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春を待つキミに。 13
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春を待つキミに。 13  サイド*凪

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同じ年のくせに落ち着きすぎ。
それが佐倉の第一印象だった。
何を考えているのか、読めたためしがさっぱりない。
なのに。
佐倉には、私の気持ちを見透かされているような気がしてならない。






「千尋ちゃん、大丈夫だった?」

昼休みの図書室で端正な横顔を見つけて、その後姿にそっと声を掛けた。
一瞬だけ、声に驚いた顔がすぐにその表情を引き締めて、穏やかな笑顔を浮かべてこちらを振り返った。
「今日は大事を取って学校を休んでるけど…もう大丈夫だよ。
昨日は日下部にも迷惑をかけて、ごめんな」
穏やかな“兄の表情”を見せて、優しく笑いかけた。
「千尋ちゃんの喘息って、ひどいの?」
「こっちの空気はいいから、東京にいた頃に比べると随分マシ。激しい運動は無理だけど、簡単なものなら出来るようになってきてるし。
ただ、風邪を引いたり空気が乾燥してたりすると、昨日みたいに発作を引き起こしやすいんだ」
昨日の図書館は暖房がよく効いていて、乾燥していたのを思い出した。
ちゃんと知っていたら、配慮してあげられたのに。
側にいながら何もできなかった自分が情けない。


「…なに?」

気がつけば佐倉がじっと見てることに気付く。
何か言いたそうな顔。
「こうやってまともに話したのって、久しぶりだなと思って。あの日から俺の事、ずっと避けてただろ?」
「あの日?」
「俺が日下部にキスした───」
「佐倉…ッ!!」
佐倉の腕をがっしり掴んで、図書室奥の難しい本ばかり並ぶコーナーに押し込む。
突然上がった場違いな声に、ジロリと一瞥された。
「やめてよ、こんなところで…」
誰が聞いてるのか分からないような場所で。
できるだけ声をひそめて、佐倉を睨みつけた。
「嘘は言ってないだろう?」
「変な噂が立っちゃう」
「俺は別に構わないけど?」
真顔で私を覗き込む。
あからさまに視線を外した私を見て、佐倉が小さく声を立てて笑った。
「わざわざ俺を探す為に、図書室に来たの?」
「まさか…! たまたま、偶然、佐倉を見つけて、それで…」
「ふーん」
「そ、それに…っ!探してる本があったの…っ」
そっぽを向いて、逃げるように佐倉に背を向けた。
疑いの眼差しが、痛い。
言い訳にちょうどいい本を探して、背伸びをしてそれに手を伸ばす。
指の先が本に触れて、あと少しで届きそうだと思った時。
背中に体温を感じて、ビクと体が強張った。


「これ?」

スッと後ろから本が引き抜かれた。
思わず後ろを振り返ったら思いのほか距離が近くて。
ドクンと心臓が跳ねた。


「日下部、こういうの読むんだ。下巻もいるだろ?」


本棚と佐倉に挟まれる形になった私は、必然的に彼を見上げた。
距離が、近い。
捲り上げた袖口から見える腕は白くて繊細で。
なのに、喉仏やシャツからわずかに覗く鎖骨のラインがいやに男らしく見えて。
間近で見上げる端正な顔に、思わず見とれてしまった。
佐倉の顔なんて、小学生の頃から見慣れているはずなのに。


「オレの顔、何か付いてる?」
「え?」
「何か、じっと見てるから」
「べ、別に……」

気まずくて視線を逸らした先。
佐倉が抱えていた美術書にまぎれて、いくつかの赤い本が見えた。
東京芸術大学、武蔵野美術大学、多摩美術大学……?

「佐倉…。美大、受けるの?」
「……ああ、これ?今後の参考にと思ってね」
私の視線の先に気付いて、肩をすくめて笑う。
「まだ二年も先なのに、気が早いね」
「日下部は将来のこととか、考えたりしないの?」
「そんなの…全然」
だって、この前高校に入学したばかりだもん。
毎日が精一杯で、先の事もやりたいことも、まだ見つけられない。

「県外受験はするつもりない?
日下部の成績だったら地元じゃなくて、もっと上、狙えるだろ?」
「買いかぶりすぎだって。私のレベルだったら、地元で充分…」
「中学だって高校だって。本当はここじゃなくてもっと上の高校、行けてたはずだろ?」
そんなの。
「佐倉だって───」
本当は頭いいの知ってる。
言葉を詰まらせた私を、佐倉が真面目な表情で覗き込んだ。

