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全力少年 30
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スキというキスを。2   サイド*蒼吾 

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優しいキスを終えて深いキスが始まる頃には、園田はもう、身体に力が入らなくなって、オレのシャツに強くしがみついた。
息が上がって苦しくても、懸命にオレのキスを追う。


「好き。蒼吾くん……大好き。すごくすごく、すき───」


甘い囁きが、合わさる唇から漏れた。





「ずっと、好き……」




囁く言葉が甘い毒となって、全身に染み渡る。
強く抱きしめたら、園田の体が柔らかくしなった。
くたりとなってオレに寄り添うように身体を預けてくる。
押し倒したくなる衝動を唇を合わせることで誤魔化して、オレは幾度となく小さなキスを繰り返した。
足りない。満たされない。
もっと、もっと。と願ってしまう。
いつからこんなにも、欲深くなってしまったんだろう。


「ん…っ」



名残惜しく唇を離すと、艶めいた声が漏れた。
喘ぐように肩で息をしながら、潤んだ瞳で見上げてくる。
だからヤバいんだって。
そういう仕草のひとつひとつが。
キスだけのプラトニックな関係に、そろそろ限界を感じる。
だって、半年だもんな。


こてん、と園田が頭を倒した拍子に。
柔らかい髪が肩に、頬に触れる。
汗だってかいてるはずなのに、相変わらずいい匂い。
ちらちらと浴衣の合わせから覗く白い胸元が、オレを誘ってるみたいで。
正直、目のやり場に困る。
あー。やばい。
理性と本能が戦う。



急に強い風が吹いて、木々がさわさわと鳴った。
ひやりとした風が頬をさらって、覆い茂った葉を大きく揺らす。
空を仰いだオレの頬に、笹の葉がはらはらと、かすめるように落ちてきたと同時。
園田の身体が、びくりと強張った。
「怖い?」
「…ううん。平気。蒼吾くんが、いるから……」
そう言いながらも、Tシャツの袖を掴む指先は小さく震える。
本当は怖いくせに。
驚かしたりなんかしたら、マジで泣くだろうな。


「とりあえず、ここから出るか」


追いかけるのに夢中で気づかなかったけれど、確かに不気味だ。
長居はしたくねえ場所。
気がめいる。


「ほら───負ぶってやる」
「い、いいよ…」
「その下駄と足じゃあ、歩けねえだろ?」
「でも……重いから…」
「…なんでしたら、お姫さま抱っこでもしましょうか?」
冗談めかして言ったら。
「それは……」
遠慮させてください。
園田が千切れんばかりに首を横に振った。
なんだよ。
そんなに拒否んなくてもいいだろ。



「じゃあ背中な。素直におぶさる! こんなところに、いつまでも居たくねえだろ?」



じゃあ…と。
遠慮がちに手が肩に触れて、園田がじわりと負ぶさってきた。
軽っ。
「…お前…何キロあんの?」
こんなんで重いなんて言ってたら、嫌味にしか聞こえない。
「……内緒」
小さく笑って、オレの肩にこてんと頬をくっつけて、よりかかる。
あー。
この体勢はヤバイ。





「……あのさ」
「うん?」
「あんまくっつかないで欲しいんだケド…」
「…暑い?」


「うん……あちー」



冬ならまだしも、薄いTシャツの向こう側。
柔らかな体を押し付けられたら、嫌でも体温が上昇する。







竹薮を南に突っ切ったら、すぐに裏参道にでた。
外灯の明かりを見つけて、園田が安堵の息を漏らす。
「大丈夫…かな……」
「何が?」
「竹薮に入ったら、原因不明の高熱に浮かされるんでしょ───?」
背中で呟く声があまりにも真剣すぎて、おかしくって笑っちまう。
「その話は迷信。子どもが竹薮に入らないように、大人がわざとに流したデマ。
裏参道に抜ける近道として、オレらはフツーに使ってるけど…ほらこの通り。何でもねえよ」
「…うそ……」
「あの場所は通りから死角になってて危ねえんだよ。
幽霊どうこうよりも、連れ込まれて悪さされて…そういう危険性が高いから…」
不審者が頻繁に出る場所───自分で言ってぞっとした。
園田に何もなくてよかった。
本当に。
「頼むからお前はオレの手の届くところにいて」
方向音痴でも何でも、ちゃんとオレが軌道修正してやるから…。
うん、と園田が頷いて、きゅうっと背中にしがみついてきた。
こういうところが好きだって思う。
素直で可愛い。



