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魔法のコトバ*  Last Season 魔法のコトバ-10-
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Last Season  魔法のコトバ -10-

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その日。
私が毎日登っていた脚立は畳まれて、色を溶いたバケツも虹色の絵の具も、色が溢れたパレットも。
元あるべき場所に還った。
教室の一番後ろに立った私は、頬の端を緩めてそれを見上げる。






「できた…ぁ」


大きく息を吸い込んでそれを吐いた。


絵が出来上がったのは卒業式を翌日に迎えた午後。
夕日の色が教室を染める黄昏の時間だった。
主線もデッサンもない自分の描く想いをすべてキャンバスに馳せて描いた絵。
それがようやく完成した。
トン、と壁に背中を預けたらずるずるとその場に力なく座り込んだ。
ひとつの事を全力でやり遂げた達成感と安堵。
何ともいえない充実した気持ちが、胸の奥でさわさわと音を立てた。








「─────すごい迫力…」


ふいに声が落とされた。
聞き覚えのある声に振り返ると、黒目がちの大きな瞳が柔らかく微笑みながら教室の入り口に立っていた。
目が合うとそれがいっそう細められて優しい笑みを湛える。
「絵、完成したんだ。おめでとう」
凪ちゃんが眩しそうに目を細めながら絵を見上げた。
「すごいね。よくこれだけのものをひとりで頑張ったよ、ましろ」
まるで自分の事のように満足そうに見上げる。

だって。
ひとりじゃなかったから。
勇気と自信をくれて背中を押してくれる人がいたから。
蒼吾くんがいたから最後まで頑張れたの。





「これ。出来上がりを見たのって、私が最初?」
「そうだよ」
「よかったの? 私なんかで」
「うん。一番に凪ちゃんに見てもらいたかったから」
「そっか…」

微笑しながら凪ちゃんが私の隣に腰を降ろした。
綺麗な足を投げ出してそっと壁に体を預ける。
半分だけ開いた窓の向こうから吹き込んだ風が、凪ちゃんのくせのないサラサラの髪を攫う。
艶めいた唇を柔らかく結んで絵を見上げる凪ちゃんの横顔はとてもきれいで。
思わず言葉を失くす。
この絵を見ながら、何を思っているの?

絵が完成したら伝えたい気持ちは、蒼吾くんにだけじゃない。
凪ちゃんにもほんとうの気持ちを、きちんと伝えようと心に決めていたから。




「凪ちゃん」

「んー?」


絵を瞳に映したまま凪ちゃんが頷き返した。







「私……凪ちゃんに言われたあの日から、ちゃんと考えたよ。夏木くんのこと─────」



いっぱいいっぱい考えた。
少しずつ緩やかに流れていった気持ちは、いつの間にか大きくなって、気がつけばかけがえのない特別な存在になってた。
蒼吾くんの姿を目に映すだけで、涙が溢れそうになるのも。
蒼吾くんが笑ってくれるたびに、嬉しくて堪らない気持ちも。
蒼吾くんのことを考えるだけで、胸の奥がきゅってなるような切なくて苦しい感覚も。
全部が『恋』と呼ばれるものだ。
その心のざわめきが何ていうものなのか、私はわかってしまった。
それに気付いた時には、とっくに始まってた。
もう、気持ちに嘘はつけない。


いまさら蒼吾くんが好きだなんて、勝手なのかもしれない。
また、凪ちゃんを傷つけてしまうかもしれない。
また、あんな顔をさせてしまうのかもしれない。
だけど。
凪ちゃんの言葉には、いつも嘘がなかったから。
彼女が大好きだからこそ。
私もちゃんと本音で向き合いたい。







「凪ちゃん、私ね」


すぅ、と深く深く呼吸をする。











「私、夏木くんのことが好き─────」




それが私の出した答え。










一瞬、動作が止まった。
一点を見つめていた凛とした黒く大きな瞳がますます大きく見えた。
その表情にぐらりと決心が揺らぎかけたけれど、もう気持ちに嘘はつけない。




「……ごめんね、凪ちゃん」




それでも私、蒼吾くんが好きなの。





私の言葉にゆっくりとこちらを振り返った凪ちゃんが、じっとこちらを見据える。
大きな瞳に自分が映っているのが確認できるぐらいに視線を絡まらせて。
でもそれは次第に表情を柔らかくして。
「バカだなぁ、ましろは」
私の頭を小さく小突いた。
「なんで謝んのよ?」
困ったように笑う。






