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魔法のコトバ*  Season8 初恋〜サイド凪-3-
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魔法のコトバ* Season8  初恋〜サイド凪-3-

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「なんだよ、それ」

聞き覚えのある声が教室に響いた。
声変わりが始まったばかりのちょっとハスキーな声。
蒼吾。
登校したてで荷物の整理をしていた私の手が止まった。
「お前、園田のことが好きなんだろ?」
笑い声の混じった声。
クラスのリーダー格の男子、安部。
馬鹿にしたような笑いの混じった声がすごく勘にさわる。
「やたらと仲いいじゃん、おまえら。授業中に仲良く外を見たり、ノートの交換とかやってるしさ」
「宿題もいつも見せてもらってるし」
「仲良しだよな〜。ラブラブってやつ〜!?」
男子の口笛交じりのはやし立てる声が聞こえてきた。
わざとに教室中に聞こえるような大きな声。
もてない男の決まり台詞。
男らしくないしかっこ悪い。
ほんと、うちのクラスの男子って子どもっぽくっていやになる。
私はため息交じりで、他人事のようにその光景を見てた。

「たまたま隣の席だったから、見せてもらってただけだろ。好きとかそんなのカンケーねぇよ」
「またまたー。照れちゃって〜」
「園田と離れたくないから、席替えしたくない発言したんだろ。あ〜お熱いね〜〜!!」
「……なんだよ、それ」
ムッとした不機嫌な声。
あ。
やばそう。
蒼吾は昔から血の気が多くて喧嘩っ早い。
人に嫌われるタイプじゃないから表立っての喧嘩は少ないけど、売られた喧嘩は買うタイプ。
だから昔から生傷耐えないんだ。
ため息混じりに立ち上がった。
喧嘩、始まっちゃったら止めなきゃね。
私、一応学級委員だし。
いつも蒼吾の喧嘩は、こうやって私が処理させられてきた。
それは幼稚園の頃から変わらない。
もう一度大きくため息をついて、私が立ち上がったそのときだった。


「それは違うよ!」
甲高い女の子の声が響いた。
この声は、水野さん。
嫌な子が口を挟んできたな、ってちょっぴり胸騒ぎがした。
案の定。
馬鹿で単純な蒼吾は、水野さんの誘導尋問に引っかかっちゃって。
「オレはべつに、園田のことなんか何とも思ってねーよ。ただ隣だと、いろいろと都合がいいから…」
なんて言っちゃってる。
ほんと馬鹿。
なんで嘘つくの?
堂々としてればいいじゃん、園田さんが好きだって。
蒼吾の気持ちなんて傍から見れば一目瞭然で、気付いていないのは園田さん本人ぐらいだよ。
ちらりと横の席を覗いてみたけど、珍しく彼女は来ていなかった。


「…園田って、なんか違うんだよ。普通っぽくないっていうか、髪だって目だって色が薄くて外人みたいだし、くるくるしてるし。」
「ワカメみたいな髪だもんね?」
また誘導。
「あーー。…そんな感じ」
蒼吾が頷いた。
ほんと馬鹿だ。
クスクスとクラスから笑い声が上がった。
「それにさ、色が白くてほっぺたとかぽっちゃりしてて、マシュマロみたいだし……」
消え入るような声。
ほんとらしくないよ。
てゆーか、マシュマロって。
蒼吾の大好物じゃん。
綿菓子とかマシュマロとか、フワフワした甘いお菓子が大好きなくせに。
ほんと素直じゃない。



「お…おいっ、蒼吾。あれ…」

隣にいた男子が、蒼吾のシャツを引っ張った。
そいつが指差した先。
教室の前の扉。
目に涙をいっぱい溜めてたたずむ女の子。
教室がシンって。
波打ったように静かになった。












「……その、だ………」



蒼吾の顔がギクリとこわばった。
教室に入れずに扉の前でつっ立ってる園田さん。
みんなの視線を浴びて、その顔がくしゅって泣きそうになる。
さっきの話、聞いてたんだ。
最悪のタイミング。

あの時の蒼吾の顔。
一生忘れないと思う。
中傷された園田さんよりもひどい泣きそうな顔。
好きな子を傷つけた罪悪感と後悔に満ちた顔。

チャイムが鳴って。
絶妙なタイミングで現れた先生の声も耳に入ってなくて。
ふたりはその場に突っ立ったまま時間が止まったかのように固まってた。
「それともお前ら、何か?そんなに席が離れるのがいやか?」
って笑う無神経な先生の声も。
きっとふたりの耳には届いてなかったと思う。
「早く席に着け。1時間目が始まる前にやってしまうぞ、席替え」
そう言われて。
みんなの痛いぐらいな視線を浴びながら、よろよろと自分の席に座った園田さん。
彼女は蒼吾の隣で下を向いたまま、顔を上げる事はなかった。




隣同士だった蒼吾と園田さんの距離は。
新しい席替えで大きく離れた。
校庭側の窓際と、廊下側の席。
正反対の遠い距離。
昨日までの机を並べていたふたりの距離が嘘のように。
この日の事件で全てが変わってしまった。





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