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バースディ・バースディ 1



16歳と364日。
オレは明日で、17歳になる。










「こんちはー! じいちゃん、ばあちゃん、来たよー」

霞ガラスの古びた引き戸を開け放って、奥に向かってオレは大声を張り上げる。


にょきにょき入道雲の白さが眩しい日曜、早朝。
オレと園田は四国行きの船に乗った。
天候は快晴。視界良好。
いつもは退屈で仕方ない船の旅も、園田といるとあっという間に着いた。
港に降りたのは昼過ぎで。
そこから市バスを2本乗り継いで40分。
最後のバス停からここまでの山道は、近所の叔父さんに、軽トラの後ろに乗せてきてもらった。
「蒼吾くん、すごい! ほら、見て見て!!」
軽トラ荷台っつー初めての体験と、そこから見える360度開けたパノラマの世界。
瞳をキラキラさせて、目新しいものを見つけるたびに、子どもみたいにはしゃぐ。
こんなにもはじける園田の笑顔は久しぶり。
連れてきてよかったって、心から思う。





「あらあら。蒼ちゃん、よく来たねえ!」
腰巻エプロンで手を拭きながら出てきたのは、オレのばあちゃん。
しばらく会わない間に、随分小さくなった気がする。
や。
オレがデカくなってんの?
「また大きいなってぇ。その子が電話で言っとった…」
「園田ましろです。2日間、お世話になります」
オレの隣で園田が頭を下げて、手にしたかごを差し出した。


「あの…これ───よかったら近所の皆さんで、召し上がったください」

「まあまあ。こんなにたくさん。荷物になるのに、大変やったやろう? ありがとうねぇ」


大変だったのはオレだよ、ばあちゃん。
でっかい籠盛り菓子の手土産に、バスケットに入った手作り弁当。
オレの荷物と園田の分。
どうして女ってこんなに荷物、多いんだ?
そりゃあ手作り弁当はさ、美味しくありがた〜くいただいたけど。
日用品だけで、軽くオレの倍はあんの。
何をどこで使うのさ?


「離れの部屋を掃除しといたけん。そっちをお使いや。疲れたやろう? 荷物、置いといで」
「サンキュー、ばあちゃん。じゃあ…とりあえず、行くか」
「うん」
「お昼は食べたんかね?」
「船で食った」
園田の手作り弁当、むちゃくちゃ旨かった!
「じゃあ、夕飯までふたりでゆっくりしたらええ」
「ああ。そうさせてもらうな」


「あの……何かお手伝い、しましょうか?」


や。園田。
それはダメだろ。
2泊3日つっても、移動を入れたら正味1日だ。
それぐらいの時間じゃあ回りきれないほど、見せてやりたいものがいっぱいあるってのに。
時間はいくらあっても足りないわけで。
ばあちゃんには申し訳ないけど、旅行中ぐらい園田を独り占めさせて。



「かまんかまん。せっかく来たんやから、ゆっくりしいや」
「でも……」
「田舎やけん、自然ぐらいしか自慢できるところがないけど…蒼ちゃんにいろいろ案内してもろたらええ。
それに───どうせ後々、家族になるんやけん、そんな気ぃ使わずに気軽にしとってや」








「……え?」




園田がオレを見た。
丸っこい目がますますまん丸だ。


つか、園田。
そこはオレを振り返るべきじゃない。
オレだってその発言、意味不明だ。






「……ばあちゃん」
「なん?」
「家族、って?」



どゆこと?




「だって、海月(みつき)ちゃんがゆっとったよ。蒼ちゃんが将来の嫁、連れてくけん、よろしくって───」








あ・ね・きーーーーー!!!!




「ご近所さんにも蒼ちゃんが嫁連れてくるって、言ってしもたがな。やけんどこかで会ったら、挨拶だけはちゃんとしときや」



もうすでにインプットされたばあちゃんの思考を書き換えるのは。
オレが英語のテストで満点取るよりも難しく。
組長をやってるじいちゃんが、おそらく村中に吹聴したのは容易に想像できて。
返す言葉が見つからない。
おまけに。
「ましろちゃんはお人形さんみたいにべっぴんさんやけん、ひ孫が楽しみじゃわい」
なんて。
そんな嬉しそうな笑顔を見せられたら、老い先短い年寄りの楽しみを壊すわけにはいかず。
姉貴がついた嘘に乗る以外、方法がみつからなかった。

つか。
ひ孫が出来るアレコレをしてないつーのに、どうやったら子どもが生まれるんだか。
誰かオレに、教えてくれー!









