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全力少年 32
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約束   サイド*ましろ*蒼吾 

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ドカッとプールサイドに胡坐をかいて。
「腹減ったー」
蒼吾くんがコンビニ袋を覗き込んだ。
中から冷やし中華を取り出して、割り箸の袋を歯で噛み切ったところで。
ふと。顔を上げる。
「…昔さー、割り箸占いって流行ったよな」
左側が好きな人、右側が自分。
好きな人を思い浮かべて、左右均等に割れたら両想い。
片想いならば、気持ちが大きい方に大きく割れる。
そういう類の恋占いが、小学生当時、よく流行った。
「女子がさー、当たる当たるって異様なくらいに盛り上がって。馬鹿らしいって言いながらもオレ、こっそり家とかでやった。何度やっても左ばっかが大きくてさ、凹んだ」
「私も…やったよ」
やっぱり、左ばっかりおっきくて。
辛くて、切なくて。泣いた。
最初から分かりきってた答えなのに悲しくなるのは、心のどこかで期待してたからだ。
現実を突きつけられたみたいで、悲しかった。

「思い浮かべた好きな奴って…もしかして、オレ?」
「…うん」
初恋だって、言ったでしょ?
キス事件までは、一途に想ってた。
「えー。じゃあ両想いじゃん! 当たらねえんだ、あれ!」
しかめっ面で唇を尖らせて、ぱきん。
割り箸を割ったら、やっぱり左側が大きく割れた。
「ほらな? 恋人同士になっても、キレイに割れねえ」
「…あのね。利き手に力が入るから、どうしてもそっち側が大きくなっちゃうみたいだよ?」
「……マジで?」
「うん」
「えー。単にオレが不器用なだけかよー」
なんだよー、真面目に信じて損した。
拗ねた横顔が、可愛くて笑ってしまう。

大盛の冷やし中華をあっという間にたいらげて、蒼吾くんが大きな体を空へと伸ばす。
「なに?」
私が見てることに気付いた瞳が優しく微笑んだ。
どうしてだろう。
一緒にいるのに、胸が締め付けられるように切ない。
どうしようもなく寂しさが押し寄せて。
優しく微笑まれるだけで、泣きそうになる。
そっと手を取って、蒼吾くんが指を絡めた。
指先から伝わる柔らかな温かさに触れたら。
また、泣きたくなった。
「…そんな顔、すんなよ。一緒にいるのに……」
落ちてきたのは甘いキス。
正面から、蒼吾くんが私を抱きしめる。
力強い腕に抱きしめられた時の安心感。
手をつないだ時、ぎゅっと握り返してくれる逞しさ。
伝う肌の温度。
彼を想うだけで胸が張り裂けそうなくらい切なくて。
蒼吾くんが触れるたびに、私、熱くなる。



愛おしいって、こういう感情をいうんだ。











そんな泣きそうな顔で見つめられても困る。
理性スレスレで、こっちはどうしたらいいんだか。


今にも泣きそうな唇にキスをして、小さな体を正面から抱きしめた。
園田の精神状態は簡単に思い浮かぶ。
ずっと離れてたから。
あんなことがあった後だから。
側にいても、寂しくて不安で仕方がない。
気持ちだけじゃない、確かな何かが欲しい。
寄り添うだけじゃ、園田が足りない。


押し付けた唇をわずかに離し、下唇を自分の唇で挟んだままそっとなぞった。
んっ、と。
園田の唇から零れ出た甘い吐息に、身体中が熱を持つ。
このまま欲に身を任せて、浴衣の下に隠された白い肌をこの目で見て、触れて。
園田の全部をオレのものにできたら、どんなに楽になるか。
腕の中に閉じ込めて、彼女の髪に頬を寄せる。
指を埋めて、何度も髪を梳く。
栗色の髪から微かに香る甘い匂いに、酔いそうになる。
浴衣のせいか、夜の魔法か。
今日の園田は一段と、艶やかだった。
薫り立つ女の色気を身に纏った園田に翻弄される。
我慢できずに髪をたぐって、露になった白いうなじに唇を押し付けた。
んっ、と力が入るのは、決まって弱いところに口づけた瞬間。
耳の横に留めていた園田の髪がふわりと落ちてきて、オレの肩に広がった。
う、わ…ヤバイ。
髪の感触だけで感じる。
咄嗟に園田の肩を掴んだオレは、小さな体をぐいと押しやった。

「蒼吾、くん……?」
「あ…いや……」

ずっと手を出さずに大事にしてきた。
我慢してきた。
気持ち盛り上がって、こういうところで…って。
そういう無茶はもうしたくない。


「あのさ、これ───」
気持ちを誤魔化すように、ポケットから1枚の紙切れを取り出して見せた。
「次の休み、うちの田舎、いかね?」
「…田舎?」
「じいちゃんち。四国にあるんだ」
ずっと渡せないままポケットに突っ込んだくしゃくしゃのチケット。
1枚を園田に手渡す。
「泊まり…なんだ…」
手元に視線を落としたまま、ポツリ。
ニュアンスから、断られそうな匂い。
「ダメ…?」
いきなり泊まり、なんて。
園田んち、そういうの厳しそうだし。

