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全力少年 10
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イシンデンシン    サイド*ましろ 

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会いたいって思ったら、蒼吾くんが現れた。
こういうのって、以心伝心っていうんでしょう?









初めて親にうそをついた。


「もう遅いから明日にしたら?」って言うママに。
どうしても今日、必要なものがあるからって。
「車、出そうか?」って心配するパパに。
ひとりで大丈夫だからって、嘘をついた。
それほど悪いことをしているわけじゃないのに、すごく罪悪感。
後ろめたい気持ちになる。
「いいのか?」
私を気遣う蒼吾くんに返事をするかわりに。
自転車を漕ぐ大きな背中に、ぎゅっとしがみついた。


蒼吾くんの風を切って走る自転車が好き。
大きな背中にしがみついて一緒に走っていると、嫌なことも辛いことも全部、風がさらってしまう気がするから。
寄り添う背中から伝う鼓動を聞いてると、すごく安心するの。
温かな体温に包まれると、ひとりじゃないんだって実感できる。
いつだってエネルギッシュな蒼吾くんから、元気を分けてもらえる。


「今度さー、住吉んところの神社で夏祭りあるじゃん?あれ、一緒に行かねぇ?」
大きな背中が呟いた。
「…うん」
「日下部とか…誘うなよ?」
「どうして?」
「人が多いから人数多いと大変じゃん。去年、部の連中と行ってサイアクだった。アイツら団体行動、苦手だからな」
「チームワーク良さそうなのに…」
「野球なんて、結局のところ個人プレイみたいなところあるし」
「ふーん…」
「とにかく! 今年はあいつらは抜き! 日下部も抜き! ふたりで行こうぜ」
「うん…」
何気なく交わす会話のひとつひとつに、蒼吾くんの優しさが滲み出る。






満点の星空を走り、河川敷を抜けて、コンビニに着いた。
そこで言い訳のレポート用紙とパピコをひとつ買って、自転車の前籠に突っ込む。
荷台に座ろうと後ろに回ったら、ポケットから鍵を出しかけた蒼吾くんが私を振り返った。

「チャリ。やめた。帰り、歩こう」
短くそう言って、前籠に突っ込んだコンビニ袋を取り出した。
「…自転車は……どうするの?」
「帰りに乗って帰るからへーき!」
ニッと、悪戯っぽい笑顔を浮かべながら。
「ん!」
大きく手を開いて私の前に差し出した。
「手。繋いどく?」
大きな掌が私の手を捕まえて、ギュッと包み込んだ。
少し汗ばんでゴツゴツとした掌の中に、私の小さな手はしっくり納まる。
蒼吾くんの体温が掌から伝わってきて、なんだか泣きそうになった。







「チャリだとすぐ着いちまうから…たまにはこういうのも、いいだろ?」


もっともっと、蒼吾くんと一緒にいたいって私の気持ちが彼に伝わる。
欲しい時に必要な言葉をくれて。
不安な時は優しく包み込んでくれる。
どうしてかな。
蒼吾くんには言葉にしなくても、伝わることがたくさんある。





「歩きながら食ったんでい?」
コンビニ袋からパピコを取り出して、パキンとふたつに折った。
そのうちのひとつを私に手渡す。
「ゲ。もう溶けてるぞ!園田、早く食え!」
無邪気に笑う蒼吾くんを見てたら、なんだか泣けてきた。
泣けて泣けて、仕方がない。









「…園田───」


蒼吾くんが足を止めた。








「…どした? 何で泣いてんの…?」



泣き虫は返上したはずなのに。
あの時の記憶が、弱い心を呼び起こす。
蒼吾くんに、心配なんてかけたくないのに。









イシンデンシン。

夜空を伝って、私のココロが蒼吾くんに伝わる。
蒼吾くんがそっと距離を詰めて、大きな体を折り曲げた。
ふわ、と。
夏の夜風に乗って、蒼吾くんの匂い。







「オレ、部活のままで来たから…汗くせーかも」



躊躇い気味に私を引き寄せて、その腕にそっと抱きしめた。
汗と、太陽と、土の匂い。
真夏の太陽の下でグラウンドを思い切り駆けて。
毎日ヘトヘトになるまで夢を追いかける。
部活の後は、「風呂に入ったらすぐに寝ちまうんだー」って言ってるクセに。
電話の途中でそのまま眠りこけちゃうくらい、いつも疲れているのに。
それでも会いに来てくれた。
なにも聞かずに抱きしめてくれる。
蒼吾くんの優しさを感じて、胸の深いところがきゅうってなった。
大きな背中に腕を回して強くしがみつく。
抱きしめた手が髪にもぐって、後頭部から私を引き寄せた。
影が重なって、唇が触れる寸前。
夕方の安部くんの影と、ほんの一瞬、それが重なった。










