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全力少年 16
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ふたり模様2    サイド*蒼吾 

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「───なあ、園田。オレとふたりっきりになって……怖くねぇの?」
そこのところ、ちゃんと確認したくて単刀直入に切り込んだ。
丸っこい目がじっとオレを捕らえた。
「オレ、また押し倒すかもよ?」
ふたりっきり。 オレの部屋。 ベッドの上。
そうなる可能性を、お前は少しも考えたことねぇの?





「…いいよ。蒼吾くんがそうしたいのなら……」



園田が真っ直ぐに俺を見つめたままで、そう言った。
オレの事、信じてる───そういう目。
そんな顔されたらもう、下手なことはできなくなる。
園田の信用を裏切れない。
先手必勝?
そういうの園田は考えて行動してないんだろうけど。
素でやっちまうんだから、お前には参るよ。







「…ゴメン。今の、ナシな。忘れて」


ぼやくように告げたオレに、園田が不思議そうに顔を上げた。
見上げた顔が不安に揺れてる。
最近、オレ。
園田にこんな顔、させてばっかだな。
ちょいちょい。手招き。
なぁに?って。
首を傾げながら、呼ばれるままに園田が素直に寄ってくる。
抱きしめるぐらい、いいよな?
引き寄せて、園田の身体をそっと抱きしめた。
腕の中に閉じ込めるには、小さいから具合がいい。
園田の全部を抱きしめてる気になる。
オレの背中に回した手がぎゅっと強く、しがみついてくる。
栗色の髪に顔を埋めたら、柑橘系のいい匂いがした。






「…なあ、園田」
「うん?」
「お前、一度帰ってからうち、来たの?」
「ううん。学校からそのまま。どうして?」
「だって、私服着てるし」
それに、風呂上りみたいないい匂い。
なんで?
「…これは───」
閉じ込めた小さな空間から、するりと園田が抜け出した。
手元が淋しい。
ああ。
もうちょっと抱きしめていたかったんですけど。






「蒼吾くんのお姉さんに借りたの」
「姉貴の? 何で?」
「あのね…」


園田が自分の身に起きた出来事を話してくれた。
身振り手振りで。
表情がくるくる変わって面白い。


「うっわー。姉貴、何やってんだよ…」
サイアクじゃねぇか。
豪快な姉貴のことだ。
バケツに残った水を全部、園田にぶちまけたに違いない。
あまりの申し訳なさにオレは頭を抱えた。
マジ、ゴメン!
「気にしないで。私もボーっとしてたのが悪いんだし…。
それに…服を貸してもらった上に、お風呂までいただいちゃって、申し訳ないぐらい良くしてもらったから…」
風呂?
だからか。
いつもの園田と違う、いい匂いがするのは。


「じゃあそれ。葵の服か」
どこかで見たことあるような気がしてたのは、葵が着てたからだ。
本命コンパとかで、よくそれを着て出かけてたのを思い出す。
清楚なお嬢系の服。
普段派手な葵にすれば落ち着いたデザインだけど、園田が着ると背伸びしてるみてぇに見える。
「変…かな?」
「変じゃねぇけど…」
らしくない。
「そういう服はもうちょっと、成長してからの方がいいんじゃね?」
意地悪く笑ったら。
「…成長って、どういう意味? 」
園田が拗ねて、唇を尖らせた。
「別に…深い意味はねーよ?」
「うそ」
顔をしかめてオレを睨みつける。
息が零れたの同時、肩を落として落胆。
どした?





「確かに…胸元、がばがばしてるもんね。見苦しいかな?」




…そんなこと。


オレに聞くな。オレに!





じゃあ見せて───って。
どさくさに紛れて、言いそうになっちまったじゃんかよ!







園田を黙って引き寄せて、抱きしめた。
洗い髪。シャンプーの匂い。
園田んちの花みたいな甘い匂いじゃなくて、柑橘系の爽やかなヤツ。
うちの匂い。オレと同じの。
やべ。
風呂入ったらオレ、変な妄想しちまいそうだ。







「…ねぇ」
「なに?」
「こういうの、久しぶりだね? ゆっくりふたりでいられるの…」
やんわりと呟いた声が心地よく胸に浸透する。
「…そうだな」
オレは幸せを噛み締めるように頷いた。



放課後、部活。休日、部活で。
おまけにクラスも校舎も別。
二年になって、園田といられる時間はぐんと減った。
こんな風にふたりでゆっくりできる時間なんて、ほとんどないに等しい。
オレも園田も、我慢してる。






「…明日は学校、来れそう?」
「たぶん」
「学期末も近いし、あまり休むと後が大変だよ?」
「…もうすでにオレの成績、大変なんだけど…」
本音を零したら、笑われた。
あのー。
笑い事じゃないんですけど。


「蒼吾くん。ちゃんと授業は聞いてる?」
「んー…。半分ぐらいは」
「あとの半分は?」
「爆睡」
授業中は貴重な睡眠時間。
睡魔には勝てねぇんだよなぁ。
「オレ。学期末、すげーヤバイ。マジ、やばい」
テストだけじゃなく、これからの進路も、将来も。
好きな野球で生きていけるほど、現実そんなに甘くない。
溜息を零したオレの腕の中で、園田がもぞりと身体を動かして顔を上げた。





「私ね…。夏休みに、凪ちゃんが通ってる予備校の夏期講習に参加するつもりなんだけど……」
「夏期講習?」

いやーな響きに渋い顔。
てか、園田。
お前の成績だったらそれ、必要ねぇだろ?



