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9月の憂鬱  前編




園田の様子がおかしい。
怒ってるわけじゃあないみたいだけど……何だかぎこちない。
何か思うところがある顔だな、あれは。
オレ。
アイツを不安にさせるようなこと、したっけ?
振り返ってみるけれど、それといって心当たりがない。


待ち合わせの時間には遅れなかった。
たくさん写真が撮りたいっていう園田のお願いに、姉貴からデジカメも借りてきた。
デートの途中で、誰かに割り込まれたり、部活召集がかかることもない。
園田が絶対嫌だと言い張った、絶叫マシーンはあえて外すして。
嬉しいハプニング満載のお化け屋敷も、我慢した。
そのかわりと言っちゃなんだけど。
観覧車の中ではうんとキスをしてやった。
密室で、誰も見てないのをいいことに、ディープで長いやつをたっぷりと。
そりゃあ、ちょっとやりすぎたかなーとは思ったけれど。
恋人同士、観覧車の天辺でのキスなんて、お約束だろ?
園田もそれをわかっているから、素直にオレのキスに応じてくれた。




でも、明らかに。
その辺りからなんだよな。


園田の様子が、いつもと違うって気づいたのは。
















降り出しそうな空模様に、早めに遊園地を引き上げた。
帰るにはまだ早い時間だったから、園田を送り届けたついでに、部屋に上がらせてもらう。
園田が淹れてくれたアイスティーで喉を潤して、コンビニでチョイスしてきたばかりのプリンを食べながら、今日撮った写真をふたりで確認した。


「どれ、プリントしとこうか?」
「えー…迷う。全部───っていうのは……ダメ?」
「別にいいけど……かなりの数だそ?」

今日一日で、軽く100枚は超えてる。
園田のとびきりを残したくて、何度もシャッターを切ったから。
気に入らないやつは、後で消去すればいい。
そう思って撮りまくったのに、結局どれもいい瞬間すぎて、消去できない。


「自分だけで映ってるやつもいんの?」
「うん」
「それって……どんだけ自分好きなんだよ?」
冗談めかして笑ったら、園田がもう!と手を振り上げた。
大げさに声を上げてそれをよけて、冗談だよと笑う。
「だって……。蒼吾くんが撮ってくれた写真だから、記念に全部欲しくて。
それを見るたびに、その時の蒼吾くんを思い出せるでしょ? だから……」


傍から見ていて恥ずかしいほど惚気るって、こういうことをいうんだろうな。
液晶を見ながら嬉しそうに笑う園田を見て、ふとそんな風に思った。
できることなら、一緒にいられるすべての瞬間を、メモリーの中に納められたらいいのにって、欲張りなことを考えてしまう。




「あ。ねえ、見て見て! ほら、この写真の蒼吾くん、すごくいい顔! プリントしてもらったら、ボードに貼ろうかな。あ。こっちもいい顔───」

嬉しそうに頬を蒸気させて、身を乗り出してきた園田の腕を掴んで引き寄せた。
その拍子にデジカメが手から離れて、白い絨毯の上に音もなく転がる。
肩を抱き寄せてキス。
唇を割って入ろうとしたら、拒まれた。




だから、なんで───!?








園田がおかしな態度を取るのは、キスした時や、体に触れた時。
付き合いはじめじゃないんだからさ、あからさまに意識しすぎるのは変だ。
もう、そういうプラトニックな仲でもないし。
そりゃあ。
いつまでたっても「慣れない」「初々しい」───園田のそういうところが、惚れる要素ではあるんだけど。
でも今日は、そういう気恥ずかしさの拒絶とは、ちょっと違う。



「…ましろ。もうちょっと口、開けて───」

甘く名前を囁いても、頑なに閉じた唇はオレの進入を拒む。
軽く触れるのはOKで、ベロちゅーは駄目?
それ以上のこともやってんのに、それっておかしくね?


「…あっ!」
前触れもなく、胸に触れた。
気が緩んだその隙に舌で割り入って、逃げる舌を捕まえてやろうとした。
その瞬間、園田がオレを突き飛ばした。
不意の出来事に逆らう暇もなく、オレは派手にベッドから転がり落ちた。
呆然とするオレ以上に。
無意識に出てしまった拒絶の態度に、園田の顔が青くなる。


明らかに今日の園田は、おかしい。
下に親がいるから駄目だとか、そういう反応じゃない。
そういうことをするオレが嫌───つう態度。
二度目が嫌?(正しく数えると二度目じゃねえけど)
誕生日みたく約束してないから駄目?
四国から戻って、あれから一度も、園田のこと抱いてねえのに。
言っとくけどオレ、結構我慢してんだぞ。
今すぐ抱きたいって言ってんじゃない。
深いキスも、体に触れるのも駄目じゃあ、納得いかねえ。
オレが何をしたっていうんだ?





「あの…っ、ごめ……っ、突き落としたりするつもりなんか、なくて…その……」


見る見る間に園田の顔が泣きそうに歪んで、目尻に涙が浮かぶ。
その態度から、オレを突き飛ばしたのには何か理由があることを悟る。
何なんだ、まったく。
むちゃくちゃに突っ走りたくなる気持ちを無理矢理抑え込んで、園田の正面に座る。
手を握って、強く見据えた。







「不満があるのなら言って。
理由も分からずに、拒まれんのはたまらない」



ここで強く出たら、園田は怖がって萎縮してしまう。
泣くばかりで、何も話せなくなるのは目に見えてる。
彼女のペースを守りつつ、ゆっくりうまく誘導してやると、素直に本音を話してくれるはず。
それが長い付き合いで学んだ、園田の上手な扱い方。
案の定。
ごまかしは効かないと悟った園田が、ぽつりぽつりと話はじめる。









「…言っても、怒らない……?」


「ああ。約束する」










「あのね……。




蒼吾くんって……その……私以外の女の子と………したこと、あるの……?」











ハイ?









「…なんで、そんな風に思うんだよ?」


突拍子もない質問に、思わず聞き返してしまった。









「だって…。慣れてるっていうか…その…キスも上手で……、初めての時も、余裕があったから……。
前にも誰かと、そういうこと、したことあるのかな、って不安になって───」


「……オレ。余裕があるように見えた?」







「…うん……。




余裕があるのは、それなりに経験積んでるからだって、みんなが言うから…」











みんなって、誰だよ?












つうか。





誰に、どこまで、何を話したら。そんな方向、行くんだよ!!














「園田。ちゃんと説明しろ」






約束通り、怒るつもりはない。



だけど。







全部聞くまで、オレ。

ぜってえ、帰んないからなっ!








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