「ましろが出来上がった絵を一番最初に私に見て欲しいって言ったとき、なんでだろうって思った。でも教室に入って初めてこの絵と真正面から向かい合ったとき、わかっちゃった。ましろの気持ち、ちゃんと届いてるよ?
ましろが今、どれだけ蒼吾のことを好きなのか…すごくわかる」





ふわりと甘い笑顔を浮かべて私に笑いかけた凪ちゃんが、真っ直ぐ前を指差した。












「だってこれ、蒼吾のアオだ」





眩しそうにキャンバスを指差した。







そこに描かれた絵は。
眩しいくらいの青い碧い蒼い空。
バックネットの向こうに瞳に溶けるほどの眩しいアオをそこに描きだした。








空色のシャープペン。
藍色の自転車。
制服の下にいつも着ているTシャツの青の色。
あの日、青空に打ち上げたボールの消え行くさまと空の蒼。

蒼吾くんを連想させるのはいつもアオだ。
どこまでも澄んで果てしない空のようなアオ─────。





「知ってたよ、私。
ましろが小学生の頃、蒼吾のことを好きだったの。だからましろに、もう一度あの時の気持ちを思い出して欲しかった。
だって、ふたりはあの時からお互い惹かれ合ってたのに、周りの心無い扱いであんな事になっちゃって…。それが元に戻っただけだよ」
結果オーライ?って、いたずらっぽく笑う。
「アイツに言った?好きだって」
首を横に振る。
「絵が完成してから気持ちを伝えようと思ってる…」
「そっか。きっと喜ぶよ。アイツ、昔からましろひとすじだから」
「うん。…知ってる」


頬を染めて膝に顔を埋めた。
蒼吾くんの気持ちは痛いぐらいに心の奥に響いているから…。




ふいによしよしと頭を撫でられた。
撫でてくれる心地の良さにじわりと胸の奥から熱いものが込み上げてきて鼻をすすり上げた。



「…凪ちゃんは?」
「うん?」
「まだ、やっぱり蒼吾くんのこと…好き?」

「ん〜。私は…」

ただ前を真っ直ぐに見つめて困ったように笑う。
「好きだよ。蒼吾のこと。でもそれは友達として。もう、好きじゃない」
その瞳に淋しそうな色を滲ませて、キャンバスをじっと見遣る。
好きじゃない、という言葉の裏側にはどんな意味があるのだろう。
キャンバスの向こうに誰を見てるのだろう。
凪ちゃんの次の言葉を待っていたけれど、それ以上、言葉を発する事はなかった。
彼女の凛とした横顔がひどく淋しそうに見えた。

一瞬、佐倉くんの顔が脳裏を掠めた。
私が蒼吾くんに惹かれたように、佐倉くんには万に一つの可能性もないの?
可能性はゼロなの?





「凪ちゃん」


「うん?」


「佐倉くん。明後日、東京に行っちゃうって」




何気なく告げた私の言葉に、凪ちゃんの顔が強張った。
知ってる、と一言だけつぶやいて。
たまりかねたように顔をゆがめたその姿に。
私はただ驚いた。





「凪ちゃん…もしかして─────」



佐倉くんのことを? いつから?



見る間に凪ちゃんの目に涙が浮んで、溢れて零れた。
今度は凪ちゃんが顔を埋める番だった。



「ごめん、ましろ。…ごめんね…。私、あれから佐倉とはいろいろあって……」


ちっとも気付かなかった。
こんな凪ちゃん初めてだ。
いつも背筋をピンと伸ばして凛と前を見据えるその姿は私の憧れで。
ずっと凪ちゃんみたいになりたいと思ってた。
涙が溢れて言葉を紡げなくなるほどまでに自分を押さえ込んで。
それでもなお、虚勢を張って自分は大丈夫だって顔を上げて前を向く。
バカなのは凪ちゃんの方だよ。




「凪ちゃん、ずるいよ。
私には遠慮するなって言うくせに、自分はいつもギリギリまで我慢して」
「ましろ…」
「佐倉くんだって凪ちゃんひとすじだよ」
きっと凪ちゃんを待ってる。
「ちゃんと気持ちを伝えて?言葉にしなきゃ、気持ちは伝わらないんだよ?
まだ遅くはないから。佐倉くんはまだここにいるから」

