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春を待つキミに。 14
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春を待つキミに。 14 サイド*凪 

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クリスマス前の街は、すごい人混みだった。
行き交う人は寒さと期待に頬を赤く染めて、赤や緑のクリスマスカラーの溢れる街並を軽い足取りで通り過ぎて行く。
クリスマスが待ち遠しい、そんな顔してる。
だきるだけ、このシーズンに買い物に出ることは避けていたからわからなかったけれど。
こんなにも多いんだ。
しかも、カップルばかり。
そんな事を考えながら、私は溜息混じりに腕時計を覗き込んだ。
時刻はPM2:00を少し回ったばかり。
待ち合わせの場所に、佐倉はまだ、現れなかった。
同じ場所で待ち合わせをしている恋人達が、次々に腕を組んで、この場所から離れていく。
何だか落ち着かない。
分かりやすいからって選んだ待ち合わせのスポットは、恋人達の出会いの場所で。
シングルの私にとっては、場違いなところ。
ていうか、私もそんな風に見られてる?
ううん。
この時期に男女2人で…なんて、恋人同士にしか見えないでしょ。
知ってる人に見られたら、どうしよう。
ましろに言ってたきた方がよかったかな。
それともちゃんと断った方がよかった?
プライベートで佐倉とふたりきり、なんて…。
人の噂が怖いのは、痛いほど経験してる。




ふと見上げた視界に飛び込んできたのは、向かいにある大型書店のでっかいポスター。
派手な週刊誌や活字のみのポスターに紛れて、水彩タッチのポスターが視界に溶けた。
淡いタッチで優しい色合いの絵。
思わずそれに引き寄せられるかのように私は歩みを寄せて、気がつけば店頭に並ぶ画集を手に取っていた。
「…“CHIHAYA 2008”……」
あ───。
この人…ましろが好きな画家さんだ。

『柔らかくて、あったかい絵を描くんだよ。私、大好きなんだ。
私もいつか、こんな絵を描けたらいいな』

嬉しそうに笑って話してくれたましろのまあるい笑顔を思い出しながら画集のページを捲ると、自然と顔が緩んで、張り詰めていた気持ちが温かくなった。
ほんとだ。
優しい絵…。



「何、見とれてるの?」
聞き覚えのある声が空から聞こえて、私は思わず開いていた画集を取り落としそうになった。
「待ち合わせの場所にいないと思ったら、こんなところにいたんだ。探した」
苦笑混じりに見下ろしながら、いつからそこにいたのか、佐倉が私を覗き込んでた。
「あ…。ごめんね。ましろが好きな画家さんの画集が目に入ったから、つい…」
「画集?」
「うん。CHIHAYAって人。佐倉も知ってる?」
問いかけた言葉は、知らなかったにしてもあまりに不用意で。
いつも穏やかな笑顔を絶やさない佐倉の表情を、簡単に曇らせてしまった。
「…佐倉?」
手元を覗き込んだまま、うんともすんとも言わない佐倉に不安を覚えて。
私はじっと彼を見上げた。
「あ…うん。知ってるよ」
いつもと変わらない柔らかな物言いに、ホッと安堵の息を漏らして、捲りかけたページの続きを捲る。
「優しくて柔らかい絵を描くんだね、この人。きっと温かい家庭で育ったんだろうねって、ましろと話した事があるの」
「そう…」
「私も好きだな、この人の絵」
何だか、佐倉の絵と似てる───。
そう口を開きかけて隣を見上げたタイミングで、スッと手元から画集を抜き取られた。
「行こうか」
え───?と。
言葉を発する暇もなく、その手を捕まれてその場から連れ出された。
まるでそこから逃げるように。
早くその場から立ち去りたい。
なぜか分からないけれど、佐倉の無言の背中がそう語っているようで。
それ以上私は、何も聞くことができなかった。



