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魔法のコトバ*  Season9 初恋〜サイド蒼吾-16-
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Season9  初恋〜サイド蒼吾-16-

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帰宅した俺は肩に掛けたスポーツバッグを部屋の隅に放り投げて、制服のポケットから携帯を取り出した。

『明日の日曜日、暇?』

短縮ダイアルに入ってる日下部のアドレスをプッシュして、メールを送る。
パチンと携帯を閉じてそのままベッドに放り投げると、自分も一緒にごろりと転がった。
しばらくして1、2分もしないうちに枕元に転がった携帯がヴヴヴと震えた。
受信は日下部。

『午前中は部活。午後からだったら大丈夫だけど。何?』

絵文字もない用件だけのメールに思わず笑ってしまう。
すっげぇあいつらしい。

『買いたいものあるんだけど、付き合ってくんない?』
こっちも用件だけを返す。
『いいよ』
またすぐにメールが返ってくる。

『じゃ、3時に駅前のツタヤ』

『わかった』

電話で話した方が早いんじゃないかって思うほどの短いメールのやり取りを終えて、また俺はベッドに転がった。
天井を見上げながら、思わずため息が漏れる。
すぐにメールを返してきた日下部。
嬉しそうにメールを返す日下部の姿が何となく想像ついた。
涼は当日まで言うなって言ってたけど、すごい後ろめたさを感じる。
日下部を騙してるみたいで。
涼も大事だし、日下部も大事。
園田の事はすっげぇ好きだし大事だ。
俺の周辺で大事なものがすべて宙ぶらりんな気がして、悶々とする。
佐倉に言われた『全部、中途半端なままだろ?』っていう言葉が、妙に的を得ていてまた気持ちが焦った。





翌日。
ツタヤに着くと一番に来てたのは涼だった。
「おっす」
自転車にまたがった俺を見つけて手を上げる。
心なしか緊張で顔が強張ってる。
「俺、変じゃないか?」
店のガラスに写る自分の姿をチェックしながら、不安そうに聞く。
マウンドに立つ時の涼はいつも堂々としていて男の俺から見てもカッコイイのに、今日はすげぇ情けない。
女みたいな事を言う落ち着かない涼の姿に、笑いが止まらない。
「いいんじゃないの?」
少し笑いを含んだ声で言うと、
「そっか??」
緊張した趣きで涼が笑った。
めちゃくちゃ顔が引きつってる。
こんな涼は初めてだ。
それだけ日下部に対して本気だってことが伝わってくる。
「日下部と合流したら、さりげなく用があるとか理由をつけて帰ってくれよ」
「ああ。そのつもり」
人の恋路に口を挟むほど暇じゃない。
「何だよ、蒼吾」
「ん?」
「浮かない顔だな」
「…そっか?」
「日下部の事、手放すのが惜しくなった?」
「そんなんじゃねぇけど…」
「けど、何だよ?」
涼が不満そうに眉を寄せた。
「アイツの事、騙してるみたいで嫌だなと思ってさ」
本音が言葉になって口から出た。
「しょうがないだろ?そうでもしなきゃ日下部、来てくんないんだから。それともお前、日下部の事、受け止めてやれんの?」
「それは…」
無理だ。
それができるならとっくにやってる。
俺は小さく首を横に振った。
「だったら俺にきっかけを作らせてくれよ」
涼が苦笑する。
「…ああ」
頷きながらも、それでも気分がすっきりしない。
また日下部を傷つけてしまうんじゃないか。
あんな顔をさせてしまうんじゃないか、不安になる。


「───蒼吾?」
不意に背後から声を掛けられた。
ヘラヘラと笑っていた涼の顔が、一瞬で真面目な表情に変わる。
振り返ると日下部が俺の後ろで突っ立てた。
胸元にレースの付いた黒のVネックのカットソーに、腰に巻かれたメッシュベルト。ブーツインしたスキニージーンズ。
真っ白なレザーのショルダーバッグを肩から掛け、黒目がちな大きな瞳をますます大きく見開いてこっちを見てた。
シンプルな格好をしてんのに、すっげぇ目立つ。
人目を引く。
さっき通り過ぎて行った男なんて、振り返ってまで日下部を見てた。
隣に彼女がいるのに。
それぐらい私服姿の日下部は目立ってた。
すげぇ大人っぽくて、綺麗だ。
涼も同じ。
間抜けにも口をぽかんと開けて日下部を見てる。
笑いがこみ上げそうになるのを堪えて、その間抜けな顔をしている涼を肘で小突いた。
涼が慌てて表情を引き締める。

