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全力少年22
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渇望    サイド*ましろ 

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蒼吾くんはずっと黙ったままだった。
手を握られたまま階段を降りて、夕暮れの色を濃くする街へと飛び出す。
予備校の入り口に、投げ捨てるみたにして転がった藍色の自転車が見えた。


「あの……蒼吾くん、自転車──────」
「チャリなんてどうでもいい」

低音の声が普段よりも数倍、低く響いて。
私はそれ以上、何も云えなくなった。
どこまで行くんだろう。
蒼吾くんは私の手を強く掴んだまま、夕暮れの街をぐんぐん進んでく。
普段なら私に合わせてくれる彼の歩調は、緩まることがなく。
振り返ることも立ち止まることもせず、真っ直ぐ前だけを見て突き進んで行く。
時折、すれ違う人の肩にぶつかって、汗ばんだ肌が触れた。
すごく気持ちが悪い。
はぐれないように、おいていかれないように。
ついていくのが精一杯。
手を引かれるまま駅ビルに入り、エスカレーターを登り、スポーツ用品売り場の階で降りた。
売り場を突き抜け、エレベーター脇の非常階段のドアを開ける。
階段の踊り場に出るたところで、ようやく蒼吾くんが握っていた手を離した。
バタン、と。
背後で扉の閉まる重い音が響いた。
非常階段から見える夏の夕暮れは、街をオレンジ色に染めて、長く長く影を作る。
ビルの間を吹き抜ける風に、髪やスカートが強く煽られた。




「──────なにやってんだよ、園田」
ようやく蒼吾くんが重い口を開いた。
「安部とふたりきりで、何やってたんだよ? 」
「なにって……別に…なにも……」
「オレ。アイツと同じ予備校だなんて聞いてねえし」
「安部くんと一緒なのは…私も、通うことが決まってから知って──────」
「そういうことを言ってんじゃない!」
強く一喝されて、ビクと一瞬、身体が跳ね上がる。
拗ねているのか、怒っているのか、よくわからない横顔だった。


「園田…わかってねえよ……。
なんでアイツが…どんな理由でアイツが、お前に近づいてるのか、ちっともわかってねえだろ?」
「……理由…?」
言ってる意味がわからない。
「偶然、同じ予備校に通うことになっただけだよ? 他に、どんな理由があるの?
それに──────蒼吾くんが思ってるほど……安部くんって悪い人じゃないよ…」
真っ直ぐに、じっと私を見つめてきた蒼吾くんが。
ハァーとあからさまな溜息をついた。





「何で庇うんだよ?」
「え?」
「嫌じゃなかったのか? あんなことされて。オレじゃない、別の野郎に触られたり、抱きしめられたりして」
「そ、そんなの……っ 」

嫌に決まってるじゃない。
どうしてそんな意地悪なこと、聞くの?




「オレは嫌だったよ。お前がいいように利用されんのも、アイツのせいで、言いがかりつけられんのも。お前が……安部に触れられたり、抱きしめられたりしてんの見るの、すげえ、すっげえ! 嫌だった! ──────心臓、持たねえよ……っ」


ガンッ!!と、力任せに拳を扉に打ち付けて、蒼吾くんが私を見下ろした。
獲物を囲うようにして、壁の隅へと追い込む。
笑顔の見えない蒼吾くんは、どこか冷たくて、怖くて。
心臓がバクバクと、嫌な音を立てて加速した。








「さっきのアレは──────園田も同意した上でのことなのか?」



「…どうして……? どうしてそういうこと、言うの?」


そんなわけないじゃない。
たとえ罰ゲームでも、蒼吾くん以外の人に抱きしめられるなんて、イヤなのに。
どうしてそういうの、わかってくれないの?





「だっておかしーだろ。安部のこと、あんなに嫌がってたのに──────!」


「それは……」


蒼吾くん相手に遠まわしな言葉は役に立たないって。
私は今までのつきあいで学んだ。
だから。
夏のはじめに公園で安部くんに助けてもらったことを、全部、話した。
話を続けるうちに、ますます蒼吾くんが不機嫌になっていくのが、手に取るようにわかった。


「何で安部を頼るんだよ?」
「別に…頼ったわけじゃ……」
「オレのケータイに、かければすむ話だろ? 何で、よりにもよってアイツなんだよ……!」
「だって安部くんが──────ッ…」
云いかけた言葉が遮られた。


「お前の口から、アイツの話なんて聞きたくねえ」


大きな掌が、私の口を塞ぐ。




「園田は警戒心がなさすぎんだよ。いや……警戒しすぎるか、なさすぎるか、両極端なんだよ、お前は。気を許した相手だと、無条件で信じきってしまう。
オレ、前にも言ったよな?アイツに隙、見せるなって」

塞いだ手を緩めて、蒼吾くんは私の肩を掴む。
私は。
涙が零れそうになって、きつく唇を噛締めることで、それに耐えた。




「どうして……? どうしてそんなに、安部くんのことを嫌うの? 」
今さら。
蒼吾くんらしくない。変だよ。
安部くんとは、友達なんでしょう?





