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魔法のコトバ*  Season8 初恋〜サイド凪-1-


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魔法のコトバ* Season8  初恋〜サイド凪-1-

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風が、走った気がした───。



「───園田っ!!」
って。
気がついたら蒼吾が走りだしていて。
その声に一瞬、躊躇してしまった私は、追いかけるタイミングを失った。
なりふりなんて構わず、ましろを追いかける後姿。
それは私の存在なんてちっとも目に入らなくて、決して振り返らない。
いつも真っ直ぐで、その気持ちに曇りがない。
走り出したら止まらない、そんな蒼吾の性格を私はよく知ってる。
ましろを追いかけるその背中は。
私がいつも見ていた背中────。


「日下部!」
急に後ろから腕がすくわれた。
心配そうな佐倉と視線が絡まって、一瞬で、現実に引き戻される。
「平気?」
覗き込む佐倉の頬や目尻が赤くなってる。
蒼吾に殴られた跡。
切れた口元からじわりと血が滲む。
ドクリ、と。痛いくらいに心臓が突き上げた。
「…日下部…?」
私の名前を呟く唇がやけにリアルに見えて、乱暴に視線を外した。
その唇で私にキスをした───。
目が合わせらんない。


「どこに行くつもり?」
顔を逸らして踵を返した体をそのまま捕まえられた。
「だって…追いかけなきゃ…っ」
「蒼吾が行った。日下部が行く必要ない」
「でも……っ。
私が…ましろを傷つけた…」
「……じゃあ、聞くけど。ましろちゃんに、なんて言うつもりだよ? 無理矢理キスされただけだから、気にしないでとでも言うのか? 理由はどうあれ、事実は変えられないんだよ…っ」
肩を掴んだ手に力が入る。






「ましろちゃんを追いかけた───。
それが蒼吾の答えだ」


「…そんなのっ、そんなのとっくに知ってるっ。佐倉に言われなくても、わかってる…っ」
腕を掴んだ手を乱暴に振りほどいて、キッと佐倉を睨みつけた。
「…ましろと、何があったの…?」
佐倉は、ましろの気持ちに気付いてた。
いつから?
「何も」
静かに首を横に振る。
「…じゃあ、どうして…!」
ましろの様子が変だった。
ある日を境に、美術室に行かなくなった。
あんなに毎日、放課後を楽しみにしていたのに。
「部活、行かないの?」って、一度だけ聞いてみたら。
寂しそうに笑ったましろ。
明らかに様子が変だった。いつもと違ってた。
本当は、私。それに気付いてた。
でも何も話してくれないましろから、それを聞くことが出来なくて。
もしかして蒼吾と、って想像したら、聞く勇気がなくて。
私、知ってて知らんぷりをしたんだ。
親友なのに、サイテー。


「…ましろちゃんは俺が描き溜めた絵を見つけて、俺が誰を好きなのか気付いだんだ…。日下部を、好きだって───」


ドクリ、と。
心臓が嫌な音を立てて、突き上げた。
私を見つめる真剣な眼差しに、いやでも心拍数が跳ね上がる。
「だからキスした」
「…やめて…ッ!」
私は悲鳴を上げて耳を塞いだ。
そんな話、聞きたくない。
私を好きだなんて、そんな嘘みたいな話───。

もう答えは出てる。
佐倉の気持ちには答えられない。

蒼吾がましろを好き───そんなのとっくの前から知ってる。
それでも好きだった。諦められなかった。
私だって蒼吾を見てきた。
想ってきた。
ましろの事を見ているアイツをずっと───。



グッと唇を噛み締めて下を向く。
私達、何やってんの?
お互い好きな人を傷つけて、友達を傷つけて。
もうこんな思いは嫌だよ。
目の奥が、ジンと熱くなった。
胸が痛くて熱い想いが込み上げる。
こんなところで、泣くもんか。
私はきゅっと唇を結んで手を握りしめた。


「蒼吾なんてやめなよ。日下部のこと、ちっとも見てない」


フッって。
俯いたつま先に影が出来た。
佐倉が私の体を包み込むように、背後から腕を回す。
髪に頬が触れた。

そんなの知ってる。
いつだってあいつはましろしか見てないから。


「俺にしなよ。俺、日下部の事が好きだ───」


耳元で囁くように告げられた後、抱きしめた腕がぎゅっと強くなった。
強く強く、私を抱きしめる。
腕の強さとは対照的に零れた告白の言葉は、泣きそうなほど切なかった。
いつから?
いつから好きでいてくれたの…?
私は佐倉に、同じぐらいに辛い思いをさせてきたんだ。
気持ちが届かない辛さはよく知っているから。
いつも笑っていて、余裕があって、完璧で…。
そう思っていたのに───。






だけど。
この人は違う。
蒼吾じゃない。

ましろが好きな、佐倉────。










「…離して…っ!!」


思い切り佐倉の腕を振り払った。
蒼吾とは違う男の人。

怖い。


「───日下部っ!」


後ろから追いかけてくる声を振り払って、会議室を飛び出した。
ましろを、蒼吾を追いかけて。



でもそれは。
ふたりを見つけた瞬間。
今まで蒼吾を想ってきた気持ちが音を立てて崩れた気がした。




「まし…ろ────」




言葉がそれ以上、続かなかった。
何かが足元から音を立てて壊れていくような感覚。
ずっと小さい頃から私を支えてきた基盤のような何か。
気持ちのカケラ。
隣にいるのが当たり前だったあの頃には、もう戻れない気がした。





だって。
大好きだった蒼吾の腕の中に、ましろがいたんだ────。





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魔法のコトバ*  Season8 comments(2) -
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Comment








こんばんわ。新Seasonスタートですね!のっけから、ぅわ〜っっ(泣)!!って感じですね〜。男性軍!!余裕が無いぞーーー(爆)。女性軍をかきまわしてどうするっっ!!...って言いたいけど、無理だろーなー、この時期の恋愛って走り出したら止まらないって感じですもんね〜。後で気が付けばあちゃーってほうが多かったりして(爆爆)...ああ、なつかしや...
from. 沙愛 | 2007/02/20 22:20 |
●○●沙愛さんへ●○●
コメントに爆笑でした(笑)
男性陣、余裕がないですか〜!なるほど(笑)
この時期の恋愛って好きって気持ちだけで突っ走っちゃったりするんですよね。若さってすごい!
沙愛さんも懐かしむお年頃ですか(笑)?私もそんな若さが羨ましいです〜。
ここからしばらく凪サイドのお話です。いいところで切り替わっちゃって、読者の方の反応がちょっぴり心配だったのですが。温かいお言葉をいただけてちょっぴりホッとしました。ありがとうございます〜。
from. りくそらた | 2007/02/20 23:52 |
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