コンビニで絆創膏と消毒液とビーチサンダルを買って、ベンチに腰掛けた。
「足、出して」
言われるままに、園田が足を差し出す。
「うっわ。ひでえな、これ」
親指と人差し指の間が赤く刷り剥けて、血が滲む。
おまけに素足で走ったもんだから、擦り傷や切り傷がいくつもできて痛々しい。
「よくこんなので走ったな」
「必死だったから……」
「気分はバイオハザードだろ?」
「もう!」
園田が頬を膨らまして手を振り上げた。
「ははっ。わり。ゴメンな」
半分はオレにも責任がある。
反省してます。ゴメン。
てか。
ちっちぇえ足! 
何センチだよ、これ。
素足に履いたオレのスポーツサンダルがぶかぶかで、ますます足がちっこく見える。
これじゃあまるで、子どもの足だ。
華奢で頼りなくて、ますます守ってやらなきゃという気にさせられる。

「帰りも、おぶってやるから」
「ううん。もう平気。痛くないよ。ひとりで歩ける」
「嘘つけ。こんなんで歩かせられるか。見てるこっちのが痛い。てか、この下駄じゃあどっちにしろ無理だ」
年季の入った下駄は底が磨り減って傷だらけで、鼻緒も何度か直した痕がある。


「…これ、随分年季入ってんな。かなり古いだろ?」
「ママが私ぐらいの時に履いてたやつだから…」
「ふーん。大事に履いてんだな」
「うん…。パパとママの思い出の下駄だから…」


褒められて嬉しいのか、それとも両親のロマンスでも思い出したのか。
園田が頬を桃色に染めて俯いた。
ほつれ髪が一筋、頬へと流れる。
その横顔がやけに艶めいてみえて、ドキリと心臓が高鳴った。
小さく白い肩をそのまま抱き寄せて、キスしたくなる。




「これ───。直したの最近?」


痕跡が新しい。


「うん。安部くんが───」







園田が口を押さえた。
慌てて口を噤む。









「……安部? これ直したの、アイツ?」







追い討ちをかけるような質問に、ぐっと、ますます言葉を詰まらせる。




「今さらだけどさ、何でアイツと一緒にいたわけ?」





疑ってるわけじゃないけど、ちゃんとした理由が聞きたい。



「……う、ん…」



園田がぽつりぽつりと今までの経緯を話し始めた。
携帯を落としたこと。
鼻緒が切れて、安部に直してもらったこと。
一緒に携帯を探してもらったこと。
それから───。



「もういい。大体、わかったから」



思い出すとツライのか、最後には泣き顔になった。
「嫌なこと、思い出させてゴメンな」
落ち着かせるように園田の手を握ってやる。
俯いたまま、園田がふるふると首を横にふった。








「どうして安部くんは、いつもいつも、私が嫌がることばかりするのかな…」




そりゃあ、園田サン。
それは不器用なアイツなりのアプローチってヤツで。
悲しいかな、愛情の裏返し。
理由が分かればめちゃくちゃ分かりやすいけれど。
天邪鬼な愛情表現じゃあ、天然鈍感な彼女に通用するわけがない。
園田の鈍感っぷりは、ある意味最強だから。
正直、同情するよ。
焦れて、煮詰まって、実力行使に出たアイツの焦り。
すげえわかる。伝わってくる。
キスしたことは勿論、許せねえけど。
でもそれだけ、今のアイツは追い詰められてる。
何とかしねえと。






「…ごめんね……」

「なに?」

「私が、安部くんの話なんてしたから……」




オレが黙りこくった理由を自分のせいだと思ったらしい。
目尻に溜まった涙の粒が、今にも零れ落ちそうだ。
コンビニの前でなければ、抱きしめてやれるのに。


「あー……」
ガシガシッと頭を乱暴にかいた。
我慢できずに、園田の体を引き寄せて、頬に唇を触れさせる。
偶然を装って、ごく軽く。
本当は唇に行きたかったけど、ここが今のオレの限界。
人前でベタベタすんの、オレも園田も好きじゃない。
一瞬、目をまん丸に見開いた園田が、真っ直ぐにオレを見上げた。
目が合うと、くしゃり。
泣き笑いみたいな表情をこっちに向ける。
オレは黙って園田の手を取り握った。
指を絡ませ強く握る。