「…話してみる」
「話すって……正直に全部?」
「うん。嘘つくの、嫌だから…。蒼吾くんとのことで、嘘はつきたくないの。大丈夫。ちゃんと説得する。だから…これ、もらっていい?」
もらっていいも何も。
それは園田のだから。
「いい返事、待ってる」
そう伝えたら、園田が嬉しそうに笑った。
もうそれだけで十分なくらい、幸せな気持ちになる。


「…ね、蒼吾くん。プレゼント、何がいい?」
手持ちの巾着に大事そうにチケットをしまいながら、園田が顔を上げた。
「プレゼント?」
「だって、この中の1日、蒼吾くん誕生日でしょう?」










あ。









「ホントだ───」






園田との小旅行の可能性に、すっかり舞い上がってたオレは。
自分の誕生日なんて、忘れてた。
実際。
彼女と過ごす特別な誕生日は、今年が初めてなわけで。
そこまで頭が回らなかったのが事実。


「だから…この旅行は絶対、行きたいの。説得する。
その日はずっと、一緒にいよう?」

いつだって相手の気持ちを優先して、自分の気持ちは後回し。
よく言えば優しい、悪く言えば他人任せな園田がそんな風に言うなんて。
多くを望んだら、罰が当たる。
「ね。何が欲しい?」
それ。
本人に聞く?
「初めてなんだからさ、こう…サプライズとか…ねえの?」
素直な質問が、園田らしいちゃあ、らしいけど。
「いろいろ考えたんだけど……思いつかなくて……」
やっぱり、本人に聞くのが一番確かでしょ?
園田が笑う。
「んー…欲しいものかー…。いっぱいあるぞ?
Wiiのソフトだろー、新しいミットも欲しいし、スポーツバッグも……。てか、何でもいいの?」
「うん。常識の範囲でお願いします」
あー。どうしよ。
悩む。
どうせなら記念になるものがいい。
「んー…」
「返事は急がなくてもいいよ。ゆっくり考えて。それとも…一緒に選びに行く?」
それもありかも。
デートも出来て、一石二鳥?
真剣に考え込んでいたら、隣でくすくすと笑う声が聞こえた。
「…なんだよ」
「だって蒼吾くん。すごく難しい顔してるから…」
「そりゃあ、初めて園田からもらうもんだし…」
真剣に悩むだろ?
「一度きりじゃないんだから。そんなに真剣に悩まなくても大丈夫だよ?」
今年も、来年も、その先もずっと。
蒼吾くんと一緒にいるから───。
そう言って、優しい色を湛えた瞳がオレに微笑みかけた。
あー、もう。
自分が生まれた日に、園田が側にいてくれるのなら、もうそれだけで満たされる。
彼女さえ側にいてくれるのなら……。



「わ。いい風ー。ちょっぴり、秋の匂いがするね」

夜風が園田の髪をそよがす。
ふわりと柔らかな髪をさらって、月の光に透けて黄色く輝く。
日本人離れした瞳と髪の色。
初めて目にした時、とても綺麗だと思った。
恋して焦がれてやまなかった、小学生の自分。
あの時からずっと。
好きの気持ちが静かに降り積もって、今でもそれはやむことがない。








「───あ」
















素足をプールの水に浸して涼を取っていた園田が。
オレが突然上げた声に、顔を上げた。











「みつけた。すげえ欲しいもの」








「…なに?」



「あのさ───」







耳元で囁いた瞬間。
ぱあっと園田の頬が朱に染まる。
彼女の紅く熟れた唇よりもずっとずっと、鮮やかな赤。





「───ダメ?」





あきらかに動揺の色。











「……だめ……じゃない…けど……」


「けど?」
「本当に…いいの? そんなので……」
「絶対、それがいい。決めた!」
「決めたって……」


恥ずかしいのか、照れ隠しなのか。
頬を赤らめて、ぷいとそっぽを向く。
そういう全部の仕草が可愛くて、好きだって思う。


「怒った?」
背中から抱きしめて唇を寄せる。
軽く耳朶に触れたら、ビクと身体が強張った。
「……怒ってないよ」
「じゃあ、嫌だった?」
抱きしめた腕の中で、ふるふると首を横に振る。
「…嫌じゃ……ない…」
「じゃあ…それで、い?」
「………」
しばらくぴくりとも動かなかった園田が、オレの腕を逃れた。
身体の向きを変えて、絡みつくような視線でオレを見上げた後。
そのまま、甘えるようにオレの胸におでこを押し付けた。





「……蒼吾くんがそれでいいのなら……いいよ……」




囁きが甘い痺れとなって、オレの耳に届く。
どんな表情をしてるのかちゃんと見ておきたくて、頬を両手で包み込んで上を向かせた。
涙を帯びた茶色い瞳は不安を帯びて渦まいて。
けれど。
オレが望むならそれでもいいと、静かに頷く。






欲しいものはただひとつ。
ずっと欲しくて焦がれて、堪らなかったもの。









「じゃあさ…誕生日に園田のこと、オレにちょうだい。約束な」







心が全部、園田で埋まってく。










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