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魔法のコトバ*  Season8 初恋〜サイド凪-6-
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魔法のコトバ* Season8  初恋〜サイド凪-6-

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意識を失った園田さんは顔が真っ青で、呼びかけてもピクリとも動かなかった。
とにかく保健室に連れて行かなくちゃ。
「誰か、先生呼んできて」
そう言って顔を上げた時。

「オレが連れてく」

横から伸びてきた腕に、私は弾かれたように顔を上げた。


「────蒼吾」

連れてくって、どうする気?

「オレが、おぶってくから」
園田さんの横に腰を降ろした蒼吾は、ゆっくりと彼女の体を引き上げた。
意識のない園田さんの体はぐったりと力がない。
病院に連れて行ったほうがいいんじゃないのかなって、心配になっちゃうほど。
「無理だよ」
意識のない人間は重いんだよ?
「いいから。手伝えよ」
「…う、うん…」
園田さんの体を支えながら蒼吾の背中へと背負わす。
クラスでも小さめな園田さん。
細くて軽い。
でも、蒼吾だって決して大きい方じゃない。
まだまだ成長過程の私達の男女の体格差なんてないに等しいのに、それでも蒼吾は聞こうとしなかった。
馬鹿だよね。
自分が傷つけた責任の重さをちゃんと背負おうとしてる。
どこまでもバカみたいに真っ直ぐなんだ。


「…んだよ、蒼吾…。お前、園田の事、庇うのか?」
安部が口を開いた。
「やっぱり園田の事、好きなんじゃねーか!」
ハッって鼻を鳴らして、馬鹿にしたように笑う。
こんな時に何言ってんの?
もとはといえば、あんたのせいでしょ?
私はキッと安部を睨みつけて、拳を握りしめた。
女の子だからなんて関係ない。
一発、引っぱたいてやろうかって立ち上がろうとした。
その瞬間。







「悪いかよ?」


教室に響いた低い声に、踏み出しかけた足が躊躇した。





「園田が好きで、悪いのかよ?」


蒼吾が強く、はっきりと告げた言葉に。
教室がシン…って静まり返った。
もう何を言われても揺るがない、真剣な眼差しで安部を睨みつける。
安部は。
一瞬、ぐっとコトバを詰まらせて。
その後、何も言わなくなった。
ううん。
何も言えなくなったんだ。






「行くぞ」

「…うん…」


もう。
クラスで園田さんの事を悪く言うやつはいなくなった。
あんな園田さんを見たら。
蒼吾を見たら。
何も言えない。
言えるはずないよ。
もちろん安部を責めることもできない。
だって。
みんな同罪だもん。
中心になって彼女を傷つけた安部達も。
ただ見てるだけで何もしようとしなかった傍観者の私達も。
もちろん蒼吾も。
みんな一緒。
中傷されて毎日泣いていた園田さんよりも。
もっと弱虫なのは私達。

強くならなきゃ。











保健室に着くと、あいにく保健医の先生は外出中だった。
とりあえずベッドに園田さんを降ろして、軽く布団をかける。
彼女の柔らかそうな髪がベッドに広がった。
蒼吾は。
3階から1階までの距離を。
重いとか、疲れたとか一切弱音を吐かずに。
一度だって休んだり降ろしたりもせずに、園田さんを背負って歩いた。
まるで大事な宝物を抱えるみたいにして。


「あと、頼むわ」
園田さんが無事ベッドに横になったのを確認すると、蒼吾が保健室を出ようとした。
「え、なんで?」
起きた時に近くにいなくていいの?
だって謝る絶好のチャンスだよ。
「俺、先生に話してくるから。今までのこと」
「…そっか」
さっきの安部の表情を見てたら、もう園田さんにちょっかいを出してくるような事はないだろうけど。
念には念を。
「でもそれなら私の方が…」
学級委員だし。
だって蒼吾が話したら、一緒に怒られちゃうよ。
その辺はうまく言ってあげるから。
だから。
「いいよ。俺も同罪だし。それに…目が覚めた時、俺がいたらまずいだろ?…キス、しちゃったから」
どくん。
心臓が痛んだ。
さっきの騒動ですっかり忘れてたのに。
「…なんで、…したの?」
小さく声が震える。
別に蒼吾がしなくてもよかったんじゃないの?
他に庇う方法なんていくらでもあったのに…。

