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全力少年 9
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強がりの向こうがわ    サイド*蒼吾 

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その日のゲームは最悪だった。


テスト明けの部活解禁日。
一軍、二軍。
学年関係ナシでバランスよく部員を振り分けて。
即席チームで簡単な試合をすることになった。
オレとバッテリーを組んだのは、ついこの間まで中坊だった一年生。
涼とは敵同士。

試合経験の少ない一年を上級生のオレが。
ゲームを組み立てて、引っ張ってやらなきゃいけねぇのに。
ちっとも試合に集中できない。
部活前にアイツと会ったばかりに。
安部の冷めた目つきが脳裏にこびり付いて、ゲームの行方よりも園田のことが気になって仕方ない。
オレの理不尽なリードをおかしいと感じても、ピッチャーは首を横に振れない。
ただ上級生のリードに従うだけ。

結果はさんざんだった。







試合を終えて一年のクールダウンに付き合っていたら、緑のネクタイ集団がわらわらと校門に向かうのが見えた。
それと同刻に部活を終えて、校舎から出てくる園田の姿。
なんでわざわざこのタイミングに!
このままじゃあ、安部と鉢合わせしてしまう。
佐倉は?
何やってんだよ!?
下げたくもない頭を下げて、意地もプライドも捨てて、アイツに頼んだのに!
園田を…ここに連れて来るべきか?
でもそんなことをすれば、キャプテンに怒鳴られるにきまってる。
涼は───?
そういえばアイツ、今日のミーティングメンバーから外れてただろ。



「涼、知らねえ!?」
片づけをしていたマネージャーを捕まえて、問い詰めた。
あまりの形相に、真崎の目がビクと大きく見開く。
「もう帰りましたけど…」
カーッ!
使えねーヤツ!
「オレ、ちょっと急用思い出したから、キャプテンに腹が痛いとか何とか適当に理由をつけて、ミーティング遅らせといてくれねぇ?」
「それは…無理な相談なんですけど…」
「ナンデ!? 適当に誤魔化せばいいだろ?」
「だって…」
真崎の視線がオレを通り越してじわりと上目遣い。











まさか…。




背後を振り返ったタイミングで、ポカン!と勢いよく頭を叩かれた。
「ゲームに集中できない捕手は、次の試合からスタメン外すよ?」
にこり。
ジンさんが仏の顔で微笑んだ。
顔は笑ってんのに、言葉はマジだ。
こっええーーー。
「今日のお前のリード、何? ひどすぎ」
「…スミマセン…」
「女にかまけてる暇があるなら、先にミーティングルームに行って、ひとりで反省してろ」
うっ。
「返事は!?」
「ハイ!!」
怒らせると怖いのはキャプテンよりもジンさん。
これ。
野球部内の常識。
仏の笑顔に逆らえないオレは、結局、アイツに頼るしかなかった。
佐倉。
頼むぞ!












ミーティングが終わったら、とっくに9時を過ぎてた。
急いで部室に戻ったオレは、乱暴にユニフォームを脱捨てて、Tシャツに袖を通す。
「オヤジが危篤なんで、先、帰りマス!!」
シャレにもならない嘘をついて、勢いよく自転車にまたがる。
すっかり暗闇の色を濃くした校庭へぐんと漕ぎ出したら。
ピロリンと、制服のズボンに突っ込んだ携帯が鳴った。
着信は佐倉。
『ましろちゃん、無事、送り届けたから』
そっけないメールが一行。







「送ったって…アイツ…」


園田と一緒に帰った?
ナンデ!?


だって今日は、日下部と約束があるから、園田の無事を確認する程度しか協力できないって。
アイツ、言ってたのに。
日下部との約束よりも園田を優先した理由って、ナンダ!?






いてもたってもいられなくなって、そのまま園田の番号をプッシュ。
ツーコールで園田が出た。









「もしもし!?」



『…蒼吾くん…? 部活、終わったの?』


遅くまでお疲れさまって、ケータイの向こうで園田が笑う。
その声が心なしか元気がないように聞こえるのは、オレの気のせい?










『もう、家に着いたの?』

「まだ。今、帰り道」

『そっか……』




やっぱり様子が変だ。
いつもなら疲れたオレを気遣って、家に帰ってからかけなおしたのでいーよって言うのに。
今日はそれを言わない。
ケータイを切りたがらない。






「園田。なんか…あった?」


『…どうして?』


「声に元気がねーから…」









『…今日は、ちょっと…疲れちゃった…』





ケータイの向こうで、強がって笑う園田の顔が想像できた。
ぜってぇ無理して笑ってる。
ちきしょー!
オレは力任せに自転車を漕いだ。
苛立ちと不安を振り切るかのように全速力で。



考えたくねぇけど。
やっぱり安部と、何かあった───?








