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魔法のコトバ*  Season8 初恋〜サイド凪-11-
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魔法のコトバ* Season8  初恋〜サイド凪-11-

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それから私達は中学生になった。
一部の生徒を除いてほとんどのクラスメイト達が、そのまま校区内の公立中学へと進学した。
成績のよかった私は。
一時期、私立中学への受験を進められたりもしたけど。
蒼吾と離れるのが嫌で、そのまま公立中学に進む事を決めた。


蒼吾は中学に上がっても野球を続け、私は陸上部に入った。
風を切って走ったり、跳んだりするのは好き。
なによりも同じグラウンドで頑張ってるあいつを見てると、自分も頑張れる気がした。

ましろとは、時々手紙のやり取りをする程度。
蒼吾もあまりその事には触れてこなくなった。
それでも。
口には出さないけれど、あいつの心の中にはまだましろがいる。
悲しいけど変えられない事実。










「ごめんなさい」
昼休みの屋上で、私は頭を下げた。
これで何度目だろう。
「なんで俺じゃダメなの?」
茶色い髪が揺れた。
ラフにざっくり切られたさらさらの髪を手で払いながら、長身の腰を折り曲げて私を覗き込む顔。
「付き合ってるやつ、いんの?」
「いません」
「じゃあいいじゃん。試しに俺と付き合ってみてよ?」
「ごめんなさい…」
「なんで?」
「…好きな人がいるから、…だから先輩とは付き合えません…」
もう一度頭を下げた。
覗き込んだ顔が一瞬、眉をしかめた。
「わーったよ」
そう言うとチッと舌打ちをする。
「ごめんなさい」
先輩の気配が屋上から消えるまで、私は顔を上げられなかった。


「すげーな、お前」
声がした。
「───蒼吾…」
顔を上げると給水タンクの上に蒼吾が腰かけて私を見下ろしてた。
手には食べかけの焼きそばパン。
いつからいたんだろう。
「中学上がって何度目だよ?」
タンクから飛び降りて、苦笑混じりに言った。
「あいつ、3年の田口だろ?イケメンでカッコイイって女子が騒いでたやつ。ちょっと軽そうだけど。でも結構モテるのに、お前が好きだったとはな」
すげーじゃん、っておもしろそうに笑う。
無神経。
「なん?」
きょとんとした顔で私を見る。
「焼きそば、ついてる」
「マジで?」
慌てて頬をぬぐう。
「給食、食べたんじゃないの?」
「食ったよ。でも足りねーんだよ。成長期」
そう言って笑う蒼吾の身長は、もうかれこれ高くなってた。
からかうと真っ赤になって怒るくらいチビだったのに。
中学に入る少し前ぐらいから蒼吾の身長はぐんぐん伸びた。
いつの間にかすっかり追い越されて、見上げなきゃいけないくらいに。

「好きな人がいるから、って。誰だよ?」
腰を折り曲げて私を覗き込む。
最近、妙に男らしくなってドキドキする。
身長のせいだ。
「…蒼吾には関係ない」
ぷいって、顔を逸らす。
そんなに近くで覗き込まれたら、まともに目が合わせらんないよ。
「すごいよな、そいつ。ナンバーワンじゃなくて、オンリーワンってやつ?確かそんな歌詞の歌があったよな」
何だったっけ、って呑気そうに声を上げた。
ほんと無神経。
でも悔しいから好きだなんて絶対、言ってやらないんだ。
どうせ届くことのないこの気持ち。
初恋は実らないっていうでしょ。
あれほんとだ。



「そういう蒼吾は、どうなの?」
「あ?」
残りの焼きそばパンをほおばりながら顔を上げた。
ハムスターみたいにほっぺたが膨らんでる。
「好きな女の子とか、いないの?」
「…いねーよ…」
「彼女とか、欲しくないの?」
中学に上がってから、彼氏彼女の関係の友達をよく見かけるようになった。
あの安部でさえ、今は彼女がいたりする。
これが結構、可愛くて。
ちゃんと仲良くやってる。
彼女の事、大事にしてあげてる。
すごく意外。

「俺、部活やってるし、そうゆーのめんどくさいんだよ」
膨らんだほっぺがもごもごと動いて、だんだん小さくなってくる。
「あんま、時間もねぇしな。デートする時間があったら、バッティングセンターにでも行ってるって」
大きな口を開けて笑う。
「…まだ好きなんだ」
「んあ?」

「ましろ」

その名前に、ぴくりって。
蒼吾の体が止まった。
顔つきが変わる。
動いていた口元が止まって、きゅっと一文字に結ぶ。
「まだ、好きなの?」

「…どーだろうな」
困ったように笑う。
「俺さ、あいつにした事とか、気持ちを伝えなったこととか。まだいまだに、すっげー後悔してる。
けど、どんなに後悔したってもう無理なんだよな。あいつ、海の向こうだし」
笑いながら空を見上げる。
ふわふわした白い雲が浮ぶ青い空。
「時差、何時間あると思ってんだよ?こっちは昼間なのに向こうは夜だぜ?すっげぇ距離だよなっ」
時差まで調べてたんだ。
勉強とかまったく興味がないくせに。
気持ちが一目瞭然。
嫌になる。
ぼんやり見上げた青空に浮ぶ真っ白い雲はフワフワしてて。
ましろのあの柔らかそうな髪や笑った顔を思い出す。


「そうだ」
蒼吾が思い出したように話題を変えた。
「俺さ、背番号、取れたんだ」
イシシって笑う。
「うそ、ほんとに?」
「15番!レギュラーじゃなくて控えだけど。でも勝ち進めば出番があるかも」
「1年生なのにすごいじゃん!」
「だろ?うちの野球部、人数多いからな。1年生でベンチ入りって、俺だけ」
そう言ってVサイン。
嬉しそうに笑う。
こういうところは相変わらず子どもっぽいんだけど、可愛いんだ。
「よかったら見に来いよ。…って、新人戦、陸上と同じ日か」
「うん。でも勝ち進んだら見に行けるでしょ?絶対見に行くから、勝って?」
「ああ」
「蒼吾んちのおじさん、喜びそうだよね」
「姉貴とかには絶対ゆーなよ?うるせーから」
すごく嬉しそうで、そんな蒼吾を見るのが幸せで。
宝物のような大事な時間。
でも。
私がその試合をだめにした。





忘れもしない。
あの日────。








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