それから私達はいくつかの眼鏡店を回って。
気に入った眼鏡のフレームを見つけた。
佐倉に似合いそうな飴色の新しいフレームは、彼の端正な顔立ちを引き立てて、その横顔をますますキリリと知的に見せた。
黙っていれば格好いいんだけどな、なんて。
端正な横顔を複雑な気持ちで見つめながら店を出る頃には、西の空が闇の色を濃くし始めていた。
「もう、こんな時間か───」
マフラーをきつく巻きなおしながら、佐倉が空を見上げた。
私も腕時計に目を落とす。
ほんとだ…。
もう、6時を回ってる。
佐倉と4時間も、いろいろと回ってたんだ…。
思ったよりも時間が掛かってしまったのに、それが気にならないくらい自分も楽しんでいたことに、ちょっぴり躊躇ってしまう。
以前、蒼吾にはめられて、守口くんとふたりで買い物した時は、早く帰りたくてしょうがなかったのに…。

「どっか店、入る?」
ふいに佐倉が覗き込んだ。
不意打ちすぎて、鼓動が跳ねる。
思わず顔が強張った。
距離、近すぎ。
間近で覗き込まれるのは、慣れてない。
「歩きすぎて疲れただろ?」
「…ううん。平気。私、これでも運動部だよ?体力はあるつもりなんだけど…。ましろのペースと勘違いしてない?」
一瞬、きょとんとした表情で目をまんまるく見開いた佐倉は。
「そうだったな。日下部だった」
皮肉混じりに失笑した。
「なにそれ…」
「あ、ちょっと待ってて」
ムッとした顔で頬を膨らませかけた私にそういい残して、人込みに消えた。
「え…?佐倉───?」
その姿は一瞬で見えなくなってしまって、取り残されてしまった私は、その場に立ち尽くした。
しばらくして人波から戻ってきた佐倉が、私の手を引いて何かを握らせた。
「はい。これ、日下部の」
悴んだ手に温かな感触。
ブラックのホット珈琲。
「ましろちゃんだと、ミスドにはいろうか?ってところだけど…。日下部、甘いもの苦手だろ?」
「…どうして知ってるの?」
私、話したことあったっけ?
「さあ?」
笑ってはぐらかされる。
「それに。店に入ろうかって聞いた時の日下部の顔。“誤解されたくないから、嫌だ”って顔、してた」
「そんなの…」
「違わないよ。今だって、すごく困ってるだろ?早く帰りたくて、そわそわしてる」
日下部のことなら何でもお見通し───、そう言われたみたいで。
気まずくなって乱暴に視線を外して顔を背けた。
「俺と噂になるのは、そんなにイヤ?」
「……人の噂が怖いのは、よく…知ってるから…」
興味本位な言葉は、簡単に人を傷つけてしまう。
本人の意思とは裏腹に、噂はひとり歩きをはじめて、話が大きく膨らむ。
佐倉とふたりで出掛けてたことがましろの耳に届いたら、私はまた、彼女を傷つけてしまうかもしれない。

「俺は別に、日下部と噂になってもいいよ。むしろそれを望んでる。
あの日、いろいろあったからうやむやになっちゃったけど…。
俺、日下部の返事、ちゃんと聞いてない」
「…え……?」
「告白の、返事」
真顔で告げられた。

「何…言ってんの?最初から答えなんて、わかってたんでしょ?」
蒼吾が好きなこと、知ってたくせに。
ましろの気持ちにだって、気付いていたくせに。
私が、佐倉の気持ちに答えられないことぐらい、ちゃんと分かってたんでしょ?
「でも、ちゃんと言葉で聞いてない。日下部の口から」
「…やめてよ。こんなところで……」
家路を急ぐ人の波に押されながら、私は乱暴に視線を外す。
人波に逆らうように突っ立った私達を横目にチラチラと気にしながら、人々が通り過ぎて行く。
早くこの場から立ち去りたいのに、佐倉は動こうとしなかった。

「日下部が思ってるほど、人は他人の事なんて気にしてない。いつだって自分本位で、自分さえよければって考えてる。
俺との事を誤解されるのが、そんなに嫌?また、ましろちゃんを傷つけるって思ってるんだろ?いいかげんにしろよ。
もう、蒼吾もましろちゃんも俺が日下部を好きなことぐらい、知ってる」

