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魔法のコトバ*  Season8 初恋〜サイド凪-8-
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魔法のコトバ* Season8  初恋〜サイド凪-8-

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佐倉は。
転入早々、秋の風を舞い込んだ。
暑苦しい汗だくの男子と違って、すっきりした爽やかな雰囲気。
涼しげな横顔が印象的な男の子。


初めて佐倉に出会った次の日。
「佐倉隼人です」
よろしく、と。
みんなの前で自己紹介をして爽やかに笑った転入生に。
クラスの女子のほとんどが掌をかえしたようになびいた。
だって。
ましろ一途な見込みのない蒼吾より、やっぱこっちでしょ。
私も乗り換えちゃおっかな。
なんて。
佐倉の周りに群がる人だかりを横目でぼんやりと見つめた。
春のように浮かれたクラスの女の子達。
さっきの休み時間なんて、隣のクラスの子まで見に来てた。
秋の風っていうより、春だ。
みんな頬をピンク色に染めて浮かれてる。
苗字だって『さくら』だなんて、春みたいな名前。
男のくせに薄いピンクのポロシャツなんて着ちゃって、でもそれが妙に似合ってる。
よれよれのTシャツを着てるクラスの男子とは大違い。
きれいな男の子っているんだな。

私も。
佐倉に群がってる女の子達みたいに。
簡単に気持ちを切り替えれたらいいのに。





「ね、凪ちゃん」
ましろのくりんとした茶色い目が私を覗き込んだ。
「え?」
「ね、ちゃんと聞いててくれてた?」
耳に掛けた茶色くてふわふわした髪が揺れた。
「ごめん、暑くてボーっとしてた。なに?」
「席、今度は近いといいね」
席替えのくじ引きの列に並びながら、ましろが柔らかい表情でふんわり笑った。
「そだね」
つられて笑う。


2学期の席替え。
一番の当たりくじはもちろん、転入生佐倉の隣。
女の子達は頬を桜色に染めて、自分の引いたくじの番号と、黒板に書かれた席の番号を見比べる。
佐倉の様子を横目で気にしながら。
紙とにらめっこをしながら一喜一憂してる姿が何だかおかしくて。
他人事のようにぼんやりと見つめてた。
でも。
その女の子たちから歓声が上がることはなくて。
佐倉の隣っていう一番の特等席を引いたのは。
ましろだった。


ましろはつくずく運があるっていうか、ないっていうか。
席替えに縁があるなって思った。
「……なんでまた、園田さんなの?」
影でこそこそ話す水野さんたち。
たぶんましろには欲とかそういうのがないからでしょ。
神様はその辺をちゃんと見てる。
「わ…。転入生君の隣だ。どうしよ、凪ちゃん…」
なんて動揺しながらも。
運んだ机を佐倉の机と合わせて、恥ずかしそうに話してる。
うん。
隣が佐倉なら大丈夫かな。
あいつ、優しそうだし。
嬉しそうに笑うましろの姿にホッとしながら、私も新しい席へと机を移動した。
廊下側から3番目の一番後ろ40番の席。
隣は────。

「お前かよ、隣」
そう言って嫌そうに顔をしかめた男子。
「…安部」
まさか、隣?
「39番」
そう言って安部が、番号を書いた紙を突きつけた。
うわ。
最悪だ。
なんで安部と?
私は大きくため息をつきながら持ってきた机を安部の机と並べて座った。
ついてない。
2学期の間ずっと、安部と仲良く机を並べて生活しなきゃならないなんて。
明日からの毎日を思うと憂鬱になってため息が出た。
ぼんやり頬杖をついて、嬉しそうに笑うましろと佐倉を眺める。
なんだ。
あのふたり意外に気が合うのかも。
男の子相手にあんなに笑ってるましろの顔って初めて見たかも。
これって。
蒼吾的にはちょっとやばいんじゃない?
今までましろとあんなふうにしゃべる男子っていなかったから。
あいつ、大丈夫かな。
なんて心配してたら、フッって前の視界が遮られた。




