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春を待つキミに。 2
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春を待つキミに。 2  サイド*佐倉

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「───“難攻不落な佐倉くん”」


突然。
頭の上から降ってきた言葉に眉根に皺を寄せて、俺は描いていたスケッチブックから顔を上げた。
想像していた通りの顔がそこにあって、大きな黒目がちの瞳がキラリと光って俺を見つめていた。

「何が?」

できるだけ穏やかに笑いかけながら、また描いていた絵に動作を返す。

「みんな言ってる。また女の子、泣かせたでしょう」

不機嫌そうな声が近づいて、すぐ側で歩みを止めた。
こっちを睨みつける視線は、有無を言わせない強さを持っていて。
凛とした輝きを湛え、真っ直ぐ前を見据える瞳で覗き込まれると、こちらに非がなくても引いてしまいそうになる。
第一印象。すごく、目の綺麗な子。
それがうちのクラスの学級委員、日下部 凪(クサカベ ナギ)だ。


「別に泣かせたわけじゃない。告白、断っただけだろう」
それに“難攻不落”ってなんだよ。
最近、授業でそれを習ったばかりだからってさ。
バカのひとつ覚えみたいに。
「それが泣かせたって言ってんの」
「別に日下部には関係ないじゃないか。俺が断ったって、誰かと付き合ったとしても」
「当たり前じゃない、関係ない。でも関係あるの!」

そう言って形のいい唇をアヒルのように尖らせた。
は?
意味がわからない。

「だから、困るんだってば。佐倉が断るたびに、よくない噂が立つんだから」

「よくない噂?」
俺の?
別にそれは日下部には迷惑かけていないだろう。
俺の言いたいことを感じ取ったのか、頬をますます膨らませて目を吊りあがらせ、綺麗な顔をずいっと近くまで寄せた。


「佐倉じゃないわよ。ま・し・ろ。
『やっぱり佐倉くんは園田さんが好きなんだ〜』とか、影で言われるんだから!」

俺の瞳の奥を覗き込むように、体勢を低くした。
くっきりした二重の瞳が真っ直ぐに俺を見据える。


日下部はすこぶる美人だ。
年の割に大人びた容姿の和美人。
その気がなくても、あの綺麗な顔を寄せられるとドキリとしてしまう。
頭が良くて、運動も出来て。
母親が講師をやっているとかで、さらりとピアノを弾きこなしたりもする。
正義感が強くて、人望も厚くて。
はっきりいって完璧だ。
伊達に学級委員をやってるわけではない。
クラスの男子の半分以上が彼女の事を「いい」と思っているのも知ってる。


でも俺は、日下部が苦手だった。


いつも怒ってるし、お節介だし。
遠慮なくずけずけと物を言う。
それが結構、的を得たところを突いてくるから癇に障る。

ひとつ言うと10倍になって返って来る。
口が回る。頭が切れる。
黙っていれば可愛いのに。
俺は日下部の怒っている顔しか、知らない。



「…ましろちゃん、ね。またそこなわけだ」


大きなため息を落とした。
俺に絡んでくる理由は、いつも決まってる。
彼女の親友、園田ましろ(ソノダ マシロ)ちゃんについて、だ。


転入早々の席替えで、隣の席に座った小さなクラスメイト。
「一学期間、よろしくな」
声を掛けても、重そうに机を抱えたまま、困ったように下を向くばかり。
目を合わそうとしてくれない。

…俺、何か嫌われるようなことしたっけ?

ぼんやりと考えてみるけど、転入二日目の俺には思い当たることがない。
「な…」
声を掛けると、ビクと身体を緊張に震わせた。
おどおどと視線を彷徨わせ、ぎゅっと目を閉じた彼女に、笑いそうになった。
そんなことをしてもこの現状が変わるわけではないのに。
なんて可愛いマネを────。
それがましろちゃんへの第一印象だった。


彼女はアクが強い。
特に目立った性格ではないけれど、髪も目も色素が薄くて、ふわふわしていて。
まるで外国の絵本にでも出てきそうな可愛らしい顔立ちは、人目を惹く。
外見もそうだけど、人との距離の置き方とか、気の使い方だとか。
常に何かに怯えたようなオドオドとした性格は、敬遠されがちだ。
それを目の当りにすると、何もしていなくても罪悪感に駆られてしまう。
はっきり言って、取っ付きにくい性格だった。
だけどそれにめげず、穏やかに、できるだけ彼女の目に優しく映るように笑いかけると次第に緊張も解けてくる。
ましろちゃんは人見知りが激しいけれど、親しい人間の前では驚くほど表情が豊かだった。
ふんわりと優しく笑う彼女を、正直、可愛いと思った。
砂糖菓子のような甘くまあるい笑顔。
たぶん“アイツ”は、これにやられたんだろうな。


おもしろいのはましろちゃんに関わると、必ず“保護者”が飛んでくること。
学級委員の日下部。
黒髪をなびかせて唇を引き結び、腰に手をあてて大きな黒目がちの目を吊り上げて俺を見下ろす。
「ちょっと、佐倉!」
って。
俺に怒ってくるのは、大抵、ひとりで屋上にいる時。
今日みたいな日。