だから。

「頑張ろ?」


一緒に。







To Be Continued

魔法のコトバ*  Last Season  comments(6) -
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Comment








わぁい☆☆更新だぁww
こんにちわ(?)また来ました!
ましろは最初に比べて変わりましたねぇ
カワイィ所は変わりませんが…((ワラ*
凪ちゃん…あなたイィ人!!
凪ちゃん素敵だぁwww
理想だね。こりゃぁw

ましろ!!告白がんばれぇ!!!
from. なつみ | 2007/07/22 19:33 |
やった〜更新されていて嬉しいです!!(^O^)/
絵、やっと完成しましたね〜!ましろちゃん良く頑張った!

凪ちゃんはどこまでイイ子なんだぁ〜(泣)そして、ましろチャンも凪ちゃんの事すごく思いやってて…優しいなー…(泣)
蒼吾君はまさに理想の男の子で、
凪ちゃんは理想の友達!あ、佐倉君も好き(●><●)
ここの登場人物は、み〜んなステキな人ばかりで…全員愛しちゃってます(●´∀`●)

もうすぐ最大の見せ場・告白シーンですね〜キャー!!
蒼吾君どんな顔するかな!?すっごく楽しみですー!
from. RI-HO | 2007/07/23 00:16 |
 ましろちゃん、絵完成してよかった!ですね(*・・*)
でも、これで蒼吾くんに好きって気持ち、伝えなきゃいけないんですねぇ。
ましろちゃんのことほんと応援してるので、頑張って想いをぶつけてください。頑張ってねぇ。ましろのこと大好きで、いつもまっすぐな蒼吾くんも、大好きです!!頑張ってwwwwwww。。
それから、その人にとって、大切な人(大好きな人)って、どんどん変わっていくんですよね。なんか淋しいけど、すきって気持ちは止まらない!!
人を愛するって本当に辛いこともあるし、幸せな気分になることもあるんですね。なんかすごい難しいですね。りくそらたさん頑張ってください!!
それから、FANTAZYも応援してます(*>w<*)
from. ミカ | 2007/07/23 22:47 |
●○●なつみさんへ●○●
絵を描き終えたことでまたひとつましろも大きくなれたかなと思います。凪は書いていて気持ちいいです。潔さとか強さとか。
こちらもぜひ気持ちが伝わるように応援してやってくださいね♪


●○●RI-HOさんへ●○●
全員愛しちゃってますか〜。嬉しいです(涙)
ましろも凪もようやく新しいスタートラインに立てた感じです。
さて。蒼吾が、佐倉がどんな反応をしてくれるのか。またどうぞお楽しみに!!


●○●ミカさんへ●○●
おお。お久しぶりでございます!
弱虫ましろに熱いエールを送ってくださってとても嬉しいです(涙)
スキって気持ちには果てがないですよね。その気持ちだけで突っ走れるこの時期がとても素敵で羨ましく感じます。
FANTAZYの方も読んでいただいていたのですね〜。ありがとうございます!まほコトが終了すれば少しはこちらも更新できるかと…(汗)また気長に応援してやってくださいね!
from. りくそらた | 2007/07/23 23:52 |
 う〜ん・・・ 切ないですね・・・;;  でも,ちゃんと凪ちゃんに気持ちを伝えたことで 凪ちゃん的にも スッキリしたように思えますw    それに、凪ちゃんかっこいい!! ましろもよく頑張った!!      2人とも理想の友だちみたいに思えました              次回 ついに・・・・小学校から今までの あついくて切ないような思い出を言葉に乗せて 告白しちゃってくださいヾ(o⌒(ェ)⌒o)         楽しみだぁ〜〜〜〜〜♪笑
from. 愛花 | 2007/07/24 10:33 |
●○●愛花さんへ●○●
けじめって大事ですよね。
凪のことも、佐倉のことも、絵のことも。もちろん蒼吾とのことも。ましろはひとつひとつを大事に胸に秘めて成長してくれたのかな〜と。そういう部分がちゃんと書けたのかなと私としては少々不安ではありますが(苦笑)

さてさて。本日分をアップしました!
どうかみんなの気持ちがちゃんと届きますように・・・。
from. りくそらた | 2007/07/24 14:28 |
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