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魔法のコトバ*  Season8 初恋〜サイド凪-15-
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魔法のコトバ* Season8  初恋〜サイド凪-15-

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一晩中泣いて。
気持ちが浮上しないまま朝が来た。
暗闇のどん底で、もう浮上できないって思ってたのに朝はちゃんと来る。
気だるい体を起して部屋のカーテンを開けると。
気持ちのいいぐらい青い空が広がっていて。
また、泣きそうになった。




いつも家を出る時間をずらして。
重い足取りで玄関を出た。
この時間だと、蒼吾は朝練に行ってる。
もう。
合わせる顔がないのに。
学校では会っちゃうんだ。
こういう時、幼なじみのクラスメイトって関係がわずらわしく思える。
蒼吾が大事にしてくれた、友達って関係。
私から駄目にした。




「うっす」
突然の背後からの声に。
ビクリと体が上下した。
「蒼、吾…」
2件離れた蒼吾んちの自宅前。
制服に身を包んで、鞄を斜めがけにしてポケットに手を突っ込んだまま、蒼吾が壁にもたれるようにして突っ立ってた。
なんで、こんなところにいるの?


「お前、おっせぇよ」
時間ギリギリじゃん、って。
蒼吾がため息をついた。
だって、蒼吾に会いたくなかったから。
どんな顔をして会えばいいのかわからなかったから。
目が合わせられなくて、私は下を向いた。
「でも、学校休まなかっただけでも偉いよな。やっぱ、真面目な学級委員体質だよ、お前」
そう言って笑う蒼吾は、昨日までとちっとも変わんない。



「…なん、で……?」

なんでそんなに普通に笑ってられるの?
私の気持ち、届いてないの?
それとも、もうどうでもいいの?
蒼吾の気持ちが、わかんないよ。
私はきゅっと唇を噛み締めた。
そんな私を振り返った顔が、大きなため息を付いた。

「な、お前、勇気ある?」
「え?」
「学校、サボる勇気」
ぽかんって。
訳がわからず見上げた私を見て。
「ちょっと、気分転換!!」
返事も聞かずに、その場から連れ出した。







蒼吾は。
家から10分ほど歩いたところにある河川敷へと私を連れ出した。
あいつはここが大好き。
昔、よくここで遊んだり野球をしたりした。
最近は友達と公園で遊んだりする事もなくなったから、ここに来るのは久しぶりなんだけど。


「ブランコ、ちっちぇーな! こんなんだったっけ?」
でっかい体を折り曲げて嬉しそうにブランコに乗る。
体はでっかくなったけど、子どもっぽいところは相変わらず。
昔とちっとも変わらない。
妙にはしゃぐのは、きっと私に気を使ってくれてる。
普段通りに接してくれてる。
でも。
今の私にはそれが余計に辛く思える。

「話って、なに?」
ブランコに乗る蒼吾に切り出した。
蒼吾の行動にはいつも理由がある。
なにか伝えたい事があるから、私を待ってた。
「何か話があるから待ってたんでしょ?」
早く言ってよ。
昨日の今日で、私の気持ちも限界なのに。
「鋭いな、お前」
困ったように笑う。
付き合い長いんだもん、そんなのお見通しだよ。
蒼吾は立ちこぎしていたブランコから降りて、そのままそこに腰を降ろした。
大きな体のせいで、ブランコがひどく小さく見える。

「オレさ…、あれからいろいろ考えたんだ。お前のこと、真剣に」
やっとコトバを切り出した。
キィって、ブランコが小さく音を立てた。
「そしたらさ、いっぱい後悔や反省することがあって。
俺、鈍いからさ、言われるまで日下部の気持ち、全然気付いてなかった。気付いてないから、お前を傷つけるような事をいっぱい言っちまって。あんなことさせるまでお前の事追い詰めてたのかなって思ったら、すっげー自分が嫌なやつに思えて」
困ったように頭を掻いた。
昔からの蒼吾の癖。
「お前のあんな顔…、初めてみた。もう付き合い長いのに」
「……」
「お前にあんな顔させるなら、もう俺は近くにいねーほうがいいんじゃねぇかとか、友達、やめた方がいいんじゃねーかとか。いろいろ考えた。
馬鹿な頭で一生懸命。おかげで昨日、眠れなかったよ」
そう言って笑う。
横になったらすぐに寝ちゃうような。
授業中、ほとんど居眠りしてるような蒼吾が。
私の事を考えてくれたんだ。
ちょっぴり胸がズキンと痛んだ。

「でも、やっぱり嫌なんだわ。友達やめるとか、もう話さないとか。そういうの嫌なんだよ。逃げてるみたいで。絶対嫌なんだ。だから、ちゃんと向き合おうと思って待ってた」
ずっと俯いてた蒼吾が顔を上げた。
いつもの真っ直ぐな視線で、私を見た。
胸がギュッとなった。





「オレ、お前のことすげー好き。大事だって思ってる。お前の気持ち、すげぇ響いた。ガツンときた」

真っ直ぐな視線。
もう迷いがない、ちゃんと蒼吾の中で決めた答え。





「でも……それは、園田を想う好きとは違ってて、なんてゆーか、その…。
友情っていうか、家族とか兄妹愛っていうか。隣にいるのが当たり前なんだけど、園田を想う気持ちとはまったく違うものなんだ」
だから、ごめんって。
大きな体が地面に付きそうなくらい折り曲げる。

「でも、友達でいたいって。オレ、ずるいのかな」
真っ直ぐにこっちを見た。


蒼吾の中で、精一杯考えたコトバ。
私を傷つけないように、泣かさないように精一杯。
馬鹿だよ、蒼吾。
私、あんたに振られたんだよ?
もう放っておけばいいのに。
無視すればいいのに。
手を離せばいいのに。



