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魔法のコトバ*  Season8 初恋〜サイド凪-7-
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魔法のコトバ* Season8  初恋〜サイド凪-7-

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あの後、溢れる涙をぐっと抑えて。
私は蒼吾への気持ちを心の奥深く閉じ込めた。
彼女と友達をやるのには、そうでないとやってられないと思ったから。
園田さんはあの教室での出来事を、知らない。
クラスで蒼吾の気持ちを知らないのは、ましろだけ。




あの事件以来。
ましろに友達宣言をして、私達は結構うまくやってる。
ましろは見た目の通りのんびりおっとりした性格で、優しくて頑張り屋さん。
マイペースで意気地のない性格に、たまにイラっとさせられることもあるけど。
持ち前の愛嬌と可愛らしさで困ったように笑われると、つい気持ちが和んで許してしまう。
ぽやぽやしてて女の子らしくて。
女の子の私から見ても守ってあげたいなって思わせるようなタイプの女の子。
裏表がなくて。
名前に負けないくらい、真っ白で汚れてない。
彼女の見えてる表が全て。
ましろのそんなところに、蒼吾は惹かれたのかもしれない。

自分のために友達になったましろは。
気がつけば、親友になってた。
見た目も性格も、好きなものも。
何もかもが正反対な私達だったけど。
話してみたらすごく気が合って。
ましろと過ごす時間の心地よさに、いつの間にか惹かれていった。


「ずっと友達になりたいって思ってたんだ」

あの日、ましろに言った言葉に嘘はなかったけれど。
蒼吾のことがなかったら、こんなに仲良くはなってなかったのかもしれない。
そういう意味では感謝しなきゃね。
でも。
時々、まだ胸が痛む。
遠くからましろを見つめる蒼吾。
隣にいる私なんて通り越して、視界にも入らないくらいの真っ直ぐな視線。
それに気付かないましろの鈍感さは、ある意味すごいと思う。

あの事件以来。
ましろと蒼吾が話すことはなかった。
もちろん私も含めてクラスメイト全員。
蒼吾の気持ちをましろに告げる事はない。
気持ちを伝えるのは、私達じゃない。
蒼吾本人だって思うから。
だから誰も何も言わなかった。

でも。
ふたりの距離は、あの日のまま。
私は。
あの日、蒼吾がましろの家に行った事件を。
ましろが蒼吾と二度と話さないって決めた想いを、知らなかった。













新学期。
9月になってもうだるような暑さは変わらなくて。
今年の夏は記録的な猛暑を記録したというニュースが流れた。
小学生の私達にはそんなことはどうでもよくって。
とにかく暑いのを何とかしたい私は、膝までまくりあげたデニムのスカートをパタパタと扇いだ。
風が入って気持ちがいい。
「凪ちゃん、それ中見えちゃいそうだよ…」
ましろが小さく耳打ちした。
「だって、女子しかいないもん。大丈夫だよ」
5時間目の体育の授業の後。
男子よりもひと足先に運動会の練習を終えた私達は、教室で男子の帰りを待ちながら下敷きやノートを扇いで涼を取っていた。
だって暑いんだもん。
特に炎天下で行われた体育の授業の後。
こうでもしないとやってらんない。
先週まであったプールの授業。
冷たくて気持ちがよかったプールの水が恋しい。

「でも…」
ましろが恥ずかしそうに顔を赤らめた。
当の本人は涼しい顔をしてる。
暑くないはずなんてないのに。
きっとましろは灼熱の砂漠に投げ出されたって。
こんなはしたない事しないんだろうな。
ハンカチで額に滲む汗を軽く拭きながらぼんやりと窓の外を眺めてるましろ。
水色のレースキャミに合わせた真っ白なワンピースが風にフワフワ揺れる。
ほんと、女の子女の子してるんだ。
羨ましい。
「日下部さん」
廊下から呼ばれた。
「先生が用があるから来てくれって」
「職員室?」
「ううん。まだ男子が練習してたから、グラウンドの方にいるんじゃないかな」
「わかった、ありがとう。行ってみるね」
私は暑さの引かない気だるい体を起して立ち上がった。




校庭に行くと、まだ男子が運動会の練習をしてた。
プログラムに組み込まれている競技『マスゲーム』。
うちの桜塚小学校で代々伝統となって引き継がれてる組体操。
4年生・5年生・6年生の男子で行われる組体操が毎年、運動会のラストを飾る。
これが結構、ダイナミックでカッコイイんだ。
日頃情けないクラスの男子が2割り増しでかっこよく見えちゃう。

私を呼び出した先生は、運動場のど真ん中。
なかなか出来ないピラミッドの指導に当たってる。
呼び出しておいてこっちを見ようともしない。
この調子だと帰りのHRまで遅くなっちゃうよ。
女子だけでも先にさよならして帰りなさいとか言うのかな。
私はまだまだ暑い9月の日差しに目を細めながら、校舎の影に入った。
それだけでも全然気温が違う。
校舎の壁に背中を預けるとひんやり冷たくて、ちょっと気持ちが和んだ。
ぼんやりとグラウンドを眺めながら、ため息を零した。


ゆらゆらと浮かび上がる夏の陽炎の向こう。
ピラミッドの天辺。
背筋を伸ばして立ち上がる蒼吾の姿。
あいつ。
体がちっちゃいからピラミッドの天辺なんだ。
身長、伸びるのかな。
この前、身長のことでからかったら真っ赤になって怒ってた。
成長期過程なんだよっ!って。
気にしてるんだ。
牛乳嫌いだから伸びないんだよ。
こんなに人がいても蒼吾だけは見つけられる。
いつだって気がついたら目で追ってる。
嫌になっちゃう。


それにしても、暑い。
やっぱり教室に戻って出直してこようかな。
私は暑さに耐え切れず、またスカートを少し上げてパタパタと扇いだ。
「それ。中が見えそうだけど大丈夫?」
突然、空から声がした。
ぎくり、と身を縮こまらせて私は恐る恐る声のした方へ顔を上げた。
校舎横の外階段。
一階と二階を挟む踊場のところ。
手すりに体を預けるようにして見下ろす顔。
見たことのない男の子。
薄い桜色のラルフローレンのポロシャツに、膝丈の黒のカーゴパンツ。
ちょっぴり長めのサラリとした髪は夏なのにほとんど汗で濡れてなくて。
涼しそうな顔で笑う。
男の子のくせに色が白くてきれいな肌。
誰、だっけ?


「おー、日下部!悪いな」
ようやく授業を終えた担任の茂野先生が、汗だくの顔を首から下げたタオルでぬぐいながらこっちにやってきた。
クラスの男子達もあちーとか言いながら、こっちにやってくる。
「なんですか、先生」
暑いから早くしてほしいんですけど。
私は流れる汗をハンドタオルでそっとぬぐった。
「お、一緒だったのか。それならちょうどよかった」
そう言って先生が見上げた先。
さっきのきれいな顔の男の子と目が合った。
にっこりと笑う爽やかな顔。
なんか調子が狂う。
「放課後、そいつを校内案内してやってくれないか?」
「え?」
「2学期からちょっと遅れたけどな、転入生。明日から4年1組のクラスメイトになるんだ」
そう言って振り返った先。
「俺、佐倉隼人。よろしくね、日下部さん」
涼しそうに笑った彼。



それが佐倉と私の、最初の出会いだったんだ。







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