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バースデイ・バースデイ 5



誕生日当日は、ばあちゃんがケーキを用意してくれた。
イチゴがたくさん乗っかった、生クリームたっぷりのホールケーキは、村唯一の洋菓子屋『サンタサンタ』のケーキだ。
「ん。園田のぶん」
「ありがとう」
「アイツらにたかられる前に、食うべ食うべ」
店の名前からか、クリスマスでもないのにサンタの砂糖菓子が乗っかってる。
そこには何の違和感も持たず、均等に振り分けられたはずのケーキの大小で、低レベルな争いを続ける小学生4人に、オレは溜息を零した。
オレが今日、誕生日だということをどこからか聞きつけて、朝一から押しかけてきやがった。
ご丁寧に洋菓子屋に回って、ケーキ持参だ。




「たまたまさー、ケーキ屋の前を通ったらな、おばちゃんに届けてって頼まれたんよー」
「俺らも忙しいんやけどさ、おばちゃんがどーしても!って言うけん、持ってきてやった!」

小学生の何がどう忙しいんだか。
素直にケーキ食いたいから取りに行ったとでも言えば、可愛げがあんのに。
回りくどい言い方を。
おまけに。
食う気満々でケーキの前に居座るもんだからさ。
ばあちゃんが気を利かせて、早めに切り分けることになった。
午前10時にケーキを囲んだ誕生日なんて、今年が初めてだ。
「まあ、ええがね。食べたい時に食べるんが、一番おいしいけんな」
ばあちゃんも、こいつらが来ることを見越してたんだろう。
10人で分けたとしても十分に満足できるジャンボサイズだ。


「出さんと負けよっ、ジャンケンポイッ!」
一番大きなケーキ(オレには全部、同じに見えるけど)は、あみだの末、喜助がゲットした。
今度はケーキの上に乗っかった砂糖菓子のサンタと、チョコレートでできたバースディプレートを誰が食うかの勝負だ。
「喜助はでっかいの取ったんやけん、除外! 除外!」
「えー! なんでぇ!?」
お前ら。
今日の主役はオレだつうことを忘れてるだろ?
そういう飾りもんは、誕生日のオレに一番の権利があるんじゃねえのか?


…まあ。
今日のオレはいつもより寛大だ。
なぜかって───そこんところは、聞かないでくれ。








「…蒼吾くん」
「ん?」
「クリーム。ついてる」
唇の端についていたであろうクリームを園田が指でぬぐって、ペロリと舐めた。
なんて事ないその仕草に、ドギマギして、心拍数が上がる。
「…なに?」
「なーんかさ、こういうやりとりって、いいよな。深く付き合ってこそじゃね?」
「?」
「昨夜の園田をアレコレ思い出しちま───ってえ!」
ポカンと殴られた。
デリカシーのないオレは嫌い、って、頬を真っ赤に染めてそっぽを向く。
あんな後でも、変わらずシャイなままで可愛い。
もうずっと、そのままでいて。





「それ。すごいよね」
ケーキを食べ終えた園田が指差したスーパーのレジ袋には、これでもかってなぐらいに駄菓子が詰め込まれてる。
大和ら男4人がくれた誕生日プレゼントだ。
「つか。全部、うまい棒ってどうなの? もう少し、バラエティにとんでもよくね?」
「でも、立夏ちゃんはホラ、手作りクッキーじゃない」
「これはいいんだ。これは」
「もらえるだけでも良しとしなきゃ」
「つっても、うまい棒40本ってなあ…」
「ホントはすごく嬉しいんでしょう?」
何もかも見透かした顔して、園田が笑う。
「ああ。ちょっと感動した」
これだけ大量のうまい棒が、北村商店に置いてるはずがない。
足らない分は、何日も前から注文して取り寄せたに違いない。
物がどうこうというよりも、その気持ちが嬉しい。
小学生のクセに、生意気なことを。





「私からも。はい、これ───」
「え? なんで?」
「なんでって……蒼吾くん、誕生日だから…」
「もう、もらったじゃん」
「あんなの…プレゼントのうちに入らないもん。いいから、開けてみて?」

園田がオレの手を引き寄せて、手のひらの上に小さな箱を置いた。
箱の水色とリボンのオレンジ色のコントラストが、真夏の空と太陽を連想させる。
リボンを解いて蓋を開けると、中からイヤーフックのイヤホンが出てきた。




