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魔法のコトバ*  Season9 初恋〜サイド蒼吾-6-
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魔法のコトバ* Season9  初恋〜サイド蒼吾-6-

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園田は新しい制服が出来る頃には、すっかりクラスに溶け込んでいた。
色素の薄いまあるい目も、茶色くてふわふわの髪も。
校風がわりと自由な校内ではあまり目立たない。
いろんな色を混ぜて染めたような髪の女子の中にいると、自然な茶色味を帯びた髪は地味なくらい。
同じ制服を着るとなおさら。
「これ、変かなぁ」
新しい制服に身を包んで、不安そうにスカーフの裾を持ち上げる園田。
前の制服もよかったけど、セーラー服もすっげぇ似合ってる。
清楚な雰囲気が最高。
園田がここにいるって実感を、俺は日々噛み締めていた。




3限の授業の後。
ふと顔を上げると、日直で呼び出された日下部の代わりに園田が黒板を消してた。
前の授業は数学。
鈴木っていう眼鏡のおっさん教師の授業。
背が高いもんだから、黒板の上の方までぎっちり数式を書き込んでる。
それを一所懸命、園田が背伸びをして黒板を消そうとしてた。
めいいっぱい伸ばした腕の下。
セーラー服の裾。
やばいって。
そんなに腕上げたら腹が見えるって。
クラスの女子はもう慣れてるから、どれぐらい腕を上げたら腹が見えるとか見えないとか分かってるみてぇだけど。
園田はその制服着たの最近だもんな。
前の席のやつら。
ニヤニヤしながら園田の事、見てるし。
健全な高校生男子としてはそんなの普通なんだけど。
対象が園田だったら話は別。
そんな厭らしい目で見んなよ。
次、移動教室だろ?
早く行けよ。
ていうか園田、無防備すぎだろ。
そういうところ、ちょっとイライラする。

「蒼吾、行こうぜ」
って声を掛けられたのを。
「悪ぃ、先行ってて」
友達を先に行かせて。
「貸してみ」
気がついたら俺は園田の手から黒板消しを奪い取ってた。

「…夏木、くん…」

くりんとした丸い目が驚いたようにこっちを見た。
「背、届かないんだろ?」
「……」
「消しといてやるから、先に行ってていいよ」
「え?」
「移動教室」
「でも…」
困ったように俯く顔。
顔を見ようとしないのは相変わらず。
慣れてるつもりだけど、やっぱちょっとへこむ。
それでも園田を怖がらせたくないから、平然を装って黒板を消す。
背中に園田の気配。
その場に突っ立ったまま。
たぶん、どうしよう…とか思ってんだろうな。
ふと横目で。
頭ふたつ分ほど小さな園田を見下ろしたら、頭にいっぱいチョークの粉がかついてた。
頭に粉がかかるほどの小さな背ってどうなんだ?
小学生の頃の俺もチビだったけど、園田はその頃の俺よりも小さかった。
あれから伸びてないんじゃねぇの?
かわいくって、つい笑いがこみ上げてきそうになるのをかろうじてこらえながら黒板を消す。

手を伸ばしたら届く距離。
頭の粉、気付いてないんだろうな。
払ってやりたいけど、触れたらまた怖がるよな。
たぶん。
でも、すっげぇ近くにいるんだ。
手を伸ばしたら触れるくらいに。
あのふわふわした髪に触れたい衝動に駆られながら、俺は黒板消しを置いた。
「頭。チョークの粉、ついてるぞ」
まん丸な目で見上げた顔が、真っ赤になって頭に触れた。
慌ててパタパタと頭を払う小さな体。
なんか小動物みたいだな。
先に行っててよかったのに、ちゃんと終わるまで待ってた園田。
律儀ってゆーか、真面目ってゆーか。
そういうところは相変わらず。

