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全力少年 12
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リアル    サイド*蒼吾 

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裏門からうまいこと抜け出したオレは、全力でチャリをぶっ飛ばす。
駅前にある安部の高校には、10分程で着いた。
昼休み終了5分前のギリギリセーフ。
ネクタイ集団が、学校前のコンビニから戻りはじめる。
ひとり浮いたオレをチラチラと横目で見ながら。



「何だよ、急用って」

制服の波に逆らって、校内から出てきたのは安部。
仏頂面でいじっていたケータイから顔を上げる。




「ちょっと顔貸せよ」
「何で? ここじゃヤバイの?」
「いーから」


無愛想に言ったら、ヘラヘラした顔が真顔になった。




「…アイツ泣かせたの、もうバレタ?」
おとなしい顔しておしゃべりだな園田は、って。
鼻で笑う。
「園田じゃねーよ」
「じゃあ、佐倉の方か」
んなのどっちでもいい。
「いいから顔貸せって」
顎をしゃくって校外を指示する。
学校の前じゃヤバイ。















「───お前、どういうつもり?」


学校から少し離れた河川敷で。
しぶしぶオレの後をついて来た安部に話を切り出した。
「何が?」
「とぼけんなよ。オレがここに来た理由、わかってんだろ?」
「…わかんねーよ。俺、エスパーじゃねーし」
気の抜けたような、だるそうな声が余計に苛立ちを煽る。



「いつからだよ?」
「だから何が?」


「園田のこと。好きなんだろ───!?」



単刀直入に切り込む。
コイツに遠回しな言い方は通用しねぇのは知ってる。
正面からぶつからないと弾かれる。はぐらかされる。
安部が黙り込んだ。
何も言わないかわりに、否定もしない。
無愛想な表情をピクリとも変えず、じっとオレを睨みつける。
一瞬の動揺も見逃さないように、オレは安部から視線を外さなかった。







「…なに。佐倉に吹き込まれた? それ、お前の意見じゃないだろ」


サボってんの目立つから。
安部が制服のネクタイを外す。








「アイツの勘の良さって、昔からムカつくよな?」


へらへらした表情が消えた真面目な顔。
こんな顔もできんのか。














「──佐倉の言うとおりだ。俺も、惚れてるよ。園田に。 たぶん……好きになったのは、お前よりもずっと前だ───」





その告白は、あっさりと安部の口からすべり出た。
胸の奥がぎゅっとひきつれる感じがした。
そんなの間違いだって、佐倉の言葉を聞いても心のどこかで認めてなかった。
安部に問い詰めて。
いつものへらへらした顔で、そんなワケねーだろっておどけたように笑う安部を一発殴って。
それで終わりにするつもりだった。






なのに。


そんな真顔で認められたら、オレ、何も言えねーじゃん。
もちろん。
安部の本音を聞いたからって、園田のこと。
譲る気も手離すつもりもない。
だけど。
好きでいるのやめろって、安部に言う権利はオレにはない。
やめろと言われて止められるほど、簡単じゃないのはわかってる。
オレも経験済みだから。






「…じゃあ、篠岡は? 園田が好きだったんなら、何であいつと付き合った?」
好きでもないクセに。
あまりにも無責任だろ。
「帰ってくるあてのないやつをいくら想ったって、無駄だろ。園田じゃないのなら、別に誰でもよかった。アイツが俺の事、好きだって言うから手っ取り早く付き合ってただけ。まさか、園田が戻ってくるなんて───思いもしねえから…」
仏頂面で本音をこぼす。
「…だから、か───」
だから。
別れ話を切り出されても、引き止めることなくあっさり別れた。
繋ぎ止めたいほどの、執着もなかった。
篠岡は自分を見ていない安部の本心に気付いたんだろう。
女ってそういうの、敏感だから。






「…オレ。お前のこと、わかんね。
園田に惚れてるんだったら、何であんな態度が取れるんだよ? 好きな女泣かせて、何とも思わねーの?」
「わかんなくていーよ。別にお前に理解してもらおうなんて、思わねーし」

開き直ったような態度に、カチンときた。
きっと腹ん中は煮えくり返ってるだろうに、平然とした態度も。
好きになるのは自由だ。
オレに、安部の気持ちを踏み躙る権利はない。
だけど。
好きな女を泣かされて。
大事な園田を傷つけられて。
黙っていられるほど、オレもできちゃあいない。
そこまで心は広くねーんだよ。













「なぁ。お前───何が言いてーの? 結局、何がしたいわけ?
園田を傷つけた俺を殴りに来たんじゃねーの? 今さら俺の気持ち、確認してどーすんだよ。好きだって言えば園田の事、譲ってくれんのか?」







気がついたら。
安部の胸ぐらを掴んでた。
怒りのままに拳を振り上げて、一発、ぶん殴ってやろうとぎっちり歯を食いしばる。
けれど、寸でのところで手が止まった。
オレはコイツを殴れない。
こんなところで他校の生徒を殴ったなんてバレたら、間違いなく停学だ。
部に迷惑がかかる。
間近に見えた安部の顔が勝ち誇ったように、笑った。









