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全力少年 8
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言わないで    サイド*ましろ 

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「何やってんだよ」



唇までの距離はほんの数センチ。
わずかの空間しかないふたりの間を割って入るように背後から声がした。
ビクと、安部くんの肩が震えて行動が止まる。
低音だけれど凛と張りのある声───。
聞き覚えのある声に、じわり。
安部くんが苦い顔をして振り返った。




「げ…。佐倉…───」



私を押さえつけた肩の向こう。
薄茶色の柔らかな髪を揺らして、佐倉くんがにこりと微笑むのが見えた。
「久しぶりに再会したクラスメイトに、その態度はあんまりじゃない?
もうちょっと違うリアクションないの?」
人好きのする柔らかな笑顔を浮かべたまま、佐倉くんが近づいた。
「安部って…この近くの高校だったっけ?」
チラリ。
制服のネクタイと腕のエムブレムに視線を送る。
「家に帰るにしてはあまりに逆方向だよな?もしかして…ましろちゃんに会いにきたの?」
「んなわけねーだろッ!部の練習試合に来てたんだよ!」
すかさず安部くんが言葉をはね返す。
「ふーん…」
「なんだよ?」
「な。…俺も混ぜてもらっていいかな?」
「はあ?」

「久しぶりにやろうよ。同窓会───」

にこりと微笑む佐倉くんに安部くんがカッとなって、声を荒げた。


「聞いてたのかよっ。趣味、わっりーな!」
「そういうそっちは、頭悪いね」
「はあぁ?」
思い切り不機嫌に顔をしかめた安部くんに、佐倉くんが近づいて。
何やら耳打ちをした。


「…な…っ!何、言ってんだよおっ前!そんなわけ…ねーだろ…っ!!」


にこりと微笑む佐倉くんに安部くんがカッとなって、声を荒げる。
耳まで真っ赤になって怒り出す。
何を言ったの?
壁際に押し込められたままの状態の私は、安部くんと視線が合わさって。
次の瞬間。
ドン!と体を押された。



「きゃあ…っ!」
あまりに咄嗟すぎて、瞬発力のない私は。
体だけ佐倉くんにすがるような形で、膝小僧を思い切り擦り剥いた。
じわり、血が滲む。
「大丈夫?」
「…うん。平気…」
安部くんは、そんなどんくさい私がますます気に入らないらしく。
「チッ」
と短く舌打ちをして、冷めた目つきで見下ろした。
手を差し伸べてくれた佐倉くんの肩越しで、私にだけ見えるように、安部くんの口が動いた。















「───え…?」




すうーっと血の気が引いていく感じは久しぶりだった。
佐倉くんの腕を掴んだまま、ずるりと下がっていく。
「…ましろちゃん!?」
私の異変に気付いた佐倉くんが、膝を付いて下から顔を覗きこんだ。
キレイな顔がぼんやりぼやけて、うまく焦点が合わない。
意識が遠のきかけているのが、自分でもわかった。




「安部…っ、誰か呼んで───」
「いい!…やめて…」
グッと佐倉くんのシャツを掴んで、私は首を振った。
「けど…」
「大丈夫…だから…」
安部くんになんて頼りたくないもの。
「…まだ例の貧血、治ってねーのかよ。弱っちぃな!」
「安部っ!」
珍しく佐倉くんが声を荒げた。
聞いたことのない声色に、一瞬、体が竦む。


「こんな時に何言ってんだよ!?もとはといえば、お前のせいだろ?」
「俺の、せい?」
ふうんと鼻を鳴らして、安部くんが私を見下ろした。







「自分の弱さを人のせいにすんな!」


痛いほど真っ直ぐ私を見つめて言い放った。
冷たい視線が私を射抜く。
何も言い返せない。
その言葉をすんなり受け入れることは出来ないけれど、否定もできなかった。





安部くんが苛立ちに頭をガッと掻き上げて。
「お前らふたりでよろしくやってろ!」
捨て台詞のような言葉を投げつけた。
「おい!安部…っ!」
呼び止める声なんて聞く耳も持たず。
「ぶぁーか!」
ふて腐れた顔で吐き捨てて、そこから立ち去る。
偉そうに肩を張って歩く後姿が一瞬で、雑路の中に紛れて消えた。

見たくなんてないのに。
私は安部くんの背中から、視線が外せなかった。




「大丈夫?」
姿が見えなくなったのを確認してから、膝を付いて佐倉くんが私を覗き込んだ。
「ごめんな」
「…どうして…佐倉くんが謝るの?」
むしろ。
謝らなきゃいけないのは私の方。
たまたま通りかかったばっかりに、嫌なことに巻き込んでしまった。
「俺が煽ることを言ったから、安部のヤツ、カッとなって…」
足は大丈夫?って佐倉くんに尋ねられてから、今頃になって痛みが押し寄せてくる。
「これぐらい平気…。それよりも…安部くんに何て…言ったの?」
「さあ?」
肝心なところは笑ってはぐらかされた。
佐倉くんはいつもそう。
笑顔の向こうに本音を隠してしまう。
でも、もうこれ以上。
安部くんのことを考えたくなかったから、私も深くは聞かなかった。


「変わらないよなぁ、アイツは」
呆れたように笑って、私に手を差し伸べた。
それに頼ろうと手を伸ばすけれど、体がいうことをきいてくれない。
今頃になって、恐怖が体を芯から震わせた。
「平気?」
佐倉くんが心配そうな顔で覗き込む。
大丈夫、って伝えたいのに声が出ない。
小さく頷くのが精一杯。