『だーから〜。
ふたりとも古い人間なんだから、彼女連れてくっていうよりは、嫁のほうが体裁いいでしょ?』


離れに移動してすぐに、オレは自宅に電話した。
携帯の向こうで、ニヤニヤ笑ってる姉貴の顔が想像できてムカツク。
『田舎だし、噂は風よりも早く…よ?』
「そうかもしれねえけど…! 話、飛躍しすぎだろ!」
ばあちゃんがそういう話題を振るたびに、オレはやましさを感じて、まともに顔が見られない。
『まるっきり嘘、っていうわけじゃないじゃない? 実際、アンタはましろちゃんと付き合ってるわけだし…』
「だけど!」
『要はさ、アンタがましろちゃんとこのままゴールインしちゃえば、ホントの話になるんだから。…結果オーライ?』
「ゴ……ッ!?」
姉貴の言葉に思わず携帯を取り落としそうになった。
ゴールインって…オレらまだ、高校生だぞ!?
何考えてんだ!
『あら。もうこんな時間。 ───じゃあ、そういうことだから。まあ……うまくやんなさい』


うまくって、何をどうしろと。
オレが面倒くさい事を言い出す前に、打ち切った感がぬぐえない。
ったく。
年寄りを騙して、罪悪感とかないんかね。







「どうだった? 海月さん…何て?」


オレを見上げてくる顔が、不安に揺れる。
百歩譲ってオレはいいとしても。
嘘をつけない園田サンが、どこまでこの嘘に付き合えるのか。
もしこれが理由で話がこじれたりなんかしたら……。
恨むぞ、姉貴!












じいちゃんちは300坪程の敷地の中央に、屋敷みたいに馬鹿でかい家がどかんと建っている。
敷地の西側に納屋と、トラクターなどの農具をしまう倉庫、米蔵。
南側に昔、親父たちが使っていた離れがある。
普段、家族で来る時は、屋敷みたいなばあちゃんちに泊まるけど。
今日は、わざわざ離れの部屋を用意してくれた。
たぶん姉貴が、配慮してくれたに違いない。

いくら気配り上手なばあちゃんでも、そういう若者の事情はわかるはずもなく。
客好きのじいちゃんが、かわいい孫と、孫が連れてきた将来の嫁をわざわざ離れに…なんて。
手放すわけがない。
そこだけは、姉貴に感謝だ。
初めての大事な夜を祖父母と同じ空間で───なんて。
さすがのオレも気が引ける。
つか、集中できない。
もちろん、園田だって嫌がるだろうし。
どうせなら誰にも邪魔されることのない場所で、ふたりきりを楽しみたい。
可愛い園田をアンアン言わせたい。
なーんて。





「すご…いー! 広いね! 老舗の旅館みたい…。あ───。あの黄色く見えるのは何? 向日葵?」

今朝からずっと、園田ははしゃぎっぱなしだ。
たぶん。
それぐらいテンションを上げてかないと、緊張でどうしようもないんだと思う。
今日はやけに沈黙を嫌がるし。
そういう雰囲気に持ってかれるのが、やなわけ?
ちょっと凹む。



「普段使ってないのに、手入れが行き届いてるね…」
「ばあちゃん、掃除好きだから」
毎朝、5時には起きて、ひと通りの家事をこなしてから大掃除だ。
使ってる使ってないなんて関係なく、20近くある部屋全部、隅から隅まで。
掃除が趣味といっても、過言じゃない。
おかげで塵ひとつなく、ピカピカだ。
「荷物、ここでい?」
「うん。ありがと───」


園田の視線がある一定の場所で止って、そこから動かなくなる。
布団がふた組。
キレイにたたんで、部屋の隅に用意してあった。
前日に干してくれたであろうそれからは、お日さまの匂いがする。
あ、意識したなって。
あからさまな態度で、園田がそれから乱暴に視線を外した。
…わっかりやすぅ。
園田にバレないように顔を背けて、笑いを噛み殺す。
素直な反応が園田らしくて、可愛くて仕方ない。
慣れてない感が男心をくすぐって、オレのツボをぐいぐい押してくる。
んでもって。
悪戯心をむくむくと呼び起こした。




「そのだ」



耳元にわざと、息を吹きかけるように名前を呼んだ。
「ひゃあ…ッ!!」
案の定、甲高い悲鳴を上げて、飛び上がるように園田が振り返った。
想像通りのリアクション。
耳の奥がキンとした。
つか。
意識しすぎだ、バカ!
さすがにオレだって、真っ昼間から押し倒したり、そういう事、するつもりはない。




