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全力少年 15
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ふたり模様    サイド*蒼吾 

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目が覚めたら辺りは薄暗かった。


裏山から微かにヒグラシの声。
どうやらオレは、朝からずっと眠っていたらしい。
あまりにも寝すぎたもんだから、身体のあちこちが痛い。
こんなに寝ることに集中できたのは、久しぶり。
おかげで随分と気分が良くなった。
意識もはっきりしてきた。
開け放った窓の向こうから、スパイスの効いた甘辛い匂いが漂ってくる。
どうやら夕飯はカレーらしい。
腹減った。



汗をかいた体が、べたべたする。
大量の汗と共に、熱はどうにか下がったらしい。
半日寝ただけで病院も行かずに治るなんて───我ながら自分の回復力にあっぱれ。



「体温計…どこだ?」

確か枕元に置いたはず。
もぞりと身体を起こしかけたところで、腹の辺りがひどく重いことに気付いた。
───ナンダ?
手探りで腕を伸ばすと、ふにゃり。
柔らかい物体が手に触れた。
温かくて、ふにゃふにゃと柔らかい。
うあ。
なんだこりゃ。
マシュマロみたいですげぇ気持ちいーぞ。
しばらくその感触を楽しんだオレは、あることに気付く。











腕だ、これ───。









思わずベッドから飛び起きた。











「───園田…?」




オレの隣で。
ベッドにうつぶせた状態で寝息を立てるのは、間違いなく園田。





ナンデ!?




驚いた拍子に、窓の淵に頭をぶつけて、涙。
オレ、カッコ悪。






つか、何で園田がここに?
オレ、まだ夢でも見てんのか?
思いきり頬をつねってみる。
痛てぇ!
夢じゃない。


見舞いにきてくれた?
昨日の今日だから、絶対来るはずないって思ってたのに。
あんな事の後で、オレとふたりっきりになるのは怖いだろうって、勝手に思い込んでたから…。
園田のけな気さに、何ともいえない複雑な気持ちになる。
いつからいたんだよ?
扇風機の風で冷え切ってしまった白く小さな肩。
ノースリーブは目の毒ですよー、園田サン。
昨日、押し倒されたばかりだっていうのに。
そういう自覚、ねーのか?
タオルケットをそっとかけてやる。
ていうか、なんで私服?
しかもいつもと雰囲気違うくないか?
水色ヒッコリーのシャツ型ノースリーブのワンピ。
大人っぽいつーか、胸元開いてるつーか。
まあ、いいや。









「園田…?」


返事の代わりに、規則正しい寝息が聞こえてくる。
目の下に、薄っすらクマができてるのが見えた。
あーあ。
昨日、眠れなかったんだ、コイツ。
きっとこのクマの原因は、オレ。
勢いで、あんなことやっちまったから……。







「…ゴメンな」


そっと頭を撫でた。



肩からずり落ちたタオルケットを再度掛けてやって。
起こさないように、そーっと。
園田の顔がよく見える位置に、オレも横になる。
…園田の寝顔って……、初めて見るかも…。





う、わ。



これ、かなり貴重!




それだけ、キモチを許してくれてるってこと?
そう思ったら、妙にキモチが高ぶって、どんどん加速する。
ヤバイ。ヤバイ。
昨日あんなことして、園田を泣かせたばかりだっていうのに。

最近。
理性を保つブレーキが弱まってきてる自覚はあった。
付き合ってどれだけだ?
半年───?
我慢した方だよな、オレ。
手を繋いで、抱きしめて、キスをして……それだけ。
それ以上、進展がないなんて男としては情けない限り。
そんなオレの焦りを見透かして、安部はまんまと、そこにつけ込んできた。
相手の弱みに土足で踏み込むズルさは、昔っから何も変わっちゃいない。
でも。
それをわかっていながらも、まんまと乗せられた自分も、ちっとも成長してねぇってこと。
結局、お互い様だ。






微かな寝息が顔に掛かる。
オレは手を伸ばして、園田の頬に触れた。
温かくて、すべすべしてて、柔らかい。
ぷに、と軽く摘まんでみる。
モチみてぇ。
そう思ったら笑えた。
頬に張り付いた髪にそっと触れたら、ふわふわと柔らかい髪が、ほんのり湿ってた。
汗?
違う。
全体的にしっとりとした感じだ。
洗い立てのボディソープみたいな香りがする。
風呂上り? ナンデ?
誘われてるみたいでくらくらした。
柔らかな髪を一束、掬い上げて、指で弄ぶ。
ふわふわ、くるくる。
巻きつけて持ち上げたら栗色の髪が夕陽に透けた。
すげぇ綺麗。
そしたら園田が、う、ん…と声を上げて、固く閉じていた瞳をゆっくりと開く。











「…蒼吾、くん……?」





「悪ぃ。起こした?」


「んーー…」




寝ぼけてんのか?
茶色く丸っこい目を何度も瞬かせながら、小さな手で擦る。
小動物が顔を洗ってるみたいな仕草。
ふにゃっと頼りない寝ぼけ眼が、すげぇカワイイ。
何度か目を擦った後。



「…あ」


園田が短く声を上げた。
じわりと、視線だけこっち向けて、オレをじっと見つめる。
何だよ?












