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全力少年 14
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らしく    サイド*ましろ 

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翌日。
蒼吾くんは学校に来なかった。




「夏風邪らしいよ。熱が高くて死んでた」

たまたま回覧板を届けるために、蒼吾くんちへ寄ってきた凪ちゃんが。
肩をすくめて気の毒そうに教えてくれた。
顔、合わせ辛いな…って。
少しでも思ってしまった自分に罪悪感。
蒼吾くん、大丈夫かな。


「そーのだちゃん!」
ばあ!と。
廊下の窓から陽に焼けた茶色い頭が顔を出した。
あまりに近くて、椅子から転げ落ちそうになる。
び、びっくりした。





「バカ蒼吾、今日休みだって!」
「うん。…今、聞いた」
「さすが恋女房!はっやいなぁ!」

妙なところで感心されても困る。
あははと適当に愛想笑いを返す。




「でさ、これ。アイツに渡しといてくんない? 試合の組み合わせ表なんだ!」
満面の笑顔で守口くんにプリントを突きつけられた。
どうして私に?
「だって、見舞い行くだろ?」
オレ、部活あるし。エースだし。うつったら困るし、って。
肩をすくめてブツクサ。
昨日の今日で、どんな顔して会えばいいのかわかんないのに…。



「なあなあ…」
表情を曇らせてしまった私に、声をひそめて守口くんが手招きをする。
なに?
「あの噂って、本当だったんだなぁ」
耳元でぽそり。
私にだけ聞こえるようにそっと囁いた。
昨日の出来事が思い起こされて、ドキリと心臓が嫌な音を立てた。
なに? 噂って…。





「あれ? 園田ちゃん知らねーの?」
意味深な笑顔を向けられて、ますます鼓動が速くなる。
もしかして───昨日、誰かに見られてた?
みるみるうちに顔が赤くなっていくのが、自分でもわかった。
どうしよう…っ!

「あ。やっぱ、心辺りがあるんだ」
私の反応を素早く察知した守口くんがにやり。
どこまで知ってるの?
今度は青くなる。
「こんなタイミングで休むから、ますます噂に尾びれが付いてさ、蒼吾のヤツ、ひどい言われよう…」
同じ男として同情するぜ、って付け加えた。
一体、どんな風に噂が広まってるの?



「聞いても怒んない?」




本当のことなら仕方がないもん。
覚悟を決めて頷いた私を見て、守口くんが大きな溜息。
あのさ───って、重い口を開く。









「バカは風邪引かない。夏風邪はバカがひくって、蒼吾で実証済みだなって……」






「……え…?」




驚くほど間抜けな顔で聞き返した私に。


「だって本当のことじゃん?」





屈託ない笑顔で守口くんは笑う。







あーもう!この人は!
ユーモア溢れる発想が守口くんらしいけど。
昨日のタイミングで噂だなんていうから、心臓に悪い。
ていうか。
私も早とちりし過ぎ。考え過ぎ。
バカ。



「蒼吾がバカ扱いされんの、そんなにイヤだった?」
脱力感で目元が潤んだ私に、守口くんが意地悪く覗き込む。
「…守口くんも夏風邪引いたら、絶対、噂されるから…」
きょとん、と。
一瞬、目をまん丸にした後、失笑。
なに?
「園田ちゃんってさ……。おとなしそうな顔して、結構言うんだ」
何を?



「それって、遠回しに俺もバカってことだろ?」





…しまった……。



「ち、違うの…!そうじゃなくて…」
ぶんぶんぶんと。
千切れんばかりに首を振って否定。
「や。今更、弁解されても言い訳にしか聞こえないし。オレ、ますます惨めだから…」
がっくりと肩を落としてうな垂れた。
うわ…。
そんなつもりじゃなくて、その…。
「ほんとゴメンナサイ!」
「園田ちゃんって素直だよな。だからその分ますます…」
って逆効果。
うわーん。





「ま、言われ慣れてるし、いいや」
切り替えの早い守口くんに救われる。
「園田ちゃん、今日部活出んの?」
「たぶん…」
「そんなに遅くはならないだろ? 帰りにアイツんところ、顔出してやってよ。
昨日のアイツ、何か変だったから。
蒼吾が変な時は十中八九、園田ちゃんが原因だから」
あとは試合に負けた時とか、変なモン食べて腹壊した時とか、俺にマリオカートで負けた時とか…。
思いつく理由をつらつら並べ立てる。
蒼吾くんらしい理由に自然に笑みが零れる。
この人には癒される。

「…わかった。行ってみる」
「マジで? 助かる!」
両手でぎゅっと握りしめられた。
握力強くて、痛い。
「園田ちゃんが女神に見える!」
なんて、大げさすぎるよ。
「マジほんと。勝利の鍵は園田ちゃんが握ってるから。アイツ、落ちるとヤバイんだ。夏大近いし。だから…」
パンッ!
大きな音をさせて顔の前で拝むみたいにして手を合わせた。
「アイツに゛らしさ゛を取り戻してやって!」
本当に神さまにでもお願いするみたいにして、守口くんが頭を下げた。
