「───園田…?」


緊張が走った私の小さな変化を蒼吾くんは見逃さない。








この人は違うのに。
蒼吾くんなのに───。









「お前───やっぱ、何かあっただろ? 安部に、何かされた?」



大きく首を振って否定する。
ぶんぶんと髪が乱れるくらいに強く。











「じゃあ───何だよ、コレは?」



蒼吾くんがキャミワンピの上に羽織ってたパーカーの肩口をめくった。
肩に、赤く薄っすら指の跡。
暗いから分かんないって思ってたのに。

とっさにパーカーで隠したけれど、もう手遅れ。
あからさまに顔を逸らしてしまった私を捕まえて、蒼吾くんが正面から覗き込んだ。









「体育館通路で安部と会った時、お前はアイツに気付いてなかったよな? なのに今、アイツの名前を出しても否定しなかった。会ったんだろ、アイツと。安部に何された?」



どうして蒼吾くんは、こういうことばかり勘が鋭いんだろう。
確信をつかれて、私は何も言えなくなる。
気まずい空気がふたりの間を流れて、息をするのさえ苦しく感じた。
何も言わない私に痺れを切らせたのか、蒼吾くんが重い溜息を零した。






「別に責めてんじゃねーよ。だから、そんなにビクビクすんな。オレに怯えんな」

蒼吾くんが私の手を引き寄せた。
溶けて溢れたパピコを口に運んで、それを食べる。
そのまま腕を伝ったアイスを舌が舐め取ってく。
舌が腕を這うリアルな感触にビクリと身を引いたら、そのまま腰から抱き込まれた。
唇が強く、押し付けられる。





「ふぅ……っ!」


荒々しく押し付けられた唇は、何度も何度も角度を変えて、息も出来ないほど深く絡み付いてきた。
いつもの優しいキスとは違う。
苦しい。
男の荒々しさを全身で感じて、少し怖くなる。
膝がガクガクと笑って、力強い腕にすがりつくような形で蒼吾くんに身体を預けた。
すがらなきゃ、立ってられない。




荒々しいキスから解放されたのは、随分と時間が経ってから。
絡みつくような蒼吾くんの視線を間近に感じて、まともに顔が上げられない。
俯いた私の顎に手をかけて、蒼吾くんが強引に顔を上向けた。











「オレには隠し事すんな。嘘つくな。迷惑だなんて、思わねーから…」




間近に見えた蒼吾くんの顔が辛そうに歪んで、気持ちのままに私を抱きしめた。
呻るように告げられた言葉に、胸のうんと深いところがきゅってなって、私の心を強く締め付ける。




蒼吾くんの優しさに包まれて、涙が止まらなかった。












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全力少年(魔法のコトバ* 続編) comments(6) -
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Comment








ィやっさっしィ――――ッ★
蒼吾くん。
するッッどぉ――――いッ☆
蒼吾くん。

良いデスねぇ…んもぅ!お祭りの約束までしちゃってぇぇぇ。
ましろちゃんも白状しちゃえってぇ…
from. はる | 2008/12/13 14:03 |
*はるさんへ*
勢いのあるコメントをありがとうございます(笑)
さりげな〜くふたりで夏祭りに行きたいことを蒼吾なりにアピールしてみたり。
今後の展開を楽しみにしていてくださいね。
来週中にもう一話、更新の予定です。
from. りくそらた | 2008/12/13 23:28 |
初めまして、夏音と言います♪
まほコトの本編をやっているころから密かに読んでました☆

ものすっごく鈍感だと思っていた蒼吾くんが勘付いてるのにちょっとびっくりしたり・・・
でもましろちゃんのことずっと見てた蒼吾くんなら気付くものかな、とも思ったりしました
今後の展開が楽しみです
二人っきりでお祭りデートできるんですかねえ・・・
邪魔が入ったらどうしよう、とか心配になったりしてます笑
from. 夏音 | 2008/12/14 14:17 |
*夏音さんへ*
夏音さん、はじめまして。
本編連載中から読んでくださってるそうで、とても嬉しいです。

自分ごとに関してはすこぶる鈍い蒼吾ですが、ましろに関してはいちいち敏感です(笑)恋のチカラって凄いな。
お祭りデート。実はまほコトでのちゃんとしたデートシーンってこれが初めてなのかも…。
邪魔が入らないように祈ってやってくださいね(笑)
from. | 2008/12/14 20:00 |
テストでパソコンできひんかった間にめっちゃアップされてるー(泣)

てか安部ーーーーーーー!!!!!!!
また引っ掻きまわすんかー!!

蒼吾クンは優しさMAXですなぁ♪♪
夏祭りとか青春ですね⌒☆

今後も楽しみにしてます(∀】
from. ゆい | 2008/12/16 14:26 |
*ゆいさんへ*
テスト、おつかれさまでした。
アベッチに皆さん怒り爆発ですね(笑)
季節はずれのお話ですが、夏の匂いを感じてもらえるといいな♪
from. りくそらた | 2008/12/17 10:36 |
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