「───蒼吾が、ここだったから?」

突然に上がった名前に、弾かれたように顔を上げた私の視線を。
佐倉の瞳が絡め取った。
あまりにも真剣な目でじっと見つめるから、何も言えなくなる。

「オレは日下部がここだったから、この高校受けたんだ」

ドクリと心臓が大きな音を立てて、自分が今、どういう状況に置かれているのかを思い出す。
本棚と佐倉に挟まれる体勢で、ふたりの距離はわずかしかなくて。
間近で言葉を紡ぐ佐倉の唇が、やけにリアルだった。


「…本、ありがとう…っ!」

気まずい沈黙を破りたくて、早く囲われた空間から逃れたくて。
顔も見ずに佐倉の腕から本を抜き取って、そこから逃げようとした。
だって、こんな佐倉、知らない。
息が詰まる。


そしたら。
ぱきん、と。
足元で不吉な音が耳を掠めて、足が止まった。



「…え……?」



「───あ」


嫌な感触がして、恐る恐るそれを振り返った足元にフレームの壊れた眼鏡が見えた。
高そうなインテリメガネ。
佐倉の、だ───。


う…わぁぁぁ…っ!!!!


「ご、ごめんね…っ」
慌てて床に座り込んでそれを拾い上げたけれど、ちょうど耳に引っ掛けるフレームの部分が壊れてしまって使い物にならない状態。
どうしよう!
「弁償…するから…」
「いいよ。たいして高いものじゃないし。フレームが割れただけだから、何とかなるよ」
「でも…」
「授業中しか使わないし。不自由はしない」
私の手からするりと眼鏡を抜き取って、レンズ越しに笑う。
もっと感情を露にしてくれればいいのに。
そんな顔で笑われたら、どうしたらいいのか分からなくなる。

「ご、ごめん…っ。やっぱり弁償するから!」
「いいって。ちょうど新しいものを新調しようと思ってたところだったし、ちょうどいいよ」
「でも……」
チラと見えたフレームの横文字。
“RODENSTOCK”
私だって知ってる。
ドイツ製の老舗ブランドのメガネフレームだ。
すごく、高いものでしょう?

佐倉が隣で、ふっと笑うのが見えた。
なに?
「日下部がそんなに焦ってるの、初めて見た。ある意味、すごく貴重なんだけど…」
「もう!面白がらないでよ!」
こっちはかなり真剣なんだから。
むっとしかめっ面で眉を寄せると、佐倉が声を立てて笑いながらこう言った。


「───じゃあさ、一緒に眼鏡、選んでよ。責任、取って?」




>>To Be Continued

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春を待つキミに。 comments(14) -
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Comment








お久しぶりですねーww
久しぶりにまた読んで、やっぱ面白いって思いましたぁ!
凪ちゃんの焦ってるとこ、新鮮ですねww可愛いッ
てか佐倉君もやりますなあ!!笑
from. 志歩 | 2008/04/09 16:22 |
*志歩さんへ*
ホント久しぶりの更新です(笑)
体調不良であまりにも長い間、小説から離れていたので、復活するのに時間がかかっちゃいました。

凪の焦っているところ、新鮮でしょ。
凪にもこんな一面があるんだ〜と思う部分が、これからもたくさん出てくると思います。
そういう意味でも佐倉の方が一枚上手なのかな!?
from. りくそらた | 2008/04/11 09:44 |
ほんっとうにお久しぶりです!!
春になりましたねww
春にこういう素敵なお話を読むと、すごくロマンチックになれます☆
凪ってもっと大人っぽい人かと思ったら意外とかわいらしい一面がありますね♪ 佐倉も佐倉でめっちゃかっこよすぎです!!
HK私はこの春中三になりました! 受験勉強とかあっていろいろ大変ですが、大好きなこの小説を読みにできる限り来ようと思います☆
HK 6月に修学旅行で京都・奈良へ行くんですけど、そらりくたさんはオススメの場所ってありますか?? もしよければ教えてください。

では小説頑張ってくださいね♪応援しています☆
from. さくら | 2008/04/12 22:19 |
*さくらさんへ*

お久しぶりでございます。
春キミ。春までにおはなしを終わらせるつもりが、春からの再スタートになっちゃいました(苦笑)
凪の意外な一面を引き出せるのは佐倉じゃないかな。これからの凪の心の変化を楽しみにしていただけると嬉しいです。

京都・奈良ですか。
私も数えるほどしか行ったことがないので、(特に奈良は修学旅行の1回のみ)お薦めできるスポットはわかりません。
お役に立てなくて申し訳ないです〜。
楽しんできてくださいね。
from. りくそらた | 2008/04/13 11:55 |
お久しぶりです。^^
また、凪ちゃんと佐倉くんに会えてとても光栄です。

だんだん凪の知らない一面が表に出てきますね。
どんな事でも楽にクリアしちゃう凪でも、
恋愛には、かなり不器用で。。。
読んでいて、とても楽しいです。(*^^*)ニコ

