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魔法のコトバ*  Season10 気持ちが動く瞬間-12-
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Season10  気持ちが動く瞬間-12-

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チャイムが鳴って、真っ先に席を立ったのは蒼吾くんだった。
「すっげー! 雪じゃーーん!!」
子どものように目を輝かせて、窓を開け放つ。
「夏木っ、寒いっ!!」
窓際の席の子が怪訝そうに叫ぶのもお構いなしに、身を乗り出して外を眺める。
「これ、積もったら明日のテスト、ナシになるんじゃねーの?」
「んなわけないだろーが!」
能天気な声を上げる蒼吾くんの頭を、担任の新垣先生がパシリと叩いた。
どっとクラスが沸いた。
「…ってぇ〜〜」
「まだ答案用紙も集めてないのに、さっさと席に着かんか!」
「…んだよー。雪を喜ぶ生徒の純粋な気持ちを踏みにじる気かよー」
「何が純粋だ。お前はテストをどうやってサボろうかばっかり考えてる不純な動機だろうが」
的を得た先生の言葉に、うっと言葉を詰まらせる。
「テストは出来たんだろうな?」
「先生ー、それ。そいつに聞くのは間違ってまーす」
クラスメイトの発言に、ドッと教室が沸いた。
「うっせーよっ」
「うるさいのはお前だっ」
ポコンって音がして、先生が丸めた教科書で蒼吾くんの頭を軽く叩いた。
「センセ、それ、体罰」
「体罰もクソもあるか。口で言ってわからん生徒には、多少の体罰は必要だっ。保護者や生徒を怖がってるようじゃ、今の時代教師なんて務まらんからな」
と、教育委員会が聞いていたら眉をしかめてしまうような問題発言を、先生は偉そうにふんぞり返りながら堂々と言ってのけた。
「大体、今のそのお前の頭では志望大学へは絶対行けんぞ。わしはそのことも考慮して、こうして言ってるんだ。まだ1年だからといって甘えた考えを持ってるお前にな!
野球に選抜に甲子園? 大いに結構!! 青春は一度っきりしかないからな。存分に楽しめばいい。
だが学生の本分は勉強だ。学業をおろそかにするヤツは、即刻部活なんぞやめてもらうからな。たとえ校舎が埋まるぐらい雪が積もったとしても、赤点取ったら這ってでも学校に来てもらうつもりだ」
覚悟しとけよ?って。
先生は不敵な笑みを浮かべて、蒼吾くんを瞬殺してしまった。

クスクスと失笑の漏れる教室の中。
「答案用紙、集めるぞー」
先生は途中になってしまった答案用紙回収に乗り出した。
後ろの席から回ってきた解答用紙に自分の用紙を重ねて、前のクラスメイトに回す。
そっと視線を戻すと、垂れるように机にうつ伏す大きな背中が映った。
さっきまでの元気はどこへやら。
きっと。
反論ができないくらいにテストの出来がよくなかったんだ…。
いつもの大きな背中が小さく見えて。
そのギャップに思わず笑みがこぼれてしまう。



「蒼吾っ、帰ろうぜー」
「んー」
「先、帰るぞ!?」
「んー……」

先生の言葉がかなり堪えた様子の蒼吾くんは、だらりと机にうつ伏したまま。


「マック、寄ってかねーのか? マック!!」
痺れを切らして叫んだクラスメイトのマックという単語に。
ピクリ、と蒼吾くんの体が反応して、小さく丸めた体をむくりと起した。


「行く」


「じゃあ、さっさとしろや」
さっきまで元気がなかったのが嘘のように、エンジンがかかる。
「先、行ってていいぞ!」
入り口に固まってた男子の集団にヒラヒラと手を振って先に行かせると、自分も急いで帰り支度をはじめる。
でっかいナイキのスポーツバッグに、乱暴に教科書やノートを詰め込んでいく。
ノートの端っこが折れたって全然、気にしない。
かなり雑。
荷物を詰め終わった蒼吾くんは、クラスの中でもひと際でっかい体を、うーんと空へと伸ばした。
ますます彼がでっかく見えた。


ふと。
背伸びをしたまま泳いだ視線が、ゆっくりとこっちを振り返った。


…まずい…っ。



慌ててそっぽ向こうとしたけれど。
気付いたときにはもう遅くて。
何かを探すように泳がせた視線は、そのまま私の視線を絡め取ってしまった。






見てたの、ばれた…。






目が合った瞬間。
蒼吾くんの目が大きく見開かれた。





…え?



…なに……?




内心、かなりヒヤヒヤした。
どうしたらいいのかわからなくなってしまった私の視線は、それでも蒼吾くんに絡め取られたまま離せなくなった。
あからさまに顔を逸らしてしまうのは失礼な気がして。
それでも限界は短くて。
気まずい雰囲気に耐えられなくなった私は。
じわり…と、視線を外そうと目を泳がせた。
そうしたら。
じっとこっちを見てた真ん丸い目が。
ぎこちなく、にーっと笑って特大ピースを作った。






蒼吾くんの口が動く。





『テ・ス・ト、余裕!』






ずるり、と。
思わず椅子から転げ落ちそうになった。




…余裕、って。
大丈夫なのかな、その自信。
さっきまでうな垂れるほど、気を落としてたっていうのに。
思わず零れてしまった苦笑いに、蒼吾くんは再び笑い返してくれて。
でっかいスポーツバッグを肩に担いで、クラスメイト達と一緒に廊下の向こうに消えて行った。



いつだって蒼吾くんは元気で。周りにはいつも友達がたくさんいて。
いつも楽しそうで。笑い声が絶えなくて。
それは4年経った今もちっとも変わらない。
あの頃の私は、そんな彼にいつも元気をもらってた。
ふとそんなことを思い出して。
胸の奥がざわりと、音を立てた。







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魔法のコトバ  Season10 comments(2) -
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Comment








蒼吾かわいいです!
ましろちゃん視点の彼の描写が、今までになく細かくて、
こっちがどきどきしてしまいますよ〜
だいぶ見てますね…
続きが気になります〜
from. 史間 | 2007/06/13 08:01 |
●○●史間さんへ●○●
だいぶ見てますね・・・に、大爆笑!
そうです、かなり見てますよね(笑)
ましろから見る蒼吾は小学生期以来なので、とても楽しんで書いています。こういう男子ってクラスにいたよな〜と、過ぎ去りし青春を懐かしみながら・・・(笑)
from. りくそらた | 2007/06/13 08:35 |
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