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ここでキスして  前編
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ここでキスして  前編

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ふたり模様

まだ誰も来ていないはずの屋上への扉を開けて。
新鮮な空気を、胸いっぱいに吸いこんだ。
目に飛び込んできたのは、透き通った真っ青な夏空。
フェンス越しに見えた桜の木々が、初夏の陽気にさわさわと葉を揺らす。


『 昼休み。屋上で 』


素っ気無い、たった一行のメール。
私は喜びを噛み締めるように、携帯を握りしめた。
顔がふにゃりと、にやけてしょうがない。
ぱちぱちと頬を叩いて、笑顔で緩みきった顔を引き締めた。
まだ、来てるはずはないだろうけど。
いつものクセで、何気なく給水塔の裏を覗いてみた。


あ…。いた……。


光を遮るものがほとんどない屋上で、日陰の風通しのいい場所を見つけて、コンクリートの上に横たわった大きな体。
隣に転がった読みかけの漫画と携帯電話。
軽く開いた唇から、すぅすぅと寝息が聞こえてきた。

この様子じゃ、きっと四時間目はサボったんだろうな…。

プリーツスカートの折り目を気にしながら、その隣に腰を降ろした。
一年中、真っ黒に日焼けしている蒼吾くんの肌は。
暑さが増すごとに、ますます黒くなっていく。
私と並んだら、まるでオセロの白と黒だ。
部活、頑張ってるんだなぁ…。
そっと覗き込んだら、耳に掛けていた長い髪が滑り落ちた。
寝顔を掠めて起こしちゃいそうだったから、ひとつにまとめて、ポケットから取り出したクリップで留めた。
蒼吾くんは、一向に起きる気配がない。



「おーい…。お昼休み、終わっちゃうよ?」


子供のように無防備な寝顔。
そっとその頬に触れてみた。
部活で鍛え抜かれた腕や肩とは違って、頬は思ったよりも柔らかい。
いつもでっかく笑う口元からは、規則正しい吐息が聞こえる。


…キス、したいなぁ。


そんな衝動がふつふつと湧き起こって、私は、そっと寝顔に顔を近づけた。








フリーになる昼休みは久しぶりだった。
夏大に向けて野球部が始動したのは、春も間もない四月。
放課後はもちろん、毎日、朝早くから昼休みも返上で練習三昧。
高校球児に休日なんてない。
家と学校とグラウンドとの往復で、くたくたの毎日。
ベッドと授業なんて、寝るためだけにある!
頑張れば頑張った分だけ結果が返ってくる練習は、すげぇ充実してるけど。
あまりにも自由の利かない、部活三昧の毎日に、時々、うんざりする。
そして必ずその時、自分に聞きたくなる。
青春ってなんだ──!?
って。


春から付き合い始めた園田とは、二年になってクラスが分かれた。
おまけに校舎も別。
園田のいるAクラスは渡り廊下の向こうだ。
廊下でばったり、という偶然もほとんどない。
休み時間のたびに会いに行くつーのも、迷惑な気がして。
空いた時間にたまに会うのと、夜更けの電話が、園田との唯一の時間。
なのに部活で疲れきったオレは、携帯を握りしめたまま寝ちまう事がしょっちゅう。
泥のように眠り続けて、気付けば朝方。
ベッドの下に転がった開きっぱなしの携帯には、メールが一件。

『 お疲れさま。また明日ね。おやすみ 』

いつも寝ちまってから、ムチャクチャ後悔。
睡魔のバカ野郎ーッと、朝から叫びたくなる。
これじゃあ、片思いしてた時と大して変わんないじゃねーかよッ。
触れられる距離にいるのに、触れられない。
ヘタすりゃ、片思いよりも厄介だ。



そんなある日。
授業中に回ってきた野球部業務メール。
『 顧問が急用の為、昼休みの練習は中止 』
開けたとたん、オレは机の下でガッツポーズを決めた。
久しぶりに園田と会える。
その期待がオレの心を躍らせた。









驚かしてやろう、と。
ほんのちょっとの出来心。
園田は想像どおりのリアクションをしてくれるから、すげーおもしろい。
いつ、どのタイミングで驚かしてやろう。
約束の屋上で先にスタンバってたオレは、逸る気持ちをグッと押さえて、タヌキ寝入りを決め込んだ。
近づいてきた足音が俺の側で歩みを止めて、隣にしゃがみこむ気配がした。
軽く薄目を開けて、その姿を確認する。


女子の制服のスカートは、夏に向けて限界に挑戦しているかのように短くなっていく気がする。
暑さと長さが正比例だ。
園田も例外じゃなく、かなり短い。
オレのすぐ隣で、座り込んだ小さな膝小僧が見えた。
覗き込んだ拍子に、肩から滑り落ちた長く柔らかな髪を後ろで器用にねじってクリップで留める。
ひとつひとつの仕草が妙に艶っぽく感じるのは、夏のせいだ。
ただでさえ腕とか脚とか、無駄に露出が多いのに、その白い襟足は反則だろ。
まとめた夏髪は、涼しげで、清楚で。
でもそれは、今のオレには逆効果。目の毒だ。
誘われてる気分になる。


「おーい…。お昼休み、終わっちゃうよ?」


遠慮がちに呟く声が聞こえて、小さな掌が伸びてきた。
ヒヤリと冷たい指先が頬に触れて、ドキリと鼓動が高鳴った。
火照った体に、冷えた指先が気持ちいい。
背中に腕を回して、このまま抱き寄せて、キスしたくなる。

ヤバイ。押さえろ、オレ…ッ。

園田に焦りは禁物。
コイツの涙は、二度と見たくねぇ。
できることなら、このまま園田の方から仕掛けてくれるのが理想なんだけど。
それは、期待できそうにない。
どのタイミングで、ドッキリを決行するか。
絶えず寝たフリを演じながら、絶妙なチャンスを伺った。

園田はいつも、寝ているオレを起こそうとはしない。
柔らかな笑みを浮かべて、黙って見てるだけ。
それをこっそり覗き見るのが好きで。
実は、タヌキ寝入りもこれが初めてじゃない。
よし。
もう一度それを拝んでからにするか。
オレは園田に見つからないように、薄目を開けた。



そこに飛び込んできたのは、予想も出来ない光景。
オレを覗き込んでいたはずの園田の顔が、ゆっくりと近づいてきた。
紺のセーラーの襟と、風に揺れる白いスカーフ。
少し汗ばんだ首筋に張り付いた後れ毛が妙に色っぽくて、心拍数を上げる。
小さな肩越しに見えた空の蒼と、セーラー服の冴えた白が眩しかった。すべての動作が、スローモーションのように見えた。



…え、マジで!?




逸る気持ちを押し込めて、オレはタヌキを決め込んだ。






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魔法のコトバ* 続編 1 comments(2) -
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Comment








いいところで切られました><
こんにちは♪
蒼吾どきどきの展開です!新鮮だ〜この二人のその後が読めると思っていなかったので、すっごく嬉しいです。続きもわくわくします♪というか、ちゅーしかないです!(笑)
それにしても、タヌキでどうやってそこまで盗み見られるんだ……どうやって。すごいな蒼吾(そこ?)
from. 史間 | 2008/12/01 10:13 |
*史間さんへ*
私も書くつもりはなかったのですが…(笑)
リクエストをたくさんいただいていたので、頑張って挑戦してみました。おかげで、宙ぶらりんになっているおはなしがたくさん…ああ。
でも、久しぶりにふたりを書けて楽しかったです!
蒼吾のタヌキはプロ級ですね(笑)隠れた才能!?
from. りくそらた | 2008/12/01 10:14 |
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