「うおっ。これ……! オレが欲しかったヤツ! なんで!?」
「守口くんに相談に乗ってもらったの。プレゼントするのなら、やっぱり蒼吾くんが欲しいものがいいでしょ? ちょうど壊れて新しいのを欲しがってるって聞いたから…」
「いいの? もらっても」
「うん。使ってもらえたら、嬉しい」
さっそく手持ちのiPodに差し込んでみる。
「…どう?」
「いい! 低音が腹に響く!」
スポーツタイプだから、ジョギングにも使える。
「つか、これ。高かったろ? マジでいいの?」
「私の誕生日に、期待してる」
「うしっ。任せとけ!」
バイトは無理だから今から貯める!
クリスマスもお年玉も、貯金だ!
「それは、冗談だって。蒼吾くんが喜んでくれるだけで、私は嬉しいから。そのかわり、大事に使ってね?」
「モチロン!」
コードを伸ばして、イヤホンのひとつを園田の耳に掛けてやる。
「ど? 音、良くね?」
「うん。ノイズが少ないね」
「だろ? 再生音が漏れにくく、かつ、周りの音もある程度聞こえて。動いても落ちないイヤホンなんて、サイコーじゃね?」
おまけに。色はオレの大好きなブルーだ。
もう完璧。




「あーっ! 何、ふたりでいちゃいちゃしてんだよ!」
「隠れてコソコソと!」
「やっらしぃ!」
「不潔ー!」

ケーキ争奪戦に一区切り終えた男4人組が、ニヤニヤとオレの前に現れた。

「園田はオレの嫁だ。イチャイチャして何が悪い? 文句あるか?」
「わ。開き直りやがった!」
「蒼吾はそういうとこが、大人気ないんだよなっ!」
「あれは、なったらいかん大人の見本だ」
「あんな大人になるのだけは、やめとこな?」
「なーっ」




「…おっ前ら……、言いたい放題、言いやがって! 全員、沈下橋から放り込んでやるっ!」



「ぎゃーーっ! 蒼吾が切れたー! 逃っげろーー!!」




わーっと奇声を上げて、蜘蛛の子を散らすようにそれぞれが逃げた。
「じゃーな! 蒼吾っ! 誕生日に免じて、今日はふたりっきりにしてやるけん!」
「せいぜい、いちゃいちゃすればええよ」
「俺ら沈下橋におるけん、どーしてもっていうのなら遊んでやる。いつでも来いよ!」
「じゃーな! ばあちゃん、ケーキご馳走さん!!」
肩に掛けたバスタオルをマントのように翻して、真夏の空の向こう、アイツらは散った。
食うもん食ったら、退散かよ。
ひっきょう!



オレのすぐ後ろで、園田がくすくす笑う。
「大和くんたち。かわいいよね」
「そうだけど…ウザイ!」
思い切り顔をしかめてやったら、園田がまた、声を立てて笑った。
あいつらがうるさいお陰で、こんな園田の笑顔がみられるのなら、それはそれで良しだ。
無邪気に笑い続ける園田の前で軽く身体を折り曲げて、チュッと音を立てて唇に触れた。
「あ」
「…なに?」
「今、大和くんに見られてた」
「うえー。マジで?」
「ほら、また振り返って───」
言葉の続きをキスで塞ぐ。
今度は触れるだけの子どもじみたキスなんかじゃなく、深く探る大人なキス。




「…蒼吾、く…っ ちょっ…まだ、見られて───ッん…」

胸を押し返して突っぱねてくる園田の手首を捕まえて、オレは開き直ってキスを続ける。
見たけりゃ見ればいい。
園田はオレの彼女で、オレの嫁(仮説)。
キスして、いちゃいちゃして何が悪い?
誰かに文句を言われる筋合いはねえ。



それに。
今日はオレの誕生日。
今年のオレは、最強だ。










「…蒼吾くん……」


くたりとオレの肩にもたれかかって、キスの余韻でとろんとしたままに、園田が口を開く。





「さっきからずっと、気になってたんだけど……」
「なに?」
「戻ってる。……名前、園田に……」
「あー…。ゴメン。いつものクセで、つい…」


゛園田゛が長いから、なかなか抜けね。


「つか。ゴメン。しばらくまだ、園田でいい? なんつうか…モロバレだから」
旅行から帰って、いきなりましろじゃあ、一線越えましたってアピールしてるようなもの。
「不幸にも。そういうことに敏感で、深読みしてくる連中ばっかが、オレの周りにいるもんで」
涼とか、ジンさんとか。佐倉とか、日下部とか。
おまけに───姉貴。
せっかくの綺麗な思い出を、ひやかされて、つつかれて。
それをネタにいじられんのは、ぜったい御免だ。
あからさますぎんのも、どうかと思う。