「……馬鹿だよ、蒼吾は」
真っ直ぐすぎて眩しいぐらいに、馬鹿だ。
「もういいよ。蒼吾の答え、最初からわかってたから」
断られるのは、最初からわかってた。
ただ、気持ちが限界だったから。
伝えたかった。
蒼吾が少しでも私の事を考えて、悩んで。
答えを出してくれた。
それだけでも嬉しいよ。

「忘れていいよ」
笑って見せた。
蒼吾はちょっと困ったような、笑ったような。
複雑な表情で私を見つめた。

ほんとは。
絶対避けられると思ってたの。
蒼吾とはもう友達でいられないって。
自分から蒼吾の手を離したんだって。
答えなんてとっくに分かってたのに。
何で困らせるのをわかってて言っちゃったんだろうって。
すごく後悔した。
気持ちが届かないことはわかってたはずなのに。

私が。
ずっと気持ちを伝えられなかったのは。
ふられることよりも。
蒼吾を失くすこと。
それが一番怖かったのかもしれない。



「ね」
「ん?」
「頼みがあるの」
「うん?」
「一発殴らせて?」
「…は…?
…ちょっ、待てって…!」
私は思い切り、蒼吾の脇腹にグーでパンチしてやった。
かなり本気。
「…お、前っ、いいってゆってねーのにっ」
顔をしかめて脇腹を押さえる。
「ここ、みぞおちだぞ! フツー、女だったらビンタとかだろ!?」
しかも昨日殴られたとこだし。
ブツクサ文句を言う蒼吾。
おかしくって笑っちゃう。
「…んだよ?」
「蒼吾、弱すぎ」
「弱すぎ、って、お前なぁ。フツー、あんな真面目な話の後に殴られるなんて誰も思わねぇって!」
「ちゃんと断ったでしょ?」
「いいって言う前に殴っただろっ!」
「あー、すっきりした!」
「何だよそれ!」
拗ねたように脇腹を抱える蒼吾がおかしくって。
また笑った。


よかった。
私、ちゃんと笑えてる。
蒼吾との関係はきっと、これが一番いい。





「蒼吾」

「…んだよ?」

ブツクサと文句を言う蒼吾の胸に。
トンって、頭を寄せる。







「蒼吾、好き」






「………」

「大好きだった」


「…ああ」







「ありがとうね」




一瞬。
私を抱きしめようかためらった腕が。
そのまま触れることなく、体の横に降ろされた。
同情とか、そんな気持ちで簡単に抱きしめちゃいけないんだって。
蒼吾はちゃんとわかってる。
悲しいけど、変えられない関係。
こうやって触れられるくらい近くにいても、抱きしめてもらえない。
それが私と蒼吾の距離。
もう、それは一生変わる事はない。

ちゃんとはじめからわかってたよ、蒼吾。
それでも。
知っててもらいたかったの。
少しでも。
心の片隅でもいいから、蒼吾を想う私がいることを。









暑い夏が幕を開けて。
蒼吾はベンチ入りを果たせないまま、中学最初の夏の大会が終わった。
秋が来て、冬が来て。
街を真っ白に染めた雪が溶けて。
また、春がくる。


季節が巡って。
何度も春を迎えても。
私の思いはあの日に立ち止まったまま。
新しい春を迎える事がなかった。




高校生になって。
新しい制服に身を包んで。
野球部が夏の甲子園へ向けて、練習を始めた夏。
真っ黒に日焼けしたあいつをスタジアムのベンチで応援しながら涙した夏の大会の決勝戦。
甲子園行きの切符を逃してみんなが涙した高校最初の夏。


見上げれば眩しいぐらいの真っ青な夏空は。
真っ白なユニホームとあいつの笑顔を連想させる。
青空に浮ぶ真っ白な雲。
それはいつまでも消える事のない、あいつの心に浮ぶ恋心のようで。
見上げるたびに胸が痛んだ。



新学期が始まる直前の登校日。
夏の思い出に花を咲かせる浮き足だったクラスメイト達の中。
私はひとり、職員室に呼び出された。


新学期から、ましろが帰ってくる。


ずっと心の奥に鍵をかけて大事にしまい込んでいた気持ちが。
ざわりと音を立てた。


無邪気に笑う教室の片隅。
もう薄れかけてるって思ってたあいつの初恋の記憶。
それでもやっぱり、あいつの心の中には。
まだ、ましろがいたんだ。



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Comment








前回、壊れそうな勢い(爆)でカキコして少々反省していました。
お久しぶりです。沙愛です。

う〜ん、Season8終りましたね。...痛いですな〜。蒼吾の気持ちも凪の気持ちも...蒼吾は真っ直ぐ過ぎて痛いし、凪はもう好きと言うよりいろいろな意味で心の一部みたいな愛情に変化し過ぎてとても痛いし...切ないというより悲しいですな〜、痛いですな〜。

ん、次は蒼吾サイドですか?...うーーん、のっけからテンション高めのような気が...(爆)。今から読みますね。
from. | 2007/03/08 08:44 |
●○●沙愛さんへ●○●
おお!朝早くからありがとうございます〜!
我が家も子どもを送り出してこの時間からが執筆時間です(笑)
壊れそうな勢いでのコメント、とても嬉しいですよ〜!それだけ感情移入していただいてると思ってますので♪へへ。
凪サイドの話はいろんな意味で痛かったですよね。凪を書いているとましろがお気楽極楽な女の子に見えてくる(笑)
蒼吾サイドのお話もスタートしました。こちらもしばらく長く続きそうです。またお付き合いいただければ嬉しいです。
from. りくそらた | 2007/03/08 09:27 |
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