「アイツが──────園田を利用するだけで、あんなことしたって、お前、それぐらいにしか思ってないだろ?」





「……違うの…?」



「違う。アイツは──────」




言葉の続きが、蒼吾くんの唇から発することは無かった。
苦虫を噛締めたみたいな表情で口元をきつく結んで、ガシガシッと乱雑に頭を掻く。
「クソッ!」
持て余す程の苛立ちを非常階段の扉に思い切りぶつけた。
ガンッ!と重苦しい鈍い音が響いて、私はその大きな音に竦み上がる。
蒼吾くんが顔を上げて、真っ直ぐに私を見据えた。
強い意志を帯びた視線に縫い止められたかのように、私は動けなくなる。
言葉も出ない。


「他の男としゃべんな、なんて…女々しいことは云わねえ。でも……安部は駄目だ。アイツだけは…。どうして?なんて聞くなよ? そういうとこが園田は鈍感なんだよ。ちゃんと自覚してくれ」
カン、と。
蒼吾くんの靴音が非常階段に響く。
すぐ傍には彼の顔がある。
怒ったような、拗ねたような、複雑な表情を浮かべたまま。
蒼吾くんが手を伸ばした。
いつの間にか零れて頬を伝う涙を、蒼吾くんの指が乱暴にぬぐう。







「……わかない…、わかんないよ、蒼吾くん……。怒ってばかりで…私の話…ちゃんと聞いてくれなくて…。違うって云ってるのに……そうじゃないのに…っ」


もう。頭の中はぐちゃぐちゃで。
蒼吾くんが何を言いたいのか、自分はどうすればいいのか。
わけがわからなくなる。





「そんなに…っ私のこと…信じられない…の…? …も、やだ……っ……」


言葉にするうちに、何が何だかわからなくなって。
わっと声を上げて、顔を覆う。
涙が溢れて溢れて、止まらない。







ましろ──────って呼んでくれた。
あれは錯覚だったの?
私。
嬉しかったんだよ?
あの場から連れ出してくれて。
初めて、蒼吾くんが名前で呼んでくれて。
胸の奥がきゅってなった。
涙が出るくらい、嬉しくて堪らなかった。
またひとつ。
距離が近くなった気がしたのに──────。







「園田」



覆った腕を掴まれて、顔を上げられた。
蒼吾くんの黒い瞳に自分が映るのが見えた。
姿勢を低くして、蒼吾くんが間近で覗き込む。



「オレが──────、何で怒ってんのか、わかんね?」


コクリ。
私は頷く。





「私……どうすればいい? 」




どうすれば、また。

いつもみたいに笑ってくれるの──────?








「…お前、無防備だから、自覚ねーから。隙だらけなんだよ、いつも。
優しいから大丈夫──────だなんて、簡単に思い込むな。下心のない男なんていねえから。男、なめてると痛い目見るぞ」



瞬間。
強い力で引き寄せられたかと思うと、奪うようにキスされた。
「ん──────ッ」
声が出ないように、逃れることも出来ないように。
全てを包み込むように唇が塞がれる。
声を上げようと唇を開けば、強引に舌で割られた。
荒々しく舌が進入してきて、抵抗する舌先を絡み取り、強弱をつけて吸い上げられる。
何度も角度を変えて、荒く重ねられるキスに、瞬く間に全身の力が抜けていくのを感じた。
同時に両腕を頭の上で一つに重ねられ、強い腕に押さえつけられる。
振りほどけない。
いつも優しく触れる手が躊躇なく制服の裾から入ってきて、素肌に触れてく。
その手に、遠慮も躊躇いもなかった。






「や…っ蒼吾く…ッん……怖い……っ」


じれったいといわんばかりに制服のブラウスを鎖骨の辺りまでたくし上げ、ブラに包まれている胸に直接振れる。
荒々しく揉みしだかれ、どうすることもできない。
腕の中でされるがままに身を委ねるしかできない。
「や…あ…ッ」
身体がビクンと硬直する。
蒼吾くんが胸の上までブラをたくし上げた。
「……や……だ…ぁっ…こんなところで──────ッ」
手と唇が、交互に肌の上を掠めていく。
全身を駆け巡る熱い感覚に、私は声にならない声を上げた。













はじめて。




蒼吾くんが、怖い──────って思った。









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