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魔法のコトバ*  Season10 気持ちが動く瞬間-7-
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Season10  気持ちが動く瞬間-7-

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いつものように帰り支度をしてた頭をこつん、って。
後ろから誰かに叩かれた。
「…っ、た……」
頭をさすりながら振り返ると、真後ろに蒼吾くんが突っ立っていて。
ドキリと鼓動が跳ねた。
「今日も行くのか?」
でっかい背中を丸めて間近に私を覗き込む。
思ったよりも近い距離に、カーッと顔が火照っていくのが鏡を見なくてもわかった。
こういうやりとりは、慣れてない。


「それ、授業のノート?」
「……うん」
「真面目だなぁ、園田は」
束にしたルーズリーフを横目に、蒼吾くんが笑う。

「アイツ、大丈夫?」
「…よくわからないけど……まだ、熱が高いみたい」
「会ってないのか?」
「…うん」
「毎日、寄ってんだろ?」



「……うん…」



あの日から。
凪ちゃんとは会えないままだった。

ごめんってメールの意味も。
凪ちゃんの気持ちも。
私はまだ、知らないまま。




「そっか」
眉根に皺を寄せて、珍しく難しい顔をしていた蒼吾くんが。
「これ、やるわ」
なにやらポケットから取り出して、それを私の手に握らせた。
「なに…?」
「マスク。行くなら持ってけ」

そう言って手渡されたマスクは、淡いピンク色のガーゼの端っこに、キティちゃんのワンポイントが付いた可愛いもの。
あまりにも蒼吾くんと不釣合いのマスク。

「…どうしたの、これ?」
「家の救急箱から取ってきた。
深青が給食当番で使うから、買い置きがいっぱいあるんだよ」
「みお?」
「下の妹。桜塚小学校の6年生」
可愛いお弁当を作るお姉さんの話は聞いたことがあるけど。
妹さんがいるなんて初耳。
そういえば私。
蒼吾くんのことって、ほとんど知らない……。


「オレからもらったって、言うなよ?」
「…どうして?」
「ピンクでしかもキティなんて、恥ずかしいじゃん」
「…そんなこと……」
妹さんがいるなら思わないよ。
「オレが嫌なんだよ」

ガッって。
でっかい手のひらが私の方へと伸ばされたことにびっくりして、思わず目を瞑ると。
そのまま私の頭を蒼吾くんが、くしゃくしゃっと撫でた。




「───蒼吾ーっ! 部活行こうぜ!!」
「おうっ! 今行く!!」
誘いに来た守口くんにでっかい声で叫んで、私の頭をぽんぽんって、軽く叩いた。
「日下部によろしくな!」
そのままでっかいスポーツバックを軽々と肩に担いで、廊下の向こうに消えて行く後姿を見送りながら。
私は、固まってしまった。











び。
びっくりした……。





蒼吾くんが、私に。
あんなふうに触れるのは初めて。
頭を撫でたり、間近で顔を覗き込んだり。
そういうことをする人じゃなかったから。
あまりにも不意打ちな行動すぎて、心臓がバクバクゆってる。

ああいうこと、する人だっけ……?
守口くんとか、仲のいい男友達とじゃれ合って……なんていうのは、よく見かけるけど。
女の子にボディタッチ、軽々できるような人じゃない。
幼馴染の凪ちゃんにだって、してるの見たことがない。
もしかして、ああいうのは……私に、だけ──────?







────── もうオレ、遠慮しねえから。お前にも、日下部にも ──────


真摯な眼差しで告げた、あの日のコトバを思い出す。






「まいっちゃうなぁ、もう……」


あれから蒼吾くんは普通だ。
私に好きだって言ったことなんて忘れたかように、普通に接してくれる。
でも時々。
こんな風にすごく積極的なことがある。
そのたびに、どうしたらいいのかわからなくなる。
蒼吾くんの気持ちは伝わってるから。
片思いの辛さはよく知っているから。
あんな思いを蒼吾くんにもさせているのかもしれないって思ったら。
どうしたらいいのかわからなくなる。
もう、誰も傷つけたくなんかないのに──────。