「…いいよ。なんとなく想像はつくから…」
それぞれの顔を思い浮かべて、園田が笑う。
「ごめんな」
「うん。また時々は……呼んでね…?」
「ああ。ベッドの上でなら、何度でも───ってぇ!」


真っ赤になった園田に、頬をつねられた。
最近の園田サン、容赦ねえの。
「もう知らない!」
照れ隠しに拗ねてみせて、もらったばかりのイヤホンを耳に掛けて独り占めした。
オレに背を向けて、ぷいとそ知らぬ顔。
そうやって、怒った顔も笑った顔も。
これからも見せてくれる表情、全部オレにちょうだい。









「───ましろ?」



後ろからそっと体を重ねて、イヤホン越しの耳に小さく囁く。
聞こえてないふりして、園田は振り返ろうとしないけれど、握り締めたipodの曲がもう終わってるのは、ちゃんと知ってる。













「なあ。

誕生日に園田のことちょうだいって約束、今日中ならまだ、有効───?」




甘く囁いた言葉に、間髪いれずに園田が振り返った。
何か言いたげに口元がぱくぱく動くけれど、声にならない。
今日。
早めにケーキを食ったのは、幸いだ。








「じいちゃんをうまくかわして、今夜は早めにあがろう……な?」






だって、約束だもんな?
誕生日に、園田をオレにくれるって。























翌日は。
昼になっても、園田は離れを出てこれなかった。


いつになく上機嫌のオレと、ぎこちない歩き方の園田の姿を見て。
港まで迎えに来た姉貴は、何かを感じ取ったのだった。

















Fin *









夏



蒼吾とましろの甘い甘い誕生日は、いかがだったでしょうか?
ここまで丁寧に書こうと思えたのは、読者さまの応援と励ましがあってこそ。
ふたりの話をもっと読みたいと言ってくださる方がいるからこそ、書けた。
いつもいつも、感謝です。

今回、新しいイラストが間に合わず、使いまわしでございます(汗)
「この絵、見たことあるぞー」とお気づきの、はづきファンの方、許して(笑)



もうしばらく、『まほコト』続きます。
ましろと蒼吾で書きたいネタは山のように。
連載当初は、本編のみで終わる予定のはずだったのにな…(苦笑)
どうかまた、こりずにお付き合いくださいませ。




りくそらた





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魔法のコトバ* 続編 2 comments(9) -
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Comment








素敵な話ですね(*' '*)
from. £яёйа. | 2009/11/12 09:17 |
*£яёйаさんへ*
ありがとうございます!
そう言っていただけて、嬉しいかぎり。
from. りくそらた | 2009/11/12 12:10 |
続きがたのしみです!!
応援してるのでじゃんじゃん書いちゃってください(笑)
from. ggg767 | 2009/11/12 23:00 |
続きがたのしみです!!
応援してるのでじゃんじゃん書いちゃってください(笑)
from. ggg767 | 2009/11/12 23:07 |
*ggg767 さんへ*
あはは(笑)
ありがとうございます。

じゃんじゃん書いていけるようにガンバリマス!
from. りくそらた | 2009/11/13 07:50 |
すごく良かったです。。
感動しました・・・。
続き楽しみに待っています。
from. 夕露 | 2009/11/13 20:18 |
*夕露さんへ*
感動…嬉しいです!
また読みにいらしてくださいね。
from. りくそらた | 2009/11/14 09:22 |
今までずっと蒼吾とましろを
見続けてきたので、2人がラブラブに
なってくれて(今まで以上に∀)
嬉しいかぎりです。
また、たくさん続きを書いてください!
from. あかね | 2009/11/27 21:50 |
*あかねさんへ*
ああ、もう。
長い間、ましろと蒼吾を見守っていただいて嬉しい限りです。
まだしばらく続きます。
甘さに懲りずにお付き合いいただけると嬉しいです。
from. りくそらた | 2009/11/28 07:58 |
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