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魔法のコトバ*  Last Season 魔法のコトバ-2-
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Last Season  魔法のコトバ -2-

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トウキョウ。

それは聞きなれたようで、聞きなれない街。
ブラウン管の向こうや雑誌の中でよく目にする街だけど。
実際はあまり馴染のない街。
私が四年間、住んでいたサンフランシスコに比べれば随分と近い気がするけれど。
高校生の私達には、簡単に行き来できない距離だ。



「うん。そうだよ」

佐倉くんが言った。
さらりと。
まるで近所にでも遊びに行くかのような軽い口調で。

「…どうして…」
声が自然と震えてしまう私に、少し困ったように笑いかけると。
「ましろちゃん、この人知ってる?」
鞄から一冊の雑誌を取り出した。
表紙に大きく取り上げられている少し年配の男の人。
笑顔を湛えた横顔がすごく素敵だ。
「…チハヤ…?」
「さすが。よくご存知で」
佐倉くんが笑った。
芸術の世界で、若手として注目を浴びて活躍している人。
ダンディで落ち着いた物腰と雰囲気がすごく素敵で、絵よりも見た目で売れたんじゃないかって、いつか見た芸術雑誌でたたかれているのを見たことがある。
でも私は、この人の描く絵がすごく好き。
透明感があって、どこまでも繊細で、それでいてダイナミックな絵を描くの。

「チハヤが何?」
「…この人、俺の父さんなんだ。佐倉 千隼(サクラ チハヤ)」


え…?


「東京にアトリエがあって、そこで絵、やってる。もともと小学4年生までは、俺らもそっちに住んでたんだけどさ」
そういえば佐倉くん、4年生の二学期に東京から引っ越してきたんだっけ。
「俺んちの両親ってさ、実は別居中なんだ。父も母も忙しい人で、すれ違ってばっかで。母の実家のあるこっちに引っ越してきて、ずっとそのままだったんだけど。やっと年明けに、正式に離婚する事が決まったんだ」
「…それで……」
東京に行っちゃうの?
お父さんについて行くことを決めたの?

「…いつ…?」
「三月のはじめ。卒業式の次の日に、こっちを発つ予定」


三月って…。
もうふた月もないよ。
そんなの、急すぎるよ……。


何かとてつもない大きなものが、心の底に重く落ちてきた気がした。
じわりと込み上げてくる何ともいえない寂しさに、きゅっと唇を噛み締める。
そうでもしないと、何かが零れ落ちそうな気がした。


「あんなでっかい舞台に絵を出すチャンスなんてさ、なかなかないからすごく残念だけど、時間ないし。ましろちゃん、やりなよ?」
「……無理だよ…」
「ましろちゃんならできるって。学祭の絵、すごかった。絵は人の心を現すって言うだろう?もう一度、ああいうの見せてよ」
だってあれは、佐倉くんへの想いをぶつけただけなのに。
それに、佐倉くんがいなくなるなんて…。
「買いかぶりすぎだよ…」
私にはそんな実力も才能もないもの。

「…凪ちゃんはこの事…知ってるの?」
東京に行っちゃうこと。
「知らない」
「どうして?」
「俺自身の問題だから。日下部は…関係ない」
「でも…」
いいの?このままで。
凪ちゃんのこと、好きなんでしょう?

「考えてみなよ、絵」
とぼけたように話題をはぐらかせて。
また、描きかけのキャンバスに手を伸ばす。
時折、窓の向こうに視線を泳がせて。
関係ないって言うくせに、ちっともそんな風に見えないよ。


ひとつだけ開いた窓の向こうから。
吹き込む風が頬を撫でた。
佐倉くんの横顔は、いつも彼女を想っているのに。







To Be Continued

魔法のコトバ*  Last Season  comments(2) -
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Comment








佐倉よ、お前もか…(ぉぃ
ああ、気持ちを伝えないまま行くつもりですか!?
あんなに好きなのに…

親の都合ですか、嫌ですね。
私も経験アリなので(何の告白?)どうしようもない憤りとか、
そんなのが伝わってきそうです。佐倉くんの穏やかな声音から。
でも、まあ、逆を言えば親の都合で凪にも出会えたんだし。
もちろん、他のみんなにも。

ましろちゃんも、偉い。
ちゃんと凪を想う佐倉くんの気持ちに心配りができる子に!
彼女の中では、ゆっくり、心の整理がはじまっているのかな。

続き、楽しみにしています。
from. 史間 | 2007/07/01 22:09 |
●○●史間さんへ●○●
お体は大丈夫ですか?

史間さんはいつも鋭いコメントをくださるので、いつもドキドキします。よく読んで心情を理解してくれているのだな〜と。
史間さんもそういう経験アリなんですね。私は生まれてから一度も今の土地を離れた事がありません。ちょっとそういうのに憧れてた時期もありましたが、いざそうなるとそんなにいいものではないのでしょうね。きっと。
ましてやこの時期の距離って、とってもデカイと思います。

さて。これからどうしよっかなぁ・・・(苦笑)
from. りくそらた | 2007/07/02 09:07 |
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