放課後、美術部には顔を出したものの。
上の空で何も手が付かない。
「悩み事や考え事がある時は、いい絵が描けないよ」
佐倉くんに笑われて。
「蒼吾のところ、行ってくれば?」
って。
私よりも自分のことを分かってくれてる。
スケッチブックを閉じて、いつもより早く学校を後にした。


お見舞いに蒼吾くんの大好きな甘いものを買って、何度か訪れたことのある家の前に立つ。
木造りで純和風の蒼吾くんち。
大きな柿の木の隣にある蒼吾くんの部屋。
カーテンは閉まってる。
まだ調子、悪いんだ……って、心配になる。
玄関まで回ってインターホンに手を伸ばした。
けれど、その手が止まる。


会いたくないって言われたら、どうすればい?
昨日の今日で蒼吾くんちになんて、無神経じゃないかな。
辛そうに歪んだ蒼吾くんの顔が、脳裏をかすめる。






─── 学校じゃなかったら、いいのか? ───



呻るように告げた、あの言葉を思い出して。
膨らみかけていた勇気の風船が、しゅるしゅるとしぼむ。



でも。
このままじゃあ、帰れない。
あんな事の後だからこそ、会わなくっちゃ。
もしも追い返されたのら、それはそれでいい。
このまま帰って後で後悔するよりは、よほっぽど―――。








「…よしっ!」


覚悟を決めてインターホンに手を伸ばした瞬間。






「……え…?」



頭から背中に掛けて、水が吹っ掛けられた。
雨…は、降ってない。
昨日とは打って変わって、ピーカン。快晴。
じゃあ、これは、何───?







髪の毛を伝って、ポタリポタリ。
雫がアスファルトの上に落ちていく。
それも夏の暑さに焼けた熱気ですぐに蒸発。



私。

なんで、水浸しなんだろう…?












「キャアーーーッ!!」


突如。
悲鳴が上がって、ビクリと身体が震え上がった。






「ごめんなさいっ!ゴメンナサイっ!! 外に人がいるなんて気付かなくて…!!」



聞き覚えのある声に振り返ったら、バケツと柄杓を手にした蒼吾くんのお姉さんと目が合った。
確か一番上の…。










「あ…れ? ましろ……ちゃん───?」



「あ。こんにちわ」




条件反射で頭を下げた。
こんな状態で。

なんだかまぬけ。

















「ほんとに、ほんっとに! ゴメンね」
1階のリビングで再度、頭を下げられた。
電話が鳴ったのに気を取られて、周りも確認しないでバケツの水を全部撒いたのが、運悪く私に掛かったらしい。
私もボーっとしてたから。
「もう大丈夫ですから…。気にしないでください…」
何度も謝られると気の毒になる。
逆に私が悪いことをした気分。
「本当にゴメンなさいね。制服、今乾かしてるから。ちょっと待ってね」
「すみません。お風呂をいただいちゃった上に、服までお借りしちゃって…」
「サイズが合ってちょうどよかったわ。葵のサイズがピッタリね」
ちょっと胸の部分がガバガバしてる気がするけど…。


「あの…。蒼吾くんの具合、どうですか?」
「まだ熱が高いのよ。部屋で寝てるわ」
どうぞ、と。
グラスに入ったアイスティが差し出された。
カラン。
氷がグラスに当って涼しげな音がする。



「昨日の雨の中、ずぶ濡れで帰ってきてね、それで風邪を引いたみたい。
傘、持って行ったはずなのに濡れて帰るなんて、バカよね? 夏だから風邪引かないとでも思ったのかしら…」
困った弟だわ、お姉さんが笑う。
昨日の蒼吾くんの胸中を思ったら笑えなくって、私は曖昧に相づちを打った。
心が痛い。





「あら? 何だか浮かない顔ねぇ。もしかして…蒼吾と喧嘩でもした?」

喧嘩ならまだよかった。
ごめんねって謝れば、丸くおさまる。
どうしたらいいのかわからないから、厄介なの。
表情を曇らせた私を見るに見かねて、お姉さんが優しい口調で口を開いた。




「蒼吾って昔から、頭で考えるよりも先に行動しちゃうヤツだから……無茶ばかりして、ましろちゃんを困らせてるんじゃないの?」


困らせてるのはきっと私。
蒼吾くんのこと。
本当は何も分かってなかった。
よくも知らないくせに何でも話して欲しいだなんて、笑っちゃう。






「あの…」
「なあに?」
「少し、お聞ききてもいいですか……?」
「うん? 私が答えられる範囲のことなら、どうぞ」

「……お姉さんが初めて…男の子と付き合ったのって…いつですか?」
「ハツカレ? うーん…私、割と遅かったから、高3の時かな」
「その時の彼と…その……」
「ん?」
「……はじめて…した時って…付き合ってどれくらいですか…?」
「した時? ああ、セックスってこと?」


ストレートな表現に、顔がカッと熱を持つ。
厭らしいことなのに、それをサラッと言っちゃうから、全然そんな風に聞こえない。
不思議。




「…そうねぇ……。付き合って、ひと月ぐらい、だったかな?」
「自然とそういう雰囲気に…なって…ですか?」
「………」






「…あの……」






お姉さん?




目が、据わってる?











「…ましろちゃん」




「……はい?」









「もしかして蒼吾───ましろちゃんを押し倒したの?」











え?









「嫌がるましろちゃんに、セックスを強要したんじゃないの!?」







ピクリ。
片眉が上がる。
わー!わーー!!わーーーっ!!!
蒼吾くんの身の危険を感じて、私は大慌て。
格闘家のこの人に聞いたのは、間違いだった!







「ち、違います! これは、友達の話で…!
その…っ、向こうはずっと待ってくれてるのに、一歩踏み出せないっていうか、怖いらしくて…。それで…悩んでて……」


疑わしい視線でじっと見つめられた。
嘘を見透かしてしまいそうな意思の強い瞳は、蒼吾くんによく似てる。
嘘がバレやしないかドキドキした。
ずいと近づけられた目が、優しく笑って細められた。







「ゆっくりでいいと思うよ? 早いか遅いかなんて、関係ないから」
「でも……。ずっと進展がないいままだと、愛想つかされませんか?」
「そんな堪え性のない男は、結局、それだけの男ってことよ。いくら思春期だからって、ガツガツしてる男はみっともないから」





うわ。
キツイ…。
思わず笑顔が引きつった。





「それに。他人のどうこうは、問題じゃないでしょう? 人と比べたって仕方がないのよ? 人の数だけ恋のカタチも違ってくるんだから。いくら身体を重ねたって、気持ちがついてかないんじゃ、しょうがないでしょう? 自分達らしく、お互いのペースで。あせらなくていいと思うの」

「自分達……らしく? お互いのペースで…?」

「そう。ふたりで一緒にうんと悩めばいい。恋愛は、ひとりでするものじゃないでしょう?」






蒼吾くんのお姉さんの言葉は、スッと心に入ってきた。
深いところに響いて、気持ちを軽くしてくれる。
私も蒼吾くんも。
ひとりで悩むから、抱えきれなくなった。
ふたりの問題なのに、一緒に考えないから───。







「ましろちゃんもいつか、好きって気持ちだけじゃ足りないって思える日が、来るはずだわ」
「…私の話じゃないですよ」
「あ、そっか。ゴメンゴメン。じゃあ、その友達とやらに言ってあげて?」
「…はい…」


蒼吾くんのお姉さんってすごい。
こういう家庭で育った蒼吾くんだから、ちゃんと一緒に考えてくれる。
信じてる。
きっとそれが、蒼吾くんらしさ。







「それにしても…。アイツ、我慢したのねぇ。不器用さは父親譲り、か」
「え?」
「あ。ううん。こっちの話」
言葉の最後は誤魔化されてよく聞こえなかった。




「あら。話し込んでたらもう、こんな時間。
ましろちゃん、蒼吾に会いに来たんでしょう? よかったら部屋、行ってやって?」
「でも……まだ、熱が高いんでしょ? 起こしたら可哀想だから…」
「ましろちゃんの顔を見たらきっと、蒼吾も元気になるはずだから。ほら───」
行ってやって。
トン、と背中を押された。








人がどうとかじゃない。
自分らしく、私たちらしく。









きっと、それでいい。









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Comment








蒼吾の兄妹は皆好きですね、
にぎやかで。

守口くんはこの時はもうナツちゃんと会ってたのかな?

ましろちゃんは…
蒼吾とそーゆーの嫌って訳じゃないいですよね?
みんなの気持ちは複雑だなぁ。
とか思って読んでます
from. ハル | 2009/02/23 20:27 |
*ハルさんへ*
夏木姉妹は賑やかです。
蒼吾はぽんぽん物を言う姉妹に囲まれて育ったので、ましろみたいなおとなしい控えめな子に惹かれるのです。
たぶん、そんなところ(笑)

奈津の恋も進行中ですヨ。
ちょうど青春ラインと全力少年の舞台は同じ時期です。
奈津の恋もぼちぼち書いていけたらなと思います。
時間、ほしーー!

ましろは蒼吾とそうなるのが嫌ってワケではないです。
足りないのは勇気ときっかけ。
この頃の女の子って複雑。
最近はもっとドライなのかな?(笑)
from. りくそらた | 2009/02/24 10:19 |
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