「…蒼吾くんも、一緒に……どうかな?」






へ? オレが?


予備校? 夏期講習?





「それ。オレには時間と金の無駄だから。それに夏は部活で忙しいし……ゴメン、無理」
「…そっか……。そうだよね」
しゅん、と。
園田が泣きそうな顔を見せた。
「ゴメンな」
「気にしないで。断られるのは、わかってて誘ったんだから…。でも、ちょっとだけ期待してたんだよね。 一緒に予備校通ったら、夏休みは蒼吾くんと、長く一緒にいられるかなーなんて、思っちゃった…」
なんつー可愛いことを。
その為だけになら、参加してもいいかな、って。
オレの下心がぐらりと揺らぐ。
でも実際。
オレには時間も金もない。
どうせ予備校に通っても寝るだけだ。
無駄なことに投資しない。
これ、夏木家のキホン。







「じゃあさ…その分、園田がオレに勉強教えてよ。お前、教えるのうまいから」


どうせ勉強するのなら、みんなで机を並べてつーよりも、園田とふたりの方がいい。
眼鏡の堅物教師よりもカワイイ彼女。
違う方向に脱線しそうなのがナンセンスだけど、よっぽど成績伸びそうだ。





「園田も復習できて、一石二鳥だろ?」
「…うん!」

ぱぁっと園田の顔が明るくなる。
感情が素直で分かりやすい。
そういうところ、すげぇ好き。











ちらり。
園田が部屋の時計を見上げた。
時刻は夕方7時前。
園田といると時間が経つのなんて、あっという間だ。





「…そろそろ帰る? あんま長くいると、風邪移しそうだし」


本当は帰したくない。
手放すの、名残惜しい。
だけど。
オレもそろそろ限界なんだよ。
あまり長くふたりでいると、理性の糸が切れそうだ。




「な?」

園田の身体を離そうとしたら、オレの手を強く握り返してきた。
忍耐。根性。平常心。
やっと決心がついたのに、これじゃあ揺らぐ。



「もう帰れって。遅くなるから。オレ、今日は送って行けないし」
心配だから、明るいうちに帰って。
「風邪、うつるぞ?」
キスだって我慢してんのに。
そんなにひっつくな。
嬉しいけど。
「学期末前だから、熱出したらヤバイだろ?」
園田、あんま体強い方じゃねえから、心配。










「…う、ん……」



顔。
俯いて見えねーけど、どんな表情してるのかは想像がついた。
ヤバイ。
たぶんそれをまともに見たら、オレ。
押さえる自信、ねぇよ。









「…あんまくっついてると、マジで押し倒すぞ───?」




ちょっと低く、真顔で言ったら。















「…いいよ…」





消え入るような小さな声で、園田が呟いた。














「蒼吾くんがそうしたいなら、いいよって…さっきも、言ったじゃない……」






がばり。
園田の肩をつかんで引き剥がす。
丸っこい潤んだ瞳が、じわりとオレを見上げた。
色白の頬を林檎みたいに真っ赤に染めて、耳まで同じ色に染まる。












───おいおいおいおい。

真顔でとんでもないこと、言うなって。





オレ、マジで責任取れねーぞ?














「…それ。本気で言ってんの───?」





真面目に聞いたら、園田がオレの肩に頭を倒して、こくりと髪が揺れた。














えーっ。



マジで───?






あのコトバは、釘を刺されたのでも何でもなく。

園田の、本心だったのか───。













……うっ、わーーっ。





思わず口元を手で隠した。
どうしようもなく顔が緩んで仕方がない。
ヤベ。
今のオレの顔って、絶対、ヤバイ。
期待と下心が抑えきれない、ヤラシイ顔。
こんな顔じゃあ、園田の顔、まともに直視できねぇって。








「…蒼吾くん…?」



あからさまに顔をそらしちまったオレを、園田が心配そうに下から覗き込んだ。
潤んだ茶色い目。
上目遣い。


安部じゃねーけど。
こういう困った顔にも、くらっとくるのは事実───。









うあーっ! もう、限界。











最後までつーのはもちろんナシだけど。






オレ。

園田に触れても、いい───?










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