸の奥から押しあがってきて、喉が熱い───。

「───蒼吾…っ」

弾かれたように振り返った凪ちゃんの横顔は、涙で濡れていた。
なんで…って。唇が、小さく震える。
「今、お前、何したのかわかってんのかっ!?」
掴んだ胸元に力を込めて顔を寄せた。
その表情は見えないけれど、背中から蒼吾くんの怒りが伝わってくる。
苛立ちを握りしめるかのように、体の横に降ろされた蒼吾くんの拳が、小刻みに震える。
胸ぐらをつかまれたままに、佐倉くんが顔を逸らした。
いつもの凛とした横顔からは想像できないような、感情を押し殺した表情。
冷めた声で、小さく呟いた。


「キス、したかったからしたんだ───」



ドクリ、と。
それこそ痛いくらいに、心臓が激しく突き上げる。
このまま発作でも起こして倒れちゃうんじゃないかって心配になるぐらい、波打つ鼓動が心拍数を上げて、嫌な汗が体を伝った。
胸の奥に無理矢理しまい込んでいた気持ちが、容赦なく駆け上がってきて、私の心を押しつぶす。
止め処なく、どうしようもなく溢れてくる涙に。
思わず嗚咽が零れそうになって、口元を押さえた。
喉もとが、目頭が、熱くて仕方がない。

そんな言葉、佐倉くんの口から聞きたくなかった……。


「ふざけんなっ!!」
次の瞬間。
もの凄い音が耳を掠めて、椅子や机が転がった。
それと同時に横倒れになった佐倉くんの体に、蒼吾くんが馬乗りになって殴りかかった。
「…蒼吾っ!やめてっ!!」
駆け寄った凪ちゃんが、振り上げた蒼吾くんの腕を掴んだけれど。
それでも蒼吾くんの勢いは止まらなくて、凪ちゃんの細い体が飛ばされそうだった。

「蒼吾っ!!やめてってば!!」
「離せ、よッ!」
「私は、大丈夫だから…っ!」
「俺が大丈夫じゃねーんだよっ。こいつ、一回殴とかねーと気がすまねーんだっ」
「そんなことしてたら、また、試合出れなくなっちゃうよっ!!あんな思いをするのはもういやだよ…っ!!」
「…んなの、今はどーでもいいだろっ!」
「蒼吾──っ!!」

凪ちゃんの細い体が吹っ飛んだ。


止めたほうがいいのは分かってる。
だけど、体が動かない。
掛ける言葉が、みつからない。


「──立てよ?」

冷ややかな目つきで、佐倉君を見下ろした。
それを一瞥すると、ゆっくりと佐倉君が体を起す。
ゆらりと細い体が揺れた。
切れた口元を手の甲でぬぐうと。


「───何で、蒼吾がそんなに怒るんだよ?」


冷めた声で言った。


「何?」
「日下部が好きだから、じゃないよな?」
ハッって。吐き出すように笑った。
乾いたような馬鹿にしたような笑み。
佐倉くんってこんな笑い方、する人だっけ?


「ましろちゃん、だろ。彼女が俺の事好きだから…──」


頭が、真っ白になった。
どう…して…?
私の気持ち、気付いてたの…?


「だから。彼女を傷つけた俺が気に入らないんだろ?」


「な、に…それ。
佐倉、どういうこと?傷つけたって…何?ましろと、何かあったの…?」
凪ちゃんがふたりの顔を交互に見比べる。
顔が蒼白。
チッって舌打ちする音が、耳を掠めた。
心臓が嫌な音を立てたまま、治まってくれない。

「昔から気にいらねーんだよ。そうやって何もかもわかった風な顔しやがって!ムカつくんだよ!!」
ガンッ。
って、足で椅子を蹴り上げる。
佐倉くんの胸ぐらを掴み上げた手はそのまんま。
「そういう蒼吾はどうなんだよ?気持ちも伝えられないやつが、偉そうに言える立場じゃないだろっ!?」
つかまれた胸ぐらを勢いよく振りほどいて、蒼吾くんの頬を殴り飛ばした。
ものすごい音がして、机と一緒に蒼吾くんがよろけた。
倒れそうになるのをぐっと踏み留まり、堪えた。
口元をぬぐうと、ギロリと佐倉くんを睨みつけた。
スイッチが入った瞬間が見えた。
胸の奥がどうしようもなく悲鳴を上げて、苦しくてしょうがない。


「───やめてっ!!」


気がついたら叫んでた。
こんな大きな声、初めて出したと思う。


「もう、やめて…よ…っ」


涙が止まらない。
私達、どうしてこんなことになってるんだろう。



「ましろ…いつからそこに───」


振り返った凪ちゃんの顔が、大きく歪んだ。
戸惑いと、罪悪感に押しつぶされてしまいそうな、ひどい顔だった。
凪ちゃんは、悪くないよ。
そんな事は分かりきっているのに、その言葉を紡ぐことは、今の私には容易くなかった。




「もう、こんなの、やだよ…っ」







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