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春を待つキミに。 11
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春を待つキミに。 11  サイド*凪

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ずっと、蒼吾が好きだった。


蒼吾は私にとって、かけがえのない友達で。
それ以上に、トクベツで、大切な存在で。
この気持ちが変わることなんて、ないって思ってた。
想いがずっと伝わらなくて。
もう、この恋は叶わないのだとしても。

あの日。
ましろを追いかけたアイツの背中は、もう、どこにも迷いがなくて。
私には捕まえられない──って、思った。


「もう、遠慮しねーから。…園田にも、お前にも」


どんな言葉を聞いても、動揺しない自信はあった筈なのに。
彼の声が含む真剣な響きに、私は、身動き一つ出来なかった。
泣いたり、わめいたり。
そんな事だけは、したくなかったから。
笑って、その場から身を引くしかできなかった。
蒼吾がつけたケジメ。
私にはもう、万に一つの可能性もなくなった。
ううん。
最初からそんなもの、私にはなかった。

ましろが帰ってきたあの日から。
何も変わらないようで、確実に、変わってきてる日々。
大好きな蒼吾とましろには、シアワセになって欲しい。
本当にそう思う。
でも、ずっと側にいたいのも、本音。
だけど、もう。
それは私ではないのだから。


叶わなかった想いは、どこへ行くんだろう──。








見上げた冬の空が張り詰めていた。
空は白く霞んでいて、頬を撫でていく風が刺すように冷たい。
ぶるりと身体を震わせて、襟を立てたコートの首元を掻き寄せた。
寒い。寒すぎる。
悴んだ手を擦り合わせて、はぁっと息を吹きかけると。
息が瞬く間に真っ白になって、手のひらに落ちた。
赤や青のイルミネーションが点灯して、街を鮮やかに染める。


テスト開けの土曜日。
借りていた本を返却する為に、午後から駅前の市立図書館へ向かった。
外の寒さも手伝って、図書館の閲覧室は普段よりも人が多く、特に学生の姿が目立つ。
かなり切羽詰った様子の学生もチラホラ見えて、受験前のピリピリした空気が頬を撫でた。
一月半ばにはセンターがある。
私も二年後の冬には、こんなふうに追い込まれているのだろうか。


何だか場違いな気がして。
返すものだけ返して、帰りかけた足が、ふと、止まった。
学生の群れにまぎれて、見覚えのある小さな頭が見えた。
真っ直ぐストレートな黒髪を、天辺に近い位置で結ったふたつの髪が、ぴょこぴょこと揺れていた。


…あれ…?


「──深青(ミオ)ちゃん?」


その後姿にそっと近づいて。
驚かさないように、できるだけ小さく声を掛けた。


「あ。凪ちゃん──!」

私を見つけた幼い顔が、ぱぁっと顔を輝かせた。
とっさに出した大きな声に、慌てて口元を塞ぐ。
すぐ側にいた受験生らしい男の人にじろりと睨まれて、軽く頭を下げると。
私の方を向いて、ペロリと舌を出して肩をすくめた。

「どうしたの?こんなところで…」
「学習班の宿題。調べ物があって来てたの。ね、ちぃちゃん!」

隣にいた色白の女の子が、遠慮がちに頭を下げた。
色白の頬を染めて、恥ずかしそうに笑う。
その面影に、あの人の涼しい笑顔が脳裏を掠めて、少しだけ、胸が疼いた。

「…千尋ちゃん…だったよね?」

佐倉の妹。
一度だけ、蒼吾んちの玄関先で見かけた記憶がある。

「蒼吾も、来てるの?」
思わず周りを見渡す。
アイツの姿は見当たらない。
「…蒼にぃがこんなところ、来るはずないじゃん」
さすが妹。
もっともらしいことを呟いた。

「ね、ね。凪ちゃん。時間、ある?
わからないところがあるんだけど…」
上目遣いで見上げられた。
そんな顔をされちゃうと、たとえ時間がなくても、融通をきかせてしまう。
「どれどれ」
「ここなんだケド…」
空いていた席に移動して、教科書を開ける。
それを囲むようにして、ふたりが覗き込んだ。
説明するたびに、顔を見合わせたり、相づちを打ったり。
ああ、和むなぁ。可愛いなぁ。
私にも妹がいたらよかったのに。うんと可愛がってあげるのにな。
うちの弟にも、つめの垢を煎じて飲ましてやりたい。

「そっか!なるほど!やっぱすごいね、凪ちゃんは!ね?ちぃちゃん」
「…うん…」

深青ちゃんの言葉に、穏やかに顔を緩ませる。
笑った顔が、佐倉そっくり。
深青ちゃんのエネルギッシュな笑顔と違って、穏やかで柔らかい笑顔。
初めて会った時も感じたけど、親近感が湧く。初めて会った気がしなかった。
どこかで会ったコト、あったっけ?
佐倉そっくりだから、そう感じるのかな。


コンコンッと、小さい咳が何度か聞こえた。
「ちぃちゃん、大丈夫?」
「ん…。平気」
「なに?風邪?」
そういえば流行ってるよね。
私もこの前、インフルエンザになったばかりだし。
そうこうしている間に、咳の数が増えて、涙目になってきた。
「大丈夫?」
「…大丈……夫…です…」
彼女の呼吸が、再び荒いものに変わる。
「ちぃちゃん。もう今日はやめて帰ろう。体調、悪そうだし。私、本返してくるから帰る用意してて!」
深青ちゃんは広げていた筆記用具を手早く片付けると、本を返却しに走った。
その間にも千尋ちゃんの咳は、治まらなくて。
状況だけひどくなっていってるのが、手に取るようにわかる。
私は席を移動して、千尋ちゃんの背中に手を回して肩を抱きしめた。
「平気?何か飲み物、買ってこようか?」
「…大丈夫…です…」
覗き込んだ千尋ちゃんの顔は、目に涙が浮んでいて、顔をくしゃくしゃにして咳き込んでいる。
撫でてあげようと背中に触れたら、ヒューヒューと空気の抜けるような音がした。



