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魔法のコトバ*  Season10 気持ちが動く瞬間-11-
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Season10  気持ちが動く瞬間-11-

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凪ちゃんと話をして。
胸の奥につっかえていたものが少し、軽くなった気がした。
いっぱい泣いたらすっきりした。


凪ちゃんに言われて、初めて蒼吾くんのことを考えてみる。
頭のてっぺんからつま先まで。
凪ちゃんや佐倉くんの気持ちの行方とか。
そういうのを抜きにして、蒼吾くんのことだけを。
そうしたら、意外に彼のことは知らなくて。
一緒に過ごした時間は長いような気がしてたけど、私は蒼吾くんのことをほとんど知らなかった。

癖。
好きなものや苦手なもの。
仲のいい友達。
毎日頑張ってる部活のポジション。
蒼吾くんが今、どんな表情で笑うのか──────。


断わることばかりしか考えていなかった私には。
凪ちゃんっていうフィルター越しでしか、蒼吾くんが見えてなかった。
それを蒼吾くんはちゃんと見抜いてた。
だから。
『簡単に答えだすな』って。
ちゃんと俺自身を見てくれって。
“親友の好きな人”っていう境界線を引いてしまった私に。
それを伝えたかったんだ。











2学期末のテストが始まった。
テスト開始と同時に復活してきた凪ちゃんは、一週間も休んでいたのが嘘のようにスラスラと解答欄を埋めていく。
出席番号順に座りなおした席で、その様子を後ろの席から眺めながら、私はようやく最後の問題を解き終えた。
まだ時間は充分にある。
ホッとひと息吐いて窓の外に視線を動かした。
「…雨でも降るのかな」
冬の寒空は今にも降り出しそうなほど白く雲っていて、北風が時折、窓を鳴らす。
カチャカチャと、シャープペンを動かす音と、見回りの先生の足音だけが教室に響いて、すごく静かだった。
賑やかな笑い声が飛び交う普段の教室とはまるで別空間な心地よさに、ゆっくりと息を吐く。


ぼんやりと視線を動かしたその視界の端に。
でっかい背を丸めて問題用紙とにらめっこしている男子生徒の姿が映った。
野球少年らしい短髪頭をカシカシと掻きながら、肘を付いた手のひらに頬を乗せて、問題用紙を睨みつける。
握られたシャープペンは問い15ぐらいでずっと止まったまま、動く気配がない。
教科は英語。
表情は見えないけれど、問題に向かう顔は、きっとしかめっ面だ。
その表情が安易に想像できて、思わず笑みがこぼれた。
蒼吾くん、ちゃんと勉強したのかな。
今度は追試にならないといいんだけど……。


他人事のようにそんなことを考えながら、ぼんやりその背中を見つめた。
ふと。
その背中が何かに気付いたように顔を上げて、窓の外に視線を泳がせた。
横顔はやっぱり眉根に皺を寄せた難しい顔をしていて、思わず吹き出しそうになった。
カツン、と。
近くに先生の足音が聞こえて。
私は慌てて緩みきったその表情を引き締めて、下を向いて誤魔化した。




…あぶない……。

『テスト中に、なに見てるんだ!?』って、怒られるところだった。
ゆっくりと私の横を通り過ぎる先生の後姿を見送って、ホッと胸をなで下ろし、また視線を戻す。
蒼吾くんが見てた視線の先が、どうしても気になった。


もう一度、視線を戻したときには。
しかめっ面の横顔は、もう跡形もなくて。
柔らかな表情で外を見つめる蒼吾くんの横顔が視界に飛び込んだ。












………なに?




同じように私も、窓の向こうに視線を送る。











……あ──────。




窓の向こうに、白いものが見えた。


ちらり、ちらり。
それは空から舞い落ちる。








雪だ………。





今年初めての雪模様に、思わず表情が和らぐ。
ふわり、ふわり…。
それは柔らかに空を舞って、地上に舞い降りる。
寒いのは苦手。
だけど雪を見ると心が弾んじゃう。
寒いはずなのに、空から舞い落ちる雪のさまを見ていたら心が和む。
芯までほっこり暖かくなる。

険しい表情をしていた蒼吾くんはその表情を和らげたまま。
また、問題用紙に視線を落とした。
止まっていた手が動き出す。


こんなに蒼吾くんを見るのは久しぶりだった。
今までになく、穏やかな気持ちでその背中を見つめる。
肘を付いた手のひらに顔を乗せて、気だるそうに問題を解く大きな背中。
時折、問題に行き詰まるたびに顔を上げて、器用にシャープペンを回す。
カチャリ、カチャリ。
蒼吾くんの手の甲で、空色のシャープペンがくるくると回る。