続き楽しみにしています♪
from. 小春 | 2008/04/14 13:21 |
*小春さんへ*
小春さん、お久しぶりです。
やっとPCに向かえるくらいまでにつわりも落ち着いて、私にもやっと春がやってきた感じです。

本編では見えてこなかった凪と佐倉の恋愛模様まで、ようやくたどり着きました。
凪って何でも器用にこなせるくせに、恋愛に関してはすごく不器用だったり。それは佐倉も同じで…。
これからのふたりの展開も、どうぞ温かく見守ってやってくださいね。
from. りくそらた | 2008/04/15 14:05 |
復活おめでとうございますっ!
うわーん、待ってましたよ!!
凪ちゃんかわいいです。
ましろちゃんがかわいいのは当然として、
凪ちゃんみたいな子がうろたえてる姿はそれはそれでかわいいですー。
つい虐めたくなる佐倉くんの気持ち分かるなあ。
負けるな凪ちゃん!頑張れ〜佐倉くん!
from. りい | 2008/04/21 16:16 |
*りいさんへ*
長い間お待たせしました&楽しみにしてもらえて嬉しいです。
今回のおはなしにいただいたコメントで、読者さまの持つ凪のイメージがとってもよくわかりました。
凪の心の変化を今後のお話で、楽しんでいただけたらいいなと思います。
応援、ありがとうございました〜!
from. りくそらた | 2008/04/22 09:43 |
お久しぶりですね!!
ここの所、更新されていなかったので、長いこと来ていなかったんですが今日は久しぶりに見に来ました^^

私は、佐倉くんと本棚の間に挟まれる凪ちゃんがかわいいなぁと思いしました。
でも、凪ちゃんが慌てるなんてそうそう無いから新鮮でいいですね!!

そういや、赤ちゃんはまだ生まれてないんですか?
大変だと思いますがこれからも頑張ってくださいo(*⌒O⌒)b

りくそらたさんの作品、いつも楽しみにしてます!!
from. ひかる | 2008/05/04 18:24 |
おはようございます。
きゃー!更新されている(嬉々)
しかも、なんてオイシイ展開(主に佐倉と読者にとって)
凪の動揺が、まほコトの終盤と重なってカワイイなって思いました。
デートですね!
がんばれ、佐倉♪

お体は大丈夫ですか?
夏に向けて体力温存、ご自愛くださいね。
from. 史間 | 2008/05/05 10:23 |
お久しぶりです!&妊娠おめでとうございますw
ってこんな挨拶かなり時期がずれてるんですけれど。。。

お話の方ですが、なんかこれからどんな展開が待っているのかホントに楽しみです!
凪の気持ちはどんな風に動いていくのでしょうか!?
続きが楽しみで楽しみで仕方がありません♪
これからも(今は体調管理が最優先事項だと思いますが)がんばってくださいねw

紹介が遅れたのですが私もブログを開設しました!
そっちでは冬菜って言う名前なんです。
まだ記事はかなり少ないのですが地道にがんばっていくつもりですw
良ければコメントくださいね♪
from. 琴音 | 2008/05/06 00:06 |
*ひかるさんへ*
お久しぶりです。コンニチワ。
凪の動揺っぷりが意外です…!というコメントをたくさんいただいているので、PCの前でニヤニヤしています(笑)
しっかりしているけど、凪もちゃんと女の子なんですよね。
これからそういった一面が垣間見れると思うので、どうぞ楽しみにしていてくださいね。
出産は8月末の予定です。それまでに、頑張って書き進めていきたいな〜と思っていますので、またお付き合いいただければ嬉しいです。
from. りくそらた | 2008/05/06 14:53 |
*史間さんへ*
オイシイ展開ですね。えへへ。
ましろや蒼吾といるとリード権は凪なのですが、佐倉の場合は彼の方が一枚上手なのかも…!?
やっとふたりの恋愛模様が書ける展開なので、私としても書くのが楽しみです♪また楽しみにしていてもらえると嬉しいです。
体調はだいぶ復活しました!
でもさすがにふたり分なので、疲れやすくなってます〜。夏に向けて体力を温存しつつ、書き進めていけたらいいな。
from. りくそらた | 2008/05/06 15:01 |
*琴音さんへ*
お久しぶりでございます!お元気でしたか?
凪の心の変化、これからの展開でたっぷりと楽しんでいただけたらいいなと思います。
素直イチバンなましろ&蒼吾と違って、一筋縄ではいかないこのふたり。蒼吾よりもずーっと不器用なので、書き手泣かせです(笑)また応援してやってくださいね。
琴音さんもブログを始められたのですね。
開設、おめでとうございます。
また時間のある時にゆっくりお伺いさせてもらいますね。頑張ってください♪
from. りくそらた | 2008/05/06 15:06 |
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