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魔法のコトバ*  Season9 初恋〜サイド蒼吾-14-
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Season9  初恋〜サイド蒼吾-14-

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「ね、ちゃんと授業聞いてる?」
園田が少し困った顔をして、小さくため息をついた。
「何で私なのかな…」
ため息交じりの声。
う、わ。
やべぇ。
呆れた?
『夏木くんに教えるの、私には無理です』
って。
担任に言いだしそうな雰囲気。
それはヤバイ。
園田の近くにいられる貴重な時間を失くすわけにはいかない。
何よりも俺。
謝ってないじゃん。
やることやらないとすっきりしない。
勉強なんて頭に入らない。
マジでやばいのに。


園田が口元をへの字にして、窓の外を眺める。
ちょっと泣きそう。
真面目だし、責任感とか強いタイプだし。
俺の事を任された責任とかそういうの、園田は全部背負い込んでる。
もう泣かさないって決めてたのに。
園田にこんな顔をさせるのは、いつも俺だ。
それを、何とかしたい。

「────オレが頼んだんだ。担任に」
園田が顔を上げた。
丸っこい目をますますまん丸にして、こっちを見た。
「園田が教えてくれるんだったら、ちゃんとやるって…」
言葉の続きを待ってる。
久しぶりにじっと目を合わされたら、すっげぇ心臓がバクバクいって。
言葉が続かなくなった。

「だって園田、アメリカ帰りだろう?本場仕込みだし。英語できそうじゃん?」
なんて。
おどけた口調になってしまう。
馬鹿だ、俺。
園田に冗談とかそういうの、通じないのに。

「ご期待に添えるかどうかはわからないけど…。
じゃあ、もう少し過去問題までさかのぼってやってみようか?どの辺がわからない?」
案の定。
特に理由を疑う事もなく、園田が参考書を開いた。
馬鹿。
そんな簡単に信じんなよ。
そんな理由なんかじゃねぇのに。

耳に掛けた長い髪が、パサリと落ちた。
表情が見えなくなる。
今、どんな顔してんのか。
笑ってるのか、泣きそうな顔してるのか、わからない。
すっげぇ不安になった。

「嘘」
ピクリと体が動いて、園田が顔を上げた。
「園田に補習を頼んだ理由、全部、嘘」
「全部って…」
「アメリカ帰りだからとか、英語が出来そうとか。そんな事はどーでもいい。担任にはそうやって理由をつけて頼んだけどそれは口実で…、その、なんてゆーか…」
言葉がうまく出てこない。
何て伝えたらいいんだ?
俺は頭をガッと掻き揚げた。


何の予告もなしに突然、俺の前からいなくなった園田。
俺は。
好きも、ごめんも、何ひとつ伝えられなくて死ぬほど後悔した。
そこにいるのが当たり前って事は絶対にない。
気付いたら失くしてたなんて、もうあんな思いは二度とご免だ。
もう後悔はしたくない。
だから。

「お前と話がしたかったんだ。ちゃんと向き合って」

簡単に許してもらえるとは思っちゃいない。
だってそうだろ?
4年経った今でも、園田は俺の事を避ける。
目も合わそうともしない。
たぶん、俺を見たら思い出すんだろ?
あの日の記憶を。
それでも俺は、ちゃんと謝らなきゃいけねぇ。
「ずっと後悔してたんだ。あの時の事」
ひどい言葉をぶつけて園田を傷つけた。
水野の誘導尋問に疑う事もせず、乗せられて。
園田がそこにいることにも気付かず。
冷やかされて。
好きな子を堂々と好きだと言えなかった幼い自分。
からかわれることを恐れて、ふざけて、偽って。
一番大事な子を傷つけた。
言った言葉の責任も取らずに園田を傷つけて、居場所を奪った。
あの時のキスは、守ってやるつもりだったのに───。

「…思い出せないんだ、あれからずっと。園田の笑った顔が───」

あんなにも大好きだったのに。
「お前、俺が話しかけるたびにいつも泣きそうな顔するだろ?自分で気付いてねぇよな。…でもそれって俺のせいだろ?───ごめん」

ごつって頭が机にぶつかった。
わざとじゃなくて勢いあまって。
カッコ悪って思ったけど、顔、上げられない。
ジンとしびれたような痛みが疼く。



沈黙があって。
たぶん、時間にしたらすごく短かったんだろうけど。
俺にはすごく長く感じられて。
「いいよ」
って。
頭の上から声がした時には、随分時間が経ってたように思えた。

いいよ、って。
どっちの意味だ?
許してくれたのか?
それとも頭を上げていいよ、の意味か?
「もういいよ、夏木くん。頭、上げて?」
また、声がした。
恐る恐る顔を上げると、園田の丸っこい目と視線がぶつかる。
どくんと心臓が跳ねた。
「ごめんね」
「…園田?」
「逃げてばかりでちゃんと話を聞かなくて…私の方こそごめんなさい」
「何で園田が謝るんだよ…」
お前は悪くないのに。
簡単に謝んなよ。
「じゃあ、許してくれるのか?今までの事。その…キスしたこと…とか」
園田の顔がみるみるうちに赤くなった。
たぶん。
あの時の光景を思い出して。

「もういいよ。今さら時効だよ」
「…時効って。人を犯人扱いにすんなよ」
ていうか。
俺にはなかった事にはできないんだよ。
「だってそうだもん」
園田が頬を膨らます。
「ひでーな」
普通に会話、してる。
すげぇ嬉しい。


「じゃあ補習の話はナシなの?」
「あ、いや…。それは真面目な話…」
「そっか。そうなんだ」
「ヤバイよな?」
「そうだね」
園田が笑う。


う、わ…。



思い出した。
園田の笑った顔。
砂糖菓子みたいに甘く染み渡るような笑顔。

初めて会ったあの日を思い出す。
日直の仕事をサボってクラスの女子に追いかけられていたあの日。
園田が俺をかくまってくれたあの日。
初めて女の子を好きだ、って。
園田を好きだって、認識した瞬間。
一目惚れってあるんだって。
思った瞬間。

久しぶりに見た笑顔はあの頃とちっとも変わってなくて。
ずっと泣き顔しか思い出せなかった俺の心に、鮮明によみがえった。

園田が笑ってくれた。
それだけで俺は天にも昇るぐらい舞い上がっていて。
大げさだけど。
今なら何でもできるような気がした。


でも。
その時、完全に舞い上がっていた俺は。
俺たちを取り巻く周りの微妙な心の変化に。
気付くことができなかったんだ───。





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