トン、と背中に誰かがぶつかって。
人混みの外へ、弾き出された。
よろめきかけた身体を佐倉の腕が、支えてくれる。
その腕の強さに、以前抱きしめられた佐倉の体温を思い出して。
ドクリと心臓が跳ねた。

「日下部は、誰に遠慮してんだよ───?」

佐倉の顔があまりにも真剣で、私は思わず息を詰めた。
何か言わなきゃ。
そう思うのに、声は言葉になってくれなかった。
この人の隣は、息が詰まる。
気を抜くと、簡単に心の奥まで見透かされてしまいそうで、怖くなる。
自分が自分でなくなってしまいそうで───。

「───放して、よ…」

突っぱねた私の手をギュッと握って、そのまま引き戻された。
この日の佐倉は、普段の穏やかな彼からは想像もつかないくらい強引で。
積極的で。
有無を言わせない強さがあって、私はそれ以上、何もできなかった。
佐倉もそれ以上、何も聞かない。


「日下部」


溜息混じりの声が聞こえて、沈黙を先に破ったのは佐倉だった。


「まだ、時間ある?
ツリー、見に行こうか───」

耳元でそう囁いた佐倉が、私の手を強く握った。





To Be Continued


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春を待つキミに。 comments(6) -
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Comment








 こんにちは(^^)
 珍しく積極的な佐倉クンですねぇ。
 こんな佐倉クンもかっこよくて好きですけど。
 
 次回も楽しみにしてますvvvv
from. ゆい | 2008/05/17 12:12 |
パパの画集私も欲しいです。いくらですか?(オイ)
デートだデート♪
佐倉のペースに巻き込まれてしまえ凪!←楽しい

佐倉の強引さが、こうやって凪の心をほぐしていくんですね。
ああああ甘酸っぱいです。

続きも楽しみにしています♪
from. 史間 | 2008/05/23 00:04 |
*ゆいさんへ*
お返事、大変遅くなってしまって申し訳ございません(汗)

佐倉、プッシュしまくりですね。
キホン、自分の好きな女の子には積極的だったり…?
押され気味の凪を書くのも楽しかったりします♪
春キミ。の影響で、佐倉もイイかも…と言ってくれる読者の方が増えて嬉しいです!
from. りくそらた | 2008/05/26 09:54 |
*史間さんへ*
画集のご注文、ありがとうございました〜(←?)

恋の駆け引き攻防戦、第2弾。
押したり引いたり、ジレジレした微妙な恋愛模様が大好きです(イジワル?)
この辺からの、凪の心の変化を感じ取っていただけると嬉しいです♪
from. りくそらた | 2008/05/26 10:07 |
お久しぶりです!!
ここのところ、部活や勉強などとても忙しくて中々見にこれなかったんですが、、やっと見に来れましたv(o ̄∇ ̄o)

凪ちゃんって段々佐倉くんに惹かれていっている気がします。
そんな、凪ちゃんに対して佐倉くんも、凪ちゃんに積極的になっていっている。。
段々、二人の関係が変わって来ましたね!!
毎回更新楽しみにしています。
これからも、頑張ってください^^
楽しみにしています!!
では、赤ちゃんの子育て(まだ生まれてないけど・・・
も頑張ってくださいね^^
from. ひかる | 2008/07/13 21:38 |
*ひかるさんへ*
お久しぶりでございます〜。いらっしゃいませ。

凪の微妙な心の変化、感じ取ってもらえましたか!
ふふ。嬉しいなぁ。
積極的な佐倉を書くのも、結構楽しかったりします。
これからどんどんふたりの関係に(キモチに)変化が出てくると思うので、また楽しみにしていてくださいね!

この夏、出産でなかなか思うように更新ができませんが(涙)、気長に待っていただけると嬉しいです。
from. りくそらた | 2008/07/15 15:22 |
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