「なんだ、俺の後ろ日下部か」
って、無愛想に私の前に机を置いたあいつ。
「よろしくなっ」
その顔がニッと笑った。


蒼吾が、前の席…?
うそ。
何で今さら────。
蒼吾とはもう友達でしかいられないって、好きになるのやめなきゃって思ってたのに。
神様は意地悪だ。
なんで私ばっかりこんな辛い思いをしなきゃいけないんだろう。
なにか罰当たりな事、したかな。
なんて、神様を恨めしく思ったりもしたけど。
気持ちは正直だ。
決意なんて吹っ飛んじゃうくらい。
だって。
目の前に蒼吾がいる。
手を伸ばせば届きそうな距離に。
毎日、こんなに近くにいるんだ。
蒼吾の馬鹿でかい声も、笑った顔も。
授業中気持ち良さそうに眠る後ろ姿も。
こんなに近くで見られるんだ。
手を伸ばせば簡単に届く。
あの、大好きな背中に────。


「日下部」
って。
急に振り返って名前を呼ばれて。
弾かれたように伸ばしかけた腕を引っ込めた。
「なに?」
平然ぶって首をかしげてみる。
ほんとは超ドキドキしてるのに。
そんな私の様子なんて蒼吾はちっとも気付かずに。
ちょっとちょっと、って手招きをする。
なに?
って、顔を寄せたら。
「お前の前でラッキーかも。宿題、よろしくな」
って。
小さく耳打ちをしてあの顔で笑ったんだ。
いたずらっぽいくしゃって感じの笑顔。

諦めようと思ってたのに。
胸がきゅぅってなって気持ちが一気に加速する。
そんな顔して笑わないでよ。
もう諦めるんだって、心に決めてた決意がぐらりと揺らいだ。


でも。
そう思ったのは最初だけ。
いつもあいつの視線は教室の中央。
佐倉と楽しそうに笑うましろに視線が向けられていて。
頬杖をついて眺めてる横顔が普段の蒼吾の表情とは全然違っていて。
また泣きそうになった。
やっぱり後ろの席じゃなかったらよかった。
それならいっそ、蒼吾もましろも視界に入らない席の方がよかったって。
みじめな気持ちでいっぱいになった。
私が見ている背中は、相変わらず振り返ってはくれない。
これからもたぶん、ずっと。




神様はやっぱり意地悪だ。







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Comment








...そうなんだよね〜駄目なんだって思ってんのにそんな時近くに居たり普通以上に感じたりして、だけどやっぱ心は想いは違うくて、自分に向いてくれなくて...。
判ってる。それでも、判ってはいても、傍に居られると...
ううっ、わかるよ〜凪ぃーー(泣)。神様(注、このブログの主です(笑))は意地悪だねーーーっっ!!

>沙愛さんも懐かしむお年頃ですか?
はい、お年頃です(笑)。ちなみに二人の女の子のママです。もしかしてりくさんより上かも...(爆)。すみません、ココの読者層の平均年齢上げてたらごめんね。
from. 沙愛 | 2007/02/27 15:16 |
●○●沙愛さんへ●○●
あら。沙愛さんはママさんでしたか(笑)
ちょっとびっくりしました〜。読者層や年齢は気にしてません。幅広くいろんな人に読んでもらえるの嬉しいですよ☆

凪サイドの話は書いてると物悲しくなります。凪には片思いの切なさとか、友達を思う気持ちとかいろいろ詰め込んで(背負わせて?かな)書いてます。凪に共感してもらいながら読んでもらえるのがやっぱり一番嬉しいです♪
神様(私!?)は意地悪ですね〜(笑)
凪も蒼吾も佐倉も、もちろんましろも。みんなが幸せになればいいな。
from. りくそらた | 2007/02/27 17:02 |
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