「変わんねーよな、お前。園田のことになると、余裕がねーの。彼氏なんだろ? もっと堂堂としてれば?」




安部の言い方はいちいち勘に触る。
人の神経を逆なでするトークは、コイツの得意分野だ。
煽って追い込んで追い詰めて、自分のペースに持ち込む。
嵌ったら負けだ。










「…なぁ。もしかして───お前ら゛まだ ゛だろ?
ちゃんと゛自分のもの゛にしてねぇからお前、そんなに余裕がないんじゃねえの?」



にやりと唇を歪めた安部に、オレは再度、拳を振り上げた。
頭で考えるよりも先に、身体が動く。
「…っとお!」
殴るはずの拳は安部の肘に受け止められて、その勢いのまま振り払らわれた。
意外に素早い安部に驚く。
伊達にバスケを6年も続けてない。




「勘弁してくれよ。うちはお前んとこみたいな弱小チームじゃねーんだよ。全国狙ってんの!」
だったらオレを煽んな!
キツク睨みつけると、安部がめんどくさそうに肩をすくめた。
「暴力沙汰がヤバイのは、お互いサマだろ?」
殴れない理由を堂堂と提示してくる。
卑怯者め。







「お前らいつから付き合ってんの? キスぐらいはしてんだろ? その先、どうよ?」
お前に話す筋合いはねぇ。
ムスッとシカトを決め込む。


「園田ってガード堅そうだもんな」


「……」

「痛いところをつかれてだんまりか?ガキだなぁ」


どっちがだ!


「お前には関係ねーだろっ」


開き直ったら鼻で笑われた。
すっげぇ腹が立つ。







「ふーん…。やっぱまだか」



まだまだまだって、連呼すんな。
ホッとすんな。
気持ち、わかるけど。
もう園田は゛お手付き゛。
人のもん。
立場をわきまえろ!









「あーあ!」



安部がかったるそうに腕を大きく伸ばして、背伸びした。






「俺、ふっきれたわ。お前に本音、話して。いろんなもん、ふっきれた」


喉のつかえが取れたような清々しい顔。
何だよ、急に。
掌返したようなその態度は。



「俺、知ってたぜ。最初から。お前らが好き合ってんの、気付いてた。
だから気に入らなくて、園田がお前の事、嫌いになるように仕向けた。
一応、あの時の責任っつーもんを感じて、遠慮してたんだけど……もういいや。気持ち、バレタし」



だから、何だよ?
回りくどい言い方すんな。
はっきり言えよ。








「これで本気でとりに行ける」










は?



何を。







「篠岡の話した時、お前、言ったよな? 俺に。簡単に諦めんなって。あれ、そういう事だろ───?」











てんめー!


ふざけんなよ!!






「今度、園田の事泣かしてみろ! 全国狙ってるなんて言えねーくらいに、ボコボコにしてやるかんな!」
再度、胸ぐらを掴んで睨みつける。
あまりに頭にきて、夏大出場停止だとか、甲子園の夢とか。
そういうの。
全部吹っ飛んでった。
もちろん安部も。
そんな脅しに屈するようなヤツじゃねぇ。
゛売られた喧嘩は倍返し゛的精神で、冷めた目で睨み返してくる。
胸ぐらを掴む手に力を込めたら、目に見えて安部の目が険しくなった。








「……ばっかじゃねーの、お前。好きだから泣かせたくない? キレイごと言うな。
俺は好きなヤツなら、泣き顔も怒った顔も、全部見てみたい。全部、自分だけのものにして、独占したいって思うんだよ。───悪いか?」







何言ってんだ、コイツ。





確かに。
園田の困った顔や、泣き顔にもクラっとくるのは事実だけど。
わざわざそれを見たいが為に泣かすのか?
サドにも程がある!
その為だけに泣かされてちゃあ、オレも園田もたまらない。


気がついたら、安部の腹にパンチを食らわせてた。
顔だとマズイ。
咄嗟に判断しての行動。
何が何でも一発、殴らなきゃ気がすまなかった。
顔に来ると思って身構えてた安部は、予想外の打撃に派手にむせた。
一発で終わっただけでも、感謝しやがれ。








「…おっ前…っ、ほっんと! 余裕ねーなっ! こんなに余裕ねえんだったら、ダメになるのも時間の問題じゃねーの?」


まだ言うか!
再度、胸ぐらを掴みあげてキツク睨みつける。
今度は安部だって黙っちゃいなかった。
掴んだオレの手を振り払って、ギッと睨み返してくる。
一触即発。
オレも安部もお互いを睨みつけたまま引かなかった。
引けるわけがない。









「……欲しいものを欲しいって思って、何が悪い? 今はお前が有利だけど───園田がこのままずっとお前のこと好きでいる保障なんて、ねーだろ?」




開き直った安部は無敵だ。
どんな手段を使っても、本気で取りに来るのは間違いない。
遠慮してたら、力づくで持ってかれる。
















上等だ。









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Comment








…良いっすねぇ…
かっこ良いデス!!
あー…安部くんはサディスト?
我侭だなぁ。でも、このあとが楽しみになるのは
安部くんのおかげかな
from. 杏 | 2009/02/16 15:57 |
*杏さんへ*
かっこ良いですか!
蒼吾、余裕ないなぁ…。ヘタレっぽいなぁ…って、心配しながら書いたのでよかったです。
アベッチ、ドSです(笑)
書き手としては分かりやすい性格で、とても楽しいです。
from. りくそらた | 2009/02/17 10:05 |
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