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魔法のコトバ*  Season9 初恋〜サイド蒼吾-15-
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Season9  初恋〜サイド蒼吾-15-

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「な。日下部の事、紹介してくんない?」
涼がそう言って切り出したのは、昼下がりの午後。
部活帰りに寄ったマックで、でっかいバーガーをほおばってた時だった。
突然の発言に驚いた俺の手から、ビッグマックに挟んだ肉がぽろりと落ちた。
「うわっ、もったいね!」
慌てて拾い上げる。
もう砂埃がついて食べられない。
「な、紹介してくれよ?」
落ちたそれを紙ナプキンに包んで、トレーの隅に寄せる。
「なっ、てば!」
しつこく涼が顔を寄せた。
「何だよ、突然」
俺は不機嫌そうに眉を寄せた。
お前が変な事を言い出すから、動揺しちまって肉が落ちたじゃんか。肉が。
メインのなくなったバーガーを仕方なくほお張るけど、やっぱ味気ない。
「別に突然ってわけでもないだろ?俺、入学した時から日下部、日下部って言ってたし」
それは知ってる。
友達でもバッテリーでもなかった当時の俺に。
『な、あの美人ってお前の友達?』
開口一番、そう言った涼。
あの言葉は強烈に俺の頭にこびり付いてる。
あれ以来。
涼がずっと日下部の事を見てたのは知ってるし。
それが理由で俺のクラスにちょくちょく顔を出してたのも知ってた。
ふざけて見えるけど、結構マジなのも知ってる。
でも。
見てるだけで満足していた涼が、突然そんな事を言い出すなんて正直驚いた。
恋愛に関しては意外に奥手でおっとりしてるのに。
何がきっかけなんだ?

「お前だってよろしくやってんじゃん」
「あ?」
「園田ちゃん」
ニヤニヤした顔をこっちへ向ける。
「で、どうなのよ?そこんところ」
「何が?」
「なんか進展あった?」
進展も何も。
涼が期待してるような事は何もない。
やっと最近『苦手な幼なじみ』から『ただのクラスメイト』に昇進したところだっていうのに。

あれから。
園田は俺の事を避けなくなった。
学校で会えば普通に挨拶を交わして、たまに話をしたりする。
目が合えば軽く微笑み返してくれる。
まだまだぎこちないけど、普通にクラスメイトをやってる。
それでも俺には大きな進歩で。
園田の笑った顔とか。
俯かずに話を聞いてくれるあの丸っこい目とか。
ほんのちょっとの些細な事が、すっげぇ嬉しかった。
補習も頑張った。
家に帰ってほとんど開くことのなかった教科書を開いて、勉強もした。
園田に迷惑掛けたくなかったから。

でも。
近くにいれば気付かなくてもいいことにも気付いてしまう。
園田の視線の行方。



「毎日ふたりっきりなんだからさ、少しは進展ありそうじゃんか」
「ねぇよそんなの」
「園田ちゃん、彼氏いないんだろ?言っちゃえよ、好きだって」
「無理だろ」
「何で?」
「あいつ、佐倉の事が好きだから」
「佐倉?うちのクラスの?」
「ああ」
「あ〜…。ご愁傷様」
涼が丁寧に顔の前で手を合わせた。
ガンと涼の足を蹴り上げてやった。
「ってぇなあ!何だよ!」
「ムカつく」
「だってアイツ男前じゃん。頭いいし運動だってそこそこできるし。
どう見たってお前に勝ち目ないだろ。見た目も中身も負けてるじゃんか。佐倉の隠れファン、結構いるぞ?窓辺の王子様とかなんとかいっちゃってさ」
それも知ってる。
隣で練習してる陸上部の女子がそんな話をしてた。
小学生の頃からアイツはモテた。
嫌味なくらい。
でも特定の彼女は作らない。
日下部が好きだから。
それなのにアイツの隣のポジションにはいつも園田がいる。
隣ですっげぇ安心したように笑ってるんだ。
キス事件のトラウマで男子が極端に苦手だった園田の、ゆいいつの男友達。
日下部以外で安心できるよりどころが佐倉だった。
それは今も昔も変わらなくて、それを超えられない自分の不甲斐なさにうんざりする。

佐倉と話す時の園田は分かりやすいぐらい嬉しそうで。
幸せそうで。
俺が見たことのないような表情で笑う。
最上級に甘い砂糖菓子みたいに、顔いっぱいくしゅくしゅにして笑うんだ。
頬を真っ赤に染めて。

「────佐倉の事が好きなのか?」
って、園田に一度聞いた事がある。
めいいっぱい否定してたけど。
俺の勘は間違ってない。
好きなやつの視線の行方ぐらいわかる。
「あいつはやめとけ」って忠告した俺を不思議そうに見てた。
丸っこい目をますますまん丸にして。
たぶん。
アイツは園田を傷つける。
アイツを好きになったら園田が傷つく。
アイツは、日下部が好きなんだ。



「な、日曜日なんてどうかな?日下部、予定開いてると思うか?」
「さぁ」
「日下部ってさ、そういう誘いに絶対乗らないからお前が誘ってくれよ。で、あとでどっか行ってくんない?」
「ひでぇ言い方」
涼の言葉に失笑しながら、ポテトを口にほおりこんだ。
「ひどいのはどっちだよ?
日下部。絶対お前の事、好きだろ?」
予想外の涼の言葉に、思わずほお張っていたポテトを喉に詰まらせた。
慌ててコーラーで流し込む。
炭酸が妙に喉に沁みて、派手にむせ込んだ。
カッコわり。
「図星で動揺か?」
涼が笑う。
「日下部が俺を好き?まさか」
肩をすくめて苦笑混じりにおどけてみせる。
涼は真面目な顔を崩さない。
「別にお前の事、責めてるわけじゃないからさ、隠さなくたっていいよ。
見てたら分かる。好きなやつの視線くらい」
「……」
「日下部の気持ちに気付かない鈍感なやつなんて、お前ぐらいじゃない?」
知ってるよ。
知ってて知らん振りした。
一度告白されてるし。
キスもされた。
「お前にその気がないんだったら、俺がもらってい?」
何で俺に聞くんだよ。
そんなの俺に断ることじゃないし、決めるのは日下部だ。
「とにかく。日曜日セッティングしてくれよ」
涼が言った。
すごく、真面目な顔で。






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