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ここでキスして 中編
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ここでキスして  中編

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小さい頃、童話にでてくるお姫さまになりたかった。
綺麗なドレスを着て、お城での舞踏会。
その隣には優しく微笑む王子様。

童話に出てくるお姫様は、いつも王子さまのキスで目覚める。
白雪姫も、眠り姫も、いばら姫も──。
だからずっと、キスはトクベツなんだって思ってた。







唇まであと一センチ。
吐息が唇を掠めるほどの距離で、思い留まった。
寝込みを襲うなんて、どれだけ欲求不満なのよ、私。
このまま唇を合わせたら、きっと蒼吾くんは起きちゃう。
そうなったら、何て言い訳するつもり?
私から、キスなんて…──。

初夏の生ぬるい風に吹かれて、蒼吾くんの短い髪がさわさわと揺れた。
そっと指で触れると、何だか大型犬でも撫でているような気持ちになる。
蒼吾くんは、やっぱり起きそうにない。


自分から呼んでおいて寝てるなんて、どういうことよ。
あまり会えないから、ずっと我慢してた。
今日は何回すれ違ったとか。目が合ったとか。声が聞けたとか。
付き合うようになってからの方が、片思いみたいだなんて、どうかしてる。

『いい一年が入ったんだ。今年は狙えるかも!甲子園!!』

満面の笑みを浮かべて、夢を語った蒼吾くんに。
毎日、朝早くから夜遅くまでがむしゃらに頑張ってる彼に。
もっと会いたいだなんて。もっと一緒にいたいだなんて。
そんなわがまま、言える筈がない。
蒼吾くんの夢の邪魔になりたくない。
お荷物になりたくない。


でも。
ほんとうは、もっと一緒にいたい。
声だってたくさん聞きたいから、電話だってもっとして欲しい。
メールだけじゃ、物足りない。
ちゃんと声が聞きたい。
あの低くて柔らかな声で、園田──って呼んで欲しい。
笑顔が見たい。
触れたい、触りたい、抱きしめて欲しい。

もっともっとが、膨らんで。
私、わがままになってる。
目のふちに、涙が溜まるような気がして、うまく笑えなくなった。
ぽすん、と尻餅をついて、膝を抱えてその場に座り込む。


…お昼休み、楽しみにしてたのにな。
少しでも長く一緒にいたくて、声を聞きたくて、触れたくて。
チャイムと同時に教室を飛び出してきたのに…。



一向に起きない蒼吾くんがちょっぴり憎らしく思えて、私は鼻をつまんでやった。






触れてくる柔らかい唇の感触を想像してた。
髪が額を掠めて、唇に吐息が触れて。
キスまであと一センチ…ってところで、それ以上近づかない。触れてこない。
唇が触れる気配が一向にない。
ナンデ?
キスされる──なんて、オレの都合のいい勘違い?
しびれを切らせて、そっと目を開けると、園田の百面相。
赤くなったり、青くなったり、涙ぐんだり…。
ていうか、何で涙ぐんでんだ?
今、泣く理由なんてあるのか?


そうこうしていたら鼻をつままれた。
もう、限界。








鼻をつまんだら、ふがッと変な声がした。
ぎょっとして慌てて手を離すと、寝ていたはずの蒼吾くんの目がぱちりと開かれて、私を見上げてた。

「…もう、終わり?キス、してくんないの…?」

つま先から頭のてっぺんまで、恥ずかしさが駆け上がる。
「た、たぬきーーっ!」
全部、見られてた!起きてたんだ!いつものタヌキ寝入りだった!
あまりの恥ずかしさに、手で顔を覆う。
私は、何度騙されたら学習するんだろう。
もう、ここから逃げ出したい。

「…どうしてやめたんだよ」
オレ、すっげー期待してたのに、と。
蒼吾くんが、拗ねたように口を尖らせた。
「ていうか、何で涙ぐんでんだよ?」
「何でもない」
ぶんぶんぶんッと、髪が乱れるほどに頭を横に振る。
「な、園田ってば」
「何でもないったら…ッ」
穴があったら入りたい。
膝を折り曲げて、隠れるように顔を伏せた。

「…怒ってんの?」
体を起す気配と同時に、頭の上から声が降ってきた。
「オレがタヌキ寝入り、してたから?」
首を横に振った。
それはそれで腹が立つけど、そんな理由じゃないし、怒ってるわけでもない。
「なぁ、園田…?」
じわりと顔を上げたら、覗き込んだ困ったような顔と視線が絡まった。
久しぶりにちゃんと顔を見たら、声が聞けたら。
それだけで、煮詰まっていた私の心がゆるゆると溶けだした。
そんな私に向かって、ニッといたずらっぽい笑みを浮かべた後、頭に手を乗せた。
そのまま髪をぐしゃぐしゃっとして、私の瞳の奥を覗き込むように体勢を低くした。
淡い優しさが染み渡る。


蒼吾くんのこういうところを、いつもズルいと思う。
このタイミングで覗き込んでくるなんて。
怒る気も失せちゃう……。




こつんと額が合わさって、顔が近づいてきた。
…うわ…っ、キスされる──。
そう思って反射的に、私は目を閉じた。



いつだって、蒼吾くんのキスは突然。
前フリもなく、突然、仕掛けてくる。
学校の自転車置き場とか、体育館の通路とか、部室棟とか…。
心の準備もないままに触れてくるから、いつまでたっても慣れない。
ドキドキしてしょうがない。


肩に手が触れて、顔が近づく気配がした。
吐息が唇を掠めて、風に乗って流れてくる蒼吾くんの匂いに眩暈がしそう。
なのに。
唇が合わさってくる気配が、一向にない。
すぐ側に、彼の存在を感じるのに……。
そっと目を開けると、蒼吾くんの顔が何か言いたげに私を見つめていた。
あまりにも近くで覗き込むから、鼓動が急速に跳ね上がる。


「…なに…?」


沈黙に耐え切れなくなって、先に口を開いた私に。
蒼吾くんが、とんでもない言葉を口にした。



「…な。たまには、園田の方からしてくんねぇ?」




って。






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魔法のコトバ* 続編 1 comments(4) -
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Comment








朝っぱらから失礼します〜w

…(*^ω^*)なんとも、瑞々しいふたりですね
男女の思考のしかたの違いが、キスという一つのことを通して リアルに描かれていて面白かったです^^
読んでる間、10代に戻ったような気がしました。(←あつかましくってすみません^^;w
from. めぐり | 2008/12/01 10:30 |
*めぐりさんへ*

ありがとうございます
この男女の思考の違いを両サイドから書くのが、大好きなんです。こういうシーンは恋愛小説を書く醍醐味♪
10代に戻ったような気持ちで読んでいただけて、幸せです。私も戻りたいなぁ…(遠い目…
from. りくそらた | 2008/12/01 10:31 |
とわちゃんのお話からこちらへやってきました^^
もう・・・かわいくて・・・
にやけながら読んでる私は変な人に違いありません・汗
なんでー・・・
こんなに透きとおった感じで描けるのでしょう・・・
すっごくロマンティックで・・・素敵です。。。
from. 凛 | 2008/12/01 10:32 |
*凛さんへ*

にやけながら読んでいただけて嬉しいです。
私もにやけながら書きました(笑)
コメントも私にはとても勿体無いお言葉で、とても嬉しいです!
次への活力になりますヨ。
ありがとうございました〜♪
from. りくそらた | 2008/12/01 10:33 |
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