と。もうひとり。
夏木 蒼吾(ナツキ ソウゴ)。
こいつは保護者というよりも張り込みの刑事みたいだと思う。
エネルギッシュな性格は俺とは真逆で、クラスをぐいぐい引っ張っていくタイプ。
いつも回りに友達がたくさん集まって、大声で笑ってるようなヤツ。
蒼吾の笑い声は、教室でもひと際大きく聞こえる。
目的地に向かって、真っ直ぐに突っ走っていく。
回り見えてんの?と、心配になるくらいに前のめりだ。
そんなヤツが、ましろちゃんに対してはかなり慎重で、真剣で。
一定の距離以上、踏み込まない。
なのに。
アイツは彼女をよく見てる。
見てないフリをしていながらも、俺とのやり取りをよく見てるんだ。
彼女と話していると背中にひしひしとそれを感じる。
予想通りの反応が笑えて。
一喜一憂する姿が超おもしろい。
だからつい、必要以上に彼女に構ってしまう。

蒼吾がましろちゃんを好きなのは一目瞭然で。
クラスメイトの間でもそれは暗黙の了解になっていた。
それに気付いていないのは当の本人だけ。
しかもましろちゃんは蒼吾のことをすこぶる避けている。
俺が転入する前にひともめあったらしい。
もちろん詮索はしない。
余計なことに首を突っ込んで巻き込まれるのはごめんだ。
ずっとそう思っていた。





「────ね。ずっと聞いてみたかったんだけど…」


腰に手を当てて、俺を見下ろした姿勢のまま、真剣な表情で日下部が聞いてきた。
「どうしてましろばかり構うの?佐倉って、ましろのこと、好きなの?」
くっきりした大きな二重が俺を捕らえ、覗き込んだ。
嘘とか、冗談とか。
そういうのを全部見逃さないような、意思の強い瞳がきらりと光ったように見えた。


「さあ…。どうだろう。日下部は、どう思う?」
描いていたスケッチブックから顔を上げて、笑いながら首を傾げた。
「ましろちゃんは可愛いし、あんな顔で俯かれると放っておけないって思うよ。日下部もそうだろ?でも、これって恋愛感情なのかな」
「…私が聞いてんのに、質問で返さないでよ」
日下部が、むぅっと頬を膨らませる。
「わからないから聞いてるんだろ」
「自分でわからないの?」
「放っておけないのが恋愛感情なら、日下部のそれもそうだろ」
「…何言ってんの」
思い切り顔を歪めて、日下部が睨みつけた。
「男女のそれとは話が別でしょ?」
バカじゃないの、とでも付け加えそうな勢いで言葉を吐いて、日下部は呆れたように空を見上げた。


「…佐倉って、やっぱり何考えてるのかわかんない」


しばらく考え込むように空を仰いで、ため息混じりに日下部が言葉を漏らした。
ふいとそっぽを向いた横顔が呆れている。
「本人に向かって『何考えてるのかわからない』とか言うなよ。いくら俺でもへこむだろ」
苦笑を浮かべながら言葉を返した。
それが彼女には気に入らなかったらしく、ますますきりりとした顔が険しくなった。

「佐倉ってさ、感情的になることってあるの?」

「…あるよ?」

「嘘だ。佐倉には喜怒哀楽が少ないよ。いつもへらへら笑ってばっか」

「そういう日下部は『ど』の部分ばかりだよな」

「ど?」


「喜怒哀楽の『怒』────」


授業で習ったろ?。
皮肉を込めて肩をすくめると、日下部が真っ赤な顔をして頬を膨らませた。
彼女は、間髪入れずに何かを言い返そうとしたけれど。
それよりもひと足早く、昼休みの終わりを告げるチャイムの音が耳を掠めた。

「うわ…っ。やば」

小さく呟くと、日下部は慌てて校舎を振り返った。
授業はいつも彼女の号令で始まるから、真面目な学級委員長としては遅刻するわけにはいかないのだろう。
「続きはまた今度!佐倉も早く教室に戻りなよ!」
張りのある声が校舎に響いて、黒髪を靡かせた後姿は、あっという間に見えなくなってしまった。


「また今度、って…」


まだくどくど言われるのだろうか。
それを思ったら少し憂鬱になって、秋の空に大きく息を吐いた。
いつも途中で終わってしまう描きかけのスケッチブックが、風に攫われてパタパタとページを捲る。





お節介で口うるさい学級委員長は。
やっぱり苦手だ。







>>To Be Continued


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春を待つキミに。 comments(10) -
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Comment