オレは自転車を漕ぐのをやめて、空を仰ぎ見た。
来ちまった…。
自転車をとめたのは閑静な住宅街の一角。
小麦色の屋根に白い壁が眩しい園田んち。
こんな時間に行ったって、会えるはずもねーのに。
親に嘘をついてまで外に出てくる勇気も度胸も、園田にはねぇのに。
いてもたってもいられなくなって。
気がついたらここに足が向いてた。




見上げた家の向こう。
空にポッカリ浮んだ月と、満点の星。
初夏の湿気を帯びた生ぬるい風が頬を撫でて、額に浮んだ汗を乾かしていく。
2階のカーテンの向こうで。
園田の影がゆらりと動くのが見えた。











『…蒼吾くん…。…私ね…今すごく、蒼吾くんに会いたいよ……』




ケータイの向こうの泣きそうな声。
普段、控えめな園田の初めての我がまま。
オレに会いたいだなんて、都合のいい空耳じゃないよな?













「───園田」



『うん?』







「お前…今から外、出れる? オレ、今…お前んちの前にいるんだけど…」







全部言い終わらないうちに、部屋のカーテンが開いた。
白い大きな窓を開けて、園田が身を乗り出した。
開け広げた窓から、クーラーのひんやりした風が流れてくる。










『───蒼吾くん…』



夜空に響く声と、ケータイから聞こえる声が重なった。
「よお」
軽く挨拶がてらに手を上げたら、くしゃりと園田が泣きそうな顔になった。
逆光でよくは見えなかったけど。
でも、オレにはそう見えた。


『何で…ここにいるの…?』


園田の声がダブって聞こえる。








「何でって───、園田の顔。見たかったから。遅いからもう、外…出られないよな?」




会えないことを前提でここに寄ったはずなのに。
こうやって直接、顔を見るとダメだな、オレ。
会えただけじゃ物足りねぇ…って思ってしまう。
こうやって顔を見て話せただけでも、満足しなきゃいけねぇのに。






「帰ったらまた電話する!」


ニカッって笑って、ケータイを握りしめた手を振った。
園田にしっかりと見えるように、大きくブンブンと。
「じゃーなっ」
小さく、けれどはっきりと。
園田にだけ聞こえるように口を動かして、ケータイを切ろうとした。
そしたら。








「蒼吾くん───!」



思いのほか大きな声で叫んでしまったことに自分でも驚いた園田が、そろりと部屋を振り返った。
大丈夫。
誰も気付いてねぇよ。





「なに?どした?」


まだ園田と繋がっているケータイを耳にして、問いかけた。



「…何か忘れもん?」

『違うの。そうじゃ…なくて…』

「なに?」







『………』







「園田?」







『…行くから…。私、行くから…そこで、待ってて───』










園田の口からまさか、そんな言葉が出てくるなんて思いもしなかったオレは。
漕ぎ出そうと踏み込んでいたペダルを思わず踏み外しそうになった。





オレ、また。


自分に都合のいい夢を、見てんじゃない……よな?












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Comment








こんにちわ〜
ご無沙汰してます。

たくさん更新されてたので、急いで追いつきましたっ。
ましろちゃん、また大変な目に合っちゃったのですね。
それに気付く蒼吾くん、すごいっ。

テンプレも変えたんですね。
かわいいんですけど、あまりにも文字が小さくて…ごめんなさい、少し見づらかったです><
from. りい | 2008/12/05 14:29 |
*りいさんへ*
りいさんお久しぶりです!
お元気でしたか?

普段は鈍感オトコのクセに、ましろのことになると妙に敏感な蒼吾。
ましろ自体、嘘や隠しごとが下手なので分かりやすいのかも(笑)

>テンプレも変えたんですね。
かわいいんですけど、あまりにも文字が小さくて…ごめんなさい、少し見づらかったです><

つい最近も読者さまから同じようなご指摘がありまして…。
やはり字が小さくて読みにくいですか?
というのも、私のパソコンでは字の大きさは小さくなっていなくて、いまいちピンとこないのです(汗)
ブラウザの違いなのでしょうか??う〜ん。

手間でなければ文字サイズを変更して読んでいただければありがたいのですが…。
時間がある時に、HTMLやCSSを少しいじってみます。
読みやすいことが一番なので、こういうご意見をもらえると助かります。

from. りくそらた | 2008/12/05 21:11 |
お久しぶりです〜っ!!
なかなか来れなくて〜;;

なんかましろちゃん,隠しきれるか心配ですねえー
隠した事でまたなにかあることがないように祈ってます…ハイ。

では師走は忙しいですが主婦さん頑張って下さいね^^
from. 志歩 | 2008/12/06 21:51 |
*志歩さんへ*
わー!お久しぶりです!

するどい先読みをありがとうございます(笑)
まだまだひと波乱ありそうですよ〜。
楽しみに読んでもらえると嬉しいです♪
from. りくそらた | 2008/12/08 09:06 |
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