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春を待つキミに。 9
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春を待つキミに。 9  サイド*佐倉

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中学に上がってからの日下部とは、あまり接点がなかった。
3年間クラスを共にすることはなく、たまにすれ違う時の挨拶程度。
中学に上がってから陸上部に入った日下部は、走るのに邪魔だからと、伸ばしていた自慢の黒髪をばっさり短く切った。

「なんか、男の子みたいだよね?」

同じ部活の女子に笑いながら話していたけれど。
すっきりとした短い髪はかえって彼女の顔立ちの端正さを引き立てた。
以前よりも丸みを帯びた体のラインや、黒髪から覗く白い襟足がいやでも彼女の女を意識させる。
意思の強い瞳は、相変わらず大きくくっきりしていて、あの目で見つめられて堕ちない男なんていなかった。
たぶん、中学で彼女の事を一度だって『いい』と思わなかった男なんていないだろう。
それを告白に踏み込めるかどうかの勇気は、別として。


ましろちゃんがいなくなることで、変わっていくかのように思えたそれぞれの気持ちの行方は、何ひとつ変わらず。
お互いに届くことのない、気持ちだけが募って膨らんでいった。
いつだって求めて焦がれて、どうしようもなくて。
癒されることもなく、乾きばかりが増えていく。
自分の気持ちが手におえない、だなんて、どうかしてる。
それがわかっているのに。
叶うことなんてないのに、その気持ちを手放せない。
どうしようもないもどかしい想いをそれぞれが抱えていた。



何も変わることのない日々の中。
突然訪れた大きな変化。
ましろちゃんの4年ぶりの帰国。
それも俺たちと同じ高校に編入してくるなんて。
神様ってヤツはなんてイジワルなんだ。

俺たちに変化をもたらすのは、いつも彼女。
オレと日下部を結ぶ共通点は、ましろちゃん。
日下部と蒼吾を、俺とアイツを結ぶのも。


俺たち4人は、すべて彼女で繋がっている。
そんな気がしてならない。




* 




早朝の美術室で、俺は一枚の絵を見上げた。
“春を想う”というタイトルのつけられた、キャンバス。
薄紅と桜が溢れ出す淡く儚いその絵は、彼女の想いや心の危うさがそのまま滲み出ているかのようで、胸の奥が微かに疼いた。

「…参ったな」

ましろちゃんを傷付けるつもりなんてなかった。
俺の描き溜めた絵を見つけてしまうなんて。
あんな形で、俺の気持ちに気付いてしまうなんて…。


いつからだろう。
彼女のトクベツな視線を感じるようになったのは。
ましろちゃんは可愛いと思う。
あの知らず人を巻き込む天然っぷりは放っておけない。
でも。
彼女に感じるのは、恋愛感情とは違う別の何か。


「───あれ?佐倉くん?」


カタカタと木戸の乾いた音をさせて、声と共に美術部顧問の清水先生が顔を出した。
「早いのねぇ。鍵、開けてくれたんだ。今日、学祭の当番だったかしら?」
「いえ。当番は明日です。どうしても見ておきたい絵があって」
「…園田さん…彼女、頑張ったわね」
前置きなく空気が動いた気配がして、ふと視線を泳がせたら、すぐ側で眩しそうに目を細めて絵を見上げる顧問の姿があった。
「彼女、いいものを持ってる。迷いとか、戸惑いとか、弱さとか。そういうのを全部取り払って自分にちゃんと自信が持てたら、もっといいものが描けるのに…」
「…そうですね…」
俺は薄く微笑んで、もう一度絵を瞳に映した。


何も変わっていないようで、少しずつ変わってゆく日々。
秋にましろちゃんが戻ってきたのも、きっと俺達の関係を変える大きなチャンスだ。
ましろちゃんが絵を見つけてしまったことも。
日下部があの日、泣いていたことも。
ずっと考えないようにしていたけれど、きっと俺たちは、今のままではいられない。

「あら。もう行っちゃうの?園田さんに会って行かないの?」
「今日、俺、実行委員の当番なんで」
「…そう。行ってらっしゃい」
勘の鋭い教師、っていうのも正直やりにくいな、と。
心の奥でそんなことを考えながらも、俺は優等生の笑顔を浮かべて美術室を後にした。


今、ましろちゃんに会うと決心が揺らぎそうだったから。
あえて見て見ぬフリをした。
あの絵も。彼女の気持ちも───。





>>To Be Continued

春を待つキミに。 comments(4) -
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Comment








わぁ!久しぶりの更新だぁ♪♪
・・・佐倉クン、も。優しい人だからなぁ〜。。。

でも、やっぱ気づかせたのは蒼吾かぁww

・・・なんっか嬉しい●^v^●/
続き楽しみにしてます☆★

PS
ましろと、蒼吾のその後!ソレ、すっごくおもしろそう><
楽しみにしてます♪♪
from. | 2007/11/06 17:08 |
●○●5:08PMにコメントしてくれた方へ●○●
ほんと、久しぶりの更新ですね。えへへ。
短編やLFの方を更新していたら、こちらがすっかり疎かに…。ああ。

コメントのニュアンスから、何気に蒼吾プッシュな香りが…(笑)
ましろと蒼吾のその後を!というメールやコメントをたくさんいただいていたので、短編ぐらいの長さでちょっと触れてみようかなと思っています。
予定では年明けぐらいに。楽しみにしてもらえると幸せです。
from. りくそらた | 2007/11/06 19:37 |
こんにちは!!
佐倉さん、夏木さん、日下部さん、彼らの友情はすべて園田さんと言うひとりの少女の存在で繋がっていたのですね。
この章では、園田さんが転校により彼らの前から姿を消した事によって起こった彼らの心の変化が、丁寧に描写されていたと思いました。
絵と言う芸術作品を通じて描かれる、佐倉さんの揺らいでいる心の描写がなかなか良い感じであったと思います。
果たしてこの後物語がどのように進んでゆくのか
次回の展開に期待します
from. | 2007/12/16 13:24 |
●○●要さんへ●○●
ましろを通して3人は繋がっています。
もちろんそれだけではないのですが…。
芸術の分野はあまり詳しくないので、調べた知識を手探りで書いています。嬉しいお言葉をありがとうございました。
from. りくそらた | 2007/12/17 00:56 |
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