「行かねぇの?」
突っ立ったままの園田に声を掛ける。
気がついたら教室は俺と園田だけ。
ふたりっきりだって意識したら、すっげぇドキドキしてきた。
園田は相変わらず下を向いたまま。
自分の席に戻って机の中から次の授業の教科書やノートを出す。
体がすっげぇぴりぴりする。
全身で園田の存在を感じる。
心臓がバクバクゆってる。
別に何をするわけでもないのにな。

フッって影が動く気配がして顔を上げると、園田が教卓の上に置いてあった自分の荷物を持ち上げた。
「…あの…っ」
胸に抱えた荷物をぎゅっと握りしめながら、こっちを見た。
「黒板、ありがとう…!」
ずっと俯いていた顔を上げた。
泣き出しそうな顔してんだけど、ちゃんと俺を見た。
くりんとした目に俺が写る。

突然だったから、俺は何て返したらいいのか分からず。
ぼさっと突っ立ったままで園田を見つめた。
たぶん。
すっげぇ間抜けな顔だったと思う。
園田は荷物を抱えるとパタパタと教室を出た。




う、わ…。
マジで?
今の俺に言ったんだよな。
一瞬だったけど、ちゃんと顔を見て。



顔が緩んだ気がして思わず口元に手を当てた。
すっげー締りのない顔。
こんなの絶対、涼や日下部には見せらんねぇ。
もちろん園田にも。
体の底から震えがきて、気がついたら。

「っしゃあ〜〜!!」
って、ガッツポーズを決めてる自分がいた。
つくづく俺ってガキっぽいと思う。





「遅っせぇなぁ」
何してたんだよ〜って。
チャイムが鳴るのと同時に駆け込んだ俺に嫌味に呟くクラスメイトの声も耳に入らないぐらい、俺は舞い上がってて。
気がついたら緩んでしまいがちな顔に頬杖を付きながら、少し前の席に座る園田を見つめる。
さっきの事なんて忘れてしまったかのように、隣の日下部と嬉しそうに言葉を交わす園田。
ずっと進歩がないって思ってた関係も、少しは改善の兆しあり?
日下部と話してる時みたいに、いつか俺にも笑いかけてくれる日が来るのかな、って。
ほのかな期待を胸にあいつの横顔を目に焼き付けた。

何だかんだといいつつも。
たとえ避けられてたとしても。
園田が同じ空間にいる、存在を肌で感じられる距離にいるってだけで。
俺はそれなりに満足で幸せだった。

だから。
あいつの存在なんてすっかり忘れてた。
園田の事を気軽に名前で呼ぶあいつ。
俺と正反対の爽やかなやつ。
昔っからの俺の天敵。


佐倉隼人の存在を。




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魔法のコトバ*  Season9 comments(2) -
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Comment








ああ...蒼吾クン、君のうれし〜い気持ち読んでてこっちまで顔がニヤニヤしてしまった...(にっ)。背中をバシバシ叩いてあげた〜いっっ!首根っこ羽交い締めしてうりうりしてやりた〜〜い!!やったね、よかったねっ、このままの調子でガンバ!!って...

悲しいかな、そういかないのが若き十代のほろ苦い恋愛模様デス。

...ちょっと大人モードでコメントカキコ。でもやっぱ無理みたい。ふつふつと暴走モードが...ああっ!!まずい、次が危ない!!

どうする、蒼吾!。どうする!!(ごめん、やっぱ暴走してしまった(撃沈))。
from. 沙愛 | 2007/03/14 10:35 |
●○●沙愛さんへ●○●
あはは(笑)沙愛さんのコメントには、毎度楽しませてもらっています。とっても感情移入して読んでいただいてるのがわかって嬉しいです♪

>どうする、蒼吾!。どうする!!
って。ライフカードのCMのオダギリ君みたいですね〜(笑)まさに『カードの切り方が人生だ!』みたいな。ははは。
次が危ないです。佐倉が出てきます。
たぶん、ましろ視点よりも凪視点よりもブラックな(?)佐倉が。またお楽しみに〜。
from. りくそらた | 2007/03/14 11:12 |
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