…あ……。


あの癖、知ってる…。



昔、見たことがある。
隣の席だった時、授業のたびに器用に回ってた蒼吾くんのシャープペン。
カチャリ、カチャリって。
隣から聞こえてくる小さな音に耳を傾けて。
隣にいるだけで、ドキドキして。
笑ってくれるたびに、涙が出そうなくらい胸の奥がきゅってなる。


初めて恋を意識した小学4年生の春。
窓の外を見るのが好きなんだ、って。
私の隣に座った男の子。
校庭の向こうに桜が舞う風景を彼が教えてくれた。
蒼吾くんと一緒に見た。
一緒に笑った。
大好きだった、あの笑顔が。
いたずらっぽく笑う顔も。
顔をくしゅくしゅにしてはにかむような笑顔も。
大きな口をでっかく開けて豪快に笑う太陽みたいな笑顔も…。
淡い淡い初恋の記憶。

今も。
あの笑顔は変わらないのかな………。





そっか…。



私の初恋って、蒼吾くんなんだ。






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魔法のコトバ  Season10 comments(5) -
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Comment








ましろちゃんの心の変化、
とても繊細に丁寧に描かれていて、感動しました。
凪というフィルターをとっぱらって(凪ゴメン)、
ちゃんと蒼吾を見た瞬間。

初恋だって、気づいた瞬間。

いい意味で胸がきゅっとなりました!

蒼吾、よかったね(←まだ違うかもしれんのに
テストの結果もよければいいな(←そこを今応援してどうするよ
from. 史間 | 2007/06/09 00:05 |
とてもとてもお久しぶりです、お元気でしょうか?紗愛です。ちょっとした事情でパソの前に座る事が難しくて本当にご無沙汰でしたが、ちょいとみぬまに...そう動きましたか...んん〜〜っ。

ましろー、やっと落ち着いて蒼吾の事考えられるようになったね。今までパニックの中でしか向き合えなかったからね〜。よかったよかった。その調子でちょっとずつでも自分のペースで動いてね♪。
凪〜、抱き締めてあげたい!!そんなとき(Season10-10)まで委員長をしなくて良いんだよ!あんたは何処で泣くのよ、何処で叫ぶのよ!!あんたって子は...何時になったら本当に笑えるんだろうね...
怒...男性軍二人(この呼び方で上等!あ、それと涼くんだっけ、君も。)そこに座れ!!
あんたらこのばかたれ軍団!!この猪突猛進、考え無し、二重人格!!少しは女の子の気持ちも考えろーーー!!。

....すみませんおみぐるしいところを御見せ致しました...。どうぞ暴言の数々お許し下さいマセマセ(でも少し気が晴れました...へへっ)。

それでもこの5人好きなんですよね〜、危なっかしくって。それでいて優しくて(男の子の優しさはまだまだだけどね(笑))...みんなへこたれるな、俯くな、笑ってね。
それではまた寄らせていただきま〜す。
from. 紗愛 | 2007/06/09 16:49 |
週末、帰省でPCから遠ざかってました(汗)お返事が遅くなってしまって申し訳ないです。

●○●史間さんへ●○●
蒼吾、よかったですか〜。弱虫ましろなので、まだ初恋に気付いた程度なのでここからがまだまだ長そうですが(笑)少しは視野を広げて考えられるのでしょうか(苦笑)
蒼吾のテスト結果、きっと今回もやばそうですよね(笑)ご想像通りだと思います(笑)

●○●沙愛さんへ●○●
おお!お久しぶりでございます〜〜。
沙愛さんの久しぶりの熱いコメント、爆笑でした〜〜(笑)沙愛さんは女の子の味方なんですね。
涼を含め、男性陣。しっかりカツを入れさせていただきました(笑)
from. りくそらた | 2007/06/11 09:08 |
こっちにコメントするのは久々〜〜(笑)
雪のエピソードよかったよ♪
なんか雰囲気がすごい懐かしかった(笑)これぞ、青春!(←こういうのが多分古いんやろうね(笑))
今回はとっても蒼吾のよさが出てたねぇ☆早く初恋の気持ちを思い出せ!ましろ!!みたいな。
from. はづきゆみ | 2007/06/11 09:24 |
●○●はづきへ●○●
はづきにはいろいろ突っ込まれまくりだったので、エピソードをプラスしてみました・・・(笑)青春を懐かしんでもらえたならよかったよ。
某ドラマも放送終了してしまったけん、こっちで懐かしんでいってちょうだい(笑)また私生活の忙し〜いのが落ち着いたら、読者様共々、新作イラストをお待ちしておりまする。
from. りくそらた | 2007/06/11 22:56 |
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