きっと私はまた、蒼吾くんを傷つける。
彼の気持ちには応えられないから。
それでも蒼吾くんはいいって言う。
絶対に諦めないからって、真っ直ぐに気持ちをぶつけてくる。
どうすればいいのかわからない。


人を傷つけるのはイヤ。
傷つくのは自分だけでもうたくさん。
いつかは出さないといけない答え。
私はまたきっと、蒼吾くんを傷つけてしまう────────。












いつもの駅をひとつ通り越して、凪ちゃんの家に向かった。
閑静な住宅街の一角にあるシックなコンクリート調の家の前で立ち止まる。
『KUSAKABE』って書かれたシルバーのネームプレートのインターホンを鳴らす。
キンコン、って。
鐘のような軽快な音が鳴って、私は一歩下がって玄関先に立った。





「…あれ?」


いつもならここで、インターホン越しに凪ちゃんのお母さんが出て。
来客者を確認してから、玄関を開けてくれる。
そして。
『凪、まだ熱が高くて寝てるの。せっかく来てくれたのにごめんなさいね』
って。
凪ちゃんと同じ顔で優しく笑ってくれるのに。
今日は誰も出てこない。
「…留守、かなぁ?」
それとも気付いてないだけ?
あまりしつこく鳴らすのは失礼だから、もう一度だけ。
インターホンを押してみた。



キンコーン…。



鐘の反響音が玄関先まで聞こえてはくるけど、やっぱり誰も出てこない。
病院にでも行ってるのかな。
そういえば。
ガレージにあるはずの車がない。
ピカピカに磨かれた黒のオデッセイ。
それがないってことは、おばさんは──────留守。
凪ちゃんは……まだ寝てるのかな。



仕方なく私は、ファイルにノートと授業のプリントを挟んで、郵便ポストに入れた。
カタン、って。
ポストに落ちた音を確認して、一度だけ2階を見上げた。
一番南端にある凪ちゃんの部屋は、相変わらずカーテンが閉まったまま。
窓いっぱいに水滴が付いてる。
たぶん、凪ちゃんは中にいる。
まだ熱が下がってないのかな。
早く元気になればいいのに。
そう祈りながら凪ちゃんちを後にしようと踵を返したとき。








「────────ましろ……?」





ドアが開く音と共に声が聞えた。
私は弾かれたように、それを振り返る。





「……凪、ちゃん───────」









声が。
ちょっぴり震えた。







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魔法のコトバ  Season10 comments(3) -
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Comment








いや〜wwwおもしろくなってきましたねww
蒼吾といい凪といい佐倉くんといい・・・
みんなみんないい展開になってきてwww
これからが楽しみですvvv
HKパソ禁にされちゃいました〜・・・
っていうか父にパスワードかけられて使えなくなっちゃいました。。。。。。 パスワードのヒントはyes・・・らしいんですけどさっぱり分かりません;; 父も厳しい人です・・・
ではでは☆いつ来れるかどうか分からないですか、これからも頑張ってくださいね♪
from. さくら | 2007/06/01 19:41 |
ついに凪と対面!
ドキドキします。

ドキドキといえば、蒼吾!くしゃくしゃって!(何?)
そんなんされたら、私だったら蒼吾に惚れる!(安ッ)
瞬殺ですよ!
これが「お互い好きだけど告白できない」とかいう設定なら、単純に胸きゅんなんですがね…
from. 史間 | 2007/06/02 12:38 |
●○●さくらさんへ●○●
おお!お久しぶりです。
いい展開になってきましたか?えへへ。
ましろや蒼吾にもいろいろと微妙な心の変化が現れてきたようです。どうぞこれからをお楽しみに♪

PC禁止令ですか!?それはお気の毒に(涙)
早く今まで通り使えるようになるといいですね!


●○●史間さんへ●○●
ついに対面です!
泥沼になるのか、それともあっさり終わるのか。乞うご期待!!(笑)

くしゃくしゃって。
王道ですよね〜(笑)でもこういうのが好きなんです。確かにされたら胸きゅんです(笑)
でもましろにとってはいろいろと複雑で、そこまで単純なものではないようです〜。困ったもんだ(笑)
from. | 2007/06/03 10:02 |
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