はじめまして!!
「魔法のコトバ」からのファンで、私は蒼吾がメッチャ好きで
蒼吾の邪魔をする佐倉くんはあまり好きじゃなかったんですが
番外編を読んで佐倉くんもいいなぁと思ってしまいました(>д<)
まぁ、蒼吾にはかないませんが(>д<)!!
佐倉くんが凪ちゃんのことが最初は苦手だったなんて意外でした。
番外編も楽しみにしてます。がんばってください!!
PS. 蒼吾Fanとしては、蒼吾とましろのその後の話なんかも期待してます!!
from. サク | 2007/09/20 22:34 |
●○●サクさんへ●○●
はじめまして!リアルなコメントをありがとうございました!
サクさんの熱い気持ちが伝わって、ニヤニヤしながら読ませていただきました。
なるほど〜。蒼吾がいいと思っている人は、佐倉は苦手なんですね(笑)佐倉は(ましろも)アクの強いキャラなので、好きか嫌いかの意見が分かれそうだなと思いながら書いていました。蒼吾と真逆なんですよね。
佐倉もいいなぁと言っていただけて、嬉しいです。
番外編では蒼吾との絡みのシーンがいくつか出てきます。また楽しみにしていただけたら嬉しいです。

「蒼吾とましろのその後を!」というご意見をよくいただきます。とても嬉しい悲鳴(笑)
その予定はなかったのですが、リクエストをもらうたびにどうしようかな〜、書こうかな〜と考えてしまいます。
……また検討してみます!
from. りくそらた | 2007/09/21 09:17 |
お疲れ様です!(何故…
二人のやりとり、どきどきしました〜><
よかった、言い争いとかにならなくて。

保護者と張り込み刑事(笑)
佐倉くんってば、上手いですね〜本当に小学生?
大人びた凪より大人びています。
こんな子がいたら、私だって告白してたよ(そして玉砕…
良くも悪くも周りを惹きつけ巻き込む天然ましろちゃんも健在で、
続きがとっても気になります!

あ。カキアゲ作って食べましたよw
from. 史間 | 2007/09/21 23:54 |
●○●史間さんへ●○●
働きマン史間さん、どうもお疲れ様でした(笑)
カキアゲ、しっかり食べたんですね〜。うまそっ。

佐倉はまほコトの中で一番大人びています(最下位は涼)。凪よりも随分、上回るのではないかな〜。
小学生の会話のやり取りじゃないよね…とか思いつつも、楽みながら書きました。
でも実際、今の小学生は私達の頃と比べて随分と大人びているような気がします。すれ違う小学生の会話が、びっくりするような内容だったりするので驚きです。大人はついていけません(笑)
…そんなこんなで、佐倉視点は書きにくくて苦労しました(涙)もっとサクッと書きたいのに。

from. りくそらた | 2007/09/22 08:38 |
お久しぶりです!!
佐倉視点ですね。
とっても面白いです。
私は佐倉くんの心の動き(?)が一番予想外なところが多かったので、
この話を読んで「どうして凪ちゃんが好きになったのかな?」といううことを知りたいと思います!!!
これからも頑張ってくださいね♪
from. さくら | 2007/09/22 15:28 |
●○●さくらさんへ●○●
おひさしぶりでございます。
佐倉視点、楽しんでいただけたみたいでよかったです。嬉しい。
佐倉の気持ちはいろいろと複雑で、書いている私も苦労させられます(笑)凪を好きになった経緯、楽しみにしていてくださいね。意外に単純な理由だったりするかもしれません(苦笑)
from. りくそらた | 2007/09/23 09:07 |
2話も読ませていただきました☆
とってもよかったです〜
同じ物書きの目線でみると、りくそらたさんは人物と感情の描写がずば抜けてお上手なんだなぁと改めて実感しました。
二人の会話の映像が頭に浮かんでくるような描写、とってもお上手です☆
これからも頑張ってください♪
from. ひなた | 2007/09/23 16:24 |
●○●ひなたさんへ●○●
大変ありがたいお言葉、恐縮です〜。
まだまだ勉強不足なところもたくさんあって、書くのにもの凄く時間がかかります。サクっと書いてしまえる文章力が欲しい…。
ひなたさんも物書きさんなのですね!初耳です(もし、認識不足でしたらごめんなさい…汗)。よろしければコメント記入欄のurlに貼り付けておいていただければ、遊びに寄らせていただきます♪
会話の映像が浮んでくる辺りは、たぶんイラストのせいもあると思います。イメージ画を描いてくれる相方に感謝だなぁ(笑)
from. りくそらた | 2007/09/24 00:13 |
こんにちは!!
佐倉さんは自身の事を好きだと告白した日下部さんに、全く好意を抱いていなかったと言う訳でもなかったのですね。
日下部さんの怒った顔しかあまり見た事がないと言った佐倉さんでしたが、美人な日下部さんが物語が進んで行くうちに、何時か明るい笑顔を浮かべてくれると良いなと思いました。
佐倉さんはこの後、どのようにして自身の恋する心に気づき始めるのでしょうか?
果たしてこの後物語がどのように進んでゆくのか
次回の展開に期待します
from. | 2007/12/09 13:29 |
●○●要さんへ●○●
…えっと。補足をさせてください。
凪(日下部)は、佐倉に告白してません。前回、告白したのは別の女の子になります(汗)
『春を待つキミに。』は、前作の『魔法のコトバ』の主人公を変えた続編のような形になっています。単独でこのおはなしから入ると、ちょっとわかりにくいかもしれません…。
from. りくそらた | 2007/12/10 18:28 |
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