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魔法のコトバ*  Season10 気持ちが動く瞬間-15-
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Season10  気持ちが動く瞬間-15-

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その日の朝は、すごくだるかった。
ピピピッピピピッ……。
目覚まし時計の代わりに、鳴り響く電子音。
36度3分。
平熱。

昨日は夜遅くまで本を読んだ。
いろいろ考えてたら眠れなくて。
だからかな。
頭の芯が、まだボーっとする。
太陽の光を浴びることで気だるい体を無理矢理起そうと、カーテンを勢いよく開けた。






「……う、そ…ぉ…」

窓を開けると眩いばかりの白が目に飛び込んできて、私は思わず声を上げた。



「…雪だぁ……!!」


いつから降ってたんだろう。
遅くまで起きていたはずなのに、ちっとも気付かなかった。
気だるさなんて吹っ飛ぶぐらい一面の銀世界。
朝日がどこまでも、キラキラと真っ白な雪に反射する。
まだ、誰も足跡を付けていない真っ白な雪原に早く踏み入れたくて、私は階段から転げ落ちそうな勢いで準備を始めた。











冬の匂い。冬の音。
切るほどに冷たい冬の空気が頬を撫でるけれど、そんなのちっとも平気。
凛と張り詰めたこの冬の空気が大好き。
澄んだ空気にピリリと背筋まで伸びちゃう。
分厚いコートを制服の上に羽織って、マフラーに手袋。
しっかり完全防備は、長い間、外にいても大丈夫な合図。
はぁ、っと吐き出す白い吐息が、今日は雪の白さに負けてる。
新雪を踏みしめると。
キュ。って、乾いた音がした。



「…ふふ…っ。ふふふふ……っ」


その音が嬉しくって、子どものようにはしゃいでしまう。
顔が緩んでしまってしょうがない。

ましろのしろは雪の白。
真っ白に雪が積もった朝に生まれたのよ。
雪が降るたびに、ママから何度も聞いた話。
だからかな。
雪は大好き。
ずっと。ずっと。積もってたらいいのに。





「…ましろ、変」
突然、後ろから声が降ってきて。
「おはよ」
振り返ると、いつもと変わらない綺麗な表情で、凪ちゃんが笑ってた。
「メールを見てから、急いで準備したよ。ましろ、突然すぎ!」
ちょっぴり怒った口調で、でも笑いながら、凪ちゃんが言った。
積もった雪が嬉しくって。早く外に出たくて。
いつもよりも1時間早く待ち合わせた凪ちゃんと、電車に乗り込んで学校に向かう。
「子どもじゃないんだからさ」
なんて言うわりには、凪ちゃん。
すごく嬉しそうなんだけど。
雪の白は、人の心も真っ白にしてくれる魔法の白だ。






「あ───────。
もうひとり、雪にはしゃぐ馬鹿がいた…」




真っ白なグラウンドに足跡をいっぱいつけて、フェンスの横にはでっかい雪だるま。
置きに行く時間さえ惜しむように、グラウンドの隅に放置された一台の自転車。
藍の色が、雪のコントラストでますます深く鮮やかに見えた。



───────蒼吾くんだ。



ごろごろとでっかい雪玉を転がして、2個目になる雪だるまの頭を作っていた蒼吾くんが顔を上げた。



「…おっ!
お前ら、はっやいなぁーーっ」


こっちに気付いて、でっかく手を振る。

普段、余裕を持って登校してる時間よりも1時間も早く登校してきたのに。
それよりも早くに学校に来てる。
何物!?


「そっちこそ。いつから来てたのよ?」
凪ちゃんの呆れた声。
「んー…、30分前くらい?」
「朝が苦手なくせに?」
「ほんとは朝練があったんだよっ。でもこの雪で中止。せっかく早起きしてたから、早く来たんだよ。悪いか?」
ふて腐れたように唇を尖らせて。
「…手伝えよ?」
雪玉を指差す。
「やだよ」
「その為に早く来たんだろ?」
「蒼吾と一緒にしないで」
「…じゃぁ、何で早く来たんだよ?」
その問いに、凪ちゃんがじわりとこっちを見た。

あ…。
なんか、やばそう…。




「ましろが早く行こうっていったの」
「…ふ〜ん。…じゃ、園田。手伝え」
「…え?」

私?


「早起きして、早く来て。その為の完全防備だろ?」
そう言って、偉そうに私を指差した。
「いくら雪が積もったからってさ、その分厚いコートはないんじゃないの? まだ12月の始めだぞ? まるでエスキモー…」
私の格好を見て笑う。
プッ、って。隣で凪ちゃんが吹き出した。
「あ…っ、ひっどー…。もしかして、凪ちゃんもそう思ってたの?」
「ごめんごめん…」
違うから、って、手を振って否定する凪ちゃんは。
蒼吾くんと顔を見合わせて、また、笑った。




…思ってんじゃん……。



ふたりの態度が、あまりにも失礼すぎて。
私はぷうっ、っと。頬を膨らませたけれど。
それはすぐに消えてしまった。




こんなに雪を見てはしゃいだのは、何年ぶりだろう。




凪ちゃんと蒼吾くんが。
普通に話してくれて。笑ってくれて。
それだけで。
体のだるさなんて、真っ白な雪の向こうへ溶けてしまう。
大きく、大きく。深呼吸をして。
冬の空気を胸いっぱいに吸い込んだ。


真っ白だったグラウンドは、いつもより早い時間に登校してきた生徒達の足跡で。
あっという間に茶色くなってしまった。










その日の授業はまるで子守唄。
うっつらうっつら。
舟を漕ぐ蒼吾くんがおかしくって。
隣で、珍しく大きなあくびをこぼしてる凪ちゃんがかわいくて。
頬杖をついて、ぼんやりと外を眺めながら、あくびをひとつ。


窓の向こうには小さな雪だるまが3つ。
桟のところにちょこんと並べてある。


あったかい教室と真っ白な窓の向こう。
先生の子守唄のような朗読に混じって、微かに聞こえてくる蒼吾くんの気持ち良さそうな寝息。
朝の気だるさが今頃になって襲ってきて。
私はじわりと目を閉じた。

うつらうつら……。


まるで小舟に揺られてるような気分で。
すごく、気持ちがよかった。







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魔法のコトバ  Season10 comments(2) -
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Comment








蒼吾と凪が普段どおり…大人です。

雪の日に早く行きたいましろちゃんと、
それに付き合って登校する凪。
二人の関係、とってもステキです♪
今のドラマとかって、生徒同士の騙し合いとか、
そんな殺伐としたシーンが多いけれど、
そいでそれに影響されちゃう子とかもいるんだろうけど、
実はこんな二人みたいな関係も、たくさんあるんじゃないかな〜。

恋の行方はまだまだですけど(笑)、
ほのぼのさせていただきました。

ではでは♪
from. 史間 | 2007/06/16 10:28 |
●○●史間さんへ●○●
最近はほんと、そういうドラマだったりニュースだったり。多いですよね。
恋愛が絡むと友情はドロドロしてしまうけど、そうじゃない友情だってある!と思ってます。
そういう部分を凪とましろに託して書いているので
、共感していただけてとても嬉しいです。

史間さんにはいつもあったかいコメントをいただいて、ほろりとします〜。また明日からも頑張って書けそうです(笑)
from. りくそらた | 2007/06/16 22:32 |
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