「守口くんも一緒なの?」
予想外の面子に、交互に顔を見比べる。
「はじめまして!!俺、隣のクラスの守口涼輔っていいます!!」
涼がめちゃくちゃ緊張した表情で、頭を下げた。
自己紹介しなくても知ってるよ、隣のクラスだし。
それに敬語。
同級生相手に何言ってんだ、こいつ。
ぴりぴりと伝わってくる涼の緊張した態度に、思わず失笑する。
「うん。知ってる。蒼吾とバッテリー組んでる人でしょ?星稜中学のピッチャーやってた」
「ええっ!?知ってるんっすか!?」
「うん。蒼吾の試合、よく見に行ってたから」
困ったように笑う。
「くぅーーーーっ!!」
拳を握りしめて小さく唸ると、涼がガシッと俺の腕を掴んで顔を寄せた。
「すげぇ!すげぇよ、俺!!めちゃくちゃ嬉しいんだけどっ」
小さく呟く。
「あいつ、中学の頃からよく試合見に来てたからさ。星稜のピッチャーのお前はよく覚えてると思うよ」
中学最後の試合に負けたのは涼の率いる星稜だった。
それは日下部もよく覚えてると思う。
だから知らないはずはないんだ、涼の事。
俺が散々、すげぇピッチャーだって言ってたのも知ってるし。
ただ、クラスが違うから話すきっかけがなかっただけ。
「俺、なんか行けそうな気がしてきた」
「よかったじゃん」
「だからお前、さっさと帰れよ?」
「言われなくてもそうするよ」
俺は肩をすくめた。
「何?ふたりでこそこそ」
日下部が怪訝そうに眉を寄せる。
「そもそも買いたいものって、何?」
「ああ。それなんだけどさ。
涼が姉貴の誕生日プレゼントを買いたいらしいんだけど、何を買っていいのかわかんねぇみたいだから、一緒に選んでやってくんね?」
「お姉さんのプレゼント?私が?」
「そ」
「それなら私より葵さんにでも頼んだ方がよかったんじゃない?年上だし」
「葵?」
冗談じゃない。
あいつに頭を下げんのはごめんだ。
後々何かにつけて言われそうだし。
それにプレゼント選びはただの口実なんだから、日下部でなきゃ意味がないだろ。
「それに私、センスないよ?」
困ったように肩をすくめる。
「そんなことないっすよ!私服、めちゃくちゃ可愛いし!!」
俺の隣で涼が叫んだ。
言葉尻にめちゃくちゃ力が入ってる。
「だからぜひ、日下部に選んで欲しいんだけど。…駄目かな?」
「う〜ん…。私でいいの?」
「もちろん!!」
「じゃあ…」
少し困ったような笑顔で日下部が頷いた。
ちらりと俺を見た。
何か言いたそうな顔。
俺はそれを振り切るような勢いで、
「じゃ、後は頼むわ」
乗ってきてた自転車にまたがった。
「───え?蒼吾も行くんじゃないの?」
「俺は借りてたCDを返しに来たついで。あとはよろしくやって」
「よろしくって…」
「いいの選んでやって」
軽く日下部の肩を叩く。
じゃ、と去りかけた俺の手を日下部が掴んだ。
「…どういうことよ?」
耳元で囁く声が心なしか泣きそうな感じがして、小さく胸が疼く。
ごめん、日下部。
「蒼吾…っ」
いつもより艶のある唇が小さく動いて俺の名前を呼んだ。
普段、学校ではつけないようなリップを唇にのせてる。
たぶん。
俺と会う為に選んだような色。
園田の桜色の唇とかぶりそうなくらい、それに近い色をしてる。
「あいつ、いいやつだから」
そっと日下部の耳元で囁く。
「蒼吾っ」
顔が泣きそうなぐらい歪んだ。


それでも俺は、そんな日下部を涼に託して。
その場に置いてきぼりにして、自転車を漕ぎ出した。


たぶん、俺。
サイテーな事、してる───。





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魔法のコトバ*  Season9 comments(5) -
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Comment








こんばんわ〜☆
バッチリ読みましたよ!!
涼くん可愛いです 笑
でも、ちょっと悲しいシーンですね。
続き気になっちゃいます♪
では☆ 短文ですが・・・。また見に来ますね!!
from. 志歩 | 2007/04/25 21:28 |
●○●志歩さんへ●○●
おお!涼に対するコメントをいただくのは初めてで、とっても新鮮な気分です(笑)
小説の方は、悲しいシーンのまましばらくお休みです。ごめんなさい(汗)
来月のGW明けぐらいには再開できたらいいなと思ってますので、またちょこちょこ覗いてみてくださいね♪
from. りくそらた | 2007/04/25 22:24 |
こんにちはwww っていうかお久しぶりですww
GWどうですか??あたしは2日間だけ学校に行くのが面倒です; しかしその後4日も休みが・・・! あたしは休みは静岡に行く予定ですww りくさん達も休みを満喫してくださいねwww ではではww
from. さくら | 2007/04/30 11:17 |
「さくら」(仮)に、チャットですすめられてきてみましたぁ〜。
ええですね、ここ。「さくら」に感謝ですっっ!!!
from. アイ | 2007/04/30 11:27 |
●○●さくらさんへ●○●
いよいよGWですね。我が家もしばらく帰省するために小説の方はその期間、お休みです。再開は来週以降ぐらいを予定しております。
さくらさんもどうぞ満喫した連休をお過ごしくださいね。


●○●アイさんへ●○●
はじめまして、いらっしゃいませ。
おすすめしていただけるとは、とっても嬉しいです。たくさんの方に読んでもらえるのが理想ですから。
ありがとうございました。
from. りくそらた | 2007/04/30 15:53 |
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