「やっぱり、蒼吾の言うとおりだ」




「───え…?」


「安部が来てるの見かけたから、嫌な予感がするって。
鋭いよな、アイツ」
傷心の私を気遣うように、佐倉くんが優しく微笑んだ。
「大事なミーティングで抜けられないから、ましろちゃんの事を頼むって。
俺に頭を下げるぐらいだから、よほど心配だったんだろうな。
アイツ。まだ校内に残ってるはずだから戻る?膝も…消毒した方がいいだろ?」
ますます顔が上げられなくなった。
蒼吾くんのさりげない優しさが、傷ついた心に淡く浸透していく。
目尻に涙が溜まるような気がして、うまく笑えなくなった。


「佐倉くん…」
「なに?」



「今日のこと…蒼吾くんには言わないで…」



肩を抱かれたり、抱きしめられたり。
蒼吾くん以外の人に触れられたことを、彼には知られたくない。



「それで、ましろちゃんはいいの?」
「心配…かけたくないから…」
「…わかった。ましろちゃんがそう言うなら…」
心中を察してくれたのか、佐倉くんが溜息を落とした。

「どうする?学校、戻る?」
「ううん。いい。
今日はこのまま帰るから、蒼吾くんには何もなかったって伝えて?」
だって今、佐倉くんと戻ったら、何かあったって言ってるようなものだもん。
平気な顔で蒼吾くんに会う自信なんて、ない。


「…今日はもう遅いし送って行くよ。蒼吾には後でメールしておく」
そう言って佐倉くんが、足元に転がった私の鞄を拾い上げた。
座り込んだ私を引き上げて、ハイと手渡す。
「…ありがとう…」
ようやく自分の足で立つことができて、私はゆっくりと笑ってみせた。
「安部はバスケの練習試合でが来てただけだから、もう会うことはないよ。だから、今日のことは忘れて」
そう言って優しく笑う佐倉くんに、私はただ黙って頷くだけで。
それ以上、何も言えなかった。





だってあの時。
すがりついた佐倉くんの肩の向こうで。
私にだけ見えるように、安部くんが言ったんだ。




“また来る”って。






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全力少年(魔法のコトバ* 続編) comments(8) -
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Comment








こんにちは!!
いつもすごくおもしろくて、更新楽しみにしています。
それと最近、字の大きさ変えましたよね。
ちょっぴり、小さくて読みにくいです。
目が悪いので(笑)
from. ゆい | 2008/12/02 23:22 |
*ゆいさんへ*
コメントをいつもありがとうございます!

>それと最近、字の大きさ変えましたよね。
ちょっぴり、小さくて読みにくいです。

昨日、テンプレートを変更しました。
字の大きさは変わってないのですが、フォント(書体)が変わっているので以前のものよりも多少読みにくいかも…。
もしかして、ゆいさんのPC上では、字の大きさが小さくなっていますか?
我が家のPC上では変わりないのですが、以前、違うPCで開いてみたら字の大きさは違うし固定されている状態というのを見かけたことがあるので…。
PCにすごくうといので、どういう仕組みでそうなるかがわからないのですが、PCによって違うみたいです。
画面の大きさの違いでしょうか…。うーん。

今日は里帰りの予定なので、実家のPCでも確認してみます。
ゆいさん宅の字の大きさが固定されていないようでしたら、PC本体の“文字のサイズ”を変更して読んでもらえるとありがたいです。
from. りくそらた | 2008/12/03 09:45 |
こんにちはッッいつも更新楽しみに待ってます!
今回初コメントです。
で、さっそく1つ疑問が、、、
佐倉くん、、、引っ越さなかったんですか??(汗
すみません、本編しか読んでないので、佐倉くんについてあまりわかってなくて、、
応援してるのでがんばってください!!
from. しな | 2008/12/03 12:41 |
*しなさんへ*
はじめまして。いらっしゃいませ。
初コメント嬉しいです。

>さっそく1つ疑問が、、、
佐倉くん、、、引っ越さなかったんですか??(汗

はい。
しなさんの記憶が正しいですよ(笑)
まほコトラストで佐倉は東京へ行きました。
たぶん誰かに聞かれるだろうな〜と予想していたので、それについての補足を別ブログにてしています。
一応、今回の話のラストにリンクを貼り付けていますので、そちらをご覧になってくださいね。
from. りくそらた | 2008/12/03 17:31 |
更新嬉しいです〜♪

佐倉クン、戻ってきてるんですね!!
佐倉クンがいてよかったぁーー・・・。
それにしても・・・安部クンは「また来る」って・・・。
わぁー・・・
めちゃ∪茲気になりますね!!!
楽しみにしてます☆
from. 夢羽 | 2008/12/03 19:12 |
*夢羽さんへ*
佐倉がいて、4人そろってのまほコトなので。
『春キミ。』の連載が終わっていないので、ここで佐倉を出すかどうするか、すごーく迷いました(笑)
from. りくそらた | 2008/12/03 21:56 |
こんにちは。
下のゆいです。他に同じ名前の人がいたので変えました。
ゆいさん、すいません。

文字サイズのことなんですけど、拡大したら見やすくなりました。
ご迷惑をかけてすいませんでした。

これからも、がんばってください!!
from. 柚木 | 2008/12/05 06:05 |
*柚木(ゆい)さんへ*
同じHNの方がいたのですね。
てっきり同一人物だと…。失礼いたしました。

文字サイズを変更できたようで安心しました。
実家のPCで確認してみたところ、確かに文字が小さくなっていました。
ブラウザの違いでしょうか。うーん…。

とにかく読みやすくなったみたいでよかったです。
ご報告、ありがとうございました。
from. りくそらた | 2008/12/05 10:54 |
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