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魔法のコトバ*  Season9 初恋〜サイド蒼吾-3-
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魔法のコトバ* Season9  初恋〜サイド蒼吾-3-

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「失礼しました」
そう言って保健室から出てきた日下部を。
「おい」
無愛想な声で呼び止めた。

「蒼吾…」

ビクッって日下部の体が強張ったのがわかったけど。
俺はそれを気にしてやれるほどの余裕がなかった。
「なに?」
いつものポーカーフェイスに戻って日下部が興味なさそうに聞いた。
「あいつ、大丈夫なのか?」
「…うん。神経性の貧血だって。蒼吾も知ってるでしょ?」
やっぱ、まだ直ってなかったんだな。
「ていうか、お前。俺に言うことねーの?
言ったよな、俺に。もう園田はこっちに帰ってこないって」
「転勤が早く終わったんじゃないの?当初の予定では…」
「戻ってくる予定もないのに家、そのままにしていくのかよ?」
「…どうしてそれを…」
「新垣に聞いた」
「……」
困ったように下を向いた。
こいつ確信犯だ。
知ってて俺に嘘をついたんだ。
思わずため息が出た。
あの時、俺はこいつの気持ちは知らなかったんだよな。
俺が追い詰めたんだ。
だから、嘘をついた。


「そこで待つつもり?」
腹をくくって保健室の前に座り込んだ俺に、日下部が呆れたような声で言った。
「ああ」
「待ってどうするのよ?」
ほんと、どうすんだ俺。
園田、俺のこと覚えてんのか?
ていうか。
覚えてたらなおさら会わす顔がねーんじゃないのか。
「あんた、馬鹿?」
「うっせー」
「とりあえず、今日は帰ったら?どうせ明日から毎日会えるんだし」
そうだよな。
会って何を言うつもりだ、俺。
あいつを目の前にしたら押さえてた気持ちとか想いとか。
全部噴き出してして周りが見えなくなってた。
気持ちに余裕がねぇや。
情けねぇな、俺。








「行ってくるわ」
気だるい体にでっかいスポーツバッグを掛けて、自転車を漕ぎ出した。
朝っぱらからすっげぇ暑くて。
もう9月だっていうのに、見上げた空には嫌味なぐらいでっかい入道雲。
自分が生まれた夏の季節は好きだけど、暑さは別。
部活中に汗をかくのは大いに結構なんだけど、それ以外は勘弁してほしい。
授業中の汗なんてもってのほか。
無駄無駄。
水分補給で飲むスポーツ飲料が汗になって吹き出てるみたいで、もったいねぇの。
ま、そういう問題じゃないんだけどさ。
朝練のない今朝は、イマイチ体の乗りが悪い。
体動かさねぇと目が覚めないっつーか、1日が始まらないっていうか。
あまり眠れてないから余計に体がだるい。
園田の事、考えてると気持ちが悶々とするし。
これなら部活で体を動かしてる方がよっぽどましだ。
あいつ。
昨日大丈夫だったかな。
そんな事を考えながら行きかう制服の群れの中を自転車で駆け抜ける。
風を切って走っても全然体が冷えない。
立ち止まった交差点の向こうに、朝っぱらから陽炎が見える。
あっちーな。
そう思ってぼんやりと信号を見上げた。


交差点の向こう、駅の改札口。
セーラー服の群れにまぎれてひとりだけ違う制服姿。
白いブラウスに赤いチェックのボウタイ。
夏なのに長い髪を結う事も上げる事もせず、降ろしただけの柔らかそうな髪。

園田だ。

よろよろと改札口を出た小さな体が、どんどん制服の足並みに抜かされていく。
あいつ、歩くの遅すぎ。
背もちっこいからコンパスも短いのか?
それにしても遅すぎだろ。
おかしくってついこみ上げてくる笑いをこらえながら、交差点の向こうの園田を見つめた。
そしたら。
のろのろと亀のように歩いてた小さな体が突然、立ち止まった。
ためらうように前を見たり、駅を振り返ったり。
あいつ。
引き返す気じゃねぇのか?
ていうか、顔色、悪くねぇ?
そう思った矢先。
よろよろと路地の脇に座り込む小さな体。

う、わ。
マジで??

信号、早く変われよ。
あいつ、めちゃくちゃやばそうじゃん。
暑さともどかしさが入り混じってすっげぇイライラする。

信号が青に変わる。
俺は猛ダッシュで飛び出した。



自転車を脇に止めて、小さな体に恐る恐る声を掛ける。
「大丈夫か?」
返事がない。
マジでやばそうな雰囲気。
座り込んだ小さな体にそっと手を伸ばして、腕を掴んで体を起す。
う、わ。
軽いな、こいつ。
「腹、痛いのか?」
俺の言葉に。
恐る恐る顔を上げた園田が、こっちを見た。
くりんとした茶色い目と視線がぶつかる。
心臓が跳ね上がる。
一気に体温が上昇した。
こんな間近で園田の顔見たのって、すっげぇ久しぶり。
4年ぶりぐらい?
いや、もっとか。
キス事件以来、園田は俺の顔を見ようともしなかった。
それは自業自得で仕方がないんだけどさ。
結構、辛かった。

逆光で眩しそうに目を細めた顔が力なく頷いた。
「学校まで我慢できるか?」
ひどく顔色が悪い。
早くどこかで休ませてやらないと。
「自転車の後ろ、乗れるか?」
ふわふわの頭が頷く。
地面に転がった園田の鞄を自転車の前籠に突っ込んで、小さな体を自転車の後ろに乗せる。
「しっかりつかまってろよ」
小さく頷く気配がして、園田の小さな手がゆっくりと背中に触れた。
こつん、と。
頬が背中に当たる。


やばい。
やばいって、それ。

すっげぇドキドキして、マジで口から心臓が飛び出るんじゃないかってなぐらい全身で園田の存在を感じる。
神経が全部背中にあるんじゃないかってなぐらい、園田が触れてる部分に意識が集中する。
夏の制服とTシャツの向こうに園田の柔らかな感触。
心臓が、跳ね上がる。

あの園田が。
俺の後ろにいる。
背中に触れている手とか、頬とか。
柔らかさとか、体温とか。
全部本物。
俺の心臓の音が園田に聞こえるんじゃないかって。
マジで心配するくらい鼓動が早く脈打つ。
そんなことあるわけねぇのにな。

てか、俺。
汗臭くね?
昨日、風呂入ったよな、とか。
女みてぇなこと考えてるし。
マジ、やばいって。



とりあえず。
早く園田を学校に連れて行ってやらねぇと。
高鳴る心臓の音を園田に悟られないように、自転車を漕ぎ出す。
落ちないようにゆっくりと。



園田がここにいるって実感を噛み締めながら。



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魔法のコトバ*  Season9 comments(2) -
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Comment








またまた来てしまいました☆やっぱりおもしろいですね〜www ちょっと今日は用があるので急いで書きますねw。そうなんです、あたし今度中二になるんです;;
蒼吾は今どきの子ですよvvだけど他にはない魅力を持っているような人ですwでも本当にりくさんはすごいです!男の子の気持ちも女の子の気持ちも分かっていてwwあたし羨ましいですvvv あ!!!時間がない!!短い文章しか書けなくてすいません;;; ではではこれからも頑張ってください♪ また来ますねww 
P.S.はづきさんの絵もとてもお上手ですねww見ていて惚れ惚れしてしまいますwww
from. さくら | 2007/03/10 10:33 |
●○●さくらさんへ●○●
あはは(笑)女の子の気持ちはわかるんですけど、実をいうと男の子の気持ちはわかりません(笑)こんな感じかな〜とか、こうだったらいいなとか、イメージと理想で書いてます。
はづきのイラスト、とってもいいでしょ!?私も彼女のイラストの大ファンです♪イメージ通りのイラストを描いてくれるのでとても嬉しいです。イラストを見るのもこの小説を読み進める醍醐味ではないかと思ってます。こちらもまた楽しみにしておいてくださいね!
from. りくそらた | 2007/03/11 08:18 |
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