「…俺、阿部たちが計画してたの知ってたんだ。ちょうどお前らと別でビデオ見せられた時」
あ。
性教育のビデオを見た時だ。
確かにあれぐらいの時期から阿部たちの様子が変だった。
やけにニヤニヤしてて、何か企んでるような笑い。
厭らしい笑みっていうか、気持ちが悪い感じ。

「ビデオ見た後、キスしたことあるか?って話になって、それがどんどんエスカレートしてって。あいつらの仲間内で試してみようぜって話になってた。そのターゲットが園田。
あいつなら何も言えないし、可愛いからキスする相手として不足もない。お前の名前もあがってたけど、やばいだろ?返り討ちに合いそうだし」
失礼だよ、それ。
私のこと、何だと思ってるのよ蒼吾。
ちょっとムッとしたけど、あえて言い返さなかった。
間違いではない。
たぶんやってる。
「まさか冗談だろうって、安易に考えててさ。ほんとにやるなんて思ってなかったから」
悔しそうに唇を噛み締める。
「俺、止められなかった。計画してたの知ってたのに。あいつが安部に、って思ったら、もう頭で考えるよりも先に体が動いてて…。
サイテーだよな、俺。園田の気持ち、完全に無視してた。だから俺も先生に怒られて当然」
「…蒼吾…」
痛いぐらいの園田さんへの気持ち。
ほんと馬鹿だよ、蒼吾は。
「俺、行ってくるからあいつについてってやって」
「わかった」
静かに頷いて背を向けた。
そうでもしないと蒼吾が園田さんを想う真っ直ぐな気持ちに、自分の気持ちが負けてしまいそうだったから。
蒼吾の気持ちが辛くて、痛くて、どうしようもない。
溢れそうな涙を必死でこらえて、蒼吾に背を向けた。
早く行ってよ。
でないと私、限界だよ。
泣くもんか、って。
ぎゅっと唇を噛み締めた私に。
蒼吾が保健室の扉を出る寸前。
振り返って私を呼んだんだ。



「凪」────って。


心臓が止まるかと思った。
だって、名前。
凪って呼ばれたのなんて久しぶりで。
昔は『蒼くん』『凪ちゃん』なんて呼び合ってたのが、いつの間にかあいつだけ私の事を名前で呼ばなくなった。
蒼吾は。
園田さんの事を口にしたあの日から、私の事を凪って呼ばなくなったから。
胸がどうしようもないくらいきゅうってなった。

「なに?」
平然を装って振り返ったら、蒼吾がこっちを見て笑ってた。
何か吹っ切れたようなちょっと清々しい笑顔。
「ありがとな、止めに入ってくれて。あれ、絶妙のタイミングだった」
「あれは別に……」
蒼吾に頼まれたからじゃないよ。
自分の為。
「やっぱお前、俺のサイコーの友達だよなっ」
そう言って顔をくしゃくしゃにして笑うんだ。

そんな顔して笑われたら、私。
もう友達でしかいられないじゃん。
涙が溢れそうになるのをグッと我慢して。
「でしょ?」
って、笑って見せた。



この時から私は。
蒼吾に辛い顔とか泣き顔とか。
一切、見せなくなった。
見せられなくなったんだ。






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魔法のコトバ*  Season8 comments(4) -
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Comment








どうも初めましてッ!碧と申します。。
実は結構前からRS Novelsサマに足を運ばせてもらってました。
魔法の言葉、ほんわかした雰囲気で大好きです!
これからも頑張って下さい。
from. 碧 | 2007/02/25 14:57 |
ぅあ"ーーーっっ!蒼吾!!...あんたって奴は、まったく(はぁー)。
頭叩いて良い?おでこ"ベシッ"ってシバイても良い!?
くぅおーのぉー、おばか!!

from. 沙愛 | 2007/02/25 17:20 |
●○●碧さんへ●○●
はじめましていらっしゃいませ〜。コメントありがとうございます!
随分前から足を運んでくださってるようで・・・嬉しいです!ありがとうございます。
お話、ほんわかしてますか(笑)初恋ならではのほんわかしていて、切なくて甘酸っぱいようなそんなお話を目指して書いています。そう感じてくださると嬉しいです。ぜひまた遊びにいらしてくださいね♪
from. りくそらた | 2007/02/26 10:08 |
●○●沙愛さんへ●○●
ははは(笑)シバイてやってください(笑)
『キングオブ鈍感』なのはましろだと思って書いてましたが、蒼吾も同じぐらいですね〜(笑)負けてません。
from. りくそらた | 2007/02/26 10:12 |
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