「蒼吾くん……」
「なに?」
「あのね…。なんか……変な匂い、するよ?」
「ああ…ゴメン。汗臭い?」
「ううん。そういう匂いじゃなくて───その…生臭い…みたいな…」




「───あ」




今さらながらに思い出した。
臭いはずだ。
金魚の水を頭からぶっかけられたんだから。
涼の行動はいつも、突拍子がなく大胆だ。
気の毒な金魚と、後でとんでもないことをしてしまったと後悔する涼を思い浮かべて、オレは思わず苦笑した。
「…どうして笑うの?」
園田がオレの隣で不思議そうに首を傾げた。
「詳しくは涼に聞いて」
ますます意味が分からないと、顔をしかめた園田に、立ち上がって手を差し出す。
「そろそろ帰るか」
オレも園田も、ひどい格好だ。

「………」

繋いだ手を園田がきゅっと握り返してきた。
手を繋いで黙り込んだまま、ベンチから腰を上げようとしない。
「足、まだ痛い?」
覗き込んだら、ふるふると首を横に振った。
どうしたんだよ?
俯いてるから、表情がよく見えない。
オレは焦れて、園田の前にしゃがみこむ。
下から覗き込むように園田を見上げたら、何をそんなに我慢することがあるのか、唇を強く噛締めていた。




「…まだ何か、辛いことがあるのか?」



ふるふると首を振る園田の目には、薄っすらと涙の膜。
あー。
また泣きそうだ。







「黙ってたらわかんね。言って?」








優しく問いかけたら、園田の顔がますます泣きそうになった。





「………とにかく、今日はもう帰ろ。送ってくから」





背中を向けたところで園田の声が追いかけてきた。







「……帰りたく…ない……の」







とても小さな声。
何を言ったのか、よく聞き取れなかった。






「なに?」





「せっかく会えたのに……このまま帰るの、やだ。もう少し…蒼吾くんと、一緒に、いちゃダメかな───?」











「あー……」




参った。
今のオレに、その言葉は反則だ。
ここがコンビニ前でなければ、迷わず抱きしめてた。


うな垂れるようにその場に座り込んで、膝の間に顔を埋める。
内面の嬉しさが表に出ないように、できるだけ冷静に、平静に装って。
だけど、それでも出てしまう。
ヤバイ。ヤバイ。
忍耐の限界だ。
ガシガシガシッと、乱雑に頭を掻いた。
ポケットから携帯を取り出して時間を確認する。
もう9時だ。
ひとりでいるにしても、オレといるにしても、親が心配する時刻になる。
嘘をついてまでオレを選ぶ勇気、園田は持ち合わせてないだろ?






「……時間は、平気なのか?」



こくり。
顔を上げないままで、園田が頷いた。





「今日のオレ。園田のこと、ちゃんと帰せる自信がねえんだけど……」




そういう覚悟、園田にあんの?





言葉で伝えることよりも先に、園田がぎゅっとオレの背中に腕をまわして抱きついてきた。
普段では考えられない、衝動的で大胆な行動に決心が揺らぐ。
無茶しないって約束したばっかりなのに。




「───もう少しだけ、一緒にいようか?」

耳元で囁いたら、園田が弾かれたように顔を上げた。
泣き笑いみたいな表情で、こっちを見上げてくる。
あー。ヤバイ。
自分で自分の首、絞めたかも。
「オレ。とりあえず、臭いの何とかしたいんだけど……」
座り込んだアスファルトから立ち上がって、彼女を見下ろした。
差し出した手を握り返して、園田が嬉しそうに笑った。











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Comment








初めまして。
毎回楽しく読ませていただいております。

仲直りできてよかったな〜とほっとしております(笑
蒼吾くんの理性はいつまで保てるか・・・待ち遠しいです!
次回作も楽しみにしております。
from. MIO | 2009/08/06 23:04 |
*MIOさんへ*
はじめまして。
コメント嬉しいです。

ようやくモトサヤにおさまって、作者本人もホッとしています。
喧嘩期間中は、早く仲直りさせたくてモヤモヤしてましたから…(笑)
蒼吾はいろいろと忍耐の限界にきてて、苦労させてんなーとつくづく思います。
じれったいふたりの今後をまた楽しみに待っていてください。
from. りくそらた | 2009/08/07 09:01 |
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