だけどな。

そんなあからさまに”ふたりきり”を意識されたらさ。
オレだって───。







あー…。ヤバイ。
スイッチ入る。








至近距離で見つめて、ゆっくり顔を近づけた。
園田の背中に、それとなく手を回す。


「あの……そーご…くん…」
「なに?」
「外、まだ明るい…よね……?」
「だから?」
「だから、って……や…ぁッ…」


意地悪く園田を見下ろして、耳朶を柔く噛んだら、意識した身体がびくんと震えた。
なんつか。
今日の園田サンは、いつもより敏感だ。
んでもって、警戒態勢もマックス。
ありったけの力で、オレを押しやる。




「着いて早々なんて…ヤダ……」
うん。
それはわかってる。
「キスもダメ?」
「……だめ」
「なんで?」
「それだけで終わらない感が…あるから……」


うっ。
読まれてる。


「キスだけ。それ以上、しない。約束する」



今日はまだ、園田に触れてない。
手ぇ、繋いだだけ。
せっかくふたりになったんだから、キスぐらいは、しときたい。




「…ホント、に……?」









素直にうんとは、約束できない。
でも。
出来る限りの努力は……します。













たぶん。





やんわりと指で唇に触れて、そっとキスで塞ぐ。
園田がゆっくり目を閉じて、オレからのキスを受け入れる。
軽く触れるだけのキスを何度も降らせて、唇の柔らかさを確かめたら、ひどく安心した。
それだけで幸福に包まれる。


「…そー、ご、クん…ッ、苦し……っ」


キスが長くなると園田はいつも息が上がる。
キスの体力って、持久力と繋がってんの?
それとも肺活量?
どっちにしても園田のそれは、オレの半分以下なんだろうなぁ、なんて。
馬鹿げたことを考えながらも、キスを続けた。
時折、キスの合間に、園田が苦しそうに息を喘ぐ。
その、いっぱいいっぱいな表情がすげぇ可愛いくて、色めいて。
オレの官能に火をつける。








あー…。もう。


田舎を案内するのなんてやめてさ。
このままずっと、キスしときたい。
離れに閉じ込めて、喧嘩して会えなかった分の夏を、園田で満たせるのなら、もうそれで…。



なんて。
ダメだよなぁ……。
つか。
キスだけでお預け、つーのは、限界ギリギリまで来てる。
夜まで───の、ほんの少しが待てない。
崖っぷち。






案の定。
園田の予想通り、キスだけじゃ止らなくなったオレは。
キスの余韻で、くたくたと寄りかかってきた園田の無防備さをいいことに。
ブラウスの裾から手を滑り込ませて、直に素肌に触れた。


「そ、ーごくん…!」


ビクと身体を震わせて、園田が目を開けた。









「やっぱ……ダメ?」


「約束、したのに……」



そんな泣きそうな顔で言われると、良心が痛む。
だけど。
こんな状態で、キスだけで終われるかって聞かれると、答えはNO。



「ちょっと、触るだけ。最後まではしない」
「だって…。さっきも、そうやって約束したのに……」
「うん」



何が「うん」だ、オレ!
だってさ。
男のそういう約束は、あってないようなもの。
まだまだオレを分かってない、園田が悪い。


「あ───ッ」


話している間に、ブラのホックを外した。
観念した園田がぎゅっと目を瞑って、与えられるであろう刺激に唇を噛締める。
ちょっと触るだけ。
今度は絶対、約束する。










「蒼ちゃーん、ましろちゃーん。麦茶、入ったけん、ここ。置いとくねー」










ガラガラと引き戸のガラスを響かせて、玄関からばあちゃんの声。


瞬間。

オレも園田も、固まった。




「あー………。








ばあちゃん、ありがと、なー……」












心のこもってない、感謝の言葉を玄関に向けて呟く。



悲しいかな、お約束。









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Comment








笑いました!大笑いさせてもらいました!!蒼吾くんのおばあちゃんもみなさんイイキャラだしてます\(^o^)/
蒼吾くん、こんなんで「男子の本懐」遂げられるのか???(爆)
続きを期待してますネ|
from. | 2009/10/08 16:28 |
*4:28コメの方へ*
笑っていただけて、本望!
このふたりはいつもいいとこ、邪魔されてますねぇ。
嫌な作者でゴメン(苦笑)

蒼吾ばあちゃんは、まんまうちの祖母です。
ホント、埃ひとつありませんよ〜。

さて。
本題が残ってます。
期待しつつ、お待ちくださいませ。
from. りくそらた | 2009/10/08 22:29 |
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