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魔法のコトバ*  Season10 気持ちが動く瞬間-6-
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Season10  気持ちが動く瞬間-6-

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体を走るはずの衝撃は、いつまでたってもこなかった。
柔らかい何かに受け止められんだって、気づくまでそう時間はかからなかった。
痛みのかわりに温かいものが、私を包み込む。







「…っ、セーフ──────」

危機一髪のところで、佐倉くんが助けてくれたのだ。
腕の中に抱きとめて。



「大丈夫?」

ふわりと絵の具の匂いに混じって流れてくる佐倉くんの匂いは。
簡単に私の心をダメにする。
顔が上げられない。
まともに佐倉くんを見たら。
せっかく押さえていた気持ちがまた、溢れてしまいそうで怖いから。

「転ばなくてよかった」
そう言って笑う佐倉くんの笑顔は、今までと何ひとつ変わらない。
あんな事があっても普段通り、平気な顔をして笑う。
意識してるのは私だけ。
ああ、そうか。
バカだね、私。
佐倉くんが今までとなにひとつ変わらないのは、最初からそうだったから。
私に恋愛感情なんてなにひとつかなったから。
気持ちを知ったって、知らなかったって、なにも変わるわけがない。
佐倉くんにとって私は最初から、ただの友達。
特別でもなんでもなかった。
私はそれに、ずっと気付けなかったなんて──────。






「……ましろちゃん…?」



気がついたら。
頬を熱いものが伝ってた。
パタパタと顎を伝って流れ落ちたそれが、佐倉くんのセーターを濡らす。
佐倉くんは何も変わってない。
彼の気持ちは私が佐倉くんを好きになるずっと前から凪ちゃんに向いていて。
私なんて入り込む余地がないくらいに彼女を想ってたのに。
それにようやく気付いた自分が惨めで、恥ずかしい。



涙が止まらない。
抱えきれなくなってしまった気持ちが溢れて溢れて。
涙になって零れ落ちる。

少し困ったように覗き込む佐倉くんは、相変わらず何も聞かない。
必要以上に詮索しない佐倉くんの優しさ。
穏やかな優しさを浮かべてただじっと、私が落ち着くまで待ってくれている。





「……ごめん…。ごめん、ね………」


嗚咽が漏れる口元に手を当てながら。
何度も呟くごめんねという言葉に、佐倉くんが少し困った顔をした。


「どうしてましろちゃんが謝るんだよ? 謝る理由なんて、ないだろ?」
佐倉くんの言葉に静かに首を横に振る。




「…佐倉くん……。私、ほんとは知ってたの。見ちゃったんだ……」
「何を?」
「……佐倉くんの、スケッチブック──────」



あまり感情を露にしない佐倉くんが、動揺の色を見せた。
でも。
それはほんの一瞬。
「……知ってる。気付いてた」
そう言って小さく笑った。




「…なん、で……?」
どうして知ってるの?
「あの日、ましろちゃんの代わりにアイツが待ってた。美術室で蒼吾がオレを待ってて、スケッチブックのことを聞いた」
「………」
「蒼吾がさ、すごい仏頂面で感情を押し殺して言うんだ。
『園田を傷つけんな。気持ちに答えてやれないなら、必要以上に期待させんな』って。蒼吾の頭の中はさ、いつもましろちゃんのことでいっぱいなんだよ」
佐倉くんの言葉で、蒼吾くんが触れた体温をリアルに思い出した。
カーって頬が赤く染まる。
「だから俺もそっくりそのまま、蒼吾に返してやったけど」
佐倉くんが困ったように笑う。




「……オレも蒼吾も知ってるよ。
ましろちゃんの…、日下部の気持ちが誰に向いているのか。自分じゃない他の男を想ってることなんて、とっくに気づいてる。
それでも、オレも蒼吾も諦めきれなかった。ずっと好きだった気持ちを簡単に手放せなかった──────」


佐倉くんが描き溜めていた凪ちゃんへの想い。
それを佐倉くんの口から聞くまで信じられなくて。
聞いても、認めたくなくて。
佐倉くんの変わらない優しさに甘えて、好きだという気持ちにしがみついてた。

好きで。好きで。
大好きだった。
春の陽だまりみたいに暖かに笑う顔も。
キャンバスに向かう凛とした横顔も。
鮮やかな世界を描き出す繊細な掌も。
ましろちゃんって呼んでくれる、優しいトーンの声も。
居心地がよくて安心できる佐倉くんの隣が大好きだった。









でも。



もう、いつまでも佐倉くんに甘えてられない。





「大丈夫?」
優しく差し伸べてくれる手を。
私は押しやった。
初めて佐倉くんの優しさを拒絶する。




「…もう、大丈夫だから……。私は大丈夫だから…。もうこれ以上、優しくしないで………」


でないといつまでも期待してしまう。
佐倉くんのこと、諦めきれないよ。








「…ましろちゃん……」


差し出した手がためらうように宙を舞って。
ぱたりと降ろされた。







心が。
空っぽになった。




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魔法のコトバ  Season10 comments(4) -
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Comment








りくそらたさん、初めまして!
いつも楽しみに読んでいます。
ましろちゃん大好きです♪
恋愛ってすごく難しい。4人みんな片思い。
淡い片思いをリアルに、上手い空間表現で、読むと
心がキュンとします。
今では、一番好きなブログなんです。これからも応援しています。それから、ましろちゃん頑張れ!!
from. ミカ | 2007/05/30 18:02 |
●○●ミカさんへ●○●
はじめまして!
一番好きだなんて・・・。最高の褒め言葉をありがとうございます〜〜!!とても嬉しくて何度もコメントを読ませていただきました。
ましろが大好きですか〜。共感していただけてとても嬉しいです!ましろと一緒にこれからもきゅんきゅん(死語・・・?笑)してくださいね〜♪
from. りくそらた | 2007/05/30 19:26 |
こんばんは!
バトンありがとうございました♪

ましろちゃん、とうとう佐倉君本人の口から気持ちを聞いてしまいましたね…
見てしまったけど、分かっていたけど、言葉で聞くのは、特別です。
辛いのは皆も同じなのに、それは分かっているのに。
今後、彼女がどう動いていくのか気になります。
続き頑張ってください!!
from. 史間 | 2007/05/31 00:02 |
●○●史間さんへ●○●
バトン。
こちらこそありがとうござました。あんなものでよろしかったでしょうか(汗)おもしろい回答ができなくて申し訳ないです。

言葉の重みは大きいですよね。はたしてそれがましろにとってどう響くのか・・・。どうぞ続きをお楽しみに〜♪
from. りくそらた | 2007/05/31 09:50 |
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