この音って、まさか──。





「──千尋?」



聞き覚えのある、低くて柔らかい声が鼓膜を揺らした。
顔をあげると、それと視線が絡まって。




「日下部…──」




驚いたように、私の名前を口にした。
でもそれは、一瞬だけで。
佐倉の顔は瞬く間に兄の顔になって、千尋ちゃんの隣に腰を降ろした。



「吸入は?」


「…バッグの、内ポケットの、中……」

風の抜けるような千尋ちゃんの声に、佐倉は素早く動いてバッグの中からそれを取り出した。
丸いプラスチックケースのような蓋を外して、2回ほどカシャカシャと振るとそれを千尋ちゃんに手渡した。





* * *




千尋ちゃんの咳は、喘息の発作だった。
吸入することで一時的に発作は治まったけれど、大事を取ってタクシーに乗って先に帰った。
途中まで一緒に──って、言われたけれど。
少しでも早く千尋ちゃんを家に連れて帰って欲しかったから、遠慮させてもらった。
夕暮れの茜に消えていくタクシーを見送りながら。
何だか、不安に押しつぶされそうな気持ちでいっぱいになった。
帰り道。
千尋ちゃんは昔から身体が弱くて、今までにも何度か、喘息の発作を起こしたことがあるんだと、深青ちゃんから聞いた。


夏木家の前まで来ると、玄関先に佇んでいたでっかい人影がこっちを振り帰った。


「おかえり」

「…蒼吾…」

どうして。

「さっき、佐倉から家に連絡があった。千尋、発作起こしたんだって?」

「…ちぃちゃん、は…?」

「今は、落ち着いて眠ってるって。深青を置いて帰ったから、心配してた」

「…よかった……」

深青ちゃんが安堵の溜息をこぼして、その表情がゆるりと歪んだ後、そのまま蒼吾に抱きついた。
何も言わずに、ぎゅうっと大きな体にしがみつく。
体に回した手が、小さく震えてた。

…そっか。
深青ちゃんだって、不安だったよね。
しっかりしてるっていっても、まだ十二歳だもん。

「…偉かったな」


蒼吾が優しく笑って、深青ちゃんの頭を撫でた───。




>>To Be Continued
春を待つキミに。 comments(6) -
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Comment








お久しぶりです!!
やっと来れましたーー!!!
色々読みましたが、やっぱ可愛いですww
蒼吾クン、やっぱかっこいいです!
from. 志歩 | 2007/12/04 23:08 |
*志歩さんへ*
お久しぶりです!
お返事が遅くなってしまって、ゴメンなさい。
蒼吾、かっこいいですか〜!久しぶりに書くと新鮮でした(笑)
from. | 2007/12/07 01:54 |
おはようございます!!
日下部さんはずっと、夏木さんの事が好きだったのですね。ですが彼女はまだまだ恋と言うものに不慣れで、自身の気持ちをどう上手く伝えたら良いのか判らずに、迷っていると言う雰囲気がこの章でよくわかりました。
そんな日下部さんが、佐倉さんの想いを知ったらどう思うのか・・・と少し気になりました。
佐倉さんには病気を持った妹が居たのですね。
妹千尋さんの前では、彼は優しい兄であるのだと思いました。
果たしてこの後物語がどのように進んで行くのか
次回の展開に期待します
from. | 2007/12/18 09:08 |
●○●要さんへ●○●
スミマセン。ちょっと補足を…。
>彼女はまだまだ恋と言うものに不慣れで、自身の気持ちをどう上手く伝えたら良いのか判らずに、迷っていると言う雰囲気がこの章でよくわかりました

…というご意見ですが。
この時点で、すでに凪は、蒼吾に告白をして一度振られています。春キミ自体、魔法のコトバの番外編になるので、このお話一本で読み進めてしまうと、どうしても食い違いが出てきてしまうと思います。分かりづらくて申し訳ないです。
from. りくそらた | 2007/12/20 09:41 |
遅くなってスミマセン(汗

あたしはまほコトが好きなので番外として日下部さんや佐倉さん視点からかいた「春を待つ君に」はとてもスキです。
このとき日下部さんはこんな気持ちだったんだぁとどちらかというとましろ派だったあたしも日下部さん同情します(/_;)

ところでご懐妊おめでとうございます!!
かわいい赤ちゃんを産んでくださいね(^^)
from. ひかる | 2008/02/03 22:03 |
*ひかるさんへ*
未だに『まほコト』大好きです!とコメントやメールをもらうたびに、気持ちがほこほこしてとても嬉しくなります。
ありがとう!!
読者の方は、蒼吾やましろ派がダンゼン多いので、凪や佐倉の番外編ってどうなんだろう…とすごく心配でしたが、意外に支持してくれる人がたくさんいて嬉しいです。
つわりが落ち着いたら、春キミ。から再開したいなーと思っています。春までには終わらせたい!
また楽しみにしてもらえると嬉しいです♪

お気遣い、ありがとうございました!
私事で喜んでもらえて、とても嬉しいです。


from. りくそらた | 2008/02/04 10:44 |
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