「き、ゃああーっ!! 」






だから、何?



「そ、そーごクン…!? えっ、なんで?? 」



ガバリ。
身体を起こして何度も目を瞬かせる。
慌てた仕草で髪を撫でて、直して。
胸元とかスカートの裾とか、必死で整える。










「どうして…?? あれ……ここ、蒼吾くんち───?」








何?
一瞬、ここがオレんちだって。
わかんなかったワケ?










「ぶはっ」




思わず吹きだした。
それ、あまりにも間抜け。
漫画の世界じゃあるまいし、緊張感なさすぎ。
園田のやること成すこと、可愛すぎていちいちツボにはまる。








「笑わないでよ。…先に起きたんだったら、起こしてくれればいいのに…」


今にも泣き出しそうに顔を歪めて、園田がオレを睨みつけた。
口がアヒルみたいに尖ってる。
そんな顔で睨まれても、ちっとも迫力がない。
迫力どころか、尖らせたそのカワイイ唇にキスしてやりたい気分。







「…見た?」
「何を?」


「……寝顔…」


「ああ」


しっかりと拝ませてもらいました。
余すことなく隅々まで。








「もぅーーっ!! 」




園田が真っ赤になって顔を覆った。
そんなに嫌がることか?
オレに寝顔は見せられないって?
それ、ちょっと凹むんだけど。



「違うの。蒼吾くんが嫌だとか、そういうんじゃなくて…。
私の寝顔って、間抜けなんでしょう? 魚みたいに口、開いてるし、ヨダレ垂れてるし。時々、半目で薄ら笑いするから、気持ちが悪いって…」
泣きそうな顔で園田が手で顔を覆った。



───それ。

「誰に言われた?」







「…4年生の時、課外授業のキャンプで…クラスの男の子に…」








───安部だ。





絶対、アイツに決まってる。
園田の寝顔を誰にも見せたくない。独り占めしたいって。
魂胆、丸見え!
ていうか、アイツ。
いつの間に、園田の寝顔見てんだよ。
オレですら、今日まではっきりとした寝顔は見たことなかったっていうのに。
やっぱりアイツ、油断ならねー。






「それ言ったの、安部だろ?」
「…どうして、わかったの?」

一瞬、きょとんと目をまん丸に見開いて。
園田が素直に頷いた。
「それ、全部嘘っぱちだから。だって安部だろ? アイツは園田だから、言ったんだ」
園田の表情は全部、独り占めしたい。
アイツの独占欲も相当だな。




「…そっか……。私、嫌われてるから…」


園田が勘違いしている間が花。
今のうちに、何としてでも園田からアイツを遠ざけねーと。







「園田」
「…うん?」
「アイツに弱いところ見せんな、隙見せるなよ。堂堂としてろ」

弱いところにすぐ付けこむ卑怯なヤツ。
園田は隙だらけ。
警戒心がなさすぎる。
「でも安部くんって…いつも突然で強引だから…」
だから怖い。
アイツがいつ現れて、何をしでかすか。
ずっと側で守ってやれたらいいのに。








「そういえば…熱は下がったの……?」


悶々と考え込んでいたオレに向かって、園田が心配そうに訊ねた。
「ああ。もう平気。下がったっぽい」
そう言って、額に張り付いた冷却シートを外す。
乾燥しきったそれは、もうすっかり意味を失くして固くなっていた。
シートを、丸めてゴミ箱に投げ捨てる。
体勢を立て直そうとしたら、一瞬、オレの前に影ができた。







「…ほんとうに、もう平気?」


その影が、園田が身を乗り出してきたからだって気づくのに、そう時間はかからなかった。
ベッドに半分体を預けて、オレの額に手を伸ばす。
園田の体の重みで、ギッとベッドが音を上げて、体が少し沈む。
オレの短い前髪が小さな手にかき上げられて、園田の顔が近づいた。
コツン。
額が合わさって、熱を探られる。










う、あ…。




軽く角度を変えれば、簡単にキスできる至近距離。
ほんのりピンク掛かった唇は、ふっくらと艶やかで、唇を合わせたら驚くほど柔らかいのをオレは知ってる。
シャツの合わせ目から見え隠れする胸の谷間は、息を飲むほど白くて。
心臓がひっくりかえったように、波打った。
ヤバイ。









「まだ少し、熱…あるみたいだよ? 下行ってヒエピタ、もらって来ようか?」




熱なんてとっくに下がった。
あるかないかなんて、オレが一番よくわかってる。
バカ園田。
無知で、鈍感で、無神経。
お前がそうやって考えなしに触れてくるから、嫌でも体温が上昇すんだよ。
もう、勘弁して。










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