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魔法のコトバ*  Season10 気持ちが動く瞬間-13-
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Season10  気持ちが動く瞬間-13-

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あの日。
蒼吾くんの肩越しに見えた雪は積もることなく、冬の空に溶けるように消えてしまった。
雪が積もって学校が休みになるとか、凪ちゃんのインフルエンザをもらって出席停止になるとか。学級閉鎖になるとか。
蒼吾くんの『テストを受けなくて済む野望』はどれも叶うことのないまま、平穏無事に、2学期末のテストは終了した。
最後の答案用紙が回収された後、テストの終わりに歓声を上げるクラスメイト達に手を振って、私は教室を後にした。
今日から部活動が解禁。

私はまだ。
行く気になれない。
佐倉くんと顔を合わせて普通にしてられる自信がまだなくて。
あの日からずっと、美術室には顔を出せないままでいた。



「おーい!」
廊下を歩いてると声がした。
「おーいってば!」
誰かを呼んでる。


「園田ちゃーーん!!」



……園田、ちゃん…?



呼ばれた名前にぴくりと体を止めて、恐る恐る声がした方を振り返った。
“園田ちゃん”なんて。
そんな風に私を呼ぶ、友達の顔が思い浮かばない。





「やっと、こっち向いてくれたぁー」



振り返ったその先に。
屈託ない笑顔を振りまきながら。
蒼吾くんと同じような短髪頭の野球少年が隣のクラスの窓から身を乗り出して、手を振っていた。
思わずキョロキョロと辺りを見回す。



え…っと。
やっぱり、私が呼ばれてるのかな…?



「だーからっ、園田ちゃんを呼んでるんだって!」
おいでおいでと手招きをされた。

あの…。
私、守口くんのことって、よく知らないんだけど…。


身を乗り出して手を振っていたのは、隣のクラスの守口くん。
蒼吾くんの部活仲間で、バッテリーを組んでる関係もあって、すこぶる仲がいい。
よく一緒にいるのを見かける。
そういえば雰囲気も蒼吾くんとよく似てるかも。
ちょっと前まで凪ちゃんのことが好きだった。
…だった、って。
今も現在進行形なのかな?
その辺はよくわからないけれど。

でも。
私と守口くんの共通点はなくて、一度も話したことがない。
だからどうして彼が私を呼び止めたのか、わからない。
それに。
園田ちゃん…?
親しげに呼ばれる理由は何?
ますますわかんない。


「もう帰んの?」
「…はい」
「部活は?」
「休み、ですけど…」
「……なんで同級生相手に、敬語?」
不満そうに守口くんが眉を寄せた。


だって。
あなたのこと、よく知らないんだもん…。


「ま、いいや。
悪いんだけどさ、これ。蒼吾に渡してやってくんない?」
そう言って窓越しに袋を突きつけられた。
「…え」
「俺、今日これから委員会あるんだ。体育委員会!」
どうして私が…?
「どうせ帰るだけだだろ? 暇そうじゃん!」

どうせ帰るだけ?
暇そう??

そのセリフにむっとしかけた私に。
「とにかく時間ないからさ、渡しといてよ! アイツ、屋上で弁当食ってると思うからさ」
有無を言わさず白いレジ袋を突きつけた。
「あ…」
「俺からの愛の宅急便&おまけ〜」
は?
「そう言って渡しといて!」
「…はぁ……」

守口くんはすごく強引で。
意思の弱い私はそれを断る事もできずに、廊下を走り去る後姿を見送るしかできなかった。











屋上へと続く重い鉄の扉を開けると、北風がびゅうっと吹き込んできた。
風にさらわれる長い髪を押さえて、重い扉を閉める。
ぶるりと一度体を震わせた後、蒼吾くんの姿を探す。
給水タンク裏の日当たりのいい場所に、彼のでっかい背中を見つけた。



「────涼。遅っせ…、え…?」
足音に気付いて振り返った顔が、目をまん丸にした。
「園…田?」
え、なんで…?
って、見上げた顔に書いてある。

「帰りに守口くんに捕まって…。これ…」
預かってた袋を恐る恐る、蒼吾くんに差し出した。
「アイツは?」
「体育委員会だって…」
「委員会?」
怪訝そうに眉を寄せる。
「…ふーん。で、なに、これ?」
「…“愛の宅急便とおまけ”…って…」
「…なんだよ、それ」
蒼吾くんがますます難しそうな顔で眉を寄せる。
「守口くんが、そういえば分かるって…」
蒼吾くんは首をかしげながら、受け取った白いレジ袋を覗き込んだ。
「ああ…」
ぷっと吹き出す。

「愛の宅急便?」

そう言って、袋から大きなメロンパンを取り出して私に見せた。
そこにはハートの形に切り取った紙が貼り付けられていて。
『涼くんからの愛の宅急便。園田ちゃんと食べて(ハートマーク)』
って汚い字で、そう書かれてあった。



…愛の、宅急便って…。
園田ちゃんと食べて、って…。


それって…────。


ようやく意味を理解した私の頭が、カーッって湯気を上げて蒸気した。
守口くんが私を知ってるわけも。
“園田ちゃん”って親しげに呼ぶわけも。
私にわざわざ蒼吾くんに持っていくように頼んだわけも。
急速に理解した。




あんなに仲のいい守口くんが、蒼吾くんの“好きな子”を知らないはずがない。
“愛の宅急便とおまけ”っていうのは。
おまけがレジ袋に入ったメロンパンで、愛の宅急便っていうのが…。




…私……。










ひゃぁーーーーーっ!!!






そういえば今日。
委員会なんてあったっけ??
テスト終了日早々、委員会なんてするの?
…ていうか。
隣のクラスの体育委員って、バスケ部の人じゃなかったっけ。
背の高い、ごっつい人。





…は、はめられた……。




「園田、平気?」
そのことに改めて気付いた馬鹿な私に、蒼吾くんが聞いた。
くくって、笑いを押し殺してる。
「涼も園田も、単純すぎ。笑える…」
肩が揺れた。

「それに、さ。これ、何かわかるか?」
でっかいメロンパンに貼られた、不恰好なハートの紙。
風に揺れてヒラヒラとめくれた裏に、見覚えのある数式がずらり。



…これって。
さっきの数学のテストの問題用紙なんじゃ…。



「アイツらしーっ」
蒼吾くんが腹を抱えて笑った。
ハート型に切られた数学の問題用紙はひどくギザギザしていて、愛の宅急便って言葉を聞いてないと、ハートの形だってわからないぐらいに不恰好。
「アイツ、明日の数学の授業、どうするんだろうな?」
数学の鈴木先生、すごく怖いのに。
問題用紙をこんなにしたとわかったら、きっと拳固が飛ぶ。
明日を思うと、守口くんがものすごく気の毒になった。





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魔法のコトバ  Season10 comments(2) -
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Comment








おおおおお!
守口くんが出てきた時点から、
「来るぞ、これは来るぞ……!」
と、わくわくしながら拝読しました♪

そして、
来た――!(笑)
もう、守口くんたら大胆♪ましろちゃんだから通用したんだろうけど〜
(凪ちゃんだったら、こうはいかないはず)

もう、意識しはじめたばっかりのましろちゃんには、ちょっと刺激が(!)強すぎるのでは…?

なんて、わくわくしながら続き待ってます♪
from. 史間 | 2007/06/14 01:34 |
●○●史間さんへ●○●
あはは(笑)読まれてましたか〜〜。
これぞ恋愛小説(少女漫画風?)の王道!!を突っ走っております。えへへ。
蒼吾だったらやらない事を涼が、凪だったら引っかからないことをましろがやっちゃってます。単純すぎて、書いていてとっても楽しい(笑)
from. りくそらた | 2007/06/14 08:54 |
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