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魔法のコトバ*  Season9 初恋〜サイド蒼吾-4-
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魔法のコトバ* Season9  初恋〜サイド蒼吾-4-

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校門で生徒指導に当たっていた担任の新垣に園田を預けて。
俺は喜びを噛み締めながら、教室に入った。
あいつが触れてた背中が、まだ熱い気がする。



「蒼吾」
でっかいスポーツバッグに詰めていた荷物を整理していた俺を、日下部が呼び止めた。
「なん?」
「ましろ、見なかった?」
まだ来てないみたいなんだけど、って。
キョロキョロしながらこっちを見上げた。
「あいつ。朝っぱらから貧血」
「ええっ!?」
でっかくて黒目がちな目が大きく見開いた。
マスカラいらずのばさばさした睫毛が揺れる。
「駅を出たところで座り込んでたから、拾ってきた」
「拾ってきたって…。
保健室?」
「ああ。新垣に預けてきたからたぶん」
「そう。あとで行ってみる」
細い腕につけられた腕時計に視線を落としながら、ため息混じりに呟いた。
予鈴5分前。
今から保健室に行くには時間が足りない。
「結構やばそうだったから、今日は1日保健室じゃねぇのか?」
職員会議があるとかで今日は午前で終わるし。
どう考えても無理だろ。
「…そだね」
腕を組んで頬に手を当てながら、日下部が頷いた。
なにやら考えてる風で、心ここにあらずって感じだ。
「蒼吾ーっ」
ふいに呼ばれて振り返る。
「ちょっと来いや〜」
教室の後ろに固まってたクラスメイトに手招きされる。
「じゃ、そういうことだから」
自分の席から立ち上がって、ポンって軽く日下部の肩に手を置く。
その手をガシッとつかまれた。
なん?
「蒼吾。お願いがあるんだけど」
日下部が小さく呟いた。









「早く来いよ」
振り返って園田を呼ぶ。
小さな体がビクッと上下した後、慌てたように鞄を抱えて小走りに駆け寄ってくる。
パタパタっていうローファーの靴音が、校舎に反響する。
何なんだ、この距離は。
俺が歩くの早いのか?
それともわざと?
園田が近くまで走り寄ったのを確認してまた歩き出す。


あの後。
俺を呼び止めた日下部が。
「ましろ、帰りに送ってあげてくれない?」
って、言った。

は?
「園田を?」
ていうかお前、一緒に帰らねぇの?
「私が一緒に帰れたらいいんだけど、委員会があって遅くなりそうなんだ。朝も乗せてきたんでしょ?それなら大丈夫じゃん」
「大丈夫って…」
どういう意味だよ、それ。
俺に対してさりげなく嫌味か?
「ましろと話したかったんでしょ?」
大きな黒目がちの目が俺を見上げた後、フッって下を向いた。

「…ごめんね。嘘ついて」
「え?」
「昨日の話の続き。ましろがもう帰ってこないって…」
「ああ…」
やっぱ知ってて嘘ついたんだ。
「…あの時はほら、私、好きだったから…蒼吾の事。
だから、ごめんね」
分かってた理由だったけど、返すコトバが見つからねぇ。
「だから嘘のお詫び、させてよ?チャンスでしょ?ましろと話せる」
そう言って笑う。
「しっかりしなって!」
バンって勢いよく背中が叩かれた。
いってぇなぁ。
「放課後、一緒に保健室に迎えに行こ」
日下部が笑う。
笑顔の向こう側にある気持ちが少し見えた気がした。
参ったな。






自転車置き場から藍色の自転車を引っ張り出す。
園田は入り口に突っ立ったまんま。
「鞄」
手を差し出すと園田がぷるぷると首を横に振った。
「…やっぱりいいよ。もう大丈夫だから、ひとりで帰れるし」
「いいから貸せって」
「でも…。うちまで2駅もあるし、遠いからいいよ」
「たった2駅だろ。俺んち3駅先だから」
「……」
「いいから貸せって」
手から奪い取るようにして鞄を取った。
っていうより取り上げた。
これがないと帰れないだろ?
人質。
「あ…」って。
園田が小さく呟いて、泣きそうに顔を伏せた。
正直、こういう困った顔にもグラっとくんだけど。
その原因が自分にあるんじゃあ、話は別。
俺ってやっぱ、嫌われてんのな。
保健室で俺の顔を認識したとたん、あからさまに目を逸らした園田の表情を思い出した。
マジ、へこむ。
こんな事してたらますます園田が嫌がるってわかってるんだけど。
イライラともどかしさが俺の気持ちをせかす。
すっげぇ焦ってる。
ここまで待ってたのに。
園田に再会したあの時から。
俺、気持ちのコントロールができなくなってる。
ブレーキが利かない。


カラカラカラって。
自転車のチェーンの音だけが妙に耳につく。
何だよ、この沈黙。
何か話した方がいいんだろうけど、話題が見つからない。
だいたい園田との共通の話題って、何だ?
野球の話…じゃあないことは確か。
海外どうだった?とか。
学校慣れた?とか?
っていっても、昨日転入してきたばっかだよな。
しかも2日とも保健室。
それって触れて欲しくない話題だよな?

園田は。
ただ無言で後をついてくる。
たぶん、振り返ったら泣きそうな顔してる。


駅が見えてきた。
園田、こっから電車に乗って帰るって言いそうだな。
いや。
絶対言うはずだ。

「あの…」
案の定、何か言いたげに園田が口を開く。
「乗れよ」
園田がきょとんとした顔で見上げた。
「2駅も歩くの嫌だろ?」
口、ぽかんって開いてるし。
「後ろ、乗れよ。乗せてってやるから」
その言葉に激しく首を横に振る。
そんなに振ったら首が折れちゃうんじゃねぇのってぐらいの勢いで。
「いい!いいよ、夏木くん。
駅もそこだからあとは電車で帰るね。ありがとう」
園田の小さな手が前籠の鞄へと伸びる。
思わずその手をガシッて掴んだ。
「乗れって言ってるだろ?」
う、わ。
我ながらすっげぇ低い声。
園田の体がビクっと上下した。
「…の、乗ります…」
小さく震える声。

ごめんな、園田。



「つかまってろよ」
後ろに座った事を確認すると、ゆっくりと自転車を漕ぎ出す。
園田が遠慮がちに自転車のサドルに手を置いた。
俺の体には触れようともしねぇの。
朝のはただ、気分が悪かっただけなんだな。
俺だって認識してなかったからだ。
でも、俺でよかったって思う。
もし他のヤツの後ろにって思ったら、やりきれねぇよ。
すっげぇ近くにいるのに、園田が遠く感じる。


俺と園田の関係は。
4年経った今も、あの頃とちっとも変わってない。
時が心の傷を癒